※本記事は、NTN株式会社 の有価証券報告書(第126期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. NTNってどんな会社?
ベアリング(軸受)とドライブシャフト等の製造販売を行う大手精密機器メーカーです。世界各地に拠点を展開しています。
■(1) 会社概要
1918年に西園鉄工所でボールベアリングの研究製作を開始し創業。1937年に東洋ベアリング製造へ商号変更し、1949年に株式上場しました。1989年に現在のNTNへ商号変更し、2008年にはフランスのSNR社を子会社化するなどグローバル展開を加速。2019年にはガバナンス強化のため指名委員会等設置会社へ移行しました。
連結従業員数は21,996名、単体では5,581名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行です。第3位は生命保険会社となっており、上位株主は主に機関投資家や金融機関で構成されています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 16.84% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.94% |
| 明治安田生命保険 | 4.01% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性18名、女性2名の計20名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表執行役社長CEOは鵜飼英一氏です。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 鵜飼 英一 | 代表執行役執行役社長CEO(最高経営責任者)(兼)グループ経営本部長 | 1980年入社。品質管理部門を長らく担当し、執行役員、常務執行役員等を経て2021年4月より現職。 |
| 山本 正明 | 代表執行役CFO(最高財務責任者)(兼)欧州・アフリカ州地区担当 | 1986年入社。財務本部や経営戦略本部での要職、中国地区副総支配人等を経て2019年6月より現職。 |
| 木下 俊平 | 取締役 執行役グループ経営本部副本部長 | 1988年入社。欧州や中国での駐在経験を経て、経営戦略等を担当。2022年4月より執行役。 |
| 孝橋 宏二 | 取締役 執行役グループ経営本部副本部長 | 1983年入社。IR・広報、情報企画部門を歴任し、2022年4月より執行役。 |
| 菊田 剛 | 執行役グループ経営本部副本部長 | 1995年入社。財務本部経営管理部長、財務本部長等を経て2025年4月より現職。 |
| 川端 恭弘 | 執行役グループ経営本部副本部長 | 1986年入社。財務本部や欧州地区副総支配人、人事本部副本部長等を経て2022年4月より現職。 |
| 江上 正樹 | 取締役 | 1980年入社。技術研究所長や環境・知財部長等を歴任し、常務執行役員等を経て2020年7月より現職。 |
| 播磨 悦 | 取締役 | 1983年入社。品質管理部長や自動車事業本部副本部長等を歴任し、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、川上良(弁護士)、小松百合弥(元カドカワ執行役員)、村越晃(元三菱商事代表取締役)、木谷泰夫(元三菱UFJニコス常務)、塔下辰彦(元伊藤忠丸紅鉄鋼社長)、和田浩美(元パナソニック理事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「米州」「欧州」「アジア他」の各報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
同社および国内関係会社が、軸受商品(ベアリング)やCVJ(等速ジョイント)アクスル商品等の製造販売を行っています。顧客は国内の自動車メーカー、産業機械メーカーおよび補修市場(代理店等)です。
製品販売による対価を顧客から受け取る収益モデルです。運営は主にNTNが行っていますが、製造の一部は株式会社NTN三重製作所や株式会社NTN磐田製作所などの国内製造関係会社が行い、販売の一部は株式会社NTNセールスジャパンを通じて行われています。
■(2) 米州
アメリカ、カナダ、中南米地域において、軸受商品やCVJアクスル商品等の製造販売を行っています。主要顧客は現地の自動車メーカーや産業機械メーカー、補修市場です。
製品販売による対価を顧客から受け取る収益モデルです。運営は、米州地区を統括する持株会社NTN USA CORP.傘下のNTN DRIVESHAFT, INC.やNTN BEARING CORP. OF AMERICAなどの現地法人が行っています。
■(3) 欧州
ドイツ、フランス、イギリス等の欧州地域において、軸受商品やCVJアクスル商品等の製造販売を行っています。自動車向けおよび産業機械向けのOEM市場や補修市場へ製品を供給しています。
製品販売による対価を顧客から受け取る収益モデルです。運営は、NTN Europe S.A.やNTN TRANSMISSIONS EUROPEなどの現地法人が行っています。
■(4) アジア他
中国、タイ、インド等のアジア地域およびその他の地域において、軸受商品やCVJアクスル商品等の製造販売を行っています。成長市場における自動車・産業機械需要や補修需要に対応しています。
製品販売による対価を顧客から受け取る収益モデルです。運営は、恩梯恩(中国)投資有限公司、NTN MANUFACTURING (THAILAND) CO., LTD.などの現地法人が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2024年3月期にかけて売上高は増加傾向にありましたが、2025年3月期は微減となりました。利益面では、2024年3月期に経常利益200億円を計上しましたが、2025年3月期は約半減しました。当期純損益については、特別損失の計上等により2025年3月期は大幅な赤字に転落しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,628億円 | 6,420億円 | 7,740億円 | 8,363億円 | 8,256億円 |
| 経常利益 | -57億円 | 68億円 | 120億円 | 200億円 | 105億円 |
| 利益率(%) | -1.0% | 1.1% | 1.6% | 2.4% | 1.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -116億円 | 73億円 | 104億円 | 106億円 | -238億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微減となりました。売上原価率および販売費及び一般管理費率はともに前期より上昇しており、営業利益は減少しました。営業利益率は2.8%と、前期の3.4%から低下しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 8,363億円 | 8,256億円 |
