東洋エンジニアリング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東洋エンジニアリング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東洋エンジニアリングは東京証券取引所プライム市場に上場する総合エンジニアリング企業です。石油化学や肥料、発電等のプラントの設計、調達、建設を行うEPC事業をグローバルに展開しています。直近の業績は、一部の大型プロジェクトにおける収益悪化等の影響により、大幅な減収および各利益項目で赤字となっています。


※本記事は、東洋エンジニアリングの有価証券報告書(第71期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 東洋エンジニアリングってどんな会社?


総合エンジニアリング企業として、世界各地で多様なプラントの設計から建設までを手掛けています。

(1) 会社概要


1961年に東洋高圧工業の工務部門が分離独立して設立されました。1976年にインドで現地法人を設立するなどグローバル展開を進め、1980年に東京証券取引所市場第二部へ上場、1982年に同第一部へ指定されました。近年では2012年にインドネシア企業に出資するなど海外の事業基盤を継続的に強化しています。

同社の従業員数は連結で4,559名、単体で973名です。筆頭株主は総合商社の三井物産で、第2位は投資ファンドのインテグラルTeam投資事業有限責任組合、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
三井物産 14.94%
インテグラルTeam投資事業有限責任組合 9.23%
日本カストディ銀行(三井住友信託銀行再信託分・三井化学退職給付信託口) 8.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役取締役社長は細井栄治氏が務めています。取締役9名のうち4名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
細井 栄治 代表取締役取締役社長 1982年同社入社。海外の現地法人社長やプラントソリューション事業本部長等を経て、2023年より現職。
永松 治夫 取締役会長 1981年同社入社。インフラ事業本部長等を経て、2018年に代表取締役社長に就任。2023年より現職。
鳥越 紀良 代表取締役 1983年日本輸出入銀行(現国際協力銀行)入行。国際協力銀行監査部長や海外交通・都市開発事業支援機構常務執行役員等を経て、2026年より現職。
鈴木 恭孝 取締役 1988年三井物産入社。同社プロジェクト商品本部長等を経て、2019年に同社執行役員。経営企画本部長等を経て、2025年より現職。
三代川 康雄 取締役 1988年同社入社。経理財務本部長兼ビジネスマネジメント部長等を経て、2026年より現職。


社外取締役は、田代真巳(元三井住友銀行執行役員)、山本礼二郎(インテグラル代表取締役パートナー)、寺澤達也(元経済産業省経済産業審議官)、宮入小夜子(スコラ・コンサルトパートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「EPC」に関する単一セグメントで事業を展開しています。

(1) 石油・ガス・化学プラント事業


石油化学、一般化学、肥料、石油、ガスなどの各種プラントの企画、設計、機器調達、建設から試運転までを総合的に手掛けています。国内外のエネルギーや素材の供給を支える基盤となっており、多様な顧客ニーズに対応しています。

顧客である石油メジャーや国営石油会社、化学メーカーなどから、プロジェクトの設計・調達・建設(EPC)の対価として収益を得ています。運営は東洋エンジニアリングをはじめ、海外の各グループ会社が連携して行っています。

(2) インフラ・環境・産業施設事業


発電施設、水処理、高度生産システム、医薬、ファインケミカル、環境対策設備などのプラントエンジニアリングを提供しています。近年はカーボンニュートラルに向けた再生可能エネルギーや地熱発電、燃料アンモニア設備などにも注力しています。

