NTN 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NTN 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するNTNは、軸受や等速ジョイントなどの精密機器の製造・販売を主力事業とする企業です。直近の業績では、売上高が微増となる一方で、為替差損益の改善や変動費の削減等により経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益は大幅な増益を達成しており、堅調な推移を見せています。


※本記事は、NTN株式会社の有価証券報告書(第127期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. NTNってどんな会社?


軸受や自動車用等速ジョイントなどの精密機器をグローバルに製造・販売する世界的な機械部品メーカーです。

(1) 会社概要


1918年3月にボールベアリングの研究製作を開始し、1923年5月にNTNの商標で国産軸受の製造販売を開始しました。1949年に上場を果たし、その後は国内のみならず欧米、アジアなどグローバルに製造・販売拠点を拡大して成長を続けてきました。2022年には東京証券取引所プライム市場への移行を完了しています。

現在の従業員数は連結で21,305名、単体で5,478名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に日本カストディ銀行(信託口)、第3位は保険会社の明治安田生命保険相互会社となっており、安定した資本構成を有しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.85%
日本カストディ銀行(信託口) 4.84%
明治安田生命保険相互会社 3.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性21名、女性2名の計23名で構成され、女性役員比率は8.6%です。代表執行役執行役社長CEOは鵜飼英一氏が務めています。全取締役12名のうち、5名が社外取締役となっています。

氏名 役職 主な経歴
鵜飼英一 取締役指名委員会委員報酬委員会委員、代表執行役執行役社長CEOグループ経営本部長 1980年同社入社。各製作所の品質保証部長や品質管理部長を歴任。2014年常務執行役員を経て、2017年より取締役。2021年より現職。
山本正明 取締役報酬委員会委員、代表執行役執行役CFO米州・中国・アセアン地区支援担当 1986年同社入社。財務経理部長や経営管理部長等を歴任。中国地区副総支配人を経て2015年執行役員。2022年より現職。
木下俊平 取締役、執行役経営戦略部・カーボンニュートラル戦略推進部担当グループ経営本部副本部長 1988年同社入社。欧州拠点副社長や財務本部副本部長、中国地区副総支配人を歴任。2022年執行役を経て、2023年より現職。
孝橋宏二 取締役、執行役コーポレート・コミュニケーション部・ICT戦略部担当グループ経営本部副本部長 1983年同社入社。IR・広報部長や情報企画部長を歴任。2022年執行役を経て、2025年より現職。
皆見章行 取締役、執行役インド地区・生産技術本部担当SCM戦略本部長 1983年同社入社。生産技術研究所長や中国拠点総経理、生産戦略部長を歴任。2017年執行役員を経て、2020年より現職。
江上正樹 取締役監査委員会委員 1980年同社入社。要素技術研究所長や先端技術研究所長、環境・知財部長を歴任。2015年執行役員を経て、2020年より現職。
播磨悦 取締役指名委員会委員監査委員会委員 1983年同社入社。品質管理部長や岡山製作所長を歴任。2011年執行役員を経て、2025年より現職。


社外取締役は、川上良(大阪西総合法律事務所代表社員)、小松百合弥(東京瓦斯社外取締役)、木谷泰夫(T&Tアド元代表取締役社長)、塔下辰彦(伊藤忠丸紅鉄鋼元代表取締役社長)、村越晃(三菱商事元代表取締役常務執行役員・指名委員長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「米州」「欧州」「アジア他」の地域別セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


国内において、軸受商品や等速ジョイントなどの精密機器の製造および販売を行っており、自動車メーカーや産業機械メーカー、アフターマーケットなどを主な顧客として製品を供給しています。

収益は、これらの製品の販売代金から得ており、主に同社が製造および直接販売を行っています。また、一部の製造や部品加工は国内の製造関係会社に委託し、販売の一部についても国内の販売関係会社を通じて展開しています。

(2) 米州


北米や中南米の市場において、軸受商品や等速ジョイントなどの製造および販売を展開しており、現地の自動車メーカーや産業機械市場を対象に事業を行っています。

収益は製品の販売によるもので、統括管理を行うNTN USA Corp.のもと、NTN Driveshaft, Inc.などの海外製造関係会社が生産を担い、現地の販売関係会社などを通じて広範な販売網を構築しています。

(3) 欧州


ヨーロッパ市場において、軸受商品や等速ジョイントなどの製造販売を展開しており、現地の航空宇宙産業や自動車メーカー向けなどに付加価値の高い製品を供給しています。

収益は各製品の販売代金から得ており、NTN Europe S.A.などの現地法人が事業活動を展開し、各法人が独自の事業戦略に基づいて製造および販売活動を行っています。

