記事タイトル:「小倉クラッチ転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」
※本記事は、小倉クラッチ株式会社の有価証券報告書(第97期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 小倉クラッチってどんな会社?
自動車や一般産業向けのクラッチ・ブレーキを製造販売する総合メーカーです。
■(1) 会社概要
1938年に工作機械用多板クラッチ専業メーカーとして創業しました。1964年にカークーラー用クラッチの生産販売を開始し、その後米国やフランス、中国などグローバルに製造販売拠点を展開しています。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2022年の市場区分見直しによりスタンダード市場へ移行しました。
従業員数は連結で1,755名、単体で791名です。筆頭株主は第一共栄ビルで、第2位は小倉クラッチ取引先持株会、第3位は代表取締役社長の小倉康宏氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 第一共栄ビル | 19.60% |
| 小倉クラッチ取引先持株会 | 10.79% |
| 小倉康宏 | 5.55% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は小倉康宏氏が務めています。社外取締役比率は11.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小倉康宏 | 代表取締役社長 | 第一共栄ビル代表取締役社長。1989年同社入社。常務取締役、専務取締役、取締役副社長を経て、2002年5月より現職。 |
| 猪越義彦 | 取締役常務執行役員営業担当 | 1985年同社入社。営業本部東日本支社長、執行役員営業本部長等を経て、2025年4月より現職。 |
| 秋山浩一 | 取締役常務執行役員一般クラッチ生産担当 | 1985年同社入社。輸送機器生産本部香林工場長、小倉電機代表取締役社長等を経て、2021年6月より現職。 |
| 松本保則 | 取締役常務執行役員輸送機器担当 | 1985年同社入社。輸送機器生産本部赤堀工場副工場長等を経て、2024年1月より現職。 |
| 竹内修 | 取締役執行役員経営管理担当 | 群馬銀行ニューヨーク支店支店長等を経て、2021年4月同社入社。経営管理本部長兼グローバル財務部長を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、田部井公夫氏(田部井公夫税理士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「輸送機器用事業」「一般産業用事業」および「その他」の事業を展開しています。
■輸送機器用事業
カーエアコンやパワートレインをはじめとする自動車用部品業界向けに、クラッチやソレノイドなどの輸送機器用製品の製造販売を行っています。
収益は、自動車メーカーや部品メーカー等の顧客への製品販売から得ています。運営は同社のほか、オグラ・コーポレーション、小倉離合機(東莞)有限公司、オグラクラッチ・タイランドなどの連結子会社が担っています。
■一般産業用事業
モーター、変・減速機、昇降・運搬機械業界およびOA機器業界向け等に、クラッチやブレーキなどの一般産業用製品の製造販売を行っています。
収益は、各種産業機械メーカー等の顧客への製品販売から得ています。運営は同社のほか、小倉精工電子(東莞)有限公司などの各地域の子会社が担い、グローバルに事業を展開しています。
■その他事業
報告セグメントに含まれない事業として、防災関連業界向けなどの輸送機器用事業および一般産業用事業以外の事業を行っています。
収益は、関連する顧客への製品提供から得ています。運営は主に同社および関連する子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は400億円前後で推移しています。経常利益は外部環境の変化や原材料価格の変動等により赤字となる期もありましたが、直近では収益性の改善が進み、利益率および当期利益ともに大幅に回復する傾向を見せています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 389億円 | 442億円 | 435億円 | 439億円 | 417億円 |
| 経常利益 | -8億円 | 8億円 | -2億円 | 7億円 | 14億円 |
| 利益率(%) | -1.9% | 1.8% | -0.5% | 1.7% | 3.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -6億円 | 1億円 | -1億円 | 8億円 | 11億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は減少したものの、売上原価の低減等により売上総利益および営業利益は増加しています。結果として売上総利益率と営業利益率はともに改善しており、収益基盤の強化が進んでいることが伺えます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 439億円 | 417億円 |
| 売上総利益 | 67億円 | 73億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.4% | 17.5% |
| 営業利益 | 5億円 | 14億円 |
