ジャノメ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ジャノメ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する家庭用ミシンのリーディングカンパニーです。主要事業は家庭用機器事業(ミシン等)と産業機器事業(産業用ロボット等)です。2025年3月期の連結業績は、売上高が微減となったものの、営業利益、経常利益、当期純利益はいずれも前期を上回り、増益を達成しました。


※本記事は、株式会社ジャノメ の有価証券報告書(第99期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ジャノメってどんな会社?


家庭用ミシンの製造販売を主力とし、その技術を応用した産業用ロボット等の産業機器事業も展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1921年にパイン裁縫機械製作所として創設され、1954年に蛇の目ミシン工業へ商号変更しました。1960年の米国ミシン会社買収を皮切りに、英国、台湾、オーストラリア等へ進出しグローバル化を推進しています。2002年には産業機器事業の一部を分社化しジャノメダイカストを設立。2021年の創業100周年を機に、現在の商号へ変更しました。

2025年3月31日現在、連結従業員数は2,388名、単体では416名体制です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は投資会社のMM Investments、第3位は大栄不動産です。大栄不動産は同社の主要な取引先(特定関係事業者)であり、同社出身の社外取締役も在籍するなど関係の深い事業会社です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(株)(信託口) 11.64%
MM Investments 8.57%
大栄不動産 8.48%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.0%です。代表取締役社長執行役員は齋藤真氏が務めています。社外取締役比率は約55%です。

氏名 役職 主な経歴
齋藤 真 代表取締役社長執行役員、内部監査室担当、産業機器営業本部担当 1978年4月同社入社。常務執行役員、取締役専務執行役員などを経て、2019年6月より現職。
大島 毅之 取締役副社長執行役員、家庭用機器国際営業本部担当、家庭用機器国内営業本部担当、㈱ジャノメクレディア取締役会長 1987年4月同社入社。執行役員、常務執行役員などを経て、2024年4月より現職。
土井 仁 取締役専務執行役員、企画本部長、管理本部長 1985年4月埼玉銀行(現りそな銀行)入行。埼玉りそな銀行執行役員を経て、2020年4月同社入社。2021年4月より現職。
保坂 幸夫 取締役専務執行役員、生産管理本部担当、研究開発本部長、ジャノメ台湾㈱董事長 1985年4月同社入社。執行役員、常務執行役員、研究開発本部長などを経て、2023年4月より現職。
先槻 光弘 取締役(常勤監査等委員) 1978年4月埼玉銀行(現りそな銀行)入行。2005年4月同社入社。常務執行役員、取締役専務執行役員などを経て、2020年6月より現職。


社外取締役は、中島文明(元SWCC社長)、田中恭代(元旭化成アビリティ社長)、保坂美江子(PeA法律事務所代表)、嶋田両児(公認会計士)、住田守(元大栄不動産取締役)、倉橋希美(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「家庭用機器事業」、「産業機器事業」、「IT関連事業」および「その他」事業を展開しています。

家庭用機器事業


家庭用ミシンを中心に、刺しゅう機ならびに関連ソフトの開発・製造・販売を行っています。主な顧客は国内外の一般消費者や販売店です。

収益は、製品の販売代金として顧客から受領します。開発・製造は主に同社およびジャノメ台湾、ジャノメタイランドが担い、販売は同社およびジャノメアメリカ、ジャノメUK、ジャノメオーストラリア等の海外子会社が行っています。

産業機器事業


「エレクトロプレス(サーボプレス)」や「卓上ロボット」などの産業用機器、およびダイカスト鋳造品等の開発・製造・販売を行っています。これらは工場等の生産現場で使用されます。

収益は、産業機器や部品の販売代金として顧客から受領します。産業機器の開発・製造・販売は同社および一部海外子会社が、ダイカスト製品の製造・販売はジャノメダイカストおよびジャノメダイカストタイランドが行っています。

