#記事タイトル:東洋エンジニアリング転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、東洋エンジニアリング株式会社 の有価証券報告書(第70期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東洋エンジニアリングってどんな会社?
総合エンジニアリング企業として、石油・ガス・発電等のプラント建設(EPC)をグローバルに展開しています。
■(1) 会社概要
1961年に東洋高圧工業(現三井化学)の工務部門が分離独立して設立されました。1980年に東証二部、1982年に同一部へ上場しました。インド、韓国、中国、マレーシア、ブラジルなどに現地法人を設立し、グローバルなエンジニアリング体制を構築しています。近年は持続可能な社会実現に向けた技術開発にも注力しています。
連結従業員数は5,174名、単体では975名です。筆頭株主は投資ファンド運営会社が関与する組合で、第2位は創業母体と関係の深い総合商社の三井物産、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| インテグラルTeam投資事業有限責任組合 | 29.99% |
| 三井物産 | 14.94% |
| 日本カストディ銀行 | 8.77% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役取締役社長は細井栄治氏です。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 永松 治夫 | 取締役会長 | 1981年入社。マレーシア現地法人社長、インフラ事業本部長等を歴任。2018年より社長を務め、2023年6月より現職。 |
| 細井 栄治 | 代表取締役取締役社長 | 1982年入社。プロジェクト本部長、プラントソリューション事業本部長、副社長等を経て、2023年6月より現職。 |
| 鳥越 紀良 | 代表取締役 | 1983年日本輸出入銀行入行。国際協力銀行、三井海洋開発理事等を経て、2020年同社入社。CCO等を務め2024年4月より現職。 |
| 芳澤 雅之 | 取締役 | 1982年三井物産入社。同社執行役員、三井物産関西支社副支社長等を経て、2019年同社副社長。2025年4月より現職。 |
| 脇 謙介 | 取締役 | 1983年入社。経理財務本部長、CFO等を歴任。2018年より常務執行役員、2023年より専務執行役員。2025年4月より現職。 |
社外取締役は、田代真巳(元SMBCインターナショナルビジネス社長)、山本礼二郎(インテグラル代表取締役パートナー)、寺澤達也(元経済産業審議官)、宮入小夜子(スコラ・コンサルトパートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「EPC事業」および「付帯事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
**EPC事業**
石油、ガス、石油化学、発電、環境など多岐にわたる産業分野において、プラントの研究・開発協力、企画、設計、機器調達、建設、試運転までを一貫して提供しています。顧客は各国の国営石油会社や民間化学メーカーなどが中心です。
プラント建設に係る請負代金等が主な収益源です。運営は東洋エンジニアリングおよびToyo Engineering India Private Limitedなどの海外グループ会社がグローバルな体制で連携して行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は増加傾向にありますが、利益面では変動が見られます。直近の決算では売上高が増加した一方で、一部案件の採算悪化や特別損失の計上により当期利益は大幅な減益となりました。自己資本比率は20%前後で推移しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,840億円 | 2,030億円 | 1,929億円 | 2,608億円 | 2,781億円 |
| 経常利益 | 28億円 | 31億円 | 39億円 | 70億円 | 65億円 |
| 利益率(%) | 1.5% | 1.5% | 2.0% | 2.7% | 2.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 8億円 | 16億円 | 16億円 | 98億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上総利益および営業利益は減少しました。追加費用の発生による完成工事総利益の減少に加え、販売費及び一般管理費の増加が利益を圧迫する要因となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,608億円 | 2,781億円 |
| 売上総利益 | 284億円 | 261億円 |
| 売上総利益率(%) | 10.9% | 9.4% |
| 営業利益 | 67億円 | 26億円 |
| 営業利益率(%) | 2.6% | 0.9% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が102億円(構成比43%)、研究開発費が31億円(同13%)を占めています。売上原価には工事損失引当金繰入額23億円が含まれています。
■(3) セグメント収益
同社はEPC事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略します。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 連結(合計) | 2,608億円 | 2,781億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
東洋エンジニアリングのキャッシュ・フローの状況についてご説明します。
営業活動によるキャッシュ・フローは、事業活動の結果、資金が減少しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預入や短期貸付金の増加などにより、資金が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いによる支出や借入金の収支などにより、資金が増加しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 60億円 | -231億円 |
| 投資CF | 73億円 | -198億円 |
| 財務CF | -11億円 | 7億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
グループ・ミッションとして「Engineering for Sustainable Growth of the Global Community」を掲げています。世界水準のエンジニアリング提供により顧客課題を解決し、エネルギー・素材の供給と環境保全を調和させ、持続可能な地球社会の実現に貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
グループ・バリューとして「Integrity, Creativity, Diversity, Learning, Team」を制定しています。誠意と責任、知恵と創造力、多様性の尊重、進取の気性での学習、そしてチームプレイを通じて成果を実現することを全役職員の共有すべき価値観としています。
■(3) 経営計画・目標
2021年度からの中期経営計画では、KGIの達成を目指しています。2026年3月期の連結業績予想として以下の数値を掲げています。
* 受注高:1,700億円
* 完成工事高:2,000億円
* 営業利益:15億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:50億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「EPC強靭化」と「新技術・事業開拓」を戦略の軸としています。EPC強靭化ではDX推進による生産性向上や海外拠点の自律化を進めています。新技術・事業開拓では、燃料アンモニア、SAF(持続可能な航空燃料)、地熱発電などのカーボンニュートラル分野に注力し、社会課題解決と収益構造の転換を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人財を最も重要な経営資本と位置づけ、「多彩な人がいきいきと働く」組織を目指しています。新卒に加えキャリア採用を強化し、オンボーディングプランを実施しています。また、ABW(Activity Based Working)導入など働きやすい環境を整備し、エンゲージメント向上に努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.5歳 | 15.4年 | 9,576,559円 |
※平均年間給与は、賞与および基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 5.8% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 56.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 71.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 71.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規) | 65.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用管理職比率(24.8%)、外国人管理職比率(8.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) プロジェクトの受注および遂行
長期間にわたるプラント建設工事を主たる事業としているため、内外の要因により、プロジェクトの中止・延期による収支悪化や工事代金の回収不能等が発生する可能性があります。これに対し、受注前のリスク評価や受注後の定期的なモニタリングを通じてリスク軽減に努めています。
■(2) カントリーリスク
グローバルに事業活動を行っているため、戦争、内乱、テロ、政策変更、為替変動等の影響を受ける可能性があります。各地の情勢収集、リスクに応じた契約条件の設定、為替予約、調達先・工事発注先の分散化等の対策を講じています。
■(3) 気候変動に関するリスク
脱炭素政策等による従来型プラント需要の減少やコスト増大、自然災害の激甚化による影響が想定されます。一方で、新たな事業機会と捉え、新技術を適用した非従来型プラントやアンモニア・水素関連技術等のソリューション提供に取り組んでいます。



上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。