※本記事は、神東塗料株式会社の有価証券報告書(第132期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 神東塗料ってどんな会社?
合成樹脂塗料や化成品の製造販売を手掛ける大日本塗料の連結子会社です。
■(1) 会社概要
1933年に東洋塗料製造と合併し神東塗料を設立しました。1938年に住友化学工業と資本・技術提携し、1951年に大阪証券取引所に上場しました。その後、自動車用塗料や家庭用塗料などへ事業を拡大し、2025年3月に大日本塗料の連結子会社となりました。
現在の同社グループは、連結従業員数399名、単体従業員数306名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は親会社の大日本塗料で、第2位は神東塗料取引先持株会、第3位は個人株主の中島和信氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 大日本塗料 | 50.10% |
| 神東塗料取引先持株会 | 4.63% |
| 中島和信 | 2.62% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長執行役員は小坂伊知郎氏が務めています。社外取締役は2名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小坂伊知郎 | 代表取締役社長執行役員 | 1986年住友化学工業(現住友化学)に入社。同社化成品事業部長、常務執行役員などを経て、2024年に同社顧問に就任。同年より現職。 |
| 上鶴茂喜 | 代表取締役顧問 | 1981年住友化学工業(現住友化学)に入社。2016年同社総務人事室部長に就任し、取締役総務人事室担当、代表取締役常務執行役員などを歴任。2026年より現職。 |
| 遠藤聡 | 取締役執行役員 | 1991年同社に入社。海外子会社副社長や千葉工場長、理事、執行役員などを経て、2024年より現職。 |
| 永野達彦 | 取締役 | 1987年三菱銀行に入行。2017年大日本塗料の執行役員に就任し、取締役常務執行役員などを歴任。2025年同社取締役に就任し現職。 |
社外取締役は、樫尾昭彦(元三菱化成工業)、矢倉昌子(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「塗料事業」および「化成品事業」を展開しています。
■塗料事業
合成樹脂塗料などの製造販売を行っており、国内の各種産業向けに製品を提供しています。また、海外子会社や関連会社がインドネシアや台湾、タイなどで現地製造販売を展開し、同社が技術指導を行っています。
塗料製品の販売対価を顧客から受け取るモデルです。製品の一部はシントーファミリー、九州シントー、早神などを通じて販売されています。また、ジャパンカーボラインなどからの受託生産による収益も得ており、調色業務はシントーサービスに委託しています。
■化成品事業
化成品事業では、防疫薬剤および工業用殺菌剤などの製品を取り扱っています。高品質な化成品製品を安定的に製造し、供給する体制を構築しています。
住化エンバイロメンタルサイエンスからの受託生産により収益を得ています。運営は同社が主体となって行っており、防疫薬剤や工業用殺菌剤の製造対価として受託生産料を受け取るビジネスモデルです。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は原材料価格の高騰を背景とした販売価格の改定効果などにより、直近2期で増加傾向にあります。経常利益は一時赤字が続いていましたが、直近2期は黒字に転換し収益体質が改善しています。一方、固定資産の減損損失などの特別損失計上により、親会社所有者帰属の当期利益は赤字が継続している状況です。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 191億円 | 190億円 | 190億円 | 208億円 | 215億円 |
| 経常利益 | -2億円 | -11億円 | -5億円 | 5億円 | 4億円 |
| 利益率(%) | -1.3% | -6.0% | -2.4% | 2.3% | 1.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -19億円 | -19億円 | -5億円 | -0.6億円 | -6億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増収となったものの、原材料価格の高止まり等により売上原価が増加し、売上総利益は微減となりました。一方、固定費の削減が進んだ結果、営業利益は前期を上回る増益を確保しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 208億円 | 215億円 |
| 売上総利益 | 37億円 | 36億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.6% | 16.9% |
| 営業利益 | 2億円 | 3億円 |
| 営業利益率(%) | 1.1% | 1.2% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が10億円(構成比29%)、発送費が5億円(同15%)を占めています。
■(3) セグメント収益
インフラ分野は防食塗料の増加や子会社の工事売上の好調により増収となりました。自動車用塗料分野は出荷数量の減少があったものの価格改定により増収となっています。一方、インダストリアル分野は一部建築資材向け塗料の出荷不調により微減となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| インダストリアル分野 | 67億円 | 67億円 |
| インフラ分野 | 95億円 | 102億円 |
| 自動車用塗料分野 | 37億円 | 39億円 |
| その他塗料分野 | 8億円 | 7億円 |
| 化成品事業 | 0.5億円 | 0.6億円 |
| 連結(合計) | 208億円 | 215億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスであることから、健全型と判定されます。営業で生み出した資金を将来の成長投資や借入金の返済に充てる安定した資金繰り状況にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.3億円 | 9億円 |
| 投資CF | -4億円 | -4億円 |
| 財務CF | -4億円 | -2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-4.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.0%であり、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「塗料事業を通じて社会の発展に貢献します」「堅実と信用を第一に、お客様に信頼される会社であり続けます」「社員が愛着を持ち、より誇りの持てる会社を目指していきます」という企業理念を掲げています。高い技術水準に裏打ちされた高品質、高機能、環境対応型の製品とサービスを真心こめて提供することを目指しています。
■(2) 企業文化
行動指針として、「知識、技術、技能のさらなる向上を目指します」「ルールとマナーを守り、迅速、誠実に仕事に取り組みます」「安全と心身の健康に留意し、高い目標に向かってチャレンジを続けます」を掲げています。社員一人ひとりが相互に啓発し合い、安心して相談できる職場風土の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、業績に占める持分法適用会社の重要性を考慮し、売上高、営業利益、経常利益などを重要な経営指標として認識しています。当面はコアビジネスの収益力の向上を図るため、売上高営業利益率を最重要指標として掲げ、生産性の向上による利益率改善に取り組んでいます。
■(4) 成長戦略と重点施策
2026年度から始まる4ヶ年の中期経営計画において、大日本塗料との事業提携によるシナジー効果の創出を掲げています。具体的な施策として、電着塗料や環境対応型塗料の新規開拓、粉体塗料の新製品開発、既存顧客との関係深化による拡販を推進します。また、サプライチェーンの高度化などにより生産性の向上を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、優良な人材を過不足なく安定的に確保することを人材戦略の基本としています。新規定期卒業者だけでなく、経験者採用や契約社員からの正社員登用など、多様なソースからの通年採用を実施しています。フレックスタイム制や在宅勤務の活用、寮・社宅の提供など、従業員が働きやすい環境整備にも注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.9歳 | 14.6年 | 5,440,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.3% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 83.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 83.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 77.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 新製品の研究開発に係るリスク
新製品の研究開発や上市は最重要課題ですが、顧客ニーズの多様化や変化などの不確定要素により、研究開発が期待どおりに進捗しなかった場合、競争力が低下し、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 製品の品質に係るリスク
同社グループは厳格な品質管理基準に従って製品を製造していますが、大規模な製品事故や予期せぬ品質問題の発生、また過去の不適切行為に関する補償費用の発生により、多額のコストが生じて業績に重大な影響を与えるリスクがあります。
■(3) 原材料の価格変動及び需給に係るリスク
国内外の需給構造の変化や地政学的な問題により原材料価格が大幅に上昇した場合、製品価格への転嫁が遅れることや、原材料の調達が困難になることで生産・販売活動に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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