神東塗料 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

神東塗料 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

神東塗料は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、塗料や化成品の製造販売を主力事業としています。直近の業績では、販売価格の改定や子会社の工事売上増加が寄与して営業利益が黒字に転換しました。一方で、大日本塗料による公開買付に関連する特別損失を計上したため、最終的な当期純利益は赤字となっています。


※本記事は、神東塗料株式会社の有価証券報告書(第131期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 神東塗料ってどんな会社?


神東塗料は、高品質な塗料製品や化成品の製造販売を手掛ける老舗メーカーです。

(1) 会社概要


1933年に東洋塗料製造と合併し神東塗料を設立しました。1938年に住友化学工業と資本・技術提携し、1951年に大阪証券取引所に上場を果たしました。2013年に東京証券取引所第一部に上場後、現在はスタンダード市場へ移行しています。2025年には大日本塗料の連結子会社となりました。

従業員数は連結で405名、単体で305名です。筆頭株主は同業の大日本塗料で過半数の株式を保有しており、第2位は神東塗料取引先持株会、第3位は個人の株主となっています。

氏名 持株比率
大日本塗料 50.10%
神東塗料取引先持株会 4.47%
中島和信 2.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員は小坂伊知郎が務めており、社外取締役の比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
小坂伊知郎 代表取締役社長執行役員 住友化学に入社後、化成品事業部長や常務執行役員などを歴任。2024年に同社顧問を経て代表取締役社長執行役員に就任。
上鶴茂喜 代表取締役常務執行役員総務人事室、購買部、内部監査部担当 住友化学に入社後、同社総務人事室部長や取締役を経て、2024年より現職。
遠藤聡 取締役執行役員尼崎工場、千葉工場担当 同社に入社後、技術開発本部研究開発室や千葉工場長などを経て、2024年より現職。
永野達彦 取締役 三菱銀行に入行後、大日本塗料の管理本部長や取締役常務執行役員などを歴任し、2025年より現職。


社外取締役は、樫尾昭彦(カシオ社会保険労務士事務所所長)、矢倉昌子(アスカ法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「塗料事業」および「化成品事業」を展開しています。

(1) 塗料事業


自動車や建材などに用いられる合成樹脂塗料等の製造販売を行っています。高い技術水準に裏打ちされた高品質で環境対応型の製品を提供しており、インダストリアル、インフラ、自動車用など幅広い分野の顧客に向けて製品を供給しています。

製品の販売代金が主な収益源です。事業の運営は同社が行うほか、子会社のシントーファミリーや九州シントーなどを通じて販売しています。また、海外子会社においても現地で製造販売を行い、同社が技術指導を提供しています。

(2) 化成品事業


防疫薬剤や工業用殺菌剤などの化成品の受託生産を行っています。高品質な化成品を安定的に製造し、おもに親会社等のグループ企業からの委託に対して供給する体制を整えています。

受託生産に対する製造代金が主な収益源です。本事業の運営は同社が担っており、住化エンバイロメンタルサイエンスから防疫薬剤および工業用殺菌剤の受託生産を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一時期減少傾向にありましたが、直近では販売価格の改定や工事売上の増加により回復し、増収に転じています。経常利益は原材料価格高騰の影響等で赤字が続いていましたが、直近では黒字に転換し、収益性が改善しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 201.9億円 191.4億円 190.4億円 189.5億円 207.6億円
経常利益 1.7億円 -2.4億円 -11.5億円 -4.6億円 4.7億円
利益率(%) 0.8% -1.3% -6.0% -2.4% 2.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 7.5億円 -19.5億円 -19.2億円 -5.3億円 -3.2億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も拡大しています。また、価格改定による限界利益の改善が寄与し、営業利益は赤字から黒字へと大幅な改善を遂げました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 189.5億円 207.6億円
売上総利益 29.4億円 36.6億円
売上総利益率(%) 15.5% 17.6%
営業利益 -4.8億円 2.3億円
営業利益率(%) -2.5% 1.1%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が9.7億円(構成比28%)、発送費が4.8億円(同14%)を占めています。また、当期の製品製造原価においては、材料費が86.7億円(構成比74%)、労務費が15.5億円(同13%)となっています。

(3) セグメント収益


塗料事業は製品価格の改定や子会社の工事売上の増加により、前年度から増収となりました。一方、化成品事業は受託生産の減少により減収となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
塗料事業 188.9億円 207.1億円
化成品事業 0.6億円 0.5億円
連結(合計) 189.5億円 207.6億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的(末期型)な状況となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 0.5億円 -0.3億円
投資CF -3.2億円 -3.6億円
財務CF -7.6億円 -3.7億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-0.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.5%でこちらも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「塗料事業を通じて社会の発展に貢献します」「堅実と信用を第一に、お客様に信頼される会社であり続けます」「社員が愛着を持ち、より誇りの持てる会社を目指していきます」という企業理念を掲げています。高い技術水準に裏打ちされた高品質で環境対応型の製品を真心こめて提供することを目指しています。

(2) 企業文化


知識、技術、技能のさらなる向上を目指すとともに、ルールとマナーを守り、迅速かつ誠実に仕事に取り組むことを行動指針としています。また、安全と心身の健康に留意し、高い目標に向かってチャレンジを続ける文化を重視し、コンプライアンス体制の強化にも全社一丸となって取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社は業績に占める持分法適用会社の重要性を考慮し、売上高、営業利益、経常利益などの指標を重視していますが、当面はコアビジネスの収益力の向上を図るため、売上高営業利益率を最重要の目標として認識し経営を行っています。具体的な施策や数値目標を定めた中期経営計画は現在策定中です。

(4) 成長戦略と重点施策


塗料設計と製造技術を事業展開のコアとし、データを活用した良品率向上や業務の標準化による生産性の向上に取り組みます。また、自動車を含むインダストリアル分野に軸足を置き、高機能な製品の提供を通じて安定した収益を確保する体制を目指します。大日本塗料との事業提携によるシナジー効果の早期実現も推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


新規学卒者だけでなく、経験者採用や正社員登用など多様な人材の確保を進めています。フレックスタイム制や在宅勤務の活用など働きやすい環境整備に努めるほか、OJTや層別研修、幹部候補者の選抜研修を通じて育成を図り、安全衛生を根幹とした快適な職場づくりにもグループ全体で取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.6歳 14.5年 5,254,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.6%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 81.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 82.5%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 82.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品の品質に係るリスク


同社グループは厳格な基準に従って製品を製造していますが、予期せぬ品質問題やリコールが発生する可能性はゼロではありません。大規模な製品事故や不適切行為等による補償費用が発生した場合、多額のコスト負担や社会的信用の低下を招き、業績や財務状況に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 原材料の価格変動及び需給に係るリスク


塗料などの製造に使用する各種原材料は、国内外の需給関係や地政学リスクにより仕入価格が変動します。価格高騰分を製品価格へ転嫁することが遅れた場合、収益性が低下する恐れがあります。また、必要な原材料が確保できない場合には生産活動に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 他社との競合や価格競争に係るリスク


同社の事業領域である塗料業界は、国内の需要が伸び悩む中で他社との激しい価格競争に晒されています。競合他社の生産能力増強などにより競争がさらに激化し、コスト低減などの対応策によっても価格競争を克服できない場合、同社グループの収益力や市場シェアが低下するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。