※本記事は、株式会社日本ピグメントホールディングスの有価証券報告書(第90期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 日本ピグメントホールディングスってどんな会社?
同社は樹脂コンパウンドや樹脂用着色剤などの色彩関連製品を製造・販売する専業メーカーです。
■(1) 会社概要
1925年に輸入顔料等の販売を目的に三輪商店として創業し、1949年に日本ピグメントへ改組しました。1961年には東証二部に上場を果たし、国内外で生産拠点を拡大しました。2024年には同業の住化カラー(現PLASiST)を子会社化し、同年10月に持株会社体制へ移行して現在の商号となりました。
従業員数は連結で1,072名、単体で26名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は事業関係者で構成される日本ピグメント取引先持株会で、第2位は海外の証券会社、第3位はみずほ銀行となっており、取引先や金融機関が上位を占める安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本ピグメント取引先持株会 | 12.72% |
| INTERACTIVE BROKERS LLC(インタラクティブ・ブローカーズ証券株式会社) | 4.70% |
| みずほ銀行(常任代理人 日本カストディ銀行) | 4.46% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は田代喜一氏が務めています。社外取締役は4名選任されており、取締役全体に占める割合は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田代喜一 | 代表取締役社長 | 1984年同社入社。海外現地法人社長や経営管理本部長、営業本部副本部長などを経て、2024年6月より代表取締役社長。同年10月より現職。 |
| 児島俊郎 | 取締役副社長 | 1986年住友化学工業入社。同社執行役員等を経て、2021年住化カラー(現PLASiST)社長。2024年6月より現職。 |
| 至田順彦 | 取締役専務 | 1988年同社入社。埼玉川本工場長や経営管理本部長、生産本部長などを歴任。常務執行役員等を経て、2026年6月より現職。 |
| 三輪幸一 | 取締役 | 1981年同社入社。米国現地法人社長や内部監査室長などを歴任。監査等委員である取締役を経て、2023年6月より現職。 |
| 今井信一 | 取締役(常勤監査等委員) | 1981年同社入社。経理部長や常務取締役として経理、総務、システム等各部門を管掌。2023年6月より現職。 |
社外取締役は、広納幸正(元住友化学アジア事業室所属)、宮﨑達彦(弁護士・元運輸省海上交通局長)、浦東建男(元日本カストディ銀行資金為替部長)、吉利浩美(弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」、「東南アジア」、「中国」および「その他」事業を展開しています。
■日本
国内市場に向けて、樹脂コンパウンド、樹脂用着色剤、加工カラー、ピグメントカラーの製造販売を行っています。自動車、家電、住宅建材など幅広い産業の顧客を対象に、高い分散技術を用いた着色剤等を提供しています。
顧客への製品販売を主な収益源としています。事業の運営は、日本ピグメントやPLASiSTが製造販売を行うほか、名古屋ピグメント、東京ピグメント、大阪ピグメントなどの各子会社が製造を担っています。
■東南アジア
日系企業が集積する東南アジア地域において、主に自動車や家電向けの樹脂コンパウンドおよび樹脂用着色剤の製造販売を展開しています。現地の需要に合わせた安定した製品供給を行っています。
現地顧客への製品引き渡しによる販売を主な収益源としています。マレーシアのNippon Pigment(M)Sdn.Bhd.や、インドネシアのP.T.Nippisun Indonesiaなどの子会社が製造販売を運営しています。
■中国
中国市場の顧客に向けて、樹脂コンパウンド、樹脂用着色剤、加工カラーの製造販売を行っています。日系企業のみならず中国国内企業への販路開拓も進め、多様なニーズに対応しています。
製品の販売対価を主な収益源としています。普拉希司特新材料(南通)や上海金住色母料などの子会社、および関連会社の上海新素材特種聚合物が製造販売を運営しています。
■その他
上記の報告セグメントに含まれない地域において、樹脂コンパウンド、樹脂用着色剤、加工カラーの製造販売事業を展開しています。韓国や台湾などを中心に市場を開拓しています。
各地域での製品販売による収益を柱としています。関連会社である韓国のNPK Co.,Ltd.や、台湾の大恭化學工業が製造販売を担い、事業を運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は一時足踏みが見られたものの、直近2期で子会社化の影響等もあり大きく拡大しています。一方で利益面は外部環境の変動によりやや起伏が大きく、経常利益や当期利益は一時的な落ち込みを経験したものの、当期は価格転嫁などの改善努力が実を結び、利益水準の回復傾向が見られます。
| 項目 | 86期 | 87期 | 88期 | 89期 | 90期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 276億円 | 275億円 | 267億円 | 379億円 | 422億円 |
| 経常利益 | 15億円 | 0.6億円 | 6億円 | 4億円 | 18億円 |
| 利益率(%) | 5.3% | 0.2% | 2.4% | 1.1% | 4.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 17億円 | 3億円 | -4億円 | 2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高が着実に成長する中で、原価コントロールや価格改定が寄与し売上総利益も伸長しています。これに伴い、売上総利益率および営業利益率ともに改善が進んでおり、本業での収益力が高まっていることがうかがえます。
| 項目 | 89期 | 90期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 379億円 | 422億円 |
