水道機工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

水道機工 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。上下水道施設のプラント建設と維持管理(O&M)を主力とする東レグループの水処理エンジニアリング企業。当期は大型案件の工事進捗やメンテナンス契約の増加により、売上高260億円(前期比20.0%増)、経常利益14億円(同108.2%増)と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、水道機工株式会社 の有価証券報告書(第121期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 水道機工ってどんな会社?


水処理機械・設備の製造販売からメンテナンスまでを一貫して手掛ける水環境のパイオニアです。東レグループの総合力を活かした事業展開が特徴です。

(1) 会社概要


1924年に都市工業部として発足しドイツ製水処理機械の輸入を開始、1936年に日本温泉管として設立されました。1946年に現在の社名へ変更し、水処理事業を本格化させています。2004年に東レが親会社となり、資本・業務提携を強化しました。2013年には東証JASDAQ(現スタンダード)へ上場を果たしています。

連結従業員数は629人(単体258人)です。筆頭株主は親会社の東レで51.17%を保有しています。第2位は取引先持株会の水道機工共栄会、第3位はシステム開発等を行うデータベースです。

氏名 持株比率
東レ 51.17%
水道機工共栄会 4.36%
データベース 2.82%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は古川徹氏です。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
古川 徹 代表取締役社長 東レ入社後、東レ・プレシジョン社長などを経て、2022年より現職。
丸山 広記 専務取締役 1993年同社入社。プラント事業担当、O&M事業担当などを歴任し、2024年より現職。
鷹栖 茂幸 取締役 1992年同社入社。プラント事業部西日本統括などを経て、2024年より現職。
國分 健吾 取締役 1996年同社入社。プラント事業部技術部長などを経て、2024年より現職。
柴田 宗孝 取締役(常勤監査等委員) 1992年同社入社。環境事業部長、海外事業担当などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、村上英治(元三菱UFJ信託銀行)、藤本英昭(元エムイーテクノ社長)、大川和宏(元アブドラ王立科学技術大学教授)、齋藤敏仁(元デュポンファーイースト日本支社)、竹内佐和子(元パリ日本文化会館館長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「プラント建設」「O&M」事業を展開しています。

(1) プラント建設


上水道施設の浄水設備、下水道施設の水処理設備、産業用水および廃水処理設備等の製造、据付、販売を行っています。官需の上水市場や民間工場向けの排水処理設備などが対象です。

収益は、主に官公庁や民間企業などの顧客から受け取る工事請負代金や製品販売代金から成ります。運営は主に同社および連結子会社の山田設備機工などが行っています。

(2) O&M


上水道施設、下水道施設、産業用水および廃水処理施設等に関わるメンテナンス、保守点検、運転管理業務を提供しています。施設の老朽化に伴い、維持管理ニーズが増加しています。

収益は、主に施設の維持管理業務に対する委託料やメンテナンス費用として顧客から受領します。運営は主に連結子会社の水機テクノスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の推移を見ると、売上高は220億円前後で推移していましたが、直近で約260億円へと拡大しました。利益面では、経常利益率が一時低迷しましたが、直近では5.3%まで回復し、増益傾向にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 252億円 227億円 219億円 216億円 260億円
経常利益 15億円 2億円 4億円 7億円 14億円
利益率(%) 6.1% 0.7% 1.9% 3.1% 5.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 6億円 0.4億円 3億円 4億円 4億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益が拡大し、利益率も改善しています。販管費は増加していますが、増収効果が上回り、営業利益率は大幅に向上しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 216億円 260億円
売上総利益 44億円 61億円
売上総利益率(%) 20.2% 23.4%
営業利益 5億円 15億円
営業利益率(%) 2.1% 5.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が14億円(構成比30%)、賞与引当金繰入額が5億円(同10%)を占めています。売上原価においては、材料費や外注費などが主な内訳となります。

(3) セグメント収益


プラント建設は手持工事の進捗により大幅な増収増益となりました。O&Mもメンテナンス契約の増加や新規運転管理案件の受託により、売上・利益ともに伸長しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
プラント建設 143億円 172億円 2億円 9億円 5.0%
O&M 83億円 99億円 2億円 6億円 6.2%
連結(合計) 216億円 260億円 5億円 15億円 5.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

水道機工は、短期借入れを活用しつつ、営業活動で資金を創出し、投資活動で事業基盤を強化しています。営業活動では、利益創出に加え、預り金の増加が資金増加に貢献しました。投資活動では、有価証券の償還収入があったものの、関係会社への貸付等で資金が支出されました。財務活動では、短期借入れと返済が主な動きとなり、資金調達と返済のバランスを取りながら事業運営を行っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -20億円 28億円
投資CF -8億円 -5億円
財務CF 13億円 2億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「100年先も人と地球をつなぐ情熱で、笑顔あふれる環境を技術と製品で創造し、社会に貢献します。」を企業理念として掲げています。水環境の改善・汚染防止に寄与する製品・サービスの提供を通じて、社会のサステナビリティに貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、企業理念への共感と理解を全ての役職員に求めるとともに、技術力・営業力の向上や研究開発に絶え間なく取り組む姿勢を重視しています。また、品質方針や環境方針として企業理念を掲げ、多面的かつ継続的に業務品質や環境対応をスパイラルアップさせる取り組みを推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「2030年近傍における目指す会社の姿」として、浄水場設備におけるメンテナンス事業で営業利益の6割を稼ぎ出す事業構造への転換を目標として掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


メンテナンス事業の収益拡大に向けたサービスステーションの拡充、官民連携事業(PPP/PFI等)への対応強化、および製品製造・開発基盤の体制拡充を重点施策としています。また、グループ経営の強化やM&A・アライアンスの推進、サウジアラビア事業のリスク低減にも取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


企業理念に共感し専門性を有する優秀な人材の確保を基本方針とし、事業遂行や新技術開発を担う人材の採用・育成を推進しています。特に女性採用比率の向上や、従業員の能力・スキル向上のための教育訓練を継続的に実施することで、組織の多様性と競争力の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.8歳 13.5年 7,163,606円


※平均年間給与は賞与及び基準外給与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.1%
男女賃金差異(正規) 67.6%
男女賃金差異(非正規) 47.9%


※女性管理職比率について、同社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 官需依存に関するリスク


同社グループの売上の約9割は政府や地方自治体等の官需が占めています。そのため、公共事業予算の縮小や入札制度の変更、市町村合併による事業規模縮小などが生じた場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外市場での事業拡大リスク


東南アジア等での事業拡大を戦略としていますが、予期せぬ法規制の変更、政治・経済の混乱、為替変動等のリスクがあります。特にサウジアラビアの関連会社(SKME社)に関しては、債務保証等による財務的影響や撤退方針に伴うリスク管理が課題となっています。

(3) 製品・サービスの品質リスク


上水道施設等は高い安全性と信頼性が求められます。万が一、予期せぬ欠陥や事故により顧客に損害を与えた場合、賠償責任の発生や社会的信用の低下を招き、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。