※本記事は、トリニティ工業株式会社の有価証券報告書(第92期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. トリニティ工業ってどんな会社?
設備部門と自動車部品部門を二本柱として展開する総合エンジニアリング企業です。
■(1) 会社概要
1946年10月に日本工芸工業として設立されました。1963年4月に東京証券取引所市場第二部に株式上場し、1980年7月に現在のトリニティ工業に商号変更しました。1977年にはトヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)が資本参加して関連会社となりました。直近では2025年に本社隣接地に新たな技術拠点を開所しています。
同社グループの従業員数は連結で957名、単体で781名です。筆頭株主は事業会社であるトヨタ自動車で、第2位も事業会社の豊田通商、第3位は金融機関のGOLDMAN SACHS INTERNATIONALとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| トヨタ自動車 | 36.53% |
| 豊田通商 | 3.60% |
| GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL(常任代理人 ゴールドマン・サックス証券) | 2.40% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は飯田基博氏が務めています。取締役10名のうち社外取締役は1名となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 飯田基博 | 取締役社長(代表取締役)経営全般安全統括 | 1987年トヨタ自動車入社。同社田原工場組立部長、トヨタサウスアフリカモータース副社長等を経て2024年6月より現職。 |
| 乗安弘治 | 取締役副社長(代表取締役)社長補佐経営全般地域・事業統括管理部門統括デジタル統括リスク管理統括 | 1984年トヨタ自動車入社。トヨタ自動車(中国)投資副総経理、同社中国部業務室主査、当社専務取締役等を経て2024年6月より現職。 |
| 高林伸二 | 専務取締役開発部門統括設備部門副統括 | 1986年トヨタ自動車入社。トヨタサウスアフリカモータースディビジョナルシニアエグゼクティブコーディネーター等を経て2025年6月より現職。 |
| 久米潤一郎 | 専務取締役設備部門統括開発部門副統括 | 1991年当社入社。THAI TRINITY社長、当社A&Gプラント事業部P/J企画室長、常務取締役等を経て2025年6月より現職。 |
| 成田年男 | 常務取締役安全健康部門BCP設備部門 | 1988年当社入社。当社A&Gプラント事業部安全技術副部長、設備事業部営業部長、取締役等を経て2023年6月より現職。 |
| 遠山伸治 | 取締役部品部門三好工場長 | 1983年トヨタ自動車入社。同社田原工場組立部技術員室長、車両工務部田原工務室主査、当社理事等を経て2024年6月より現職。 |
| 光田禎宏 | 取締役開発部門設備部門 | 1986年当社入社。当社A&Gプラント事業部第1設計エンジニアリング部長、設備事業部第1設計エンジニアリング部長等を経て2021年6月より現職。 |
| 伊藤恵一 | 取締役設備部門 | 1990年当社入社。当社A&Gプラント事業部企画営業部第1営業室長、設備事業部営業副部長等を経て2022年6月より現職。 |
| 山田智博 | 取締役部品部門統括 | 1989年当社入社。東莞佳立汽車飾件董事総経理、当社部品事業部企画副部長、丘比克(天津)転印董事総経理等を経て2023年6月より現職。 |
社外取締役は、金子芳樹(元豊田鉄工副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「設備部門」および「自動車部品部門」事業を展開しています。
■(1) 設備部門
前処理装置、電着塗装装置、塗装ブース、空調装置などの塗装プラントや塗装機器、産業機械等の設計・製造・販売を提供しています。主な顧客は自動車メーカーをはじめとする国内外の製造業です。
収益は、顧客に対して塗装設備などの設計から納入までを行う長期工事契約等により得ています。運営は主に同社および子会社のトステック、メサックなどが行っています。
■(2) 自動車部品部門
センタークラスターパネルやコンソールパネル、ドアスイッチベースなどの自動車内外装部品の製造・販売を提供しています。自動車メーカー等に向けて環境性と意匠性を併せ持つ部品を供給しています。
収益は、製造した自動車部品などの製品の顧客への販売から得ています。運営は主に同社および子会社の得立鼎塗装設備(上海)有限公司、THAI TRINITY CO.,LTD.などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の売上高は一時減少したものの概ね増加傾向にあり、直近では高水準を維持しています。経常利益も売上の回復に伴い着実な増益基調が続いており、利益率は上昇傾向にあります。全体として収益性の向上が進んでいることが伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 342億円 | 290億円 | 370億円 | 402億円 | 390億円 |
| 経常利益 | 23億円 | 15億円 | 30億円 | 35億円 | 37億円 |
| 利益率(%) | 6.8% | 5.1% | 8.1% | 8.8% | 9.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 15億円 | 10億円 | 25億円 | 36億円 | 31億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間では売上高が減少した一方で、売上総利益は増加しており、売上総利益率および営業利益率ともに改善しています。効率的な事業運営による収益性の向上が見られます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 402億円 | 390億円 |