国内外のインフラ事業者や医薬品メーカー、各種製造業などの顧客から、設備の建設やソリューション提供の対価を受け取ります。運営は主に東洋エンジニアリングやテックプロジェクトサービスなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高にあたる完成工事高は大型プロジェクトの進捗等により変動していますが、直近期では大きく減少しています。経常利益も長らく黒字で推移していましたが、直近期は海外の大型プロジェクトにおける収益悪化などの影響により赤字へと転落しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,030億円 1,929億円 2,608億円 2,781億円 1,829億円
経常利益 31億円 39億円 70億円 65億円 -114億円
利益率(%) 1.5% 2.0% 2.7% 2.3% -6.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 -6億円 158億円 17億円 -137億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、当期は完成工事高の大幅な減少に伴い、売上総利益も縮小しています。これに加えて販売費及び一般管理費等の負担が重くのしかかり、営業利益は赤字となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,781億円 1,829億円
売上総利益 261億円 64億円
売上総利益率(%) 9.4% 3.5%
営業利益 26億円 -190億円
営業利益率(%) 0.9% -10.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当が112億円(構成比44%)、研究開発費が26億円(同10%)を占めています。

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動から得た資金に加えて、資産売却や資金調達を併用し、事業転換等のための投資資金を確保する再建・転換型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -231億円 93億円
投資CF -198億円 2億円
財務CF 7億円 63億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失の計上により算出されていませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は16.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


“Engineering for Sustainable Growth of the Global Community”をグループ・ミッション(使命)に掲げています。世界水準のエンジニアリングによって多様な課題を解決し、エネルギー・素材の供給と環境保全を調和させ、持続性のある地球社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


“Integrity, Creativity, Diversity, Learning, Team”というグループ・バリュー(価値観・行動基準)を掲げています。誠意と責任を持つこと、知恵と創造力を発揮すること、多様性の尊重、進取の気性での学習、そして顧客や協業先とのチームプレイを通じて成果を実現することを重視しています。

(3) 経営計画・目標


長期ビジョン「TOYO VISION 2040」の実現に向け、2026年度から2030年度までの新中期経営計画を策定しています。持続的な企業価値の向上を図るため、2030年度までに自己資本を750億円前後まで積み上げることを目標としています。また、ROEについては資本コストを上回る12%の維持を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「EPCの枠を超え、社会価値を共創・実装するパートナー」への進化を成長戦略の柱としています。EPCを核とした確かな遂行力を前提に、構想から運用、保全までプラントライフサイクル全体で価値を創出するモデルへ転換します。インド・中央アジア・アフリカを重点地域とし、バイオ医薬や次世代地熱等の分野を成長ドライバーとします。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人財・組織モデルの基本思想に「Base and Beyond」を掲げ、個々人が専門領域を確実に担う力(Base)と、関係領域へ越境し価値を拡張する力(Beyond)の育成に注力しています。新卒・キャリア採用を通じて多様な人財を確保し、本人の希望を加味した配置や現場での早期育成を通じ、働きがいの向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.4歳 15.3年 9,202,714円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.6%
男性育児休業取得率 77.4%
男女賃金差異(全労働者) 73.0%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 73.5%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 61.3%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、キャリア採用管理職比率(26.7%)、外国人管理職比率(7.6%)、エンゲージメント評価(3.80)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) グローバル展開におけるカントリーリスク


世界各国で事業活動を行っているため、戦争、内乱、テロの発生や各種政策の変更、為替レートの著しい変動により、プロジェクトの中止・中断・延期や工事代金の回収不能が生じるリスクがあります。リスクに応じた契約条件の設定や調達先の分散化等の対策を講じています。

(2) プラント建設の工事従事者および機器資材の高騰リスク


プラント建設地や調達地において、工事従事者の不足・賃金高騰、または機器資材の価格高騰が発生した場合、建設工事の遅延や費用の増加が生じるリスクがあります。市場動向をモニタリングし、モジュール工法の採用による工事最適化や調達先の多様化などでリスク軽減に努めています。

(3) 脱炭素シフトなど気候変動に関するリスク


各国の環境政策等により従来型プラントの需要が減少したり、新技術の開発や省エネ対応が遅れたりすることで事業機会を逸失するリスクがあります。一方で、再生可能エネルギーや循環型分野、重要鉱物分野等での新たな受注獲得に向け、技術・ソリューションの提供を推進しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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