※本記事は、株式会社加藤製作所の有価証券報告書(第127期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 加藤製作所ってどんな会社?
建設用クレーンや油圧ショベルなどの建設機械をグローバルに展開する総合建設機械メーカーです。
■(1) 会社概要
1935年に個人事業を改組し、東京品川に設立されました。1939年にモビールクレーンの生産を開始し、建設機械メーカーとしての基盤を築きました。1970年に東証一部へ昇格し、近年では2016年にIHI建機を子会社化、2024年には多摩工業を子会社化するなど、事業規模の拡大を推進しています。
同社グループは連結従業員数932名、単体825名の体制で事業を展開しています。大株主の構成を見ると、筆頭株主はりそな銀行で、第2位は第一生命保険、第3位は資産管理業務を行う日本カストディ銀行(信託口)となっており、金融機関が上位を占めていることが特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| りそな銀行 | 4.95% |
| 第一生命保険 | 4.23% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.38% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は加藤公康氏が務めています。社外取締役は4名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 加藤公康 | 代表取締役社長 | 1991年4月同社入社、技術本部長や資材本部長などを歴任し、2004年6月同社代表取締役社長より現職。 |
| 石居孝嗣 | 取締役専務執行役員 | 1977年4月石川島播磨重工業入社、IHI建機取締役を経て、2024年6月同社取締役・専務執行役員より現職。 |
| 渡邊孝雄 | 取締役常務執行役員 | 1984年4月同社入社、営業本部建機営業部長などを経て、2023年6月同社取締役・常務執行役員より現職。 |
| 近藤康博 | 取締役執行役員 | 1984年4月同社入社、設計第1部長などを経て、2023年6月同社取締役・執行役員より現職。 |
社外取締役は、國原智恵(全国認定こども園協会副代表理事)、今井博紀(多田総合法律事務所弁護士)、座間眞一郎(学校法人玉川学園理事長付)、木元有香(木元有香法律事務所代表弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「欧州」および「その他」事業を展開しています。
■日本
国内市場向けおよび一部海外市場向けの建設用クレーンや油圧ショベル等の製造・販売を行っており、インフラ整備や資源開発、建設現場などで使用される製品を幅広い顧客に提供しています。
製品の販売収益を主な収益源としており、主要製品の完成・納入時に収益を計上しています。また補修用部品の販売収益も得ており、事業の運営は同社が主体となって行っています。
■欧州
欧州市場のニーズに合わせたミニショベル等の小型建設機械や建設用クレーン等の製品および部品の製造・販売を展開し、現地の建設・土木業者などを顧客としています。
製品および部品の販売を通じた収益が柱となっています。事業の運営は、イタリアを拠点とするKATO Construction Machinery Europe S.p.A.およびオランダを拠点とするKATO EUROPE B.V.が行っています。
■その他
東南アジアや北米などの海外諸地域において、建設用クレーンをはじめとする製品および部品の製造・販売活動を行い、グローバルな市場での需要に対応しています。
各地域の市場ニーズに合致した製品販売や部品提供による収益モデルを構築しています。事業の運営は、タイに所在するKATO WORKS(THAILAND)CO.,LTD.などの海外子会社や関連会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は500億円台から600億円台で推移していますが、経常利益は黒字と赤字を繰り返しています。当期は大型ラフテレーンクレーンの販売再開等で増収となったものの、資材価格や物流費の上昇による原価率の悪化などが響き、経常利益および当期利益ともに赤字となりました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 635億円 | 575億円 | 575億円 | 529億円 | 563億円 |
| 経常利益 | -69億円 | 19億円 | 26億円 | 14億円 | -18億円 |
| 利益率(%) | -10.9% | 3.2% | 4.5% | 2.6% | -3.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -61億円 | 37億円 | 61億円 | -5億円 | -0.1億円 |
■(2) 損益計算書
当期は売上高が増加した一方で、売上総利益は大幅に減少しています。製造原価率の上昇や長期在庫に対する評価損の計上が影響し、営業利益も赤字に転落するなど、収益性の改善が急務となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 529億円 | 563億円 |
| 売上総利益 | 86億円 | 58億円 |
| 売上総利益率(%) | 16.2% | 10.3% |
| 営業利益 | 9億円 | -23億円 |
| 営業利益率(%) | 1.7% | -4.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が24億円(構成比29%)、運賃が7億円(同9%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別に見ると、主力市場である日本は大型クレーンの販売再開等により増収となりました。欧州市場は需要減少の影響を受けて減収となり、その他市場も中国事業の見直しなどに伴い大幅な減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 454億円 | 508億円 |
