日阪製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日阪製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日阪製作所は、東京証券取引所プライム市場に上場し、プレート式熱交換器や食品・医薬向けプロセスエンジニアリング装置、ボールバルブの製造販売を主力とする企業です。直近の業績では、プロセジエンジニアリング事業での大口案件の納入や主力製品の販売が好調に推移したことにより、過去最高の売上高を記録し増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社日阪製作所の有価証券報告書(第97期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日阪製作所ってどんな会社?


同社は、産業用熱交換器や食品・医薬向け設備機器の製造で社会課題の解決に貢献する機械メーカーです。

(1) 会社概要


1942年に三石工業として創立し、その後日阪製作所に商号を変更しました。1953年にプレート式熱交換器、1958年にボールバルブ、1975年に食品機械を開発するなど、現在の主力事業の基盤を順次構築しました。1987年に東京証券取引所市場第一部へ上場し、近年は海外拠点や新事業所の設立を推進しています。

現在の従業員数は連結で1,063名、単体で725名です。大株主の状況を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は事業会社である日本生命保険、第3位も信託銀行となっています。外部の機関投資家や取引先金融機関が上位株主として名を連ねる安定した株主構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.79%
日本生命保険 3.65%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505103 3.57%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長社長執行役員は宇佐美俊哉氏が務めています。社外取締役の比率は過半数を超えています。

氏名 役職 主な経歴
宇佐美俊哉 代表取締役社長社長執行役員 1983年3月日阪製作所入社。熱交換器やバルブ事業本部の要職を歴任し、2024年4月より現職。
足立昭仁 取締役専務執行役員技術開発担当 1984年3月同社入社。プロセスエンジニアリング事業本部長などを経て、2026年4月より現職。
波多野浩史 取締役上席執行役員管理、経営戦略、IR担当兼青梅事業所、東京支店管掌 2008年9月同社入社。経営管理部部長や経営企画本部本部長を経て、2024年6月より現職。
服部直人 取締役(監査等委員) 1984年3月同社入社。バルブ事業本部営業部部長などを経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、水元公二(日本製鉄元副社長)、角野佑子(弁護士)、生越栄美子(公認会計士)、仲井晃(弁護士)、藤田典之(税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「熱交換器事業」「プロセスエンジニアリング事業」「バルブ事業」および「その他」事業を展開しています。

熱交換器事業

化学、造船、食品、空調などの幅広い産業向けに、流体の加熱や冷却に不可欠なプレート式熱交換器やブレージングプレート式熱交換器を製造・販売しています。
顧客への製品販売やメンテナンスサービスの提供を通じて収益を得ています。事業の運営は主に日阪製作所が行い、海外子会社との連携による事業展開も進めています。

プロセスエンジニアリング事業

レトルト食品などの調理殺菌装置、医薬品の滅菌装置、無菌米飯製造プラント、染色仕上機器などを製造・販売しています。
食品、医薬、染色関連の顧客への製品販売、プラントエンジニアリング、アフターサービスにより収益を得ています。日阪製作所や日阪プロダクツが事業を運営しています。

バルブ事業

様々な流体の制御に使用されるボールバルブなどの製造・販売を行っています。標準型から特殊用途向けまで多様な製品を提供します。
化学、上下水道処理設備、土木工事などの顧客へのバルブ製品の販売を通じて収益を得ています。運営は主に日阪製作所が行っています。

その他

主力3事業に含まれないその他の事業活動を行っています。
発電事業などからの収益が含まれます。事業の運営は同社グループが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、主力事業の需要増や大口案件の獲得などにより、売上高が継続的に拡大し過去最高を更新しています。経常利益も売上増加に伴い安定して成長を続けており、強固な収益基盤を示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 301億円 341億円 342億円 384億円 449億円
経常利益 23億円 24億円 29億円 34億円 36億円
利益率(%) 7.5% 7.0% 8.5% 8.8% 8.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 19億円 19億円 32億円 31億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に牽引され、売上総利益および営業利益ともに順調に拡大しています。原価率や固定費の上昇は見られるものの、増収効果によって営業利益を押し上げる構造となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 384億円 449億円
売上総利益 98億円 104億円
売上総利益率(%) 25.5% 23.1%
営業利益 29億円 33億円
営業利益率(%) 7.6% 7.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が20億円(構成比29%)、荷造運賃が7億円(同11%)、役員報酬が4億円(同6%)を占めています。売上原価は345億円で、大部分を製品の製造等に関わる費用が占めています。

