※本記事は、新晃工業株式会社の有価証券報告書(第77期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 新晃工業ってどんな会社?
同社は、業務用空調機器の製造販売および空調工事、ビル管理事業を展開する空調システムメーカーです。
■(1) 会社概要
1950年に業務用冷暖房機器の製造販売を目的として設立されました。1951年に国内初のクロスフィンコイルなどを完成させ、その後1965年に神奈川工場、1981年に岡山工場を開設し生産体制を強化しました。1985年に株式を上場し、2013年には千代田ビル管財を子会社化してビル管理事業を拡大しています。
同社グループの従業員数は連結で1,701名、単体で770名です。筆頭株主は同社役員が代表を務める明晃で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は資本業務提携先であるダイキン工業が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 明晃 | 19.85% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.41% |
| ダイキン工業 | 5.94% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長兼社長執行役員は末永聡氏が務めており、社外取締役比率は46.2%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 末永聡 | 代表取締役社長兼社長執行役員 | 1984年同社入社。東京支社長、経営企画本部長等を歴任。2016年取締役兼常務執行役員、2017年同専務執行役員を経て、2020年6月より現職。 |
| 青田徳治 | 代表取締役副社長兼副社長執行役員管理本部長 | 2011年三菱東京UFJ銀行目黒支社長。2014年同社入社。2016年管理本部長などを経て2017年取締役兼常務執行役員。2020年6月より現職。 |
| 谷口武則 | 取締役兼専務執行役員生産本部長 | 1982年岡山新晃工業入社。新晃空調工業代表取締役社長等を経て2017年同社取締役。2020年4月に生産本部長および取締役兼専務執行役員となり現職。 |
| 藤井智明 | 取締役兼専務執行役員経営企画室長 | 1997年同社入社。情報システム部長、経営企画本部長等を歴任し、2018年取締役兼執行役員。2021年4月経営企画室長、2022年6月より現職。 |
| 道端徳昭 | 取締役兼常務執行役員 | 1989年同社入社。大阪支社長等を経て2019年取締役兼執行役員。2021年営業統括本部長を務め、2022年6月に取締役兼常務執行役員に就任し現職。 |
| 佐野雅一 | 取締役(常勤監査等委員) | 1980年同社入社。品質保証部長、設計部長、執行役員技術本部品質管理統括部長、技術本部顧問などを歴任し、2022年6月より現職。 |
| 北殿寿生 | 取締役(常勤監査等委員) | 1983年同社入社。情報システム部長、同部統括部長、内部監査室長などを経て、2018年6月に執行役員に就任。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、安達美奈子(元ホーチキ商事代表取締役社長)、平野伸一(元アサヒビール代表取締役社長)、福田伊津子(元東芝エレクトロニックシステムズ代表取締役社長)、水村健一郎(元小田急不動産取締役)、中川善雄(元大阪高等検察庁検事)、生越栄美子(生越公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」および「アジア」事業を展開しています。
■(1) 日本
国内市場において、空気調和機やファンコイルユニットなどの業務用空調機器の製造および販売を行っています。また、空調設備工事の請負施工や保守点検、ビル設備全般の総合管理や各種清掃などのサービスも提供しており、オフィスビルや工場、データセンターなど幅広い顧客層に対応しています。
収益は、設備工事を担当するサブコン等の顧客へ空調機器を納入することによる販売代金や、保守点検サービス、ビル管理サービスの提供による手数料から得ています。運営は同社のほか、新晃アトモス、日本ビー・エー・シー、千代田ビル管財が担当しています。
■(2) アジア
中国を中心とするアジア市場において、空気調和機やファンコイルユニットなどの空調機器の製造・販売事業を展開しています。製造業を中心とした現地需要を捉え、地産地消を進めながら、価格競争の厳しい市場において技術支援や空調工事を含めた総合的なサービスを提供しています。
収益は、アジア地域の顧客に対して製造した空調機器を販売し、その製品代金および関連するサービス提供の対価として得ています。事業の運営は主に中国の連結子会社である上海新晃空調設備股份が担当しており、同社からの技術支援やノウハウ提供を受けながら推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は着実な成長を続けていますが、原材料費や人件費などの各種コスト増加が影響し、経常利益および当期利益は直近で減少に転じています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 420億円 | 448億円 | 519億円 | 570億円 | 593億円 |
| 経常利益 | 60億円 | 65億円 | 91億円 | 106億円 | 101億円 |
