酒井重工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

酒井重工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する道路建設機械メーカーです。ロードローラ等の道路舗装機械や道路維持補修機械を主力とし、グローバルに事業を展開しています。第77期は、世界的な建設機械市場の在庫調整局面等の影響を受け、売上高279億円(前期比減収)、経常利益15億円(前期比減益)の減収減益となりました。


※本記事は、酒井重工業株式会社の有価証券報告書(第77期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

酒井重工業転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

1. 酒井重工業ってどんな会社?


道路建設機械の専業メーカーとして、ロードローラやタイヤローラなどの舗装機械を主力に、国内および米国・アジア等で事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1918年に創業し、内燃機関車の製造を開始しました。1929年に道路転圧用ロードローラの製造を開始し、1949年に法人改組しました。1964年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1970年代には米国およびインドネシアに進出しました。1981年に東証一部へ指定替えとなり、2000年代には中国にも製造・販売拠点を設立しました。2022年の市場区分見直しにより、現在はプライム市場に上場しています。

連結従業員数は622名、単体従業員数は317名です。大株主は、資産管理業務を行う信託銀行が筆頭株主となっており、次いで金融機関が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 11.57%
株式会社みずほ銀行 4.86%
株式会社三菱UFJ銀行 4.86%

(2) 経営陣


同社の役員は男性4名、女性1名の計5名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は酒井一郎氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
酒井 一郎 取締役社長(代表取締役) 1990年入社。1995年より代表取締役社長。米国現地法人会長等を歴任し、2002年より北米事業部長を兼務。
水内 健一 取締役専務執行役員 1982年入社。国内事業本部長、国内営業部長を経て、2020年より専務執行役員。2022年より現職。
吉川 孝郎 取締役(監査等委員) 1999年入社。管理部長を経て、2019年執行役員管理部長。2025年6月より現職。


社外取締役は、佐藤芳織(株式会社サトー代表取締役)、朝倉陽保(HAマネジメント合同会社代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「米国」「インドネシア」「中国」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


国内市場向けに建設機械(主に道路建設機械)および同部分品の製造・販売を行っています。また、産業機械の販売や中古建設機械の仕入・販売、道路舗装・補修工事の請負なども手掛けています。

製品販売による代金や工事請負代金、サービス料等が主な収益源です。運営は主に酒井重工業が行い、産業機械等は酒井機工、工事関連はコモド、製造の一部は東京フジが担当しています。

(2) 米国


北米市場向けに建設機械および同部分品の製造・販売を行っています。現地の建設需要に応じたロードローラ等の製品供給を担っています。

製品販売による代金が主な収益源です。運営は主に現地法人のSAKAI AMERICA, INC.が行っています。

(3) インドネシア


インドネシアおよびアジア市場向けに建設機械および同部分品の製造・販売を行っています。また、販売およびアフターサービス業務も展開しています。

製品販売による代金やアフターサービス料が主な収益源です。運営は主に現地法人のP.T. SAKAI INDONESIA(製造・販売)およびP.T. SAKAI SALES AND SERVICES ASIA(販売・サービス)が行っています。

(4) 中国


中国市場向けに建設機械および同部分品の製造・販売を行っています。現地のインフラ需要に対応した製品の提供を行っています。

製品販売による代金が主な収益源です。運営は主に現地法人の酒井工程机械(上海)有限公司が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績推移を見ると、売上高は第76期に330億円まで拡大しましたが、第77期は279億円へと減少しました。経常利益も第76期の33億円から第77期は15億円へと減少しています。利益率は第76期に10.1%と高い水準に達しましたが、第77期は5.4%に低下しました。全体として、第76期をピークに調整局面に入っています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 216億円 266億円 315億円 330億円 279億円
経常利益 7億円 14億円 23億円 33億円 15億円
利益率(%) 3.0% 5.3% 7.4% 10.1% 5.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 14億円 17億円 24億円 14億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の減少に伴い、売上総利益および営業利益が縮小しています。売上高は前期の330億円から279億円へ減少し、営業利益は33億円から16億円へと半減しました。売上総利益率は28.4%から27.6%へ、営業利益率は10.1%から5.7%へと低下しており、収益性が低下しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 330億円 279億円
売上総利益 94億円 77億円
売上総利益率(%) 28.4% 27.6%
営業利益 33億円 16億円
営業利益率(%) 10.1% 5.7%


