酒井重工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

酒井重工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、主に道路舗装機械や道路維持補修機械などの製造から国内外への販売までを展開する建設機械メーカーです。直近の業績では、流通在庫調整や販売減速の影響を受けて売上は微減となりましたが、原価率の改善などを進めた結果、営業利益および経常利益は増益を達成しています。


※本記事は、酒井重工業の有価証券報告書(第78期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 酒井重工業ってどんな会社?


道路舗装機械などの製造および販売を手掛ける建設機械メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1918年に内燃機関車などの製造および修理を目的として創立され、1929年より道路転圧用各種ロードローラの製造を開始しました。1949年の法人改組を経て、1964年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1981年には市場第一部へ指定替えされています。1976年には米国、1995年にはインドネシアへ進出するなど、海外への事業展開も積極的に進めてきました。

現在の従業員数はグループ全体で618名、単体で317名となっています。主要な株主構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行であり、第2位および第3位には事業展開において財務面などの取引があるみずほ銀行と三菱UFJ銀行の大手金融機関が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.77%
みずほ銀行 4.84%
三菱UFJ銀行 4.84%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は酒井一郎氏です。社外取締役は2名在籍しています。

氏名 役職 主な経歴
酒井一郎 取締役社長(代表取締役) 1990年同社入社。1995年代表取締役社長に就任。以降、米国法人の会長兼社長なども歴任し、北米事業を牽引。プロネクサスの社外取締役も務め、長きにわたり同グループの経営トップとして事業成長を主導している。
水内健一 取締役専務執行役員 1982年同社入社。国内事業本部広域営業部長や国内事業本部長などを歴任し、2016年に取締役に就任。2020年に専務執行役員となり、国内事業全体を統括している。
吉川孝郎 取締役(監査等委員) 1999年同社入社。管理部長として長年管理部門を牽引し、2019年に執行役員管理部長に就任。2025年より取締役(監査等委員)に就き、監査体制の強化を担っている。


社外取締役は、佐藤芳織(サトー代表取締役)、朝倉陽保(HAマネジメント代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、日本、米国、インドネシア、中国の報告セグメントを展開しています。

日本


同社および国内子会社が、道路舗装機械や道路維持補修機械などの建設機械や産業機械、およびその部品の製造と販売を展開しています。主な対象顧客は国内の建設業者やレンタル業者などです。

収益は顧客への製品販売やアフターサービス、中古機械の仕入販売などから得ています。事業の運営は主に酒井重工業が行うほか、酒井機工や東京フジ、コモドなどの国内グループ企業が各専門領域を担っています。

米国


北米市場向けに道路建設機械および同部分品の製造と販売を行っています。インフラ投資が活発な米国において、現地のゼネコンやディーラーなどを主要な顧客として事業を展開しています。

収益は現地での製品販売や部品提供などを通じて得ており、主に米国子会社であるSAKAI AMERICAが製造から販売まで一貫して運営を行っています。

インドネシア


東南アジアを中心とした新興国市場向けに、小型および大型の建設機械や関連部品の製造・販売、アフターサービス業務を提供しています。

製品の販売代金やサービス料などを主な収益源としています。インドネシア国内での運営は、SAKAI INDONESIAが製造を、SAKAI SALES AND SERVICES ASIAが販売およびアフターサービスを担っています。

中国


中国国内市場やグループ企業への輸出向けに、建設機械およびその部品の製造と販売を行っています。

製品の販売収益を主な収益源としており、現地法人の酒井工程机械(上海)が事業の運営を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は建設機械市場の需要回復を受け増加傾向にありましたが、直近2期は流通在庫調整などの影響で減収となっています。一方で、価格転嫁やコストダウンなどの原価率改善施策が奏功し、直近の経常利益および利益率は底打ちからの回復傾向を示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 266億円 315億円 330億円 279億円 275億円
経常利益 14億円 23億円 33億円 15億円 16億円
利益率(%) 5.3% 7.4% 10.1% 5.4% 5.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 4億円 10億円 8億円 9億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で微減となったものの、販売価格の改定や物流効率の改善効果により、売上総利益は横ばいを維持しています。これに伴い売上総利益率および営業利益率も前期からわずかに改善しており、安定した収益構造を確保していることが読み取れます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 279億円 275億円
売上総利益 77億円 77億円
売上総利益率(%) 27.6% 27.9%
営業利益 16億円 16億円
営業利益率(%) 5.7% 5.8%


