加藤製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

加藤製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、建設用クレーンや油圧ショベル等の製造販売を主力事業としています。当連結会計年度の業績は、売上高529億円(前期比92.1%)の減収となり、親会社株主に帰属する当期純損失は60億円を計上しました。中国事業の撤退に伴う特別損失等が影響し、大幅な減益となっています。


#記事タイトル:加藤製作所転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

※本記事は、株式会社加藤製作所 の有価証券報告書(第126期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 加藤製作所ってどんな会社?


建設用クレーンや油圧ショベル等の建設機械を製造・販売するメーカーで、ニッチな建機分野にも強みを持ちます。

(1) 会社概要


1935年に個人事業を改組し設立され、1939年にモビールクレーンの生産を開始しました。1962年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1970年には同市場第一部へ昇格しました。2016年にはIHI建機(現・株式会社KATO HICOM)を子会社化し、その後吸収合併するなど事業基盤を拡大しています。

同グループの連結従業員数は976名、単体では797名です。筆頭株主は保険業を営む第一生命保険株式会社で、第2位は個人株主の清原達郎氏です。第3位には株式会社りそな銀行が名を連ねており、機関投資家や金融機関が主要株主となっています。

氏名 持株比率
第一生命保険 5.56%
清原 達郎 4.90%
りそな銀行 4.89%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名、計9名で構成され、女性役員比率は11.0%です。代表取締役社長は加藤公康氏が務めています。取締役9名のうち4名が社外取締役であり、社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
加 藤 公 康 代表取締役社長 1991年入社。技術本部本部長、資材本部長などを歴任し、2004年6月より現職。
石 居 孝 嗣 取締役専務執行役員 元石川島播磨重工業(現IHI)。IHI建機取締役、同社海外統括本部長などを経て、2024年6月より現職。
渡 邊 孝 雄 取締役常務執行役員 1984年入社。営業本部建機営業部長、国内営業本部長などを経て、2023年6月より現職。
近 藤 康 博 取締役執行役員 1984年入社。設計第1部長、開発本部長などを経て、2023年6月より現職。
川 上 利 明 取締役(常勤監査等委員) 1981年入社。総務人事部長、経営企画部長などを経て、2022年6月より現職。


社外取締役は、狼嘉彰(東京科学大学名誉教授)、國原智恵(社会福祉法人希望の会理事長)、今井博紀(多田総合法律事務所弁護士)、座間眞一郎(学校法人玉川学園理事長付)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」、「中国」、「欧州」、「その他」事業を展開しています。

(1) 日本


同社が建設用クレーン、油圧ショベル等、その他の製品の製造および販売を行っています。国内市場向けに加え、海外向け製品の輸出拠点としての役割も担っています。顧客は建設業者や建機レンタル業者が中心です。

製品販売による代金およびメンテナンス部品の販売等が主な収益源です。運営は主に株式会社加藤製作所が行っています。

(2) 中国


中国市場において、油圧ショベル等の建設機械の製造および販売を行っています。現地のインフラ開発や不動産建設需要に対応する製品を提供してきましたが、市場環境の変化により事業再編が進められています。

製品の販売代金が主な収益源です。運営は、加藤(中国)工程机械有限公司および加藤中駿(厦門)建機有限公司が行ってきましたが、これらの連結子会社については事業環境の回復が見込めないことから解散・清算または譲渡の方針が決定されています。

(3) 欧州


欧州市場において、ミニショベルや建設用クレーン等の製造および販売を行っています。地域の市場ニーズに合わせた製品展開を行い、建設・土木事業者等に製品を提供しています。

製品販売による代金が主な収益源です。運営は、イタリアのKATO IMER S.p.A.およびオランダのKATO EUROPE B.V.が行っています。

(4) その他


タイ等のその他の海外地域において、建設用クレーン等の製造および販売を行っています。東南アジアや北米市場等の需要に対応しています。

製品販売による代金が主な収益源です。運営は、タイのKATO WORKS(THAILAND)CO.,LTD.や米国の関連会社等が関与しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は600億円前後で推移していましたが、直近では529億円まで減少しています。利益面では、経常利益が黒字を確保しているものの、当期は大幅な最終赤字を計上しました。これは主に中国事業撤退に伴う特別損失によるものです。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 585億円 635億円 575億円 575億円 529億円
経常利益 -19億円 -69億円 19億円 26億円 14億円
利益率(%) -3.3% -10.9% 3.2% 4.5% 2.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -49億円 -61億円 37億円 61億円 -46億円

