キクカワエンタープライズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

キクカワエンタープライズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

キクカワエンタープライズは東京証券取引所スタンダード市場および名古屋証券取引所メイン市場に上場し、木工機械と工作機械の製造販売を主要事業として展開しています。最新の第145期決算では、プラント受注の減少などにより売上高と各段階利益がいずれも減少し、前年同期比で減収減益となる厳しい結果となりました。


※本記事は、キクカワエンタープライズ株式会社の有価証券報告書(第145期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. キクカワエンタープライズってどんな会社?

同社は木工機械および工作機械の開発・製造・販売を一貫して行う、老舗のモノづくり企業です。

(1) 会社概要

同社は1897年に合名会社菊川鉄工所として設立され、国産第1号となる製材機械の製造を開始しました。1954年に株式会社へと組織変更し、1964年には株式上場を果たしています。1967年に米国の企業と技術提携を行い、2012年には現在のキクカワエンタープライズに商号を変更して事業を展開してきました。

同社(単体)の従業員数は189名です。筆頭株主は同社代表取締役社長の木戸修氏で、第2位株主には事業・投資会社の光通信に関連する投資事業組合が名を連ねています。第3位株主には同社代表取締役の菊川厚氏が入っており、経営陣や事業会社による安定した資本構成となっています。

氏名 持株比率
木戸修 7.18%
光通信KK投資事業有限責任組合無限責任組合員光通信 6.46%
菊川厚 5.32%

(2) 経営陣

同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は菊川厚氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
菊川厚 取締役社長(代表取締役) 1989年同社入社。同年取締役就任、1993年代表取締役専務就任を経て、1997年より現職。
菊川博史 取締役副社長(代表取締役) 1984年同社入社。1989年取締役就任、1993年常務取締役就任等を経て、2009年より現職。
出口行男 常務取締役事務部門担当 1966年同社入社。2003年営業部長、2007年取締役営業部長就任を経て、2011年より現職。
高橋正和 取締役開発設計部長 1973年同社入社。2013年開発設計部長を経て、2015年より現職。
一色隆則 取締役執行役員 1981年同社入社。2015年総務部長、2020年取締役総務部長就任を経て、2025年より現職。
小林和浩 取締役製造部長 1988年同社入社。2020年開発設計部次長兼製造部次長を経て、2021年より現職。
菊川慶一 取締役営業部長 2015年同社入社。2020年営業部長を経て、2022年より現職。
倉井有子 取締役(常勤監査等委員) 1973年同社入社。2006年経理課長、2016年監査役を経て、2017年より現職。


社外取締役は、柳谷剛(元ヘルシーファミリー代表取締役社長)、青木利公(元三重総合信用代表取締役社長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「木工機械」および「工作機械」を展開しています。

(1) 木工機械

丸太を建築用、木工用などの角材、板材、小割材に加工する機械や、それらを合板、繊維板、合成樹脂などの製品に二次加工する機械の開発・製造および販売を行っています。また、環境に配慮した植林材の有効活用などにも貢献しています。

製品の販売代金や据付作業の対価などを顧客から受け取る収益モデルです。長年の技術蓄積を活かした提案営業やアフターサービスの提供も行っており、事業の運営は同社が行っています。

(2) 工作機械

鉄、非鉄金属、その他新素材などを加工する機械の開発・製造および販売を行っています。航空機産業、鉄道車両産業、自動車産業向けなどで使用される次世代型素材を加工するNC加工機などの高度な機械を取り扱っています。

機械本体や関連部品の販売代金、システム構築や据付作業の対価を顧客から受け取るビジネスモデルです。人手不足や人件費上昇に対応した自動化・省人化への設備投資需要に向けた事業展開を行っており、運営は同社が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

売上・利益ともに数年間は高水準で推移していましたが、直近の事業年度ではプラント受注の減少などにより大幅な減収減益に転じています。しかしながら、利益率自体は二桁台を維持しており、一定の収益力は確保されている状況です。

項目 第141期 第142期 第143期 第144期 第145期
売上高 41.8億円 41.3億円 54.9億円 55.3億円 38.6億円
経常利益 4.5億円 5.2億円 8.4億円 10.9億円 4.7億円
利益率(%) 10.8% 12.5% 15.4% 19.6% 12.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.4億円 3.8億円 6.2億円 7.4億円 3.3億円