| 売上総利益 | 55億円 | 71億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.4% | 16.8% |
| 営業利益 | 2億円 | 15億円 |
| 営業利益率(%) | 0.5% | 3.6% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が4.7億円、賞与引当金繰入額が0.2億円を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上高を見ると、主力である日本が価格改定や連結対象会社の増加により大きく増収を牽引しました。また、中国は地場企業への拡販が寄与して伸長した一方で、東南アジアは日系顧客の苦戦や為替影響等により前期並みの水準にとどまっています。
| 区分 | 売上(89期) | 売上(90期) |
|---|---|---|
| 日本 | 225億円 | 262億円 |
| 東南アジア | 124億円 | 124億円 |
| 中国 | 30億円 | 36億円 |
| 連結(合計) | 379億円 | 422億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CF・財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型の優良企業の状態と言えます。
| 項目 | 89期 | 90期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -4億円 | 47億円 |
| 投資CF | 0.8億円 | -10億円 |
| 財務CF | 7億円 | -17億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.5%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は49.2%となっており、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は4つの理念を使命として掲げています。「色彩を通じてゆとりのある生活を提供し社会の繁栄に寄与すること」「グローバリゼーションの中で地域社会との調和と共生を目指すこと」「環境に配慮した高品質の製品作りを目指すこと」「個性溢れる人材を育成し創造性豊かで活力のある企業集団を目指すこと」を指針とし、人と自然環境の融合を理念においた色彩関連製品づくりを追求しています。
■(2) 企業文化
「人を尊重する経営」と「ガバナンスの強化」を掲げ、専門性や経験、感性といった知と経験のダイバーシティを積極的に取り込む文化を重視しています。また、従業員のエンゲージメント向上や機能部署の横串活動による現場力の強化を図り、多様な人材が意欲をもって活躍する活力ある組織風土の醸成に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2026年度を初年度とする新たな中期経営計画『Transforming for the vibrant future 2030』を始動し、長期的な利益確保に向けた積極的な投資を進めています。2030年度の具体的な数値目標として以下の指標を掲げています。
・売上高:550億円
・営業利益:30億円
・営業利益率:5.5%
・ROE:7.4%
■(4) 成長戦略と重点施策
新たな中期経営計画の基本戦略として、「収益基盤事業の強化」「価値創出力の強化」「人を尊重する経営とガバナンスの強化」の3本柱を掲げています。国内工場の再編や最適地生産の推進による競争力強化のほか、成長領域のニーズを捉えた新製品開発の加速、新規事業の収益化と確実な立ち上げを通じた事業の柱の育成を図り、持続的な企業価値の向上を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「人材」を競争力の源泉と捉え、従業員一人ひとりの自律的なキャリア構築を支援する多彩な教育研修制度を展開しています。また、イノベーションを生み出す原動力としてダイバーシティを積極的に取り込み、性別や年齢に関係なく活躍できる環境の整備を推進するほか、即戦力となる中途採用も積極的に行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 90期 | 48.2歳 | 21.7年 | 7,118,000円 |
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 18.0% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※同社および連結子会社は常時雇用する労働者が300人以下等の理由により公表義務の対象ではないため、有報には男性育児休業取得率と男女賃金差異の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定事業への依存リスク
同社の事業は売上高の約6割を樹脂コンパウンドに依存しており、かつ顧客樹脂メーカーからのOEM生産が主体となっています。そのため、これら顧客メーカーの販売不振や値下げ要請、調達方針の変化があった場合、同社の業績や財政状態に直接的な悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外子会社におけるカントリーリスク
同社は中国や東南アジアなど海外でも広く事業を展開しています。そのため、進出地域におけるテロや政情不安による経済的混乱、予期しない法規制の変更、税務当局による不測の課税、感染症の拡大によるサプライチェーンの寸断などが生じた場合、グループ全体の業績にマイナスの影響を与えるリスクをはらんでいます。
■(3) 災害・事故・情報システム等に関するリスク
合成樹脂関連の可燃性製品を製造しているため、火災等の事故防止に努めていますが、地震等の大規模自然災害により生産拠点が被害を受けた場合、修復費用の発生等により業績に影響が及ぶ可能性があります。また、サイバー攻撃等で情報システムが停止した場合も、業務遅延を引き起こすリスクとして認識されています。



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