| 売上総利益 | 83億円 | 86億円 |
| 売上総利益率(%) | 20.5% | 22.0% |
| 営業利益 | 32億円 | 32億円 |
| 営業利益率(%) | 8.1% | 8.2% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が16億円(構成比30%)、研究開発費が6億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
設備部門は塗装設備納入等の減少により売上高が減少したものの、利益は増加し増益となりました。一方、自動車部品部門は内装部品および外装部品の生産・販売の減少により減収減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 設備部門 | 299億円 | 294億円 | 39億円 | 42億円 | 14.1% |
| 自動車部品部門 | 103億円 | 96億円 | 13億円 | 11億円 | 11.0% |
| 調整額 | - | - | -19億円 | -20億円 | - |
| 連結(合計) | 402億円 | 390億円 | 32億円 | 32億円 | 8.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -28億円 | 51億円 |
| 投資CF | -47億円 | -18億円 |
| 財務CF | -10億円 | -14億円 |
企業の収益力を測るROEは8.0%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も78.5%で市場平均を上回っています。いずれも市場平均を上回る良好な水準です。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
社是「信頼と創造」のもと、世界規模での経営基盤の強化、個人の創造力とチームワークを発揮する企業風土の構築を経営理念に掲げています。各国・地域に根ざした事業活動を通じた社会発展への貢献や、時代を先取りした研究開発による魅力的な商品提供、クリーンで公正な企業活動の実践により豊かな社会作りに貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
「テクノロジーで地球にやさしい未来へ」をスローガンとし、相互信頼に基づき個人の創造力とチームワークの強みを最大限に発揮する企業風土を重視しています。安全・品質・お客様第一を基本とし、ともに働く多様な人材がSDGsの理念に共感し自ら考え行動することを奨励する文化が醸成されています。
■(3) 経営計画・目標
株主重視の視点および経営効率の評価基準として、総資産利益率(ROA)や自己資本利益率(ROE)、売上高営業利益率を意識した経営を進めています。持続可能な社会への貢献とともに、2026年4月に公表した中期経営計画の達成に向け、技術力や人材力、現場力を高め続けることを目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
持続可能な社会への更なる貢献として、ハード・ソフトウェアに加え環境コンサルティングの提供など脱炭素経営への取り組みを進めます。また、新拠点での技術革新やスマートファクトリー化の推進により生産性向上を図り、成長を担う人材への投資やデジタル技術の活用を通じて持続的成長に向けた基盤強化に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を持続的成長を支える重要な経営基盤と位置付け、全社教育や階層別・専門教育、デジタル教育を通じた中長期的な人材育成に取り組んでいます。また、国籍や性別にとらわれない多様性を重視した採用活動を展開し、女性の採用・登用促進や育児と仕事の両立を支援する職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.9歳 | 16.6年 | 6,467,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 75.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 62.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 57.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.86%)、女性社員比率(17.0%)、有給休暇取得日数(月平均1.24日)、一人当たり年間所定外労働時間(月平均21.5時間)、コンプライアンス教育受講率(98.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車業界の動向による影響
同社グループの取引の重要な部分を占める自動車業界の販売台数および設備投資計画は、同社の経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、環境負荷が低く競争力のある設備の開発や、自動車業界外への販売拡大に取り組んでいます。
■(2) 原材料価格の変動リスク
調達コストの中で大きな割合を占める樹脂材料や鉄鋼材料をはじめとする原材料の価格は、国際商品市況の影響を受けて大きく変動することがあり、収益に影響する可能性があります。製品価格への反映や歩留まり向上により材料コストの低減を図っています。
■(3) 為替レートの変動リスク
為替レートの変動は、海外との取引の円換算額および海外子会社の外貨建て財務諸表の円換算額等に影響を及ぼす可能性があります。海外商流の適正化により影響を低減し、必要に応じて為替予約取引を利用することでリスク回避に努めています。
■(4) 災害発生に伴う生産活動停止リスク
製造ラインの中断による影響を最小限にするため定期的な設備点検を行っていますが、大規模な災害が発生した場合は生産活動が停止する可能性があります。事業継続計画(BCP)を策定し、安全対策や早期復旧の準備を進めています。



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