トリニティ工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

トリニティ工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所 スタンダード市場に上場する、塗装プラント等の設備および自動車部品の製造・販売を行う企業です。トヨタ自動車グループの一員として強固な経営基盤を持ちます。直近の業績は、売上高402億円(前期比増収)、経常利益35億円(前期比増益)と、増収増益で推移しています。


※本記事は、トリニティ工業株式会社 の有価証券報告書(第91期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. トリニティ工業ってどんな会社?


設備部門(塗装プラント等)と自動車部品部門を柱とするトヨタ自動車グループの企業です。

(1) 会社概要


1946年に日本工芸工業として設立され、1963年に東証二部(現スタンダード市場)へ上場しました。1977年にトヨタ自動車工業(現トヨタ自動車)が資本参加し、関連会社となりました。1980年に現在のトリニティ工業へ社名を変更し、2007年には愛知県みよし市に三好工場を建設して自動車外装部品の製造を開始するなど、事業を拡大しています。

連結従業員数は952名、単体では765名です。筆頭株主は事業会社(親会社・提携先)であるトヨタ自動車で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は事業会社の豊田通商です。

氏名 持株比率
トヨタ自動車 36.59%
BBH FOR FIDELITY LOW-PRICED STOCK FUND(常任代理人 株式会社三菱UFJ銀行) 4.24%
豊田通商 3.61%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は飯田 基博氏です。社外取締役比率は約8%(1名)です。

氏名 役職 主な経歴
飯田 基博 取締役社長(代表取締役)経営全般安全統括 トヨタ自動車入社後、田原工場組立部長、トヨタサウスアフリカモータース副社長、トヨタ自動車田原工場車体部長などを経て、2024年6月より現職。
乗安 弘治 取締役副社長(代表取締役)社長補佐経営全般地域・事業統括管理部門統括デジタル統括リスク管理統括 トヨタ自動車入社後、中国部業務室主査、国瑞汽車有限公司董事協理などを経て、2024年6月より現職。
高林 伸二 常務取締役開発部門統括設備部門副統括 トヨタ自動車入社後、田原工場塗装成形部主査、トヨタサウスアフリカモータースディビジョナルシニアエグゼクティブコーディネーターなどを経て、2021年6月より現職。
久米 潤一郎 常務取締役設備部門統括開発部門副統括 同社入社後、THAI TRINITY社長、A&Gプラント事業部P/J企画室長などを経て、2021年6月より現職。
成田 年男 常務取締役安全健康部門BCP設備部門 同社入社後、設備事業部営業部長などを経て、2023年6月より現職。
遠山 伸治 取締役部品部門三好工場長 トヨタ自動車入社後、車両工務部田原工務室主査などを経て、2024年6月より現職。
光田 禎宏 取締役開発部門設備部門 同社入社後、設備事業部第1設計エンジニアリング部長などを経て、2021年6月より現職。
伊藤 恵一 取締役設備部門 同社入社後、A&Gプラント事業部企画営業部第1営業室長などを経て、2022年6月より現職。
山田 智博 取締役部品部門統括 同社入社後、東莞佳立汽車飾件有限公司董事総経理、丘比克(天津)転印有限公司董事総経理などを経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、金子 芳樹(元豊田鉄工取締役副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「設備部門」および「自動車部品部門」事業を展開しています。

設備部門

塗装プラント、塗装機器、産業機械等の設計、製造および販売を行っています。主な顧客は自動車メーカーなどの製造業です。

収益は、顧客から受け取る設備販売代金や工事代金等から構成されています。運営は主に同社およびトステック、メサック、海外子会社等のグループ会社が行っています。

自動車部品部門

自動車の内外装部品(センタークラスターパネル、コンソールパネル、ドアスイッチベース、ステアリングホイール、ロッカーモール等)の製造および販売を行っています。

収益は、自動車メーカー等から受け取る部品の販売代金から構成されています。運営は主に同社および海外子会社等のグループ会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に直近の2025年3月期は400億円台に到達しています。利益面でも、2023年3月期に一度落ち込みましたが、その後は回復し、直近では経常利益率8%台後半と高い収益性を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 354億円 342億円 290億円 370億円 402億円
経常利益 24億円 23億円 15億円 30億円 35億円
利益率(%) 6.9% 6.8% 5.1% 8.1% 8.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 16億円 15億円 10億円 25億円 36億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益が順調に伸長しています。営業利益率は7.6%から8.1%へと改善しており、本業の収益性が高まっていることがわかります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 370億円 402億円
売上総利益 76億円 83億円
売上総利益率(%) 20.5% 20.5%
営業利益 28億円 32億円
営業利益率(%) 7.6% 8.1%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が15億円(構成比31%)、研究開発費が6億円(同11%)を占めています。売上原価については、大部分が製造費用等で構成されています。

