鶴見製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

鶴見製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の同社は、水中ポンプを主力とする産業機器メーカーです。国内での底堅い需要に加え、イタリアのポンプメーカー買収による欧州事業の取り込みやアジアでの伸長により、当連結会計年度の売上高は681億円(前期比8.7%増)、営業利益は103億円(同14.6%増)と増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社鶴見製作所 の有価証券報告書(第74期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 鶴見製作所ってどんな会社?


水中ポンプのリーディングカンパニーとして、土木建設工事や下水処理施設など幅広い分野で社会インフラを支えています。

(1) 会社概要


1924年にポンプ製造を開始し、1951年に設立されました。1990年には東証一部(現プライム市場)に指定され、強固な経営基盤を確立しています。海外展開にも積極的で、1970年代から香港、シンガポール、米国等に拠点を設立。近年では、2024年にイタリアのポンプメーカーZENIT INTERNATIONAL S.P.A.を完全子会社化し、欧州市場でのプレゼンスを強化しています。

連結従業員数は1,484名、単体では886名体制です。大株主は、資産管理業務を行う信託銀行に加え、同社所在地に拠点を置く資産管理会社や、取引先・関係者による持株会が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.33%
T'sコーポレーション 7.32%
ツルミ共栄会 6.86%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は辻本治氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
辻本 治 代表取締役社長 1980年入社。取締役経理本部経営管理部長、営業本部長、経営企画室長、開発部門統括などを歴任し、1998年より現職。
西村 武幸 専務取締役生産・技術部門統括 1982年入社。京都工場長や生産・技術部門統括を経て、SHANGHAI TSURUMI PUMP CO.,LTD. 董事長などを兼務し、2024年より現職。
上田 孝徳 常務取締役管理部門統括 1984年入社。社長室戦略グループ長、社長室長などを歴任。TSURUMI PUMP KOREA CO.,LTD. 代表理事を兼務し、2022年より現職。
敦賀 啓一郎 取締役上席執行役員経理財務部長 2007年入社。管理部次長、監査等委員会事務局、執行役員管理部長を経て、2023年より現職。
辻本 晃利 取締役上席執行役員戦略企画部長 兼国際営業部長 2015年入社。SDGs推進室長、ポンプシステム部長などを経て、2025年より現職。TSURUMI (AMERICA),INC.社長を兼務。


社外取締役は、園田隆人(株式会社フジシールインターナショナル元CFO)、井上麗(Microworld Innovation 財務担当役員)、田中祥博(弁護士)、亀井徹三(税理士)、松本浩(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「アジア」「欧州」の各報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

日本

各種ポンプ、環境装置および関連機器の製造・販売、レンタル、修理・アフターサービス、設置工事等を行っています。建設現場や下水処理施設などの設備市場が主な顧客です。
製品販売代金やレンタル料、工事代金などを収益源としています。運営は主に同社が行い、子会社のツルミテクノロジーサービスやテクノロジーサービス北條などがリース・レンタル事業や不動産賃貸等を担い、アロイテクノロジーが部品製造を行っています。

北米

米国市場において、同社グループ製品である各種ポンプの販売を行っています。鉱山市場や建設市場、設備市場などが主な顧客となります。
顧客への製品販売による対価を収益源としています。運営は、連結子会社であるTSURUMI (AMERICA), INC.が担っています。

アジア

アジア地域において、ポンプ等の製造および販売を行っています。ASEAN諸国や台湾などにおける設備需要やインフラ整備需要に対応しています。
製品の販売代金を主な収益源としています。運営は、台湾のTSURUMI PUMP TAIWAN CO.,LTD.やベトナムのTSURUMI PUMP VIET NAM CO.,LTD.が製造販売を行うほか、香港、シンガポール、タイの各現地法人が販売を担っています。

欧州

欧州地域において、主にポンプ等の製造および販売を行っています。2024年7月に子会社化されたZENIT社グループが中心となり、設備産業分野などに製品を提供しています。
製品の販売代金を収益源としています。運営は、イタリアのZENIT INTERNATIONAL S.P.A.およびその子会社4社が担っています。

