タカキタ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タカキタ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

タカキタは、東京証券取引所スタンダード市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場する農業機械および軸受の製造・販売を行う企業です。主力である酪農・畜産用作業機の展開や、大型軸受の加工を手掛けています。直近の業績は、生産コスト上昇や機械投資マインドの低迷などの影響を受け、減収減益となっています。


#記事タイトル:「タカキタ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」

※本記事は、株式会社タカキタの有価証券報告書(第82期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. タカキタってどんな会社?


同社は、農業機械の製造・販売を主力とし、軸受の加工事業も展開する農作業機の総合メーカーです。

(1) 会社概要


1912年1月に三重県名張町で農具製作を創業したのが始まりです。1945年の会社設立を経て、1962年に名古屋証券取引所市場第二部、1963年に東京証券取引所市場第二部へ上場しました。1970年に光洋精工(現ジェイテクト)と業務提携し軸受などの製造を開始し、1988年に現社名に変更しています。

現在の従業員数は単体で270名です。筆頭株主はタカキタ持株会で、第2位は事業会社として取引関係やものづくりでの協力関係にあるクボタ、第3位はタナシン電機となっています。

氏名 持株比率
タカキタ持株会 17.27%
クボタ 5.84%
タナシン電機 5.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は藤澤龍也氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
藤澤龍也 代表取締役社長 1994年同社入社。2019年執行役員営業本部長等を経て、2024年4月より現職。
益満亮 取締役専務執行役員軸受部担当 兼 管理本部長 1981年同社入社。2014年取締役執行役員製造本部長等を経て、2024年6月より現職。
梨原弘勝 取締役常務執行役員品質保証室担当 兼 経営企画室長 1986年南都銀行入行。2018年同社出向、経営企画室長代理等を経て2024年6月より現職。
藤原康弘 取締役執行役員開発本部長 1995年同社入社。2021年製造開発本部開発部長等を経て、2024年4月より現職。
栁島大司 取締役執行役員営業本部・海外営業本部担当 兼 製造本部長 2001年同社入社。2022年製造部本社工場長等を経て、2025年7月より現職。
松本充生 取締役 1978年同社入社。2011年代表取締役社長等を歴任し、2025年6月より現職。
沖篤義 取締役(常勤監査等委員) 1977年同社入社。2021年専務取締役管理本部担当等を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、沖恒弘(元あずさ監査法人パートナー)、服部永次(元南都銀行取締役)、向井太志(高階&パートナーズ法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「農業機械事業」および「軸受事業」を展開しています。

(1) 農業機械事業


主に牧草や飼料稲、飼料用とうもろこしの収穫などに使用する酪農・畜産用飼料収穫機や、肥料・土壌改良剤の散布などに使用する土づくり関連作業機などの農業用作業機の製造および販売を行っています。水田や畑作、果樹などの分野に向けたスマート農業対応の製品展開も進めています。

農業機械の製造・販売を通じた製品売上および補用部品の販売などにより収益を獲得しています。運営は同社、および中国において農業機械の生産販売を担う関連会社の山東五征高北農牧機械有限公司が行っています。

(2) 軸受事業


産業用機械や鉄道車両用に使用される大型軸受(ベアリング)の加工を行っています。具体的には、ベアリングを構成する外側の大きなリングや内側の小さなリングである外輪・内輪の旋削、およびその間に挟まれた転子(コロやローラー)の旋削、研磨加工を手掛けています。