| 利益率(%) | 14.4% | 14.6% | 17.6% | 18.6% | 17.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 38億円 | 43億円 | 56億円 | 67億円 | 56億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加したものの、それに伴い売上原価も増加しており、売上総利益率はほぼ同水準を維持しています。一方で、販売費及び一般管理費の増加が利益を圧迫し、営業利益率は低下しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 570億円 | 593億円 |
| 売上総利益 | 218億円 | 226億円 |
| 売上総利益率(%) | 38.2% | 38.1% |
| 営業利益 | 100億円 | 94億円 |
| 営業利益率(%) | 17.5% | 15.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料賞与が49億円(構成比37%)、運賃及び荷造費が17億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の日本セグメントは空調設備工事・メンテナンスの需要獲得により堅調に推移しています。アジアセグメントにおいても、機器販売や工事案件が増加し売上拡大に貢献しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 498億円 | 513億円 |
| アジア | 72億円 | 80億円 |
| 連結(合計) | 570億円 | 593億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 57億円 | 80億円 |
| 投資CF | 3億円 | -38億円 |
| 財務CF | -82億円 | -25億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も67.9%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「豊かな創造力と誇れる品質」を経営理念とし、顧客をはじめ社会や社員に対し「信頼と満足」を普遍的に提供することを経営の基本方針としています。事業領域を「快適環境の創造」と定義し、業務用空調機器を中核に建物の環境性や価値向上に貢献することを目指して事業を展開しています。
■(2) 企業文化
同社は「CONDITIONING FUTURE」というスローガンのもと、サステナビリティを重視し、気候変動やデジタルなどの環境変化に機会を見出す文化を重視しています。前向きさから生まれる知恵で成功例を積み重ね、ワクワクしながら未来に向かって挑戦を続ける組織風土の定着に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「move.2027」において、資本コスト経営を事業運営の軸に据えています。資本コストと資本収益性を意識した経営を進めることで企業価値の向上を図り、最終年度に向けて以下の具体的な数値目標を掲げています。
* 売上高630億円
* 営業利益100億円
* ROE10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
デジタル技術革新(DX)を軸に生産・業務プロセスの効率化を進め、リードタイム短縮や労働集約的体制からの脱却を図ります。また、データセンター、個別空調、空調設備工事、再エネ蓄熱、更新需要の5分野を重点ターゲットとし、環境価値の高い製品提供と技術力の強化で収益拡大を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本を重要な資産と位置付け、人生100年時代を生き抜く若手やシニア社員が成長し続ける「人財創造の環境」を整備しています。専門性を高めながら事業戦略の遂行に貢献できる人財の育成を最重要方針とし、多様性を活かすダイバーシティ経営や安全で働きやすい職場づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.0歳 | 15.0年 | 6,781,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.3% |
| 男性育児休業取得率 | 86.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 62.5% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 65.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇の取得率(78.4%)、従業員の資格取得件数(204件)、特許権・商標権・意匠権・実用新案権の保有件数(240件)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建築設備投資の需要変動
同社の売上はオフィスビルや工場などの建築設備投資に依存しており、国内および中国を中心とするアジアの経済情勢の影響を受けます。景気後退や建設投資需要の縮小が起こった場合、業績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料価格の変動と部品の納期遅延
製品に使用される銅やアルミニウムなどの主要原材料は国際的な価格変動リスクを抱えています。また、半導体不足を背景とした制御機器やモーターの納期長期化も発生しており、コスト増加や生産効率の低下が生じる可能性があります。
■(3) 労働力不足に伴う生産体制への影響
国内の生産年齢人口の減少により、技術・製造分野における労働者不足や労務費の上昇が顕著になっています。人手不足による人件費の上昇や、コスト増の製品価格への転嫁が適切に行われない場合、収益性を圧迫する可能性があります。



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