日阪製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日阪製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の産業機械メーカーです。プレート式熱交換器や調理殺菌装置、ボールバルブ等の製造販売を主力事業とします。直近決算では、プロセスエンジニアリング事業が好調に推移し、売上高は384億円で増収、経常利益は34億円で増益となりました。海外展開や生産体制の強化を推進しています。


※本記事は、株式会社日阪製作所の有価証券報告書(第96期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日阪製作所ってどんな会社?

熱と圧力の制御技術を核に、産業用熱交換器や食品・医薬用殺菌装置、バルブなどを展開する機械メーカーです。

(1) 会社概要

同社は1942年に三石工業として創立し、1951年に現商号へ変更しました。1953年にプレート式熱交換器、1958年にボールバルブ、1975年にレトルト調理殺菌装置を開発するなど、独自技術で事業を拡大してきました。現在は東証プライム市場に上場しており、2024年には子会社の統合や海外拠点の設立を行い、グローバルな生産・販売体制を強化しています。

2025年3月31日現在、連結従業員数は1,032名、単体従業員数は712名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、続いて外国法人等の常任代理人である銀行、生命保険会社が名を連ねており、機関投資家や金融機関が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 11.57%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505103 3.74%
日本生命保険相互会社 3.52%

(2) 経営陣

同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長社長執行役員は宇佐美俊哉氏です。取締役会における社外取締役の比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
宇佐美 俊哉 代表取締役社長社長執行役員 1983年入社。熱交換器事業本部営業部長やバルブ事業本部長を歴任し、常務執行役員等を経て2024年4月より現職。
足立 昭仁 取締役専務執行役員 1984年入社。プロセスエンジニアリング事業本部本部長や技術開発本部本部長、常務執行役員等を歴任し、2025年4月より現職。
波多野 浩史 取締役上席執行役員 2008年入社。経営管理部部長や経営企画本部本部長を歴任し、2024年6月より現職。
服部 直人 取締役(監査等委員) 1984年入社。バルブ事業本部営業部部長や東京支店支店長代理を経て2023年6月より現職。


社外取締役は、水元公二(元日新製鋼代表取締役副社長)、角野佑子(弁護士)、生越栄美子(公認会計士)、仲井晃(弁護士)、藤田典之(税理士)です。

2. 事業内容

同社グループは、「熱交換器事業」「プロセスエンジニアリング事業」「バルブ事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 熱交換器事業

化学、造船、食品、空調、発電設備などで使用されるプレート式熱交換器や、冷凍機用などのブレージングプレート式熱交換器等を製造・販売しています。産業界の熱エネルギー効率化に貢献する製品群を提供し、幅広い業界を顧客としています。

製品販売による代金が主な収益源です。運営は主に日阪製作所が行っており、海外ではHISAKAWORKS S.E.A. SDN. BHD.などの現地法人が製造・販売を担っています。

(2) プロセスエンジニアリング事業

食品向けのレトルト調理殺菌装置や無菌米飯製造プラント、医薬向けの滅菌装置、繊維産業向けの染色仕上機器などを製造・販売しています。「食」「医薬」「染色」の分野で、設備の設計から施工、メンテナンスまでを提供しています。

機器やプラントの販売代金、およびエンジニアリング・メンテナンス料が収益源です。運営は日阪製作所および日阪プロダクツ、小松川化工機などが連携して行っています。

(3) バルブ事業

様々な流体の制御に使用されるボールバルブやダイヤフラムバルブなどを製造・販売しています。標準型から特殊用途向けまで幅広いラインアップを持ち、一般産業機械やプラント設備向けに提供しています。

製品販売による代金が収益源です。運営は主に日阪製作所が行っており、中国などの海外拠点とも連携しています。

(4) その他

上記セグメントに含まれない事業として、発電事業などを行っています。

売電収入などが収益源となります。運営は主に日阪製作所が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に増加傾向にあります。特に直近では380億円台に達し、成長が続いています。利益面でも、経常利益は毎期黒字を確保しており、直近では30億円台と高い水準で推移しています。当期純利益も増加傾向にあり、収益性は安定的に推移していると言えます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 284億円 301億円 341億円 342億円 384億円
経常利益 18億円 23億円 24億円 29億円 34億円
利益率(%) 6.2% 7.5% 7.0% 8.5% 8.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 9億円 19億円 19億円 19億円 32億円