取引先のベアリングメーカーから原材料の支給を受け、加工済みの部品を引き渡すことによる加工などの役務収益を獲得しています。運営は同社が行っており、徹底した納期や品質の管理のもとに受注量の確保と生産性の向上に努めています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、2024年3月期までは増収増益基調で推移し過去最高益を記録したものの、その後は畜産・酪農分野を取り巻く市況の低迷や資材高騰などの外部環境の変化を受け、売上高・利益ともに減少に転じています。直近の利益率は5.7%に低下しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 70億円 77億円 85億円 70億円 65億円
経常利益 6億円 7億円 10億円 4億円 4億円
利益率(%) 8.4% 8.7% 12.1% 5.7% 5.7%
当期純利益 4億円 5億円 7億円 6億円 2億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益も減少していますが、内製化の進展や業務改善などにより原価率が改善した結果、売上総利益率は上昇しています。一方、営業利益率も前事業年度と同水準を維持しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 70億円 65億円
売上総利益 21億円 20億円
売上総利益率(%) 30.0% 31.0%
営業利益 3億円 3億円
営業利益率(%) 4.9% 5.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が6億円(構成比35%)、支払運賃及び諸掛費が2億円(同14%)を占めています。売上原価合計に対しては、材料費が23億円(同57%)、労務費が9億円(同23%)となっています。

(3) セグメント収益


セグメント別の売上高は、農業機械事業において土づくり関連作業機などが堅調だったものの、飼料や燃料費の高止まりによる需要低迷の影響を受け、減収となりました。軸受事業においても受注の減少により減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
農業機械事業 66億円 61億円
軸受事業 4億円 4億円
連結(合計) 70億円 65億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は84.2%で市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 3億円 7億円
投資CF 4億円 -7億円
財務CF -1億円 -1億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、Purpose(存在意義)として「未来をつくるイノベーションで、地球からの恵みをすべての人に届ける」を掲げています。創業以来の理念のもと、革新的な技術や製品を通じて人々の暮らしをより豊かにし、持続可能な未来を実現することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、Story(歴史と信念)として「土に親しみ、土に生きる」をモットーとし、地球に優しいモノづくりを通じて新しい技術と信頼、感動をつくり続けることを重視しています。WAY(価値観)として、常に現状否定に徹し、新たな視点で挑戦すること、一つ上の基準・視点に立って判断・行動することを定めています。

(3) 経営計画・目標


同社は創業120周年を見据えた長期経営計画「Offensive120」を推進しており、最終年度の目標として以下の数値を掲げています。

* 売上高:100億円
* 海外売上高:20億円
* ROE・ROIC:10%
* 株主還元:配当性向30%以上を目安に持続的な利益還元

(4) 成長戦略と重点施策


農業機械事業では、国内市場においてスマート農業への対応や水田・畑作・果樹などの新市場に向けた新製品投入により収益基盤を強化します。また、環境負荷低減に寄与する土づくり関連製品の提案を進めます。海外市場では韓国や欧州市場の深耕とともに、米国市場を成長領域として販売拡大に取り組み、グローバルニッチ市場におけるブランド確立を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材を最も重要な経営資源の一つと位置付け、人的資本への継続的な投資を通じて事業成長と企業価値の向上を実現することを基本方針としています。従業員一人ひとりが価値観を実践し、自発的に行動する「価値創造型人材」の育成を目指し、採用・育成・配置・評価・処遇の各施策を一体的に推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.8歳 15.1年 5,297,072円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.2%
男性育児休業取得率 85.7%
男女賃金差異(全労働者) 73.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 73.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 108.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 農業環境の変動


主要事業である農業機械事業において、政府の農業政策の転換や、農業従事者の高齢化、後継者不足による農家戸数の減少といった構造的な課題が存在します。こうした外部環境の変動により農業市場が低迷した場合、同社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 業績の季節性と天候の変動


同社は、冬季にあたる第4四半期(1月〜3月)が農業機械事業の不需要期となるため、他の四半期と比較して収益性が低下する傾向があります。また、天候不順などにより農作物が不作となった場合にも、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 原材料および部品の調達


安定した原材料などの調達とコストダウンに努めていますが、中東情勢などを背景とした原材料・資材の調達難や燃料費をはじめとする物価の上昇が発生した場合、生産計画や販売計画に支障が生じ、収益性を圧迫する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。