PILLAR 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

PILLAR 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

PILLARは東京証券取引所プライム市場に上場し、電子機器関連や産業機器関連の流体制御機器製品の製造販売を主力としています。当期は半導体向け製品の需要増や石油プラント向けの補修案件の増加等により、売上高が前期比で増加し、営業利益を含む各段階利益も増益となるなど、順調な業績拡大を達成しています。


※本記事は、株式会社PILLARの有価証券報告書(第78期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. PILLARってどんな会社?


PILLARは、流体制御関連機器のエキスパートとして半導体や産業機器向けのシール製品を幅広く展開しています。

(1) 会社概要


1924年に日本ピラー工業所として創設され、1948年に株式会社に改組し日本ピラー工業を設立しました。1951年には国内初となるメカニカルシールの生産を開始しています。2001年に東京証券取引所市場第一部に上場し、2024年に創業100周年を迎え、商号変更を経て現在のPILLARへと成長を遂げています。

従業員数は連結1,308名、単体676名です。大株主については、筆頭株主が信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も信託業務を行う日本カストディ銀行(信託口)、第3位はPILLAR取引先持株会となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.86%
日本カストディ銀行(信託口) 7.07%
PILLAR取引先持株会 5.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役会長は岩波清久氏、代表取締役社長社長執行役員は岩波嘉信氏が務めており、社外取締役の比率は44.4%となっています。

氏名 役職 主な経歴
岩波清久 代表取締役会長 1978年に同社へ入社。取締役、常務取締役、取締役副社長を経て1989年に代表取締役社長に就任。その後、社長執行役員を務め、2020年より現職。
岩波嘉信 代表取締役社長社長執行役員 2010年に同社へ入社し執行役員に就任。取締役、生産本部副本部長、常務執行役員、専務執行役員等を経て、2020年より現職。
宿南克彦 取締役副社長執行役員コーポレート担当 2014年に同社へ入社。経営企画部長、情報システム部長、管理本部長、専務執行役員等を歴任し、2025年より現職。
和田正人 取締役専務執行役員技術開発・品質保証担当三田工場長 1989年に同社へ入社。執行役員、技術本部長、常務執行役員等の要職や子会社社長を経て、2025年より現職。
吉田智信 取締役(常勤監査等委員) 2014年に同社へ入社。福知山生産部長、内部監査室長、総務人事部担当部長等を歴任し、2024年より現職。


社外取締役は、鈴木吉宣氏(元オムロン代表取締役副社長CFO)、牧春彦氏(マキ代表取締役)、髙谷和光氏(ネクサス監査法人代表社員)、小林京子氏(弁護士法人色川法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電子機器関連事業」「産業機器関連事業」および「その他」事業を展開しています。

電子機器関連事業

同セグメントでは、半導体や液晶、有機EL等の基板製造装置向けに、高純度薬液の循環や配管接続部に用いられる「ピラフロン製品」などの製造および販売を行っています。また、建築・土木用の免震装置なども提供しています。

収益は、これらの高性能樹脂製品を顧客へ販売することで得ています。事業の運営は同社が主体となって行うほか、国内ではエヌピイ工業やピラー精密、海外では中国や台湾、米国の現地法人などが製造と販売を担っています。

産業機器関連事業

同セグメントでは、石油や化学、電力などのプラント設備、自動車産業などの幅広い分野向けに、ポンプや撹拌機に用いられる「メカニカルシール製品」および「グランドパッキン・ガスケット製品」の製造販売を行っています。

収益は、各種シール製品や配管接続用部品の販売を通じて得ています。事業の運営は同社のほか、タンケンシールセーコウや国内外の複数の子会社が連携し、グローバルな製造および販売体制を構築しています。

その他

同セグメントでは、同社グループの事業基盤を活用した周辺サービスとして、主にオフィスビルの賃貸や保険代理業、さらには各工場・事業所における売電事業などを展開しています。

