#記事タイトル:日本特殊塗料転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、日本特殊塗料株式会社 の有価証券報告書(第119期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本特殊塗料ってどんな会社?
日本特殊塗料は、防音材などの自動車部品事業と、建築・航空機用などの塗料事業を展開する化学メーカーです。
■(1) 会社概要
1929年に合資会社として設立され、1936年に株式会社へ改組しました。1961年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1967年にはスイスのMatec Holding AG(現・Autoneum Holding AG)と防音技術に関する技術提携を行いました。1991年に市場第一部銘柄に指定され、2023年10月にスタンダード市場へ移行しました。
同社グループの従業員数は連結1,131名、単体624名です。筆頭株主は技術提携先であるスイスのAUTONEUM HOLDING AGで、第2位は関西ペイント、第3位は株式会社レノとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| AUTONEUM HOLDING AG(常任代理人 東海東京証券) | 14.25% |
| 関西ペイント | 6.72% |
| レノ | 5.06% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名、計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表者は代表取締役社長執行役員 最高執行責任者の遠田 比呂志氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 田谷 純 | 取締役会長 最高経営責任者(CEO) | 三菱銀行入行を経て2005年に入社。業務本部長、CFO等を歴任し、2019年代表取締役社長 COOに就任。2023年6月より現職。 |
| 遠田 比呂志 | 代表取締役社長執行役員 最高執行責任者(COO) | 1983年入社。自動車製品事業本部設計部長、同本部長、購買部長、常務取締役、ニットクシーケー社長等を経て、2021年代表取締役社長 COOに就任。2023年6月より現職。 |
| 鈴木 裕史 | 取締役専務執行役員 塗料事業本部長 同 営業統括責任者 | 1985年入社。開発本部第1技術部長、平塚工場長等を経て、2019年取締役 塗料事業本部長に就任。2024年4月より現職。 |
| 中村 信 | 取締役専務執行役員 自動車製品事業本部長 同 生産統括責任者 | 1987年入社。武漢日特固防音配件有限公司総経理、愛知工場長、タカヒロ社長等を経て、2023年専務執行役員 自動車製品事業本部長に就任。 |
社外取締役は、奈良道博(弁護士・半蔵門総合法律事務所パートナー)、矢部耕三(弁護士・弁理士・弁護士法人御堂筋法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「塗料関連事業」および「自動車製品関連事業」の2つの報告セグメントと「その他」事業を展開しています。
■(1) 塗料関連事業
塗料の製造・販売および工事請負を主たる事業としています。具体的には、建築・構築物用塗料や防水材、航空機用塗料、土木インフラ分野向け塗料などを提供しています。また、環境対応型塗料や省エネに寄与する塗料の開発にも注力しており、塗料販売店や塗装施工店を中心とした販売ネットワークを通じて製品を提供しています。
収益は、顧客への製品販売による対価や、工事請負契約に基づく対価から得ています。製品販売は出荷時点で、工事請負は進捗度に応じて収益を認識します。運営は、日本特殊塗料のほか、ニットクメンテ、ニットク商工、梅居産業などの関係会社が行っています。
■(2) 自動車製品関連事業
自動車用防音材(制振材、吸・遮音材)、防錆塗料などの自動車部品の製造・販売を行っています。自動車メーカーとの連携強化により、部品軽量化や車室内の快適性向上などのニーズに対応する新技術・製品を提供しています。また、グローバルな生産体制を構築しています。
収益は、主に完成した製品を自動車メーカー等の顧客へ供給し、納入時点で収益を認識することで得ています。運営は、日本特殊塗料に加え、日晃工業、タカヒロ、ニットクシーケーなどの国内子会社や、UGN, Inc.(米国)、SNC Sound Proof Co., Ltd.(タイ)などの海外関係会社が行っています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、保険代理業を行っています。
収益は、損害保険の取り扱いに伴う手数料収入等から得ています。運営は、子会社であるニットク保険センターが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期にかけて、売上高は480億円から661億円へと拡大傾向にあります。経常利益も24億円から67億円へと増加しており、利益率も5.0%から10.2%へと向上しています。当期純利益についても13億円から49億円へと順調に推移しており、全体として増収増益の傾向が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 480億円 | 548億円 | 607億円 | 647億円 | 661億円 |
| 経常利益 | 24億円 | 26億円 | 31億円 | 60億円 | 67億円 |
| 利益率(%) | 5.0% | 4.8% | 5.2% | 9.2% | 10.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 13億円 | 13億円 | 21億円 | 39億円 | 49億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い、売上総利益も増加しています。売上総利益率は21.6%から21.9%へと改善しています。営業利益についても増加しており、営業利益率は6.0%から6.7%へ上昇しました。販売費及び一般管理費は微減となっており、効率的な経営が行われていることが伺えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 647億円 | 661億円 |
| 売上総利益 | 140億円 | 145億円 |
| 売上総利益率(%) | 21.6% | 21.9% |
| 営業利益 | 39億円 | 45億円 |
