※本記事は、株式会社桜井製作所の有価証券報告書(第77期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 桜井製作所ってどんな会社?
同社は、工作機械メーカーとしての技術力と自動車部品メーカーとしての量産ノウハウを併せ持つ「結合企業」です。
■(1) 会社概要
同社は1950年に創業し、1953年に設立されました。1963年には株式を東京店頭市場に登録し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しています。その後、2022年の市場区分見直しに伴い、東証スタンダード市場へ移行しました。現在も浜松市を拠点に、グローバルな事業展開を行っています。
従業員数は連結で285名、単体で183名です。筆頭株主は同社の親会社等にあたる桜井興産(不動産賃貸業)で、第2位は桜井取引先持株会、第3位は創業家関係者の櫻井美枝子氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 桜井興産 | 27.03% |
| 桜井取引先持株会 | 10.17% |
| 櫻井 美枝子 | 9.39% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は櫻井成二氏が務めています。社外取締役比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 櫻井 成二 | 代表取締役社長 | 2010年同社入社、取締役を経て2014年より現職。桜井興産取締役を兼任。 |
| 河合 誠一郎 | 取締役製造本部部長 | 1983年同社入社。工機部部長、部品部部長、総務部部長等を歴任し、2023年より現職。 |
| 櫻井 美枝子 | 取締役 | 1993年同社入社。同年より現職。桜井興産取締役社長を兼任。 |
| 櫻井 耕二 | 取締役 | 2019年同社入社。GSE協同組合代表理事を経て、2022年より現職。 |
社外取締役は、関伸一(株式会社Fiot代表取締役・関ものづくり研究所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「自動車部品製造事業」および「工作機械製造事業」を展開しています。
■(1) 自動車部品製造事業
自動車部品、オートバイ部品、汎用機部品等の製造販売を行っています。特にトランスミッション部品やエンジン廻り部品など、高難度・高精度の機能部品加工に強みを持ち、四輪車だけでなく二輪車、船外機、農業機械向けなど幅広く供給しています。
収益は主に自動車メーカー等の顧客に対する製品販売によって得ています。運営は主に同社およびベトナム子会社のSAKURAI VIETNAM CO.,LTD.が行っています。
■(2) 工作機械製造事業
多軸ヘッド交換型専用機「ターレックス」、双頭ロータリーフライス盤、各種専用機械等の製造販売を行っています。顧客ニーズに合わせた専用機の開発や、マシニングセンター等のシステム提案も行い、独自の技術力を活かした製品を提供しています。
収益は国内外の顧客に対する工作機械の販売およびメンテナンス等から得ています。運営は同社、SAKURAI VIETNAM CO.,LTD.および米国販売子会社のSAKURAI U.S.A.,Co.が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は40億円台後半から50億円台で推移しています。利益面では、原材料価格高騰などの影響を受け赤字となる期もありましたが、2025年3月期は原価低減等の効果により、経常利益、当期純利益ともに黒字を確保し、回復傾向にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 34億円 | 49億円 | 46億円 | 55億円 | 50億円 |
| 経常利益 | -3.9億円 | 1.9億円 | -2.9億円 | -1.1億円 | 2.3億円 |
| 利益率(%) | -11.5% | 3.9% | -6.3% | -2.0% | 4.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -3.1億円 | 1.3億円 | -2.9億円 | 3.6億円 | 2.8億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少したものの、売上総利益率が大幅に改善し、営業利益が黒字転換しました。コストコントロールや作業工程の見直しが奏功し、収益性が向上していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 55億円 | 50億円 |
| 売上総利益 | 3.6億円 | 7.5億円 |
| 売上総利益率(%) | 6.5% | 15.0% |
| 営業利益 | -2.6億円 | 1.6億円 |
| 営業利益率(%) | -4.8% | 3.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が1.6億円(構成比28%)、荷造運搬費が1.0億円(同18%)を占めています。売上原価に関しては、当期製造費用に含まれる研究開発費等の情報が開示されています。
■(3) セグメント収益