| 営業利益率(%) | 1.1% | 3.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が18億円(構成比31%)、荷造運賃が10億円(同17%)を占めています。また、売上原価は344億円で、売上高に対する構成比は82%となっています。
■(3) セグメント収益
輸送機器用事業は一部市場における売上減少の影響で減収となりましたが、利益面では大幅な増益を達成しました。一方、一般産業用事業は主要業種向けの販売が好調に推移し、増収増益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 輸送機器用事業 | 316億円 | 289億円 | 3億円 | 8億円 | 2.7% |
| 一般産業用事業 | 118億円 | 123億円 | 2億円 | 6億円 | 4.7% |
| その他 | 4億円 | 5億円 | 0億円 | 0億円 | 3.5% |
| 連結(合計) | 439億円 | 417億円 | 5億円 | 14億円 | 3.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえる健全型のキャッシュ・フローを描いています。企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.0%で市場平均を下回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 28億円 | 16億円 |
| 投資CF | -5億円 | -7億円 |
| 財務CF | -24億円 | -4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「モーションコントロールとコンポーネントプロダクツの創出を通して顧客に奉仕し、社会に貢献する」ことを基本理念として掲げています。クラッチ・ブレーキの総合メーカーとして盤石な企業体質を築き上げ、高品質な製品の提供を通じてお客様から愛され、社会のニーズに応える企業を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は品質力の向上を最重要視し、設計や製造から営業・管理業務に至るまで、あらゆる側面で品質を高める文化を持っています。4M(Man、Machine、Material、Method)管理を徹底して標準を遵守し、さらにその標準をレベルアップさせることで地力を上げる堅実な行動様式を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中期的な財務目標として、2027年3月期に以下の数値を達成することを目指しています。
* 売上高営業利益率:5.0%
* ROE:6.3%
* 総資産回転率:1.0回転
* 売上高成長率:110%
■(4) 成長戦略と重点施策
自動車業界の電動化や地政学リスクに対応するため、高付加価値事業への転換と市場の選択・集中を進めます。一般産業用事業では協働ロボット等の成長市場に向けた製品開発を強化し、輸送機器用事業では電動化対応製品と動力源に依存しない製品の両面で展開します。また、利益重視の体質転換やDX推進による業務効率化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な企業価値向上のため、人材を最も重要な経営資源と位置付けています。長期雇用を前提に、OJTを中心とした実践的な能力開発を重視し、コミュニケーション能力の向上や技能の継承を進めます。やる気のある社員に活躍と成長の機会を与え、多様な従業員が働きやすい職場環境の実現を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.3歳 | 18.6年 | 5,527,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 85.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 88.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社内階層研修受講者(185名)、社外セミナー受講者(72名)、認定・検定・資格取得者(95名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済情勢の変動
同社グループの売上高は国内外の景気動向の影響を大きく受けます。資源やエネルギー価格の高止まり、インフレ・デフレ傾向の進行、地政学リスク等により主要製品の出荷額が減少した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替相場の変動
同社の海外売上比率は50%を超えており、今後も高まる見込みです。為替予約等により為替変動リスクの軽減に努めていますが、想定を超える急激な為替相場の変動が発生した場合には、経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) 製品の価格競争と原材料価格の変動
市場の価格引き下げ要請や、競合他社との競争激化により製品の価格競争力を失うリスクがあります。さらに、主要な原材料価格の高騰によって売上原価が上昇した場合、利益率の低下を招く恐れがあります。
■(4) 特定の製品への依存
同社グループの売上高は電磁クラッチへの依存度が高い状態で推移しています。予測不能な技術革新等によって電磁クラッチが陳腐化し、新たな技術への移行が急速に進んだ場合には、事業基盤に影響を及ぼす可能性があります。



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