JX金属 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

JX金属 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

JX金属は東京証券取引所プライム市場に上場し、半導体用スパッタリングターゲットや圧延銅箔等の先端材料の開発・製造・販売を展開しています。直近の業績ではAI関連需要の拡大や銅価上昇により増収増益となり、売上高8,846億円、営業利益1,750億円を計上するなど、力強い利益成長を遂げています。


※本記事は、JX金属株式会社の有価証券報告書(第24期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. JX金属ってどんな会社?


半導体・情報通信分野に欠かせない先端材料の開発・製造や、金属の資源開発・製錬・リサイクルを行う企業です。

(1) 会社概要


1905年に日立鉱山を開業して創業し、1929年に日本鉱業を設立しました。その後、1992年に(旧)日鉱金属を設立し、2016年にJX金属へ商号変更しています。直近では2025年に東京証券取引所プライム市場への上場を果たし、先端材料のグローバルリーダーとして成長を続けています。

連結従業員数は10,450名、単体従業員数は3,250名です。筆頭株主は事業会社のENEOSホールディングスであり、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
ENEOSホールディングス 42.38%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.02%
日本カストディ銀行(信託口) 2.51%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長社長執行役員は林陽一が務めています。社外取締役比率は54.5%です。

氏名 役職 主な経歴
林陽一 代表取締役社長社長執行役員 1988年日本鉱業入社。同社執行役員経営企画部長等を経て、2023年より現職。
村山誠一 代表取締役会長 1980年日本鉱業入社。同社代表取締役社長等を経て、2023年より現職。
菅原静郎 取締役副社長執行役員 1990年日本鉱業入社。同社取締役常務執行役員等を経て、2026年より現職。
太内義明 取締役副社長執行役員 1984年共同石油入社。ENEOSホールディングス取締役等を経て、2026年より現職。
黒岩源洋 取締役常勤監査等委員 1985年日本鉱業入社。同社常務執行役員等を経て、2024年より現職。


社外取締役は、所千晴(早稲田大学教授)、伊藤元重(東京大学名誉教授)、佐久間総一郎(元新日本製鐵副社長)、二宮雅也(元損害保険ジャパン社長)、川口里香(奥川法律事務所弁護士)、塩田智夫(ENEOSホールディングス取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「半導体材料」、「情報通信材料」、「基礎材料」および「その他」事業を展開しています。

半導体材料


半導体や磁性材料向けのスパッタリングターゲット、化合物半導体・結晶材料などの開発・製造・販売を行っています。高純度化技術等を活かし、最先端IT機器等に用いられる材料を提供しています。

顧客からの販売代金などを収益源としています。運営はJX金属のほか、JX金属商事、東京電解などのグループ各社が行っています。

情報通信材料


スマートフォンやモビリティのフレキシブル回路基板に用いられる圧延銅箔や、チタン銅、超微粉ニッケル、電線などの開発・製造・販売を行っています。

顧客からの販売代金などを収益源としています。運営はJX金属のほか、東邦チタニウムやタツタ電線などのグループ各社が行っています。

基礎材料


銅精鉱や電気銅、貴金属などの資源開発、製錬、リサイクル事業を展開しています。国内外の鉱山への参画や、廃家電等からのリサイクル原料の集荷・処理による金属資源の安定供給を行っています。

顧客からの販売代金や受託製錬による加工料などを収益源としています。運営はJX金属のほか、JX金属製錬やパンパシフィック・カッパーなどが行っています。

その他


報告セグメントに含まれないその他の事業を展開しています。

事業からの収益を基盤としており、運営はグループ各社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近4期間の業績を見ると、売上収益は第23期に減少したものの第24期に再び増加に転じ、8,846億円を計上しています。税引前利益は順調に拡大を続け、直近では1,691億円に達し、利益率も19.1%へと大幅に向上するなど、高収益体質への転換が顕著に表れています。

項目 第21期 第22期 第23期 第24期
売上収益 16,385億円 15,123億円 7,149億円 8,846億円
税引前利益 633億円 787億円 1,075億円 1,691億円
利益率(%) 3.9% 5.2% 15.0% 19.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 369億円 1,026億円 683億円 1,046億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を分析すると、売上収益の増加に伴い売上総利益も拡大しており、売上総利益率は20%台で安定しています。営業利益も大幅に増加し、利益率が大きく向上していることから、付加価値の高い製品の販売増や収益性改善の取り組みが成果を上げていることが伺えます。

