新晃工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

新晃工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の空調機器メーカーです。業務用空調機器の製造販売を主力とし、大規模建物向けのセントラル空調分野で強みを持ちます。直近の業績は、データセンター向け需要の取り込みや価格改定の効果により、売上高・利益ともに過去最高を更新する増収増益となりました。


※本記事は、新晃工業株式会社の有価証券報告書(第76期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 新晃工業ってどんな会社?


業務用空調機器のトップメーカーとして、大規模施設向けのセントラル空調機器「AHU」で高いシェアを誇る企業です。

(1) 会社概要


1950年に設立され、翌年には国内初のファンコイルユニットを完成させました。1985年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、2013年には東京証券取引所市場第一部(現プライム市場)へ上場しました。また、2013年に千代田ビル管財を子会社化し、ビル管理事業へも領域を拡大しています。

2025年3月31日時点の連結従業員数は1,684名、単体では727名です。筆頭株主は取締役の藤井智明氏が代表を務める株式会社明晃で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。主要株主には資本業務提携先のダイキン工業も名を連ねています。

氏名 持株比率
明晃 18.92%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.00%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505025 7.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表者は代表取締役社長兼社長執行役員の末永 聡氏です。社外取締役比率は46.2%です。

氏名 役職 主な経歴
末永 聡 代表取締役社長兼社長執行役員 1984年入社。東京支社長、経営企画本部長を経て2016年取締役に就任。2020年6月より現職。
青田 徳治 代表取締役副社長兼副社長執行役員管理本部長 2011年三菱東京UFJ銀行目黒支社長。2014年入社。管理本部長を経て2020年6月より現職。
谷口 武則 取締役兼専務執行役員生産本部長 1982年岡山新晃工業入社。新晃空調工業社長を経て2017年同社取締役。2020年4月より現職。
藤井 智明 取締役兼専務執行役員経営企画室長 1997年入社。管理本部情報システム部長、経営企画本部長を経て2022年6月より現職。
道端 徳昭 取締役兼常務執行役員営業統括本部長 1989年入社。大阪支社長を経て2019年取締役。2022年6月より現職。


社外取締役は、安達 美奈子(元ホーチキ商事社長)、平野 伸一(元アサヒビール社長)、福田 伊津子(元東京エレクトロニツクシステムズ社長)、水村 健一郎(元東京三菱銀行神戸支社長)、中川 善雄(弁護士)、生越 栄美子(公認会計士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」および「アジア」事業を展開しています。

(1) 日本


同社および国内関係会社により、空調機器の製作・販売、空調工事の請負施工、ビル管理事業等を行っています。主力製品はセントラル空調で使用される空気調和機(AHU)やファンコイルユニット(FCU)であり、大規模な事務所、工場、病院等に導入されています。

製品販売による対価や工事請負代金、ビル管理料が主な収益源です。運営は同社のほか、空調工事を行う新晃アトモス、冷却塔販売の日本ビー・エー・シー、ビル総合管理を行う千代田ビル管財が担っています。