(2) 損益計算書

売上の減少に伴い、売上総利益および営業利益も大きく減少しています。特に営業利益率は前年度の18.5%から9.8%へと大幅な低下が見られ、製造コストの上昇等に対応した販売価格の適正化や生産効率の向上が課題となっています。

項目 第144期 第145期
売上高 55.3億円 38.6億円
売上総利益 23.4億円 15.9億円
売上総利益率(%) 42.3% 41.1%
営業利益 10.2億円 3.8億円
営業利益率(%) 18.5% 9.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.3億円(構成比35%)、旅費及び交通費が1.7億円(同14%)を占めています。また、当期の総製造費用においては、材料費が10.1億円(構成比50%)、労務費が8.4億円(同41%)となっています。

(3) セグメント収益

主力であった木工機械事業は、住宅着工数の長期低迷やプラント受注の減少などにより大幅な減収となりました。一方で、工作機械事業は人手不足等への対応から自動化・省人化に向けた設備投資需要を捉え、売上を伸ばしています。

区分 売上(第144期) 売上(第145期)
木工機械 42.0億円 21.4億円
工作機械 13.3億円 17.2億円
合計 55.3億円 38.6億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 第144期 第145期
営業CF 0.8億円 9.1億円
投資CF -3.9億円 -5.7億円
財務CF -2.3億円 -2.1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は87.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は、事業活動を通して企業価値を向上するため、「稼ぐ力」を養うための適切な投資を行うと共に、ものづくり企業としての「ブランド」価値を創造することを基本方針としています。顧客、取引先、従業員、地元地域の皆様などと密接に連携を取り、社会に良き影響を与えることを目指しています。

(2) 企業文化

120年を超えて積み上げてきた技術・技能の継承と更なる向上を図りながら、同社の考え方に共鳴する社外ネットワークの強化に取り組むなど、持続的な成長基盤の構築を重視しています。また、安全衛生方針・品質方針・内部統制方針を定め、問題点の継続的改善に取り組む風土があります。

(3) 経営計画・目標

同社は、通期決算発表の場において次期の業績予想として売上・利益目標を掲げ、四半期毎にその進捗を管理しています。株主還元策の根幹をなす配当予想を随時見直していくことが、企業価値をより正確に表現し株主価値を向上させる上で重要であると認識し、これを社内外において共有しうる重要な経営指標としています。

(4) 成長戦略と重点施策

中長期的な成長と企業価値向上に向け、新型設備の導入やデジタル投資を積極的に推進し、効率的かつ高度な工場運営体制の構築を進めています。また、AIなどの新しい先端技術をいち早く製品に取り入れるための研究開発を推進し、更なる製品競争力の向上に努める方針です。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

様々な産業分野における加工機械の開発から販売までを一貫して行う企業として、高度な技術的要求に対応できる人材の育成を重視しています。人事評価制度と連動した人材育成制度を導入し、上司との面談を通じた個別のスキルアップ計画の策定により、組織全体の能力向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
第145期 41.4歳 19.8年 5,577,500円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用労働者) -
男女賃金差異(パート・有期労働者) -

※同社は公表義務の対象ではないため、有報には男女賃金差異の記載がありません。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 設備投資に関わる景気変動リスク

各種製造業の業績推移は、為替変動や税制などの政策、あるいは国際的な資源価格の動向に大きく左右されます。これにより、同社の事業に関連が深い製造業各社の設備投資意欲が大きく変動し、同社の受注や売上に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替変動や国際情勢に伴う海外活動リスク

製造機械の輸出取引において、為替レートが大幅な円高基調で推移した場合には国際競争力の低下要因となり、逆に円安基調で推移した場合には仕入コストの増加要因となります。また、国際的紛争に伴う経済活動の制限事項も同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) プラント設備納入に伴う期間業績の変動リスク

同社の製造機械はプラント設備の一部を構成することも多く、仕入部品の長納期化や国内外における納入先工場の建設計画の遅延などにより、一定期間の出荷遅延が発生する場合があります。当該案件が年間売上高に占める構成比が高いため、期間業績が当初見込みから大きく変動する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。