(3) セグメント収益


プロセスエンジニアリング事業は、無菌包装米飯製造プラントなどの大口案件や全自動連続殺菌冷却装置の好調により大幅な増収増益を達成しました。一方、熱交換器事業は増収ながらも事業所再構築関連費用の影響等で減益となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
熱交換器事業 162億円 172億円 13億円 10億円 5.7%
プロセスエンジニアリング事業 172億円 224億円 14億円 21億円 9.5%
バルブ事業 50億円 52億円 3億円 4億円 7.1%
その他 1億円 1億円 1億円 1億円 72.2%
連結(合計) 384億円 449億円 31億円 35億円 7.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


事業活動の改善・転換を反映し、営業利益と資産の売却等によって得た資金で借入金の返済を進める「改善型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 47億円 17億円
投資CF -33億円 4億円
財務CF -24億円 -31億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


社訓、社是、五原則、行動指針からなる「HISAKA MIND」を経営理念として掲げています。社会課題を解決できる「省エネ」「省人化」を実現する良質な機械やサービスを安定供給するメーカーであることを存在意義とし、これらを軸に持続的な成長を目指しています。

(2) 企業文化


HISAKA MINDの五原則である「同心協力」「進取果敢」「自利利他」「公明正大」「安全安心」を重視しています。また、行動指針「より高く」「より広く」「より深く」の実践を通じて変化に対応し続ける「+型人材」を育成し、挑戦と成長を促す組織文化の醸成に努めています。

(3) 経営計画・目標


新中期経営計画「Challenge2028」では、経営ビジョンに「気候変動への挑戦」を掲げ、持続的成長と企業価値向上を目指しています。最終年度である2029年3月期には以下の数値目標の達成を掲げています。

* 売上高550億円
* 営業利益50億円以上
* ROE7.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の収益力と競争力の強化、及び事業ポートフォリオの最適化を進めます。具体的には、省エネや環境対応製品の開発、メンテナンス事業の強化、海外市場の開拓に注力します。また、人的資本の強化やデジタル化による生産性向上を通じて経営基盤を強固なものとし、株主還元の充実と資本効率の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「気候変動への挑戦」の実現に向け、人的資本への投資を最重要課題と位置付けています。「同社とその社員は『幸せ共同体』である」という信念のもと、自律的に成長し続ける人材や新しいことに果敢に挑戦する人材を育成し、挑戦と成長を支援する社内環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.8歳 15.2年 7,240,601円


※平均年間給与には、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 57.1%
男女賃金差異(全労働者) 67.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 71.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 125.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、監督職に占める女性労働者の割合(5%)、死亡災害発生件数(0件)、Scope1およびScope2のGHG排出量(4,749トン-CO2)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 原材料・資材価格の変動リスク

同社の主な原材料であるステンレスやチタン材などの価格変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。材料価格の高騰は製造原価を押し上げるリスクがあり、反対に価格の下落は製品価格の下落圧力や棚卸資産の評価損につながる懸念があります。

(2) 為替相場の変動リスク

同社グループは海外への事業展開や外貨建ての取引を行っているため、為替の変動リスクが存在します。原則として為替予約によるヘッジを行っていますが、契約条件の変更や海外企業との価格競争において不利になる可能性があり、業績に影響を与えるリスクがあります。

(3) 環境問題と法規制に関するリスク

事業活動において大気汚染防止法や水質汚濁防止法などの環境法令を遵守していますが、万一有害物質が流出した場合には、社会的信用の低下や多額の対策費用が発生する可能性があります。また、将来的な環境規制の強化に伴い、新たな設備投資負担が生じるリスクもあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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