(2) 損益計算書

売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も増加しています。売上総利益率は約24〜25%の水準を維持しています。営業利益も増益となっており、本業の収益力は向上しています。全体として増収増益の基調にあり、堅調な業績推移を示しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 342億円 384億円
売上総利益 83億円 98億円
売上総利益率(%) 24.3% 25.5%
営業利益 25億円 29億円
営業利益率(%) 7.2% 7.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が19億円(構成比27%)、荷造運賃が7億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益

熱交換器事業はメンテナンス案件や空調向けが好調で増収となりましたが、在庫評価減などで減益でした。プロセスエンジニアリング事業は食品・飲料向けプラントや海外向け染色仕上機器が伸長し、大幅な増収増益を達成しました。バルブ事業は売上横ばいながら原材料高で減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
熱交換器事業 152億円 162億円 18億円 13億円 8.3%
プロセスエンジニアリング事業 140億円 172億円 3億円 14億円 8.3%
バルブ事業 50億円 50億円 4億円 3億円 5.9%
その他 1億円 1億円 1億円 1億円 73.9%
調整額 - - 0億円 0億円 -
連結(合計) 342億円 384億円 25億円 29億円 7.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることから、本業で稼いだ資金を借入金の返済や株主還元、設備投資に充てている「健全型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -5億円 47億円
投資CF -38億円 -33億円
財務CF 38億円 -24億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社は、創業100周年にあたる2042年度に向けた長期ビジョンとして「流体の熱と圧力の制御技術を結集し、エネルギー・水・食の明日(あした)を、お客様と共に支える企業になる」を掲げています。また、SDGsの考え方を取り入れたCSR-SDGsビジョンを定め、事業を通じて社会課題を解決し、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化

同社は、社訓「誠心(まごころ)」のもと、行動指針として「より高く」「より広く」「より深く」を掲げています。また、経営理念の実践として「HISAKA MIND」の五原則(同心協力、進取果敢、自利利他、公明正大、安心安全)に基づき、挑戦と成長を通じてサステナブルな事業活動を推進する文化の醸成を図っています。

(3) 経営計画・目標

同社は、中期経営計画「G-23」を推進しており、最終年度である2026年3月期の連結業績目標を掲げています。
* 受注高:410億円
* 売上高:440億円
* 営業利益:30億円
* 経常利益:33.5億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:26.9億円
* 営業利益率:6.8%
* ROE:4.5%

(4) 成長戦略と重点施策

中期経営計画「G-23」では、重要課題(マテリアリティ)への対応を基本方針とし、熱交換器事業では熱ソリューションの提供、プロセスエンジニアリング事業ではエンジニアリング事業強化、バルブ事業では顧客ニーズに寄り添う製品の拡充を掲げています。また、グローバル生産体制の構築や、既存事業所の再構築、新基幹システムの導入などの戦略投資を推進しています。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

同社は「誠心(まごころ)」の社訓のもと、「挑戦と成長のサイクルを回すことで変化に対応し続ける人財」を「+型人材」と定義し、育成を目指しています。「育てたい/育ちたい」を組織文化にし、活力ある社員集団を形成することを目指しています。また、社員一人ひとりの人格・価値観・多様性を尊重し、安全で健康的な職場環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.6歳 15.3年 6,888,932円


※平均年間給与には、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.0%
男性育児休業取得率 81.8%
男女賃金差異(全労働者) 66.4%
男女賃金差異(正規雇用) 73.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 98.1%

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況および原材料価格の変動

日本、アジア、欧米などで事業展開しており、各国の景気や為替変動の影響を受けます。また、ステンレスやチタンなどの原材料価格の高騰は製造原価を上昇させ、価格の下落は製品価格や棚卸資産評価に影響を与え、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替相場の変動

外貨建取引に関して、契約締結と同時に為替予約によるヘッジを行っていますが、契約条件の変更や引合い段階での価格競争力への影響により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 退職給付債務の変動

退職給付費用は数理計算上の前提条件や年金資産の期待収益率に基づいて算出されており、割引率の低下や年金資産の時価下落が発生した場合、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 自然災害・感染症等の発生

地震・水害等の自然災害や感染症の流行、戦争、テロなどが発生した場合、甚大な被害を受ける可能性があります。直接的な損害がなくても、供給網の混乱やサプライチェーンの寸断により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。