DM三井製糖 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

DM三井製糖 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証一部上場の製糖大手です。主力である砂糖事業に加え、機能性甘味料などを扱うフードサイエンス事業や不動産事業を展開しています。直近の連結業績は、売上高が1,053億円と前期並みを維持しましたが、海外粗糖相場の変動やコスト増等の影響で営業利益は前期比41.1%減、経常利益は24.2%減の減益となりました。


※本記事は、三井製糖株式会社 の有価証券報告書(第95期、自 2018年4月1日 至 2019年3月31日、2019年06月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三井製糖ってどんな会社?


同社は「スプーン印」の砂糖で知られる製糖業界のリーディングカンパニーであり、国内トップシェアを誇ります。

(1) 会社概要


同社のルーツは1947年の湘南糖化工業設立に遡ります。1949年に横浜精糖へ商号変更後、1970年に芝浦精糖、大阪製糖と合併し三井製糖となりました。その後、2001年に新名糖、2005年に台糖およびケイ・エスを吸収合併し、事業基盤を拡大しました。2018年にはシンガポールのSIS’88 Pte Ltd等を子会社化し、海外展開を加速させています。

現在の従業員数は連結1,201名、単体347名です。筆頭株主は総合商社の三井物産で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は総合商社の豊田通商となっています。

氏名 持株比率
三井物産 32.24%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.47%
豊田通商 3.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長CEOは雑賀 大介氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
雑賀 大介 代表取締役社長CEO 三井物産にて執行役員人事総務部長、代表取締役副社長執行役員などを歴任。2016年6月より現職。
多胡 祐太郎 取締役専務執行役員 三井物産食料・リテール本部糖質醗酵部長などを経て、同社取締役常務執行役員に就任。2014年4月より現職。
野村 淳一 取締役専務執行役員砂糖生産本部長 同社入社後、生産本部千葉工場長、上席執行役員砂糖生産本部神戸工場長などを歴任。2016年4月より現職。
三箇山 秀之 取締役専務執行役員CFO 三井物産執行役員総合資金部長、常務執行役員中部支社長などを経て、同社取締役常務執行役員CFOに就任。2017年4月より現職。


社外取締役は、半田純一(元ブーズ・アレン・ハミルトン代表取締役)、川村雄介(大和総研特別理事)、玉井裕子(長島・大野・常松法律事務所パートナー弁護士)、吉川美樹(三井物産常務執行役員食料本部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「砂糖事業」「フードサイエンス事業」「不動産事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

(1) 砂糖事業


精製糖(上白糖、グラニュー糖等)や砂糖関連商品の製造販売を行う主力事業です。国内では「スプーン印」ブランドで家庭用・業務用の製品を提供しており、食品メーカーや一般消費者が主な顧客です。海外では東南アジアや中国で事業を展開しています。

収益は主に製品の販売代金から得ています。運営は主に同社が行い、製品の一部は三井物産を通じて販売されています。子会社のスプーンシュガーが加工・包装等を担当し、北海道糖業がてん菜糖の製造を、海外子会社等が原料糖や精製糖の製造販売を行っています。

(2) フードサイエンス事業


機能性甘味料「パラチノース」「パラチニット」や、さとうきび抽出物、寒天、天然色素、栄養療法食品、嚥下障害対応食品などの製造販売を行っています。健康志向の高まりに対応し、食品メーカーや医療・介護機関などが顧客となります。

収益は製品の販売代金から得ています。運営は同社のほか、食品添加物を扱う株式会社タイショーテクノス、栄養療法食品等を扱うニュートリー株式会社などが担っています。

(3) 不動産事業


同社グループが保有する社有地を活用し、オフィスビルや物流倉庫、商業施設などの不動産賃貸を行っています。また、太陽光による発電事業も手掛けています。

収益はテナントからの賃貸料収入および売電収入です。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は1,000億円前後で安定的に推移していますが、利益面では変動が見られます。直近の2019年3月期は、売上高は横ばいでしたが、コスト増等の影響により経常利益および当期利益は減少しました。

項目 2015年3月期 2016年3月期 2017年3月期 2018年3月期 2019年3月期
売上高 961億円 1,014億円 1,032億円 1,053億円 1,053億円
経常利益 95億円 128億円 125億円 136億円 103億円
利益率(%) 9.9% 12.6% 12.1% 12.9% 9.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 53億円 71億円 75億円 83億円 69億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較します。売上高はほぼ横ばいで推移していますが、売上原価の増加等により売上総利益が減少し、営業利益も減少しています。利益率の低下が見られ、収益性の改善が課題となっています。

項目 2018年3月期 2019年3月期
売上高 1,053億円 1,053億円
売上総利益 257億円 240億円
売上総利益率(%) 24.4% 22.8%
営業利益 64億円 37億円
営業利益率(%) 6.0% 3.6%


販売費及び一般管理費のうち、その他経費が95億円(構成比47%)、配送費が50億円(同25%)、給料及び賞与が39億円(同19%)を占めています。売上原価は813億円で、売上高に対する構成比は77%です。

(3) セグメント収益


砂糖事業は売上高が増加したものの、相場下落やコスト増により減益となりました。フードサイエンス事業は売上高、利益ともに減少しました。不動産事業は増収増益となり、安定的な収益源となっています。

区分 売上(2018年3月期) 売上(2019年3月期) 利益(2018年3月期) 利益(2019年3月期) 利益率
砂糖事業 839億円 841億円 44億円 24億円 2.8%
フードサイエンス事業 196億円 192億円 11億円 5億円 2.5%
不動産事業 19億円 20億円 9億円 9億円 47.1%
連結(合計) 1,053億円 1,053億円 64億円 37億円 3.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2018年3月期 2019年3月期
営業CF 157億円 121億円
投資CF -51億円 -207億円
財務CF -47億円 -11億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.2%で市場平均(プライム9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.1%で市場平均(プライム製造業46.8%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「三井製糖は、安心・信頼・天然の食品素材を誠実に提供し、豊かなくらしに貢献します」を企業理念として掲げています。この理念の実践を通じて、継続的に企業価値を向上させ、全てのステークホルダーの満足を追求することを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、重要情報の早期開示やIR活動を通じて透明性の高い経営を目指すとともに、地球環境に配慮した企業活動を行っています。社会からの信頼に応え得る企業グループとして、「スプーンブランド」の確立を目指す姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、経営目標達成のための客観的な指標の一つとして、ROE(自己資本当期純利益率)8~10%を掲げています。成長分野への経営資源の投入を進めながら、収益力の強化を図ることを目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


国内砂糖事業の競争力維持・強化に加え、グローバル展開や成長分野への事業領域拡大による収益構造改革を中長期的な戦略としています。具体的には、海外(アジア)での事業価値向上、機能性素材等のフードサイエンス事業の早期収益化、不動産事業の安定収益確保などに取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、経営戦略や成長施策を確実に、かつ迅速に実行するために、業務改革と人材育成を積極的に進める方針を掲げています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2019年3月期 41.1歳 18.0年 7,300,140円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 食の安全性に関するリスク


同社グループは製品の安全・安心のため万全の体制を整備していますが、万が一品質上の重大な問題が発生した場合、対策費用の発生等により業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 農業政策等の事業環境変動


砂糖事業は売上高の大部分を占めており、政府の農業政策や通商政策(EPA・FTA等)の影響を受けやすい構造にあります。これらの政策変更により、業績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。

(3) 相場変動リスク


主力の砂糖事業において、原料である粗糖は相場商品であり市況が大きく変動します。また、製品価格も競争環境等により変動するため、これらの価格変動が業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。