※本記事は、小倉クラッチ株式会社 の有価証券報告書(第96期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 小倉クラッチってどんな会社?
自動車用や産業用のクラッチ・ブレーキを主力製品とする総合メーカーで、グローバルに事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1938年に小倉製作所として創業し、1964年にカークーラ用クラッチの生産を開始しました。その後、1988年の米国現地法人設立を皮切りにフランス、中国、タイ等へ進出しグローバル体制を構築しています。2004年にジャスダック証券取引所へ上場し、2022年の市場区分見直しにより東証スタンダード市場へ移行しました。
2025年3月31日現在、連結従業員数は1,776名、単体従業員数は764名です。筆頭株主は創業家資産管理会社の第一共栄ビル、第2位は取引先持株会、第3位は代表取締役社長の小倉康宏氏となっており、創業家および関係者が大株主の上位を占める安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 第一共栄ビル | 19.23% |
| 小倉クラッチ取引先持株会 | 10.53% |
| 小倉 康宏 | 5.54% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は小倉康宏氏が務めています。社外取締役比率は11.1%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小倉 康宏 | 代表取締役社長 | 1989年6月同社入社。輸送機器本部長、海外本部長、副社長等を経て2002年5月より現職。オグラ・コーポレーション等、複数の子会社役員を兼任。 |
| 猪越 義彦 | 取締役常務執行役員営業担当 | 1985年4月同社入社。営業本部東日本支社長、執行役員営業本部長等を歴任。2025年4月より現職。 |
| 秋山 浩一 | 取締役常務執行役員一般クラッチ生産担当 | 1985年4月同社入社。輸送機器生産本部香林工場長、執行役員一般クラッチ生産本部長等を歴任。2021年6月より現職。 |
| 松本 保則 | 取締役常務執行役員輸送機器担当 | 1985年4月同社入社。輸送機器生産本部赤堀工場副工場長、オグラクラッチ・タイランド社長等を歴任。2024年1月より現職。 |
| 竹内 修 | 取締役執行役員経営管理担当 | 2008年群馬銀行ニューヨーク支店長等を経て、2021年4月同社入社。経営管理本部グローバル財務部長等を経て2025年6月より現職。 |
社外取締役は、田部井公夫(元桐生税務署長・税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「輸送機器用事業」「一般産業用事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 輸送機器用事業
カーエアコン、パワートレイン、パワースライドドア、エンジン過給用スーパーチャージャーなどの自動車用部品業界向けに、クラッチやソレノイド、アクチュエータ等の製造販売を行っています。
製品は顧客である自動車部品メーカー等へ販売され、対価を受け取っています。運営は主に親会社である小倉クラッチが行うほか、オグラ・コーポレーション(米国)、小倉離合機(東莞)有限公司(中国)、オグラクラッチ・タイランドCO.,LTD.などの海外連結子会社が製造および販売を担っています。
■(2) 一般産業用事業
モーター、変・減速機、昇降・運搬機械、OA機器、医療・福祉機器、ロボット関連などの幅広い業界向けに、産業用クラッチ・ブレーキ等の製造販売を行っています。
製品は機械メーカー等の顧客へ販売され、対価を得ています。運営は小倉クラッチが中心となり、小倉精工電子(東莞)有限公司などの子会社も製造販売を行っています。また、小倉冷間鍛造などの国内子会社が部品の冷間鍛造加工等を担っています。
■(3) その他事業
上記報告セグメントに含まれない事業として、防災関連業界向け等の製品や、その他の事業を行っています。
これらの事業に関連する製品やサービスの提供対価を顧客から受け取っています。運営は主に小倉クラッチおよび一部の子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は400億円台前半で推移していますが、利益面では変動が見られます。一時的に経常損失や当期純損失を計上した期もありましたが、直近の2025年3月期では売上高が増加し、経常利益および当期純利益ともに黒字転換を果たし、回復傾向にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 336億円 | 389億円 | 442億円 | 435億円 | 439億円 |
| 経常利益 | -2.6億円 | -7.5億円 | 7.9億円 | -2.3億円 | 7.5億円 |
| 利益率(%) | -0.8% | -1.9% | 1.8% | -0.5% | 1.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -11.1億円 | -5.6億円 | 1.1億円 | -5.6億円 | 8.2億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は微増しており、売上原価率の改善により売上総利益が増加しています。これに伴い、営業利益は前期の赤字から黒字へと転換しました。また、利益率も改善しており、収益性が向上していることが確認できます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 435億円 | 439億円 |
| 売上総利益 | 59億円 | 67億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.6% | 15.4% |
| 営業利益 | -3.2億円 | 4.6億円 |
| 営業利益率(%) | -0.7% | 1.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が19億円(構成比30%)、荷造運賃が12億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