| 欧州 | 48億円 | 44億円 |
| その他 | 27億円 | 11億円 |
| 連結(合計) | 529億円 | 563億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業が低迷し、事業の見直しが迫られる状況と判定されます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -133億円 | -3億円 |
| 投資CF | -9億円 | 20億円 |
| 財務CF | 66億円 | -59億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.0%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「優秀な製品による社会への貢献」を経営理念に掲げています。法の下に社業を忠実に行い、職務を通じて社会の進歩と発展に寄与することが責任遂行の基本と考え、高性能・高品質の製品を開発し、国内外の顧客に供給することによって豊かな社会づくりに貢献するとともに会社の限りない繁栄を実現することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、長きにわたり事業を通じて蓄積してきた技術と経験を活かしたモノづくりを大切にしています。創業以来の「パイオニア精神」を基盤として、新たな価値を創造し挑戦し続ける文化を重視し、社会づくりの基盤たる建設機械メーカーとして絶やすことなく付加価値の高い製品を製造・販売していくことを責務として行動しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年3月期を初年度とする3ヵ年の中期経営計画(2025-2027)を推進しており、最終年度の2028年3月期には以下の数値目標を掲げています。
・売上高 790億円
・営業利益 36億円
・営業利益率 4.5%
・ROE 8.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画のテーマ「『飛躍、そして次の時代へ』~Leap & To The Next Era~」のもと、企業価値の向上や成長分野への戦略的投資、収益性のさらなる向上、サステナビリティ経営の実践を推進しています。国内では在庫水準の早期適正化と強固な収益基盤の確立、海外ではインド事業の早期収益化や北米の販売網強化を優先課題として取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を経営における最重要資源の一つと捉え、「創業以来のパイオニア精神を抱き新たなものを生み出し挑戦し続ける人材」や「社会の要求を的確に捉え機敏に対応し続ける人材」の育成を目指しています。性別や国籍にとらわれない多様な人材の確保を進め、技術系やグローバル人材の採用を強化し、社員の能力を最大限発揮できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.9歳 | 13.9年 | 60,010,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.5% |
| 男性育児休業取得率 | 64.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 75.4% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 70.6% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」などのセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒3年間定着率(90%以上)、従業員離職率(5.0%以内)、中途採用者の管理職比率(約31%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設機械市場の需要と経済環境の変動
同社グループが扱う建設機械等の需要は、インフラ整備等の公共投資や資源開発、不動産の建設等に使用されることから景気循環の影響を受けやすい状況にあります。各国のインフラ投資や民間設備投資、地域紛争の影響による経済安全保障や通貨変動などの要因が製品需要を変動させ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 金融政策による資金調達環境の悪化
同社グループは銀行借入やコミットメントライン契約等により必要資金を調達していますが、金融政策の変動により調達金利の上昇や借換条件の悪化が生じた場合、資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。また一部の借入金に付された財務制限条項に抵触した場合、業績や財務状況に悪影響を与えるリスクがあります。
■(3) 輸出入取引における為替レートの変動
同社グループは、海外向け製品の販売や海外からの資材調達を実施しているため、輸出入において為替レートの変動が業績に影響を及ぼすリスクがあります。この変動リスクを回避するため、円建てによる輸出取引に加え、外貨建債権の為替予約取引を行うなど、為替変動による影響を最小限に抑える対策を講じています。
■(4) グローバル展開に伴う地政学リスク
海外販路の拡大を図るため世界各地で生産・販売を展開しており、中東情勢の緊迫化やロシア・ウクライナ情勢の長期化、各国の制裁措置、海上物流の混乱といった地政学リスクに直面しています。原油・天然ガス等の供給制約や主要航路の寸断が発生した場合、生産・販売・部品調達に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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