(2) 損益計算書


売上高は減少傾向にあり、売上総利益率も低下しました。販売費及び一般管理費は抑制されていますが、売上減少の影響をカバーしきれず、営業利益は縮小しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 575億円 529億円
売上総利益 105億円 86億円
売上総利益率(%) 18.3% 16.2%
営業利益 17億円 9億円
営業利益率(%) 2.9% 1.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が25億円(構成比31.8%)、運賃が7億円(同9.1%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは売上が減少したものの利益を確保しましたが、中国セグメントは不動産市況の悪化等により損失を計上しました。欧州セグメントも需要低迷により赤字となっています。全体として海外事業の苦戦が目立ちます。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 512億円 467億円 20億円 6億円 1.3%
中国 23億円 27億円 -12億円 -1億円 -2.3%
欧州 56億円 48億円 1億円 -0.1億円 -0.2%
その他 - 11億円 -1億円 -0.1億円 -0.5%
連結(合計) 575億円 529億円 17億円 9億円 1.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

加藤製作所は、財務活動による資金調達を積極的に行い、事業運営に必要な資金を確保しています。

当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・フローは減少しましたが、これは主に売上債権の減少や子会社整理損の増加があった一方で、棚卸資産の増加や税金等調整前当期純損失などが影響しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出の減少により、減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入や短期借入金の増加があったものの、社債償還や配当金の支払い、長期借入金の返済などにより、増加となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -7億円 -133億円
投資CF 16億円 -9億円
財務CF 14億円 66億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「優秀な製品による社会への貢献」を経営理念として掲げています。法の下に社業を忠実に行い、高性能・高品質の製品を開発して国内外の顧客に供給することで、豊かな社会作りに貢献するとともに、会社の限りない繁栄を実現することを基本方針としています。

(2) 企業文化


「スリムで骨太体質への変革」といったテーマを掲げ、厳しい事業環境下でも収益の安定化と成長を目指す姿勢を持っています。創業以来のパイオニア精神を抱き、新たなものを生み出し挑戦し続ける人材や、社会の要求を的確に捉え機敏に対応する人材の育成を目指しています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期を初年度とする3ヵ年の中期経営計画(2025~2027)を策定しました。「飛躍、そして次の時代へ」をテーマに、以下の数値目標を掲げています。

* 2028年3月期 売上高:790億円
* 2028年3月期 営業利益:36億円
* 2028年3月期 営業利益率:4.5%
* 2028年3月期 ROE:8.0%

(4) 成長戦略と重点施策


前中計での合理化優先から、業績伸長に向けた事業力強化・拡大路線へ軸足を移します。企業価値の向上、成長戦略の推進と有効投資、収益性の更なる向上、サステナビリティ経営の実践を基本方針としています。

* 成長分野への戦略的投資(インド事業等)
* 資本コストを意識した経営の実践とPBR改善施策
* 前中計施策の深化による収益性向上
* 環境配慮型製品の開発推進

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を経営の最重要資源の一つと捉え、「創業以来のパイオニア精神を抱き新たなものを生み出し挑戦し続ける人材」「社会の要求を的確に捉え機敏に対応し続ける人材」の育成を目指しています。性別や国籍等を問わない採用活動を行い、女性管理職比率の改善や外国人エンジニアの採用にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.0歳 14.0年 5,920,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 1.6%
男性育児休業取得率 30.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.6%
男女賃金差異(正規) 73.7%
男女賃金差異(非正規) 68.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済・市場環境の変動


建設機械の需要はインフラ投資や資源開発、不動産建設等の景気循環の影響を受けやすい特性があります。各国の公共投資やエネルギー価格、地政学リスク、通貨変動等が製品需要に影響を与え、世界的な経済悪化が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 資金調達と財務制限条項


資金調達においてシンジケートローンやコミットメントライン契約を締結しており、財務制限条項が付されています。特定の条項に抵触し返済請求を受けた場合、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。なお、当期末において一部条項に抵触しましたが、金融機関より期限の利益喪失の請求権を行使しない旨の同意を得ています。

(3) 為替レートの変動


海外向け販売や海外からの資材調達を行っているため、為替レートの変動が業績に影響を与える可能性があります。円建て取引や為替予約取引等によりリスク回避に努めていますが、予期せぬ変動が業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 地政学リスク


世界各地で事業展開しているため、中東情勢やウクライナ侵攻、各国の関税政策などの地政学リスクの影響を受ける可能性があります。エネルギーや原材料価格の高騰、紛争発生等が長期化した場合、販売や調達計画に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。