自動車部品製造事業は売上高が微増し、原価低減により利益が大幅に増加しました。一方、工作機械製造事業は専用機の受注減少等により減収となり、赤字が継続していますが、赤字幅は縮小しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 自動車部品製造事業 | 40億円 | 40億円 | 0.8億円 | 3.9億円 | 9.6% |
| 工作機械製造事業 | 15億円 | 9.3億円 | -3.4億円 | -2.2億円 | -23.9% |
| 連結(合計) | 55億円 | 50億円 | -2.6億円 | 1.6億円 | 3.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 11億円 | 3.1億円 |
| 投資CF | 1.6億円 | -4.2億円 |
| 財務CF | -5.3億円 | 1.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.4%で市場平均(スタンダード市場7.2%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.9%で市場平均(スタンダード市場製造業57.5%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「モノ作りで社会に貢献すること」を使命としています。具体的には、「社会への奉仕」「顧客への奉仕」「個人能力の向上」「技術開発への取組」の4つを経営方針として掲げ、事業活動を通じてこれらの実現を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「自動車部品加工と工作機械の結合企業」としての特色を持ち、顧客ニーズを超越した製品づくりに励む文化があります。また、「SAKURAIビジョン」を制定し、社会への奉仕や環境保護活動など6つの柱を中心とした活動を推進しています。技術の継承を重要な課題と捉え、人材育成にも注力しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は株主価値重視のROE(自己資本当期純利益率)の向上を基本的な目標としています。2025年3月期の実績は、当初計画に対し売上高は未達でしたが、経常利益および当期純利益は計画を大きく上回り、ROEも計画値の2.3%に対し4.4%を達成しました。
■(4) 成長戦略と重点施策
工作機械事業では、標準機の競争力強化と高効率専用機の提案型営業を推進します。自動車部品事業では、高難度・高精度部品の受注や航空宇宙産業への展開を継続するとともに、脱炭素社会に向けた次世代自動車関連製品の拡大を図ります。また、海外子会社との連携強化や「共創」による製造展開でグループ全体の収益確保を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、社員一人ひとりが主体的なキャリア形成を行えるよう、必要なスキル習得やキャリア目標達成に向けた支援を行っています。「教育・訓練計画書」によるナレッジ管理や資格取得手当の付与などを通じて組織の活性化を図るとともに、外国人材の積極採用や技能実習生・特定技能の雇用支援にも取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.5歳 | 18.6年 | 5,332,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理監督者比率(24%)、有休休暇取得率(90%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車部品製造事業の依存リスク
同事業では特定の有力取引先数社に売上が集中しているため、取引先の業績や経済状況により売上が大幅に減少する可能性があります。また、競合とのコスト競争激化や納入先メーカーの生産調整も経営に影響を与える要因となり得ます。これに対し、新規顧客の開拓や生産の合理化によるリスク分散を図っています。
■(2) 工作機械製造事業の競争と品質リスク
専用工作機械分野は競合メーカーが多く、価格競争による販売価格の低下が業績に影響を与える可能性があります。また、国内外への製品供給において製品欠陥等による製造物責任が発生した場合、経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。これに対し、従業員の技能レベル向上と技術継承を徹底して予防に努めています。
■(3) 為替相場の変動による影響
海外子会社への技術支援費や売上債権、工作機械事業における海外向け取引(米ドル建等)において、為替レートの変動が業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。同社グループでは、このリスクを軽減するために為替予約取引を行っています。
■(4) 上場維持基準への適合状況
同社は2025年3月31日時点で、東証スタンダード市場の上場維持基準のうち「流通株式時価総額」に適合していません。経過措置期間である2026年3月31日までに改善されない場合、監理銘柄に指定されるリスクがあります。同社は基準適合に向けた各種取組を進めるとしています。



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