※本記事は、キクカワエンタープライズ株式会社 の有価証券報告書(第144期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. キクカワエンタープライズってどんな会社?
1897年創業の老舗機械メーカー。木工機械と工作機械の製造販売を柱とし、伊勢市に本社を構えています。
■(1) 会社概要
1897年に合名会社菊川鉄工所として創業し、国産初の製材機械を製造開始。1954年に株式会社化し、1964年に株式上場を果たしました。2012年に現社名へ変更し、伊勢市に新工場を建設。120年以上の歴史を持つ機械メーカーとして、木工機械及び工作機械の製造販売を展開しています。
現在、単体従業員数は184名です。筆頭株主は光通信で、第2位は個人株主(木戸修氏)、第3位は代表取締役社長の菊川厚氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 光通信 | 7.50% |
| 木戸 修 | 7.17% |
| 菊川 厚 | 5.29% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は菊川厚氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 菊川 厚 | 取締役社長(代表取締役) | 1989年入社。専務等を経て1997年より現職。 |
| 菊川 博史 | 取締役副社長(代表取締役) | 1984年入社。常務、専務等を経て2009年より現職。 |
| 出口 行男 | 常務取締役事務部門担当 | 1966年入社。取締役営業部長等を経て2011年より現職。 |
| 髙橋 正和 | 取締役開発設計部長 | 1973年入社。開発設計部長を経て2015年より現職。 |
| 一色 隆則 | 取締役執行役員 | 1981年入社。総務部長を経て2025年より現職。 |
| 小林 和浩 | 取締役製造部長 | 1988年入社。開発設計部次長等を経て2021年より現職。 |
| 菊川 慶一 | 取締役営業部長 | 2015年入社。営業部長を経て2022年より現職。 |
| 倉井 有子 | 取締役(常勤監査等委員) | 1973年入社。経理課長、監査役を経て2017年より現職。 |
社外取締役は、柳谷剛(ヘルシーファミリー代表取締役社長)、青木利公(三重総合信用代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「木工機械」および「工作機械」事業を展開しています。
■(1) 木工機械
丸太を建築用や木工用の角材・板材等に加工する機械や、合板・繊維板などを二次加工する機械を提供しています。主要顧客は木材加工業者や住宅関連産業です。
収益は、これらの機械の製造販売および部品販売、メンテナンス等から得ています。運営は主に同社が行っています。
■(2) 工作機械
鉄や非鉄金属、新素材などを加工する機械を提供しており、自動車産業やIT関連産業などで活用されています。
収益は、機械の製造販売や部品販売等から得ています。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は増加傾向にあり、直近では55億円規模に達しています。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに順調に推移しており、高い利益率を維持しています。特に直近の当期純利益は7億円を超え、増益基調が続いています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 45億円 | 42億円 | 41億円 | 55億円 | 55億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 5億円 | 5億円 | 8億円 | 11億円 |
| 利益率(%) | -% | -% | -% | -% | -% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 6億円 | 3億円 | 4億円 | 6億円 | 7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の微増に加え、売上総利益が増加したことで営業利益も拡大しています。利益率も改善傾向にあり、効率的な事業運営が行われていることがうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 55億円 | 55億円 |
| 売上総利益 | 21億円 | 23億円 |
| 売上総利益率(%) | 38.1% | 42.3% |
| 営業利益 | 8億円 | 10億円 |
| 営業利益率(%) | 14.1% | 18.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.5億円(構成比33.9%)、運賃及び荷造費が2.0億円(同15.1%)を占めています。また、売上原価は売上高の57.7%を占めています。
■(3) セグメント収益
木工機械は一部輸出が減少したものの国内向けが堅調で増収となりました。工作機械は需要回復の兆しはあるものの、全体として減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 木工機械 | 41億円 | 42億円 |
| 工作機械 | 14億円 | 13億円 |
| 連結(合計) | 55億円 | 55億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラスを維持し、投資活動および財務活動はマイナスとなっていることから、本業で稼いだ資金を投資や株主還元、借入返済に充てる「健全型」のキャッシュ・フローと言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 4億円 | 0.8億円 |
| 投資CF | -5億円 | -4億円 |
| 財務CF | -2億円 | -2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.2%で市場平均(7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は84.6%で市場平均(57.5%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、事業活動を通じて企業価値を向上させるため、「稼ぐ力」を養う適切な投資を行うとともに、ものづくり企業としての「ブランド」価値を創造することを基本方針としています。顧客や地域社会と連携し、社会に良い影響を与えることを重視しています。
■(2) 企業文化
120年を超えて積み上げてきた技術・技能の継承と向上を図りながら、安全衛生・品質・内部統制の方針を定め、継続的な改善に取り組む姿勢を持っています。また、自社の考え方に共鳴する社外ネットワーク作りにも積極的に取り組む文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、通期決算発表において次期の売上・利益目標を掲げ、四半期ごとに進捗を管理しています。また、株主還元策の根幹である配当予想を随時見直すことが、企業価値の正確な表現と株主価値向上に重要であると認識しており、その達成を重要な経営指標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
中長期的な発展を加速させるため、新型設備の導入やデジタル投資を進め、効率的で先進的な工場運営を目指しています。木工機械ではデジタル化や省人化に対応した技術開発を行い、工作機械では次世代自動車産業やIT関連産業への活用可能性を追求しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な成長を確保するため、多様な人材を採用するとともに、従業員のモチベーションを引き出す待遇改善に取り組んでいます。また、技術・技能の継承を図りながら、人材採用のために地域教育機関とのネットワーク拡充を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.9歳 | 19.4年 | 6,579,774円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 7.7% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 90.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | -% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | -% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・有期労働者) | -% |
※同社は常時雇用する労働者の数が300人を超えないため、男女の賃金の差異の公表義務の対象ではありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 景気変動のリスク
各種製造業の業績は為替変動や資源価格、政策などに影響を受けます。これにより、同社事業に関連の深い設備投資意欲が変動し、業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 海外活動のリスク
製品の輸出において、大幅な円高は競争力低下、円安は仕入コスト増加の要因となり得ます。また、国際紛争に伴う経済活動の制限などが業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 債権の貸倒リスク
販売先に対する売掛債権について貸倒リスクがあります。与信管理を行っていますが、顧客の状況変化により貸倒引当金の設定が必要となる場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 期間業績の変動リスク
同社の製造機械はプラント設備の一部となることも多く、部品の長納期化や納入先計画の遅延により出荷遅延が発生する場合があります。大型案件が売上に占める割合が高いため、これにより期間業績が当初見込みから大きく変動する可能性があります。



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