※本記事は、大日精化工業株式会社 の有価証券報告書(第122期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大日精化工業ってどんな会社?
1931年創業の総合色彩化学メーカーです。顔料や着色剤、インキ、合成樹脂などを製造し、グローバルに展開しています。
■(1) 会社概要
1931年に彩華顔料合資会社として創業し、1939年に彩華色素工業を設立、1944年に大日精化工業へ改称しました。1961年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1969年には同市場第一部へ指定替えとなりました。1970年代以降、香港、タイ、インドネシア、中国、ベトナム、インドなど海外へ積極的に進出し、グローバルな生産・販売体制を構築しています。
2025年3月31日現在の連結従業員数は3,594名、単体従業員数は1,405名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は同社従業員による持株会、第3位は資産管理業務を行う株式会社日本カストディ銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 12.17% |
| 大日精化従業員持株会 | 3.54% |
| 日本カストディ銀行 | 3.50% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は高橋 弘二氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 高橋 弘二 | 代表取締役社長最高情報セキュリティ責任者指名・報酬等委員会 委員 | 1993年同社入社。専務取締役、取締役副社長を経て2011年6月より現職。CSR・ESG推進本部や経営企画本部などを担当。 |
| 青葉 匡彦 | 代表取締役常務生産機構総括HR戦略機構総括指名・報酬等委員会 委員 | 1988年同社入社。執行役員、取締役を経て2024年6月より現職。生産機構やHR戦略機構を総括。 |
| 竹田 治 | 専務取締役事業機構総括 | 1981年同社入社。執行役員、常務執行役員、常務取締役を経て2024年6月より現職。事業機構を総括。 |
| 青柳 太洋 | 取締役技術機構総括 | 1999年同社入社。執行役員、常務執行役員を経て2024年6月より現職。技術機構を総括し、研究開発本部などを担当。 |
| 村田 修一 | 取締役 常勤監査等委員 | 1981年同社入社。内部監査室や上級専門職、監査役補佐、監査役を経て2025年6月より現職。 |
社外取締役は、中川 義章(元陸上自衛隊研究本部長・指名・報酬等委員会委員長)、長濱 晶子(弁護士)、中野 淳文(元第一化成代表取締役社長)、若林 市廊(元長瀬産業代表取締役兼常務執行役員)、五十里 秀一朗(元東京国税局調査第四部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「カラー&ファンクショナル プロダクト」、「ポリマー&コーティング マテリアル」、「グラフィック&プリンティング マテリアル」の3つの報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■カラー&ファンクショナル プロダクト
顔料、繊維用着色剤、プラスチック用着色剤、樹脂コンパウンド、顔料分散体、機能性材料などを製造・販売しています。主な顧客は、プラスチック製品メーカー、繊維メーカー、電子材料メーカーなど多岐にわたります。
収益は、これらの製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は主に大日精化工業、ハイテックケミ、DAINICHI COLOR (THAILAND),LTD.、DAICOLOR ITALY S.R.L.などが行っています。
■ポリマー&コーティング マテリアル
ウレタン樹脂、天然物由来高分子、紫外線・電子線硬化型コーティング剤などを中心に、合成樹脂及び特殊コーティング剤を製造・販売しています。自動車、家電、情報電子機器などの産業分野で使用されています。
収益は、製品の販売により顧客から受け取ります。運営は主に大日精化工業、浮間合成、大日精化(上海)化工有限公司などが行っています。
■グラフィック&プリンティング マテリアル
パッケージ用および広告出版用インキを中心に、グラビア・フレキソインキ、オフセットインキなどを製造・販売しています。食品包装、出版、広告業界などが主な顧客です。
収益は、各種インキ製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は主に大日精化工業、P.T.HI-TECH INK INDONESIAなどが行っています。
■その他
上記の報告セグメントに含まれない事業として、不動産の賃貸借や損害保険代理業などを展開しています。
収益は、不動産賃料や保険手数料などから得ています。運営は主に大日精化工業およびグループ会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は1,200億円前後で推移しており、2025年3月期は前期比増収となりました。利益面では、2023年3月期に一時落ち込みましたが、その後回復傾向にあり、特に2025年3月期は固定資産売却益の計上もあり、当期利益が大きく伸長しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | 1,385億円 | 1,219億円 | 1,220億円 | 1,198億円 | 1,248億円 |
| 経常利益 | 56億円 | 83億円 | 34億円 | 50億円 | 78億円 |
| 利益率(%) | 4.1% | 6.8% | 2.8% | 4.2% | 6.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 63億円 | 62億円 | 20億円 | 37億円 | 103億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は18.7%から20.2%へと改善しました。営業利益も前期比で増加し、営業利益率は3.8%から5.6%へと上昇しており、本業の収益性が向上していることがうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,198億円 | 1,248億円 |
| 売上総利益 | 224億円 | 252億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.7% | 20.2% |