収益は、オフィスビルのテナントからの賃貸料や保険契約の手数料、電力の販売収入などから得ています。これらの事業は、エヌピイ不動産やエヌピイ産業、および同社自身によって運営されています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の連結業績を見ると、売上高は407億円から595億円へと順調な成長基調を描いています。経常利益も118億円から129億円へと拡大しており、利益率も20%前後の高水準を維持しています。半導体市場の拡大や産業向け需要の増加が牽引し、安定した収益基盤を確立しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 407億円 487億円 586億円 580億円 595億円
経常利益 118億円 141億円 151億円 115億円 129億円
利益率(%) 29.1% 29.0% 25.8% 19.8% 21.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 83億円 104億円 108億円 83億円 89億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は40%前後で安定して推移しており、製品の高付加価値化が奏功しています。また、営業利益率も20%前後の高い水準を維持しており、効率的な事業運営が行われていることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 580億円 595億円
売上総利益 224億円 244億円
売上総利益率(%) 38.7% 41.0%
営業利益 113億円 121億円
営業利益率(%) 19.5% 20.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料・賞与が33億円(構成比27%)、支払手数料が16億円(同13%)、研究開発費が15億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の電子機器関連事業は、半導体関連の先端投資が牽引し、売上・利益ともに微増となりました。一方、産業機器関連事業は石油プラントやエネルギー市場向けの需要拡大により、売上高が前期比で増加し、セグメント利益も大幅な増益を達成して業績を牽引しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率(2026年3月期)
電子機器関連事業 390億円 394億円 88億円 91億円 23.0%
産業機器関連事業 189億円 201億円 25億円 30億円 15.0%
その他 0.4億円 0.4億円 0.2億円 0.2億円 62.9%
調整額 - - 0.2億円 0.2億円 -
連結(合計) 580億円 595億円 113億円 121億円 20.4%


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型のパターンを示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 142億円 151億円
投資CF -68億円 -59億円
財務CF -40億円 -53億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.2%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「流体の漏れを止める技術」を基盤に、独自の製品やサービスを提供することで、環境(CLEAN)、安全(SAFETY)、最先端技術の創出(FRONTIER)といった社会課題の解決にチャレンジし続けています。「流体制御」「材料開発」のエキスパートとして、持続可能で豊かな社会の創造への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「PILLAR CORE VALUES」として、「Integrity(誠実)」「Innovation(革新)」「Progress(改善・改革)」「Human Resources(人財)」「Team(仲間)」という5つの価値観を掲げています。これらを経営理念を実践するための基軸とし、多様な人財が個性を発揮し、相乗効果を生み出す組織づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2030年度を最終年度とする中期経営計画「One2030」を策定し、持続的な成長に向けた数値目標を定めています。連結売上高1000億円、連結営業利益250億円の達成を目指すとともに、ROE15%を目標に掲げています。

* 連結売上高1000億円
* 連結営業利益250億円
* ROE15%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、中期経営計画「One2030」において、「半導体市場向け樹脂事業の更なる飛躍」「産業機器関連事業ニッチトップへの進化」「真のグローバル企業へ」などを基本方針に掲げています。中国市場での拡販や水素・クリーンエネルギー市場向け製品の開発、IT・DX技術を活用した競争優位性の確立に注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「社是・PILLAR CORE VALUESを正しく理解し、グローバル基準で物事を捉え、高いリーダーシップ・決断力・実行力を発揮できる人財」の育成を方針としています。多様な経験や知見を持つ人材が活躍し、安心して健やかに働ける職場環境づくりを進め、新人事制度を通じた自律的な成長と挑戦を促進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.0歳 13.3年 7,974,084円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.6%
男性育児休業取得率 88.2%
男女賃金差異(全労働者) 71.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 76.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 90.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(62%)、エンジニア人財数(191人)、次期管理職層に占める女性割合(6.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 製品の品質に関する影響

同社グループの製品は幅広い産業分野の重要機能部品として設備や機器に組み込まれて使用されるため、予期しない不具合が発生した場合には、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。品質マネジメントシステムの運用を通じた品質向上に努めています。

(2) 半導体・エネルギー市場の変動リスク

主力のピラフロン製品は半導体や液晶製造装置に依存しており、これら業界の激しい技術革新や急速な市場縮小がリスクとなります。また、産業機器関連事業においても、半導体やクリーンエネルギー市場の変動が業績に影響を与える可能性があります。

(3) 海外進出・外国為替相場の変動

同社グループは海外売上高比率が30%を超えており、最適地生産や現地調達を推進しています。進出国での政治・経済体制の予期せぬ変化や自然災害、感染症の発生、さらには急激な外国為替の変動が、事業運営や業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。