IT関連事業


ITソフトウェアの開発や情報処理サービスの提供を行っています。

収益は、ソフトウェア開発費用や情報処理サービス料として顧客から受領します。運営はジャノメクレディアが行っています。

その他事業


不動産賃貸事業を行っています。

収益は、保有する不動産の賃料としてテナントから受領します。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2021年3月期をピークに減少傾向にありましたが、直近期では横ばいとなっています。利益面では、2023年3月期に大きく落ち込みましたが、その後は回復基調にあり、直近期である2025年3月期には経常利益、当期純利益ともに前期比で増加しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 438億円 429億円 386億円 365億円 363億円
経常利益 50億円 38億円 24億円 18億円 23億円
利益率(%) 11.5% 8.9% 6.2% 4.8% 6.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 16億円 31億円 13億円 17億円 14億円

(2) 損益計算書


売上高はほぼ横ばいですが、売上原価の減少により売上総利益および売上総利益率は改善しています。営業利益および営業利益率も前期と比較して上昇しており、本業の収益性が向上していることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 365億円 363億円
売上総利益 142億円 150億円
売上総利益率(%) 38.8% 41.4%
営業利益 17億円 22億円
営業利益率(%) 4.7% 6.1%


当期の販売費及び一般管理費のうち、給料及び賞与が19億円(構成比15%)、研究費が14億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


家庭用機器事業は、海外での中・高級機種販売や国内での機種構成見直しにより増収となりました。一方、産業機器事業は世界的な設備投資の遅延等の影響で減収となりました。IT関連事業も減収となっていますが、全体としては家庭用機器事業の伸びが下支えする形となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
家庭用機器 277億円 288億円
産業機器 58億円 48億円
IT関連 28億円 25億円
その他 2億円 2億円
調整額 - -
連結(合計) 365億円 363億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

ジャノメのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。

営業活動によるキャッシュ・フローは、本業で生み出した利益や減価償却費の計上などにより、資金が増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や資産売却の状況を反映し、資金が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の増減や配当金の支払い、自社株買いなどにより、資金が大きく減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 21億円 26億円
投資CF 2億円 -4億円
財務CF -24億円 -29億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「常に高品質で価値ある商品とサービスの提供を通じて社会・文化の向上に貢献する」ことを経営の基本方針としています。各ステークホルダーと健全で良好な関係を維持しつつ、適正で効率的な経営に努めるとともに、外部環境の変化に対応した強固な収益体質の構築を目指しています。

(2) 企業文化


創業以来培ってきた「信用」を強みとし、それを支える製品の「品質」への評価を重視する文化があります。「品質のジャノメ」として世界から高い評価を得ており、現状に満足することなく品質の維持・向上に努める姿勢を持っています。また、法令遵守のもとでステークホルダーとの良好な関係構築を重んじています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2026年3月期から2028年3月期までの中期経営計画「Move! 2027」において、以下の目標数値を掲げています。

* 売上高:435億円
* 営業利益率:9.2%
* ROE:8.1%

(4) 成長戦略と重点施策


新中期経営計画「Move! 2027」では、前計画での課題を踏まえ、利益成長を目指します。家庭用機器事業では成熟市場でのブランド強化と成長市場でのシェア拡大を、産業機器事業ではインド・中国への注力と高付加価値製品の販売強化を推進します。また、IT関連事業でのサービス拡充とシナジー創出、これらを支える組織体制の強化に取り組みます。

* 資本効率の向上によりROE8%を達成することを目標

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人こそが最大の経営資源」との理念のもと、人的資本価値の向上を目指しています。ポテンシャル重視の新卒採用や多様な経験を持つ中途採用、グローバル人材の活用を進めています。また、働き方改革やダイバーシティ推進を通じて、従業員の働きがい向上と事業推進力の強化の好循環を創出する方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.9歳 14.1年 6,328,508円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 15.8%
男性労働者の育児休業取得率 50.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 83.1%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 86.4%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 78.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 為替変動がもたらす影響について


連結売上高に占める海外売上高比率が約70%であり、多くの取引が外貨建てで行われています。為替予約等でリスク軽減を図っていますが、為替相場の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 仕入れコストの上昇について


グローバル調達によりコスト低減に努めていますが、鉄、アルミニウム、銅、プラスチック(樹脂)などの原材料価格が上昇した場合、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) カントリーリスクについて


世界各地で事業展開しているため、各国の政治体制や法規制の変更、経済変動、戦争・テロ等の発生がリスクとなります。特にウクライナ情勢の長期化や中東情勢の緊迫化等は、販売減少や工場稼働率低下を招き、業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。