| 営業利益 | 46億円 | 70億円 |
| 営業利益率(%) | 3.8% | 5.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が57億円(構成比31%)、運搬費が31億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントともに増収となりました。「カラー&ファンクショナル プロダクト」は海外でのコンパウンド販売などが寄与しました。「ポリマー&コーティング マテリアル」は自動車向けや衣料品向けが好調でした。「グラフィック&プリンティング マテリアル」は価格改定などが進み増収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| カラー&ファンクショナル プロダクト | 655億円 | 673億円 |
| ポリマー&コーティング マテリアル | 239億円 | 253億円 |
| グラフィック&プリンティング マテリアル | 303億円 | 320億円 |
| その他 | 0.7億円 | 0.7億円 |
| 連結(合計) | 1,198億円 | 1,248億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
大日精化工業は、借入金の返済や配当金の支払いといった財務活動により資金を使用しました。営業活動では、退職給付に係る負債の減少が資金減少要因となった一方、利益や減価償却費の計上が資金増加に寄与しました。投資活動では、有形固定資産の取得による支出があったものの、売却による収入がそれを上回り、資金が増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 90億円 | 42億円 |
| 投資CF | -14億円 | 14億円 |
| 財務CF | -102億円 | -70億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業者の遺志を引き継ぎ、「自分の生活が好きな色彩によって包まれたいと思うのが私たちの念願」という思いのもと、世界中の「もっと便利に、もっと安全に、もっと自由に彩りたい」という願いをかなえることを使命としています。「人に興味を持とう」「新しいことに興味を持とう」「未来に興味を持とう」という企業理念を掲げています。
■(2) 企業文化
1968年に制定された社是「必達」を現在も遵守しています。「仕事は必ず目標を立てこれを必達しよう」「正しい製品知識を身につけ製品普及のチャンスを積極的に求めよう」など5つの指針からなり、仕事への誇りと責任感、社会貢献への意識を醸成する文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
2025年3月期を初年度とする3か年中期経営計画「明日への変革 2027」において、長期的な経営目標としてROE 9%、ROA 5%を掲げています。また、本中期経営計画の最終年度である2027年3月期の目標として、ROE 5%以上を目指しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
コア技術の深化と新規技術の導入により、「機能性マテリアル分野のエクセレントカンパニー」を目指しています。新規発展分野として「IT・エレクトロニクス 機能性材料」「ライフサイエンス・パーソナルケア」を、継続発展分野として「モビリティ」「環境配慮型パッケージング」を設定し、経営資源を集中投下します。
* 技術主導による新規開発製品売上高:2027年3月期までに2024年3月期比26億円増
* 海外事業売上高:2027年3月期までに2024年3月期比36億円増
* サステナビリティ貢献製品売上高:2027年3月期までに2024年3月期比30億円増
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人材」ではなく「人財」と表現し、新たな価値創出には人の力が不可欠と考えています。「人財育成方針」や「社内環境整備方針」に基づき、従業員の多様性を尊重しつつ、企業と人財が互いに高め合うビジョンを共有しています。また、エンゲージメント向上を目指したHR戦略を推進し、新たな人事制度の導入などを行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.2歳 | 17.1年 | 7,307,707円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.9% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.2% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 64.7% |
※「男性労働者の育児休業取得率」の「-」は育児休業取得の対象となる男性労働者がいないことを示しております。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用者に占める女性の比率(37.9%)、有給休暇取得率(74.8%)、国内の女性・外国人・中途採用者の管理職比率(1.6ポイント向上)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 需要構造変化への対応
車両、情報電子、パッケージ、印刷など幅広い業界向けに事業を展開していますが、個々の業界や特定地域での大きな需要変動が経営成績に影響を与える可能性があります。特に、車両生産台数の減少や液晶ディスプレイ市場の変化、印刷市場の縮小などが影響する可能性があります。これに対し、在庫管理の適正化や成長市場への注力、新製品開発などを進めています。
■(2) 原材料調達リスク、原材料及びエネルギー価格の変動リスク
主力原材料である石油化学誘導品やエネルギー価格の変動は、収益に影響を与える可能性があります。また、地政学的な要因などによる調達不安のリスクもあります。これに対し、代替購入先の確保や、価格転嫁に向けたお客様への説明などの対策を講じています。
■(3) 海外事業活動に関するリスク
海外生産拠点は、現地の政治体制、法令・規制の変更、経済基盤、自然災害などのリスクに晒されています。特に地政学的な変動やサプライチェーンの混乱は、生産活動に支障をきたし経営成績に影響を及ぼす可能性があります。特定国への過度な投資を避け、リスク分散を図る方針です。



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