その他

上記報告セグメントに含まれない地域での事業です。中国やオーストラリア、アフリカ、中東などにおいてポンプ等の製造・販売を行っています。
製品の販売代金を収益源としています。運営は、上海の製造販売子会社やオーストラリアの販売子会社などが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が453億円から681億円へと順調に拡大傾向にあります。利益面でも、経常利益は64億円から105億円の水準へと成長していますが、当期は為替差損の影響等により前期比で減益となりました。利益率は15%前後の高い水準を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 453億円 512億円 562億円 626億円 681億円
経常利益 64億円 74億円 90億円 126億円 105億円
利益率(%) 14.1% 14.4% 16.0% 20.2% 15.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 31億円 38億円 45億円 62億円 55億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で約54億円増加し、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は38.4%と前期から改善しました。一方、販売費及び一般管理費の増加等により営業利益率はやや低下しましたが、営業利益額自体は増加しており、本業の収益力は向上しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 626億円 681億円
売上総利益 225億円 262億円
売上総利益率(%) 35.9% 38.4%
営業利益 89億円 103億円
営業利益率(%) 14.3% 15.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が55億円(構成比35%)を占めています。売上原価については、原材料価格の高止まり等があるものの、売上高の増加に伴い419億円となり、原価率は61.6%となりました。

(3) セグメント収益


日本セグメントは設備市場や官公庁向けが好調で増収増益でした。アジアも設備需要が堅調で大幅な増益となりました。新設の欧州セグメントは2億円の利益を計上しています。一方、北米やその他地域は経済情勢の影響で減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 386億円 429億円 64億円 77億円 18.0%
北米 131億円 123億円 16億円 14億円 11.2%
アジア 62億円 60億円 9億円 18億円 29.7%
欧州 - 33億円 - 2億円 6.3%
その他 47億円 36億円 10億円 8億円 22.1%
調整額 - - -9億円 -16億円 -
連結(合計) 626億円 681億円 89億円 103億円 15.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


**積極型**: 営業活動で得た資金と財務活動(借入等)で調達した資金を合わせて、将来の成長に向けた投資(M&Aや設備投資)に積極的に充てている状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 95億円 70億円
投資CF -59億円 -80億円
財務CF 15億円 25億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「水と人とのやさしいふれあい」を経営理念とし、ポンプ事業を通じて地球環境保護に貢献することを目指しています。水に関連する技術と製品で社会に新しい流れを生み出し、人々の心に潤いを提供することを基本方針としています。

(2) 企業文化


「創造・調和・情熱」を大切にする価値観を持っています。独自の技術で社会に貢献し、熱意と信頼の和を育みながら、柔軟な発想と独創性のもとで常に前向きにチャレンジする姿勢を重視しています。また、新ブランドスローガン「For The Earth, For All The People」のもと、地球とかかわるすべての人を軸とした活動を推進しています。

(3) 経営計画・目標


創業100周年を超え、次の100年に向けた中期経営計画「Transformation 2027」を推進しています。「ものづくり」を軸とした改革とマテリアリティへの取り組みを通じて、持続的な社会と企業価値向上を目指しています。

* ROE:10%以上(長期的目標)
* 連結配当性向:30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


国内では災害復旧用ポンプの供給体制強化や、京都工場の新棟建設・設備投資によるモータ内製化・生産効率向上を推進しています。海外ではグローバル戦略を最重要課題とし、イタリアのポンプメーカーZENIT社の完全子会社化により、製品ラインナップの補完や販売網の拡大、技術融合を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「従業員の成長と働きがいの向上」をマテリアリティに掲げ、自律型人財の育成やエンゲージメント向上に注力しています。階層別研修や技術教育に加え、社内公募制度や業務時間の10%を別業務に充てる「10%ルール」などを導入し、挑戦と連携を促進しています。また、ダイバーシティ推進として女性活躍やワークライフバランスの実現にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.3歳 14.9年 6,685,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.7%
男性育児休業取得率 33.3%
男女賃金差異(全労働者) 59.6%
男女賃金差異(正規) 63.8%
男女賃金差異(非正規) 53.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用者に占める女性比率(17%)、障がい者雇用率(2.54%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境について

同社グループの業績は、販売地域の経済状況、特に日本の公共投資や民間設備投資の影響を受けます。また、市場競争による価格下落や、エネルギー・素材価格の高騰による原材料コストの上昇が発生した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替変動による影響

外貨建輸出入取引において主に米ドル等の外貨で決済を行っているため、為替レートの変動の影響を受けやすくなっています。為替予約や通貨スワップ等で対策を講じていますが、大幅な変動があった場合、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 自然災害について

大規模地震、津波、洪水等の自然災害や感染症の流行等により、同社グループや取引先の事業活動が停止した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。生産拠点の分散化やBCP対策を進めていますが、想定外の事態が発生するリスクがあります。

(4) 企業買収・資本提携及び事業再編について

事業拡大のために企業買収や資本提携を行っていますが、事業環境の変化等により当初期待した効果が得られない場合、のれんの減損処理が必要となり、経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。特に欧州での大型買収によりのれんが増加しており、その動向が注視されます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。