| 売上総利益 | 1,453億円 | 1,414億円 |
| 売上総利益率(%) | 17.4% | 17.1% |
| 営業利益 | 281億円 | 230億円 |
| 営業利益率(%) | 3.4% | 2.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が445億円(構成比38%)、運搬費が149億円(同13%)、業務委託費が140億円(同12%)、研究開発費が128億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
日本セグメントは売上高が減少し、利益も減少しました。米州セグメントは売上高が減少しましたが、赤字幅は拡大しました。欧州セグメントは売上高が減少し、赤字幅が拡大しました。アジア他セグメントは売上高、利益ともに減少しました。全体的に販売規模の減少等が影響しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 2,161億円 | 2,152億円 | 152億円 | 112億円 | 5.2% |
| 米州 | 2,723億円 | 2,695億円 | -2億円 | -4億円 | -0.1% |
| 欧州 | 1,880億円 | 1,863億円 | -22億円 | -42億円 | -2.2% |
| アジア他 | 1,600億円 | 1,545億円 | 158億円 | 148億円 | 9.6% |
| 連結(合計) | 8,363億円 | 8,256億円 | 281億円 | 230億円 | 2.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-9.6%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は27.2%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 651億円 | 456億円 |
| 投資CF | -250億円 | -260億円 |
| 財務CF | -302億円 | -187億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「新しい技術の創造と新商品の開発を通じて国際社会に貢献する」という企業理念を掲げています。この理念の実践を通じて、人と自然が調和し、人々が安心して豊かに暮らせる「なめらかな社会」の実現を目指しています。ステークホルダーから信頼され必要とされる企業として、事業活動に取り組んでいます。
■(2) 企業文化
同社は、「創業者の精神」「企業理念」「NTNスピリット」を企業理念体系としています。これらを従業員に定着させるため、「安全、品質、法令遵守、コスト・キャッシュ、納期・開発」の頭文字をとった「SQCCD」を事業運営の柱となるポリシーと位置づけ、日常の心構えとして活用を徹底しています。
■(3) 経営計画・目標
約10年後の姿として「2035年度の姿と目標指標」を設定し、OEMと補修の両輪で稼ぐ事業構造への変革を目指しています。その実現に向け、2024年4月から中期経営計画「DRIVE NTN100」Finalを開始しました。最終年度である2027年3月期の数値目標として以下を掲げています。
* 売上高:8,300億円
* 営業利益:500億円
* 営業利益率:6.0%
* 当期純利益:215億円
* ROE:8.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
「NTNの再生」を完了させるため、生産再編を中心とする事業構造改革を実行し、「SQCCD」の強化を通じて「稼ぐ力」を向上させます。具体的には、デジタル技術と経営資源の融合による変革の加速、生産再編による固定費圧縮と競争力向上を推進します。事業別では、軸受事業を集約してOEMと補修一体で稼ぐ体制とし、CVJアクスル事業では利益体質の強化を図ります。
* 軸受他事業:補修向け販売拡大、電動化・EV用新商品開発、状態監視ビジネス拡大
* CVJアクスル事業:設計・調達・物流改革、事業再編、EV向け差別化商品開発
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「豊かな人づくり」を掲げ、従業員が成長しイキイキと働ける環境整備を進めています。中期経営計画の実現に向け、「経営戦略実現のために求められる専門能力の向上」「グループ経営をリードする経営人材の育成」「自律的成長とキャリア自律の実現」「ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン」「挑戦し、やりきる職場風土への変革」を重点に人材戦略を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.1歳 | 20.1年 | 7,241,974円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.2% |
| 男性育児休業取得率 | 73.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 80.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 87.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用比率(17.3%)、障がい者雇用率(2.50%)、適正な体重者の比率(65.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 外部事業環境に関するリスク
グローバルに事業を展開しているため、各国の経済状況や為替レートの変動、市場価格の低下、原材料価格や物流コストの高騰などが業績に影響を与える可能性があります。また、自然災害や感染症の蔓延、気候変動に伴う異常気象や環境規制の強化もリスク要因として認識しています。
■(2) 事業運営に関するリスク
売上の過半数を自動車業界向けが占めており、同業界の需要変動の影響を受けやすい構造にあります。また、製品に重大な不具合が発生した場合の補償費用や、知的財産権の侵害に関する問題、グローバル展開に伴う各国の法規制や政治情勢の変化なども事業運営上のリスクとなり得ます。
■(3) 情報セキュリティ及び法的規制
サイバー攻撃等による情報漏洩やシステム停止が発生した場合、信用低下や生産・販売活動への支障が生じる可能性があります。また、国内外の各種法令・規則(独占禁止法、環境法規等)の遵守に努めていますが、違反等による法的措置や法令変更が業績に影響を及ぼす可能性があります。



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