テクノスマート 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

テクノスマート 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社はスタンダード市場に上場し、フィルムや金属箔に機能性を持たせる塗工乾燥装置等の設計・製造・販売を主力事業としています。当期の業績は、売上高216億円(前期比12.1%増)、当期純利益24億円(同32.5%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社テクノスマート の有価証券報告書(第91期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. テクノスマートってどんな会社?


テクノスマートは、スマートフォンや電池などの製造に不可欠な塗工乾燥装置や熱処理機を提供するメーカーです。

(1) 会社概要


1912年に井上鉄工所として創立され、1964年に大阪証券取引所市場第2部へ上場しました。創業100周年を迎えた2012年に現在の社名へ変更し、2013年には東京証券取引所市場第2部へ上場しています。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しました。

同社の従業員数は単体で245名です(連結子会社なし)。筆頭株主は同社の取引先で構成される持株会で、第2位は光通信グループの投資会社であるエスアイエル、第3位は光通信となっています。

氏名 持株比率
テクノスマート取引先持株会 13.70%
エスアイエル 9.42%
光通信 8.08%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は飯田陽弘氏が務めています。社外取締役比率は37.5%です。

氏名 役職 主な経歴
飯田陽弘 取締役社長(代表取締役) 1988年同社入社。技術本部企画設計部次長、技術部企画設計グループ部長等を歴任。営業部統括部長、常務取締役技術・製造・資材統括などを経て2024年4月より現職。
西宮良材 常務取締役滋賀事業所長兼製造統括兼資材統括 1988年日立マクセル(現マクセル)入社。2017年同社入社。製造部製造グループマネージャー、製造統括部長などを経て2024年4月より現職。
下村壽一 取締役技術統括部長 1994年同社入社。機械技術部第一課長、技術部機械技術第一グループ部長などを経て2017年6月取締役就任。2021年4月より現職。
髙橋要 取締役管理統括部長 ナチュラム取締役管理本部長などを経て2014年同社入社。監査室長、管理統括部統括副部長などを歴任し2024年6月より現職。
三沢浩司 取締役営業統括部長兼東京支店長 1996年同社入社。営業部本社営業グループマネージャー、営業統括部本社営業部部長などを経て2024年6月より現職。


社外取締役は、青木透(元三菱UFJリサーチ&コンサルティング経営戦略部長)、岡健治(岡会計事務所代表)、平松亜矢子(共栄法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社は、「機械器具製造業」の単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 塗工乾燥装置事業


同社は、フィルム、金属箔、紙などの基材に機能性を持たせるための塗工乾燥装置を主軸に、各種乾燥機、熱処理機、化工機等の産業機械の設計・製作・据付販売を行っています。主な用途はディスプレイ部品、機能性フィルム、二次電池(エネルギー関連)などの製造プロセスです。

収益は、これらの装置を顧客である国内外のメーカーへ販売することによる製品代金から得ています。主な顧客層にはディスプレイ部品メーカーやエネルギー関連メーカー、商社などが含まれます。運営はテクノスマートが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績は以下の通りです。売上高は81億円から216億円へと大幅に拡大しており、経常利益も9億円から36億円へと順調に伸長しています。利益率も高い水準を維持し、成長傾向が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 81億円 169億円 197億円 192億円 216億円
経常利益 9億円 17億円 23億円 26億円 36億円
利益率(%) 11.3% 10.0% 11.6% 13.7% 16.5%
当期純利益 6億円 12億円 16億円 18億円 24億円

(2) 損益計算書


直近2期間の業績を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。特に営業利益率は13.5%から16.3%へと改善しており、収益性が向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 192億円 216億円
売上総利益 36億円 48億円
売上総利益率(%) 18.9% 22.3%
営業利益 26億円 35億円
営業利益率(%) 13.5% 16.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料が2.4億円(構成比19%)、支払手数料が2.0億円(同15%)を占めています。売上原価は売上高の78%を占めています。

(3) セグメント収益


品目別の売上動向を見ると、ディスプレイ部品関連機器が大幅に増加し、機能性フィルム関連も好調に推移しました。一方、電子部品関連は減少しました。エネルギー関連機器は横ばいとなりましたが、全体としては増収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
ディスプレイ部品関連機器 63億円 98億円
機能性フィルム関連塗工機器 44億円 52億円
電子部品関連塗工機器 20億円 4億円
エネルギー関連機器 52億円 52億円
化工機器 0.2億円 0.1億円
その他 13億円 10億円
連結(合計) 192億円 216億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローのパターンは「末期型(本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的)」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 15億円 -15億円
投資CF -3億円 -8億円
財務CF -11億円 -4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は60.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「Changing Life with Coating Technology」をスローガンとして掲げています。持続的な成長発展と企業価値の最大化を通じて株主や顧客の期待に応えることを目指し、常にお客様を第一とし、ベストソリューションを提供し続ける「コーティング・乾燥技術のプロ集団」を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「お客様との協働」を重視する文化を持っています。「こんな商品を!」という声に応える開発力、豊富な経験と先端知識を備えた技術者集団、そして顧客の機密情報を守る守秘義務の遵守を徹底しています。コミュニケーションを基点に動き、独自の技術で顧客の要望に応える姿勢が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2023年度から2025年度までの「第3次中期経営計画」を推進しており、最終年度の数値目標として以下を掲げています。

* 売上高:220億円
* 営業利益:26億円
* ROE(自己資本利益率):9%以上
* DOE(純資産配当率):5%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、事業戦略として、リチウムイオン電池向け等の成長が見込める二次電池市場への展開加速を掲げています。また、技能伝承のための採用強化や、設備投資を見据えた海外向け事業基盤の強化にも取り組む方針です。さらに、全固体電池などの応用分野の開発を顧客と共同で進め、5G通信向け新素材など新技術への対応も強化します。

* グローバル展開の推進
* 独自の技術による新製品開発と先端製品開発用テスト機の設置
* 工場再編完了による生産効率化と能力アップ

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は技術力、開発力、営業力および製造能力の向上を目指し、新卒および多様性のある中途採用の強化、研修・教育への積極的な投資を行う方針です。独自の教育方針のもと、適性に応じた技術者の育成に努めるとともに、資格取得支援制度も設けています。また、女性や外国人、中途採用者の管理職登用など、多様性の確保に向けた環境整備も推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.6歳 18.4年 8,800,822円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 0.0%
男性労働者の育児休業取得率 33.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) -
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) -
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) -


※同社は公表義務の対象ではないため、労働者の男女の賃金の差異については記載を省略しています。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働者に占める女性の割合(12.2%)、有給休暇取得率(83.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境と販売形態について


同社は製品を100%受注生産で販売しており、各販売先の設備投資動向に大きく影響を受けます。世界市場の景気低迷、政治情勢、自然災害、感染症などにより顧客の投資意欲が減退した場合、同社の財政状態及び経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

(2) 競合リスク及び価格の下落


同社には複数の競合企業が存在します。製品需要の拡大期には納期が優先されますが、需要減少期には供給過剰となり、厳しい価格競争に陥る可能性があります。これにより受注単価が下落し、収益性が低下するリスクがあります。

(3) 売上債権の回収リスク


同社は多額の売上債権を保有する場合があり、主要顧客の財政状態が悪化した際に貸し倒れが発生するリスクがあります。与信管理や信用調査を徹底していますが、予期せぬ経営破綻などにより債権回収が困難になった場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。