項目 第23期 第24期
売上高 7,149億円 8,846億円
売上総利益 841億円 1,059億円
売上総利益率(%) 11.8% 12.0%
営業利益 1,125億円 1,750億円
営業利益率(%) 15.7% 19.8%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が131億円(構成比24.7%)、給料手当が65億円(同12.2%)を占めています。

(3) セグメント収益


各セグメントともに売上・利益を伸ばしており、特に基礎材料は銅価等の上昇により大幅な増益となっています。半導体材料や情報通信材料も、AI関連需要の拡大などを背景とした主要製品の増販により堅調に推移しています。

区分 売上(第23期) 売上(第24期) 利益(第23期) 利益(第24期) 利益率
半導体材料 1,480億円 1,772億円 267億円 395億円 22.3%
情報通信材料 2,651億円 3,187億円 251億円 315億円 9.9%
基礎材料 3,065億円 4,079億円 745億円 1,395億円 34.2%
その他 89億円 98億円 -16億円 18億円 18.6%
調整額 -136億円 -290億円 -122億円 -373億円 -
連結(合計) 7,149億円 8,846億円 1,125億円 1,750億円 19.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.0%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「装置産業型企業」から「技術立脚型企業」への転身を基本方針としています。激化する国際競争の中においても高収益体質を実現し、半導体材料や情報通信材料のグローバルリーダーとして、先端材料を通じて持続可能な社会の実現に貢献することを使命として掲げています。

(2) 企業文化


同社は、事業活動を通じて社会に提供する価値の考え方を示す「JX金属グループフィロソフィー」を策定しています。世界的に不確実性や複雑性が高まる環境下においても、自由な発想に基づく価値創出を追求し、人々の暮らしをより良いものにしていくという姿勢を重視し、ステークホルダーとの協調を図っています。

(3) 経営計画・目標


2040年を見据えた長期ビジョンを推進しており、フォーカス事業において先端材料分野での技術の差別化や市場創造を通じた市場成長以上の利益成長を目指しています。また、サステナビリティに関する指標として、2050年度にCO2自社排出量のネットゼロを目指し、2030年度までに50%削減する中間目標を掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


半導体材料と情報通信材料を成長戦略のコアであるフォーカス事業と位置づけ、データセンターやAIサーバ向けの需要拡大を捕捉する生産体制の増強に注力しています。また、ベース事業である基礎材料セグメントにおいて、銅やレアメタルの安定供給を担うとともに、グリーンハイブリッド製錬の高度化などサーキュラーエコノミーの実現を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人的資本を最重要の経営資本の一つと位置づけ、経営戦略と連動した人材戦略を推進しています。「働く人が、充実感を得られる場所に。」という人事ポリシーを掲げ、自律的キャリア形成の支援やDX人材の育成、従業員エンゲージメントの向上、多様な人材が活躍できる職場環境の整備などに総合的に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
第24期 41.5歳 12.9年 8,308,817円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 68.5%
男女賃金差異(全労働者) 71.9%
男女賃金差異(正規雇用) 72.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 64.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、年休取得率(85.8%)、障がい者雇用率(2.87%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) フォーカス事業における競争優位性の喪失リスク


半導体材料や情報通信材料において、顧客要望に応えられずシェアや販売マージンを喪失する可能性があります。代替製品の登場等により現在の製品群が競争優位性を失った場合、業績に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 中長期事業目標の未達リスク


半導体市場等の成長鈍化や急激な円高の進行、銅価格の変動などにより、事業戦略の前提が想定通りに進まない可能性があります。構造改革や設備投資の効果が実現しない場合、目標達成が困難となるリスクがあります。

(3) 市場環境の変化に関するリスク


世界経済の動向や最終製品の需要増減により、半導体市場等の需給バランスが崩れる可能性があります。また、製品販売や原材料購入の多くが外貨建てで行われており、為替や金属価格の急激な変動が業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(4) M&Aや事業提携に関するリスク


事業の成長を加速させるためのM&Aや事業提携に際し、事前審査にも関わらず市場環境の著しい変化等により計画通りに展開できない場合、投下資金の未回収等が生じ、業績および財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。