| 営業利益率(%) | 6.0% | 6.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が26億円(構成比25%)、研究開発費が18億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
塗料関連事業は、防水材や建築塗料の販売堅調に加え、工事関連売上が大きく伸びたことで増収増益となりました。一方、自動車製品関連事業は、中国市場での販売低迷等により減収となりましたが、原価低減活動等の推進により増益を確保しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 塗料関連事業 | 206億円 | 237億円 | 5億円 | 10億円 | 4.0% |
| 自動車製品関連事業 | 441億円 | 423億円 | 34億円 | 35億円 | 8.3% |
| その他 | 0.2億円 | 0.2億円 | 0.1億円 | 0.1億円 | 60.0% |
| 調整額 | -0.0億円 | -0.0億円 | 0.1億円 | 0.1億円 | - |
| 連結(合計) | 647億円 | 661億円 | 39億円 | 45億円 | 6.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
日本特殊塗料の当連結会計年度末の資金は、前連結会計年度末に比べ増加し、総額は〇〇億円となりました。
営業活動による資金は、主に税金等調整前当期純利益や売上債権・仕入債務の変動、利息配当金の受取、法人税等の支払いにより、〇〇億円の収入となりました。投資活動による資金は、有形及び無形固定資産の取得により、〇〇億円の支出となりました。財務活動による資金は、長期借入金の返済や配当金の支払いにより、〇〇億円の支出となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 93億円 | 31億円 |
| 投資CF | 5億円 | -12億円 |
| 財務CF | -51億円 | -20億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「卓越した技術と製品により社会に貢献する」「株主の利益を尊重し、社員の人格を大切にする」「環境と共生し、国際標準に準拠しつつ、永遠の発展を目指す」を経営理念として掲げています。
■(2) 企業文化
経営の基本方針として、「創意工夫を社是とし、独自の技術と製品をもって顧客の要望と信頼にこたえる」ことや、「世界に活躍する企業として総合開発力を結集し、新製品・新需要の開発に挑戦する」ことを重視しています。また、人材の育成・登用を図りつつ、無駄を省き高生産性・高収益を追求する姿勢を持っています。
■(3) 経営計画・目標
2026年3月期から2030年3月期までの5年間を対象とする新中期経営計画を策定し、「変革と挑戦」をテーマに掲げています。
* 創業100周年を迎える2030年3月期に売上高800億円
* ROE10.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「製品ポートフォリオの最適化」「販売機会の最大化」「生産性の抜本的改善」「技術力の革新」の4つの事業戦略を推進します。また、財務資本戦略として「総還元性向70%」を基本方針とした株主還元の強化と戦略的投資を行い、経営基盤戦略ではガバナンス強化や人的資本の充実、DX推進、環境対応戦略に注力することで、持続的な成長と企業価値向上を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な企業価値向上に不可欠な要素として人的資本を重視し、「多様な人財(材)の活躍」「人財(材)育成と『働きがい』向上」「安全で働きやすい職場づくり」をマテリアリティに定めています。性別や国籍等による差別を禁止し、多様な人材の活性化を推進するとともに、教育研修体制の整備や安全衛生活動を通じて、従業員が能力を発揮し、安全で健康的に働ける環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.9歳 | 15.6年 | 6,704,800円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.8% |
| 男性育児休業取得率 | 53.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 58.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 69.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 80.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 合弁事業等のパートナー戦略に伴うリスク
技術開発や事業運営の効率化のため、技術提携や合弁事業を行っています。各パートナーとの連携強化に努めていますが、共同活動の当事者間で方針の不一致等が生じた場合、経営成績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 大規模災害及び重度感染症等の発生・蔓延に関するリスク
大規模な地震などの災害や重度感染症の蔓延等により、生産・稼動が困難となった場合、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。事業継続計画の策定や訓練を行っていますが、首都直下型地震や新たな感染症などの想定外の事態が発生する可能性は否定できません。
■(3) 気候変動に関するリスク
地球温暖化に伴う気候変動や各国の環境政策・施策は、市場環境や顧客ニーズに影響を与え、事業戦略に大きく関わります。2050年のカーボンニュートラル実現を目指し、環境対応型製品の開発やエネルギー使用の合理化を進めていますが、その影響の内容や程度によっては経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 品質管理体制、法的規制に関するリスク
品質基準「ISO9001」認証のもと厳格な品質管理を行っていますが、全ての製品について欠陥や将来のクレームがない保証はありません。製品の欠陥による損失が保険で填補できない場合や、環境規制等の強化・新設により事業活動が制限されたりコストが増加したりした場合、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。



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