(2) アジア


中国を中心としたアジア地域において、空調機器の製作および販売を行っています。現地の市場特性に合わせた製品展開を行い、製造業を中心とした内需拡大に対応しています。

主な収益源は、現地顧客への空調機器等の製品販売による対価です。運営は主に上海新晃空調設備股份有限公司などの現地法人が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実に右肩上がりで推移しており、直近5期間で約1.5倍の規模に成長しています。利益面でも、経常利益・当期純利益ともに増加傾向にあり、特に直近では2ケタ台の高い利益率を維持しながら過去最高益を更新するなど、収益性の高い成長を実現しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 392億円 420億円 448億円 519億円 570億円
経常利益 70億円 60億円 65億円 91億円 106億円
利益率(%) 17.9% 14.4% 14.6% 17.6% 18.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 50億円 41億円 45億円 66億円 78億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益が拡大し、営業利益率も向上しています。増収効果に加え、生産性の向上や価格改定などが寄与し、収益性が高まっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 519億円 570億円
売上総利益 191億円 218億円
売上総利益率(%) 36.8% 38.2%
営業利益 86億円 100億円
営業利益率(%) 16.6% 17.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料賞与が44億円(構成比37%)、運賃及び荷造費が16億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは、データセンター向けや更新需要の取り込み、価格改定効果により増収増益となり、全社業績を牽引しました。一方、アジアセグメントは中国市場の停滞や価格競争の影響を受け減収となり、営業損失を計上しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 444億円 498億円 84億円 102億円 20.6%
アジア 75億円 72億円 1億円 -3億円 -3.9%
調整額 -0億円 -1億円 0億円 0億円 -
連結(合計) 519億円 570億円 86億円 100億円 17.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


パターン:改善型(営業CF+、投資CF+、財務CF-)

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 89億円 57億円
投資CF -22億円 3億円
財務CF -34億円 -82億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.8%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も71.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同グループは「豊かな創造力と誇れる品質」を経営理念とし、顧客をはじめ社会や社員に対し「信頼と満足」を普遍的に提供することを経営の基本方針としています。また事業領域を「快適環境の創造」と定義し、業務用空調機器を中核にしながら、建物に関わる各種事業への業容拡大を目指しています。

(2) 企業文化


挑戦を促す企業文化の定着を目指し、前向きさの中から生まれる従来の延長線を超えた発想と知恵で成功例を積み重ねることを重視しています。多様性を活かす安全で生き活きとした職場づくりに努めるとともに、SINKO Scalable Architecture(SSA)を軸としたデジタル化や変革に挑戦する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「move.2027」において、資本コスト経営を事業運営の軸として採用し、2027年3月期に向けた数値目標を設定しています。

* 連結売上高:600億円
* 連結営業利益:100億円
* ROE:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「データセンター」「個別空調」「空調設備工事・メンテナンス」「再エネ蓄熱・水素冷却」を成長領域として定めています。特にデータセンター向けには大風量AHUや大型冷却塔の強みを活かし、個別空調ではヒートポンプAHUの拡販を進めます。また、デジタル技術を活用した「SINKO Scalable Architecture(SSA)」により、設計・製造プロセスの効率化や付加価値向上を図り、生産能力の増強にも投資を行います。

* データセンター向け売上高(2025年3月期実績):43億円
* 個別空調向け売上高(2025年3月期実績):30億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「挑戦を促す企業文化の定着を目指した人財育成」を掲げ、自らのキャリアを描き、能力を発揮しながら粘り強くやり抜くことをサポートする仕組みづくりを進めています。多様性を活かすダイバーシティ経営を推進し、安全で生き活きと働ける職場環境の構築を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.0歳 15.0年 6,845,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 0.7%
男性育児休業取得率 86.7%
男女賃金差異(全労働者) 61.9%
男女賃金差異(正規) 62.4%
男女賃金差異(非正規) 69.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇の取得率(73.0%)、従業員エンゲージメント調査総合得点(3.25点)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済・景気に係るリスク


同グループの営業収入は、大規模な事務所、工場、病院等の建築設備投資に依存しており、経済情勢や建設投資需要の影響を受けます。特に中国における収益が海外事業の主要な割合を占めるため、同国の経済情勢の影響も受けます。景気後退による需要縮小は業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 経営戦略に係るリスク


主力市場であるAHU市場は競合他社が存在し、海外企業の参入可能性も含め競争が激しい環境にあります。SIMAプロジェクト等による競争力強化を進めていますが、価格競争の激化等により成長が鈍化する可能性があります。また、環境規制の変化や原材料価格の変動、部品の納期遅延なども業績に影響を与える可能性があります。

(3) コンプライアンスに係るリスク


内部統制システムの整備やコンプライアンス室の設置などにより体制強化を図っていますが、法令等に抵触する事態が発生した場合、社会的信用の低下や対応費用の発生により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。