販売費及び一般管理費のうち、技術研究費が10億円(構成比16%)、給料及び手当が8億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントにおいて減収減益となりました。日本セグメントはレンタル業界の在庫調整により販売が減少、米国セグメントもディーラーの在庫調整の影響を受けました。インドネシアおよび中国セグメントも市場の停滞により減収減益となりました。特に日本と中国での利益減少幅が大きくなっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 192億円 166億円 10億円 2億円 1.0%
米国 97億円 76億円 12億円 8億円 10.9%
インドネシア 38億円 35億円 10億円 6億円 16.0%
中国 3億円 2億円 2億円 1億円 44.6%
連結(合計) 330億円 279億円 33億円 16億円 5.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

酒井重工業は、営業活動によるキャッシュ・フローが前連結会計年度に比べ減少しました。これは、税金等調整前当期純利益や棚卸資産の増加、仕入債務の減少、売上債権の減少などを反映したものです。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却収入や有形・無形固定資産の取得による支出を反映し、増加に転じました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いなどが主な要因となり、減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 25億円 4億円
投資CF -4億円 0億円
財務CF -14億円 -12億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


道路建設機械事業を通じて、国土開発という社会事業に貢献することを基本方針としています。ユーザーに信頼される製品とサービスを提供し、道路建設機械のスペシャリストとして技術の深耕を図り、道路事業の発展に有益な技術を創造していくことを企業の存在意義および責務としています。

(2) 企業文化


株主からの出資資金と社員の能力を最大限生かせる会社運営を行い、期待に応える業績を上げることに全力を尽くす姿勢を重視しています。また、道路建設機械という専門分野において培った技術を周辺分野にも役立てていくことを目指しており、専門性と社会貢献を重んじる文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


道路建設機械における世界一流のグローバルニッチ企業を目指し、中期的な経営方針として「売上規模300億円の基盤固め」「長期目標として売上規模500億円企業への成長」を掲げています。また、プライム市場への上場維持確保のため、グローバル水準の企業経営への脱皮を図っています。

* 売上高:300億円(2026年3月期目標)
* 営業利益:31億円(2026年3月期目標)
* ROE:8.0%(2026年3月期目標)

(4) 成長戦略と重点施策


国内事業の安定化、海外事業の更なる拡大、魅力ある新製品開発とサービスの提供を中期経営課題としています。具体的には、アジア市場の深耕や北米市場展開、新技術活用による次世代事業開発(自律走行式ローラ、転圧管理システム等)を推進し、収益構造と人的組織能力の強化を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「プロ人材の育成」と「戦力化」を掲げ、現場・現物・現実の三現主義に基づく仕事力を重視しています。製品開発者が企画から現場まで一気通貫で携わるOJTを中心とした育成を行っています。また、女性・外国人・中途採用者の積極的な採用と登用を進め、多様な人材が安全・安心に働ける職場環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.2歳 13.5年 6,454,203円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 4.0%
男性労働者の育児休業取得率 20.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 70.0%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 78.7%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) 58.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 海外活動に係わるリスク


海外売上比率が5割を超えており、北米やアジア等で事業を展開しています。そのため、各国の予期せぬ法規制や税制の変更、インフラの未整備、政治的要因、戦争等の社会的混乱、景気変動による需要の急減などが、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 製品保証及び生産物賠償責任リスク


製品の設計・製造には厳しい管理基準を設けていますが、将来的に欠陥が生じる可能性は否定できません。大規模なリコールや生産物賠償責任が発生した場合、多額の費用負担や社会的信用の失墜を招き、業績に重大な影響を与える可能性があります。

(3) 売上債権管理上のリスク


商社や代理店を通じた間接販売およびユーザーへの直接販売を行っています。販売先の財政状況が悪化し、資金繰りが困難になった場合、売上債権の回収が滞り、同社の事業運営や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 感染症の拡大等に関するリスク


新たな感染症の流行等により、国内外で都市封鎖や外出制限が実施された場合、または役職員が感染した場合には、需要の減少や生産ラインの停止などが発生し、事業運営に支障をきたすとともに、財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。