(4) アジア他


中国やタイ、インドなどのアジアおよびその他の地域において、軸受商品や等速ジョイントなどの製造および販売を行っています。

収益は新興国の経済発展に伴うインフラ整備や自動車向け製品の販売から得ており、各地域に置かれた総支配人室が事業活動を統括し、現地の製造・販売関係会社が事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は6,000億円台から8,000億円台へと拡大傾向にあります。経常利益も増減を伴いながら推移し、直近では235億円まで増加しています。一方で当期利益は赤字を計上した期間もありましたが、当期には黒字へと回復し、収益性の改善が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 6,420億円 7,740億円 8,363億円 8,256億円 8,263億円
経常利益 68億円 120億円 200億円 105億円 235億円
利益率(%) 1.1% 1.6% 2.4% 1.3% 2.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 216億円 245億円 -42億円 -143億円 206億円

(2) 損益計算書


売上高は前年と同水準で推移していますが、売上総利益は1,414億円から1,518億円へと増加し、利益率も改善しています。これに伴い、営業利益も230億円から310億円へと大きく伸びており、本業での稼ぐ力が強まっていることがわかります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 8,256億円 8,263億円
売上総利益 1,414億円 1,518億円
売上総利益率(%) 17.1% 18.4%
営業利益 230億円 310億円
営業利益率(%) 2.8% 3.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が465億円(構成比39%)、運搬費が151億円(同12%)を占めています。また、売上原価は6,746億円で、売上高に対して82%の構成比となっています。

(3) セグメント収益


各セグメントの売上高を見ると、米州とアジア他でやや減少したものの、日本と欧州では売上が増加しています。特に米州が全体の売上に占める割合が大きく、主力市場の一つとして機能していることが読み取れます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本 2,152億円 2,164億円
米州 2,695億円 2,625億円
欧州 1,863億円 1,936億円
アジア他 1,545億円 1,539億円
連結(合計) 8,256億円 8,263億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


パターン:健全型
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 456億円 572億円
投資CF -260億円 -263億円
財務CF -187億円 -353億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も33.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「新しい技術の創造と新商品の開発を通じて国際社会に貢献する」という企業理念を掲げています。独創的技術の創造や付加価値の高いサービスを提供し、着実な業績伸長と社会貢献を実現することで、人と自然が調和し、人々が安心して豊かに暮らせる「なめらかな社会」の実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、多様性と個性を尊重し、従業員が安全で健康的に働き、活躍できる職場環境づくりに努めています。また、「創業者の精神」や「NTNスピリット」を企業理念体系とし、「安全、品質、法令遵守、コスト・キャッシュ、納期・開発」を意味する「SQCCD」を事業運営のポリシーとして全世界の従業員に定着させています。

(3) 経営計画・目標


2035年度の目指す姿として、OEMとアフターマーケットの両輪で安定的に稼ぐ事業構造への変革と、株主資本コストを安定して上回るROEの継続を目標としています。中期経営計画「DRIVE NTN100」Finalでは、最終年度の目標として以下の数値を掲げています。

* 売上高:8,300億円
* 営業利益:500億円
* 営業利益率:6.0%
* ROE:8.0%

(4) 成長戦略と重点施策


「事業構造の変革の加速」を基本方針とし、生産再編による固定費圧縮と競争力の向上を進めています。また、市場軸から商品軸への組織変更により、軸受事業とCVJアクスル事業の利益体質強化を図るほか、AI等のデジタル技術の活用や、次世代モビリティ、ロボット周辺等の新領域における事業拡大を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「豊かな人づくり」を掲げ、従業員が成長しイキイキと働ける企業文化と職場環境の整備を進めています。「変革に挑戦する次世代を担う人材の確保」「社員の多様性を尊重した働きがいのある環境づくり」「職場の学ぶ文化と育成する風土の醸成」などを柱に、専門能力の向上や経営人材の育成、キャリア自律の支援に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.7歳 19.6年 7,456,517円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.9%
男性育児休業取得率 89.6%
男女賃金差異(全従業員) 79.7%
男女賃金差異(正規雇用従業員) 79.9%
男女賃金差異(非正規雇用従業員) 84.4%


また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用比率(19.4%)、障がい者雇用率(2.64%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 外部事業環境に関するリスク


特定の国や地域の経済状況の変動、急激な為替レートの変動、原材料価格や物流コストの上昇などが、同社グループの財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動に伴う異常気象や環境規制の強化も事業継続のうえでリスクとして認識されています。

(2) 特定業界への依存と価格競争激化


同社の販売先は自動車業界向けの割合が高いため、自動車分野における急激な需要変動が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、新興国製品の台頭による市場価格の低下圧力や、顧客からの価格引き下げ要請も収益を圧迫するリスクとなります。

(3) 事業運営と情報セキュリティに関わるリスク


製品に重大な不具合が発生しリコール等に発展した場合、多額の補償費用が発生する恐れがあります。また、サイバー攻撃や不正アクセスによる重要データの流出、システムの停止が生じた場合、生産・販売活動に支障をきたし、信用低下を招くリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。