輸送機器用事業は新規ビジネスの開始や為替の影響もあり増収となり、セグメント利益も黒字転換しました。一般産業用事業は主要顧客向けの売上が減少し減収となりましたが、利益面では大幅な増益を達成しました。その他事業は減収で、損失幅は縮小していますが依然として赤字となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 輸送機器用事業 | 309億円 | 316億円 | -3.3億円 | 2.9億円 | 0.9% |
| 一般産業用事業 | 121億円 | 118億円 | 0.3億円 | 1.8億円 | 1.5% |
| その他 | 4.8億円 | 4.4億円 | -0.2億円 | -0.0億円 | -0.2% |
| 調整額 | -0.7億円 | -0.3億円 | - | - | - |
| 連結(合計) | 435億円 | 439億円 | -3.2億円 | 4.6億円 | 1.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
小倉クラッチグループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉を安定的に確保することを基本方針としています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、日々の事業活動から生み出される資金の流れを示しており、同社の事業基盤の健全性を示唆します。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や研究開発への支出を表し、将来の成長に向けた同社の戦略を反映しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入や返済といった資金調達・返済の状況を示し、同社の資金繰りの安定性や財務戦略の方向性を示しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 29億円 | 28億円 |
| 投資CF | -20億円 | -5億円 |
| 財務CF | 3億円 | -24億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「クラッチ・ブレーキの総合メーカーとして盤石な企業体質を築き上げお客様から愛される企業を目指す」ことを基本方針の一つに掲げています。安定した利益を確保し、人・設備・開発への投資を通じて、新たな高付加価値品を提供し続けることで、顧客ビジネスを支える必要とされる企業となることを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、品質向上に近道はないという考えのもと、4M(人、機械、材料、方法)管理を徹底し、標準を遵守・レベルアップさせることで地力を上げる文化を持っています。また、スピーディーな報・連・相による情報共有と、各階層での一元化された組織運営を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、経済的価値に基づくマテリアリティ(重要課題)に注力し、以下の財務目標を掲げています。
* 2027年3月期 売上高営業利益率:5.0%
* 2027年3月期 ROE:6.3%
* 2027年3月期 総資産回転率:1.0回転
* 2027年3月期 売上高成長率:110%
■(4) 成長戦略と重点施策
自動車の電動化(EV化)に対応し、パワートレイン系ソレノイドやモーター用保持ブレーキ等の開発を強化するとともに、既存のカーエアコン用クラッチの性能向上も進めます。一般産業用事業では、労働力不足を背景としたロボット市場の拡大を見込み、協働ロボット向け等の製品開発に注力します。高付加価値製品への転換や不採算商品からの撤退を進め、利益重視の体質転換を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、企業の変革には社員一人ひとりの変革が不可欠であるとし、次世代を担う「人財」を計画的に育成し、効果的に配置することで組織を活性化させる方針です。OJTを中心としつつ、社内研修や社外セミナー等のOff-JT、自己啓発支援を組み合わせ、能力開発を推進しています。また、多様な従業員が活躍できる職場環境の実現と、エンゲージメントの向上に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.2歳 | 19.2年 | 5,345,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 22.2% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 78.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 74.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 100.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用率(49%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済情勢
同社グループの売上高は国内外の景気動向の影響を受けます。景気悪化に伴う主要製品の出荷額減少や、ウクライナ情勢等の地政学リスクによる取引先への影響、大幅なデフレによる製品単価下落、インフレによる金利上昇などが、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 為替変動
海外売上比率が高く(当連結会計年度57.1%)、今後も海外事業の比重が高まると予想されます。為替予約等でヘッジを行っていますが、為替相場の変動による影響を完全に回避することは不可能であり、経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
■(3) 製品の価格競争力
部品メーカー間の競争激化や顧客からの価格引き下げ要請に対し、高付加価値化やコスト削減で対応しています。しかし、競合他社による画期的なコスト低減や価格政策等により価格競争力を失った場合、経営成績及び財政状態に悪影響を与える可能性があります。
■(4) 原材料価格
主要な原材料の価格は市場状況により変動します。これらの原材料価格が高騰した場合、売上原価の上昇を招き、同社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。