(3) セグメント収益


設備部門は塗装設備納入等の増加により増収増益となり、自動車部品部門も生産・販売の増加により増収、大幅な増益を達成しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
設備部門 268億円 299億円 37億円 39億円 13.0%
自動車部品部門 102億円 103億円 10億円 13億円 12.7%
連結(合計) 370億円 402億円 28億円 32億円 8.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

トリニティ工業は、設備部門と自動車部品部門の増収により、事業活動は順調に進んでいます。営業活動によるキャッシュ・フローは、利益は確保したものの、売上債権の増加や仕入債務の減少により、前年と比較して資金の使用額が増加しました。投資活動では、設備投資を中心に多額の資金を使用しました。財務活動では、主に配当金の支払いが資金の使用につながりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 36億円 -28億円
投資CF -9億円 -47億円
財務CF -6億円 -10億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「信頼と創造」を社是とし、世界規模での経営基盤強化、個人の創造力とチームワークの発揮、地域社会への貢献、時代を先取りした研究開発、クリーンで公正な企業活動の実践などを経営の基本方針として掲げています。

(2) 企業文化


「テクノロジーで地球にやさしい未来へ」を掲げ、安全・品質・お客様第一を大切にする文化があります。カーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーなど、持続可能な地球・社会への貢献を目指し、多様な人材がSDGsの理念に共感して自ら考え行動することを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、株主重視の視点および経営効率の評価基準として、以下の指標を意識した経営を進めていく方針です。

* 総資産利益率(ROA)
* 自己資本利益率(ROE)
* 売上高営業利益率

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「熱・水・空気」の総合エンジニアリング会社として、技術力とモノづくりの力を源泉に持続的な成長を目指しています。特に、持続可能な社会への貢献、たゆまぬ技術革新、持続的成長に向けた基盤強化を重点課題としています。

* 設備部門:ハードに加え、ソフトウェアやサービス領域での新技術・商品開発。デジタル技術の活用。
* 自動車部品部門:自働化・省人化の推進、新技術導入や老朽設備の更新による生産性向上。
* 技術開発センターの新設による技術・商品開発の加速および異業種連携。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を付加価値の源泉と捉え、階層別・部門別・専門教育などの複層的な教育機会を提供しています。国籍や性別にとらわれないダイバーシティ採用、女性活躍推進、男性社員の育休取得促進、健康経営の推進などを通じ、社員がいきいきと働ける環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.7歳 16.9年 6,161,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 75.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.5%
男女賃金差異(正規) 61.3%
男女賃金差異(非正規) 67.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(17.0%)、有給休暇取得日数(1.24日/月)、ストレスチェック受検率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況と自動車業界の動向

同社グループの取引の大部分を占める自動車業界の販売台数や設備投資計画の変動は、経営成績に影響を与える可能性があります。これに対し、環境負荷の低い競争力ある設備の開発や、自動車業界外への販売拡大に取り組んでいます。

(2) 原材料価格の変動

樹脂材料や鉄鋼材料など、主要な原材料の価格は国際市況の影響を受けやすく、高騰時には経営成績に影響を及ぼす可能性があります。製品価格への反映や歩留まり向上によるコスト低減等の対策を行っています。

(3) 為替レートの変動

海外との取引や海外子会社の財務諸表換算において、為替レートの変動が業績に影響を与える可能性があります。海外商流の適正化や為替予約取引の利用により、リスク回避に努めています。

(4) 地震等の災害発生

大規模な災害が発生した場合、生産活動の停止などにより経営成績に重要な影響を与える可能性があります。これに対し、安全対策や事業継続計画(BCP)を策定し、早期復旧に向けた体制を整えています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。