※本記事は、桜井製作所の有価証券報告書(第78期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 桜井製作所ってどんな会社?
桜井製作所は、自動車部品と工作機械の製造を両輪とするモノづくり企業です。
■(1) 会社概要
1950年10月に自動車部品加工工場として創業し、1953年11月に株式会社へと改組しました。1958年にはロータリーフライス盤の製造を開始して工作機械分野へ進出しています。その後も国内外で事業拠点を開拓しながら成長を続け、2004年にジャスダックへの上場を果たし、2022年にスタンダード市場へ移行しました。
現在、グループ全体で271名、単体で170名の従業員を擁しています。筆頭株主は同社の資産管理などを担う親会社の桜井興産で、第2位は取引先である桜井取引先持株会、第3位は創業家出身の役員である櫻井美枝子氏となっており、安定した資本関係が構築されています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 桜井興産 | 27.70% |
| 桜井取引先持株会 | 10.64% |
| 櫻井美枝子 | 9.62% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は櫻井成二氏が務めています。社外取締役比率は0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 櫻井成二 | 代表取締役社長 | 1999年桜井興産取締役に就任。2010年同社に入社し取締役に就任。2014年5月より現職。 |
| 櫻井耕二 | 取締役 | 2003年桜井興産入社。2018年同社取締役。2019年桜井製作所入社。2022年6月より現職。 |
| 櫻井美枝子 | 取締役 | 1982年桜井興産取締役に就任。1993年同社に入社し、取締役に就任。1999年桜井興産社長より現職。 |
| 白澤猛 | 取締役製造本部部長 | 1985年同社入社。営業本部部長や経営管理部部長を歴任。2026年4月に製造本部部長、同年6月より現職。 |
2. 事業内容
同社グループは、「自動車部品製造事業」および「工作機械製造事業」を展開しています。
■(1) 自動車部品製造事業
自動車のトランスミッションを中心に、高精度なエンジン関連部品を提供しています。四輪車だけでなく、中型・大型二輪車や船外機、農業機械に使用される汎用機向けのエンジン関連部品も幅広く手掛けており、高い加工技術を活かした品質と量産対応力が強みです。
主要な収益源は、自動車メーカーや汎用機メーカーに対する部品の製造および販売代金です。本事業の運営は、日本国内の桜井製作所と同社ベトナム法人(SAKURAI VIETNAM CO.,LTD.)が担い、グローバルな生産体制を敷いています。
■(2) 工作機械製造事業
基幹産業である自動車業界を中心に、独自の技術ノウハウを活かした専用工作機械の開発・製造を行っています。主に多軸ヘッド交換型専用機(ターレックス・キュービック)やロータリーフライス盤、5軸バリ取りセンターなどの専用機械を国内外の市場に供給しています。
収益源は、顧客企業に対する工作機械の販売代金および据付サービス等による対価です。本事業は、桜井製作所とベトナム法人に加え、米国における販売およびアフターケアを担う米国法人(SAKURAI U.S.A.,Co.)が連携して運営しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績は、売上高が46億円台から55億円台の範囲で推移しています。2023年3月期や2024年3月期は原材料高等の影響で経常赤字となりましたが、その後は収益改善が進み、直近の2026年3月期には経常利益2.7億円、当期利益2.4億円と安定した黒字基調へと回復しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 48.7億円 | 46.0億円 | 55.4億円 | 49.6億円 | 49.3億円 |
| 経常利益 | 1.9億円 | -2.9億円 | -1.1億円 | 2.3億円 | 2.7億円 |
| 利益率(%) | 3.9% | -6.3% | -2.0% | 4.5% | 5.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.3億円 | -2.9億円 | 3.6億円 | 2.8億円 | 2.4億円 |
■(2) 損益計算書
当期は売上高が前期比で微減となったものの、49億円規模を維持しています。原材料価格の高騰等の影響により売上総利益率は13.8%に低下しましたが、販管費の抑制等に努めた結果、営業利益は1.4億円の黒字を確保しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 49.6億円 | 49.3億円 |
| 売上総利益 | 7.5億円 | 6.8億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.0% | 13.8% |
| 営業利益 | 1.6億円 | 1.4億円 |
| 営業利益率(%) | 3.3% | 2.9% |
販売費及び一般管理費(5.4億円)のうち、給料及び手当が1.7億円(構成比31%)と最も大きく、次いで役員報酬が0.9億円(同17%)、荷造運搬費が0.7億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上動向を見ると、自動車部品製造事業は汎用機向け部品の受注減等により前期比で縮小し、36.0億円となりました。一方、工作機械製造事業は専用工作機械の受注が好調に推移し、前期比で大きく伸長して13.3億円を計上しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 自動車部品製造事業 | 40.3億円 | 36.0億円 |
| 工作機械製造事業 | 9.3億円 | 13.3億円 |
| 連結(合計) | 49.6億円 | 49.3億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3.1億円 | 10.7億円 |
| 投資CF | -4.2億円 | -4.5億円 |
| 財務CF | 1.0億円 | -3.2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
モノ作りで社会に貢献することを使命と考え、「社会への奉仕」「顧客への奉仕」「個人能力の向上」「技術開発への取組」の4つを経営方針として掲げています。激変する時代を勝ち抜き、100年企業に向けて社会に存在価値のある企業を目指しています。
■(2) 企業文化
自動車部品加工と工作機械の結合企業としての特色を重んじています。顧客のあらゆるニーズに迅速かつ的確に対応し、納期、品質、コスト面でのさらなる向上を図りながら、顧客ニーズを超越した製品づくりに励む姿勢を重視しています。また、技術の継承も会社の重要な課題として取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
株主価値を重視し、客観的な経営指標としてROE(自己資本当期純利益率)の向上を基本的な目標に設定しています。収益を改善し、安定した黒字体質の構築を目指すとともに、事業環境の変化に迅速に対応できる経営体制の確立を図っています。
■(4) 成長戦略と重点施策
工作機械分野では標準機の競争力強化に加え、高効率専用機の提案型営業販売を進めます。自動車部品分野では、航空宇宙等の成長産業への展開や、脱炭素社会に向けた次世代自動車の関連製品・新規製品の割合を拡大させます。さらに、海外子会社と連携を強化した営業活動を展開し、グループ全体の収益確保に努めます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
主体的なキャリア形成を支援するため、社員一人ひとりに必要なスキルを身に付けるための研修受講機会を提供しています。社内検定や資格取得を奨励し、モチベーションを高める制度を運用するほか、人材不足に対応するため、外国人採用や技能実習生・特定技能の雇用支援を積極的に推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.6歳 | 18.4年 | 5,435,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理監督者比率(26%)、有給休暇取得率(84%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 自動車部品の需要変動と取引先集中
自動車部品製造事業において、取引先メーカーの外因による生産調整や、二輪車業界の海外生産シフトの影響を受ける可能性があります。また、特定有力取引先への売上集中度が高いため、これら取引先の業績や経済状況の悪化が同社の収益を低下させるリスクがあります。
■(2) 工作機械市場の競争激化と製造物責任
工作機械製造事業は競合が多く、受注確保に伴う価格競争で販売価格が低下する傾向があります。さらに、国内外へ納入する専用工作機械などに欠陥等のクレームが発生した場合、製造物責任により同社の経営成績に重大な影響を与える可能性があります。
■(3) 為替相場の変動
ベトナム子会社に対する技術支援費や売上債権のほか、工作機械製造事業における海外取引先との米ドル建て取引など、外貨建ての取引が存在します。そのため、想定を超える為替レートの変動が生じた場合、同社グループの業績および財政状態に影響を及ぼすリスクがあります。



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