販売費及び一般管理費のうち、技術研究費が10億円(構成比16%)、給料及び手当が9億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


国内市場である日本セグメントは、国土強靱化計画を背景とした堅調な政府建設投資に支えられ売上が増加しています。一方で、米国セグメントは流通在庫の調整や高関税政策の影響により減収となり、インドネシアセグメントも国内販売の停滞を受けて売上が減少しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本 166億円 174億円
米国 76億円 73億円
インドネシア 35億円 27億円
中国 2億円 2億円
連結(合計) 279億円 275億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業を示す「健全型」のキャッシュ・フローとなっています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.9%で市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 4億円 9億円
投資CF 0.4億円 -6億円
財務CF -12億円 -15億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、道路建設機械事業を通じて国土開発という社会事業に貢献することを経営の基本方針として掲げています。ユーザーに信頼のおける製品とサービスを提供することや、道路建設機械のスペシャリストとして常に技術の深耕を図り、道路事業の発展に有益な技術を創造していくことを自社の存在意義であり責務であると定義しています。

(2) 企業文化


同社は、社会倫理に基づく「誠実で正しい姿勢」を常に追求しつつ、公明正大な自由競争の中で世界から選択される社会的存在意義のある企業を目指すという方針を重視しています。また、株主からの出資資金や社員の能力を最大限に生かせる会社運営を行い、すべてのステークホルダーとの良好な関係を築くことを企業文化の基盤としています。

(3) 経営計画・目標


同社は中期経営計画において、道路建設機械における世界一流のグローバルニッチ企業を目指し、売上規模300億円の基盤固めと、長期的な売上規模500億円企業への成長を目標としています。

・売上高:300億円
・営業利益:31億円
・ROE:8.0%

(4) 成長戦略と重点施策


今後の成長戦略として、アジア市場の深耕と北米市場の開拓、および海外事業領域の拡大に注力する方針です。また、新技術を活用した次世代事業開発として、緊急ブレーキや転圧管理システムの展開、自律走行式ローラやEVローラの実用化を推進します。これらに加えて、AI実装による業務改革や人的資本投資を進め、収益体質の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材を企業発展のための原動力と位置づけ、専門的知見やグローバル活動力を持つ「プロ人材」の育成と戦力化を進めています。また、徹底した現場経験を通じた人材育成を行うとともに、多様な情報や人材が集まり社員の創造性や成長を誘発する職場環境の整備に取り組み、自律的なキャリア構築を支援する社内公募制度なども導入しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.8歳 13.1年 6,188,516円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.6%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 70.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 54.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員における外国人社員の比率(約50%)、女性管理職比率の目標値(16%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外活動に関するリスク


同社は北米やアジアを中心に海外市場の開拓を進めているため、各国の法律や規制の変更、不利な租税制度、政治的要因や社会的混乱などが事業に影響を及ぼす可能性があります。また、主要市場における景気後退や予測を超えた需要変動も、業績の悪化につながるリスクとなります。

(2) 製品保証および生産物賠償責任リスク


各種ロードローラなどの製造において重大な欠陥が発生した場合、大規模な製品回収や生産物賠償責任により多額の費用や賠償金が発生するリスクがあります。これらの問題は同社の社会的評価に影響を与え、売上の低下を招く恐れがあるため、徹底した品質管理に努めています。

(3) 売上債権管理上のリスク


同社の製品販売は、商社や代理店を通じた間接販売と、ユーザーへの直接販売によって行われています。これらの販売先が資金繰りの悪化などにより財政的な困難に陥った場合、売上代金の回収が滞り、同社の事業運営および財務状況に悪影響を及ぼすリスクが存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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