前澤給装工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

前澤給装工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

前澤給装工業は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、水道用給水装置や住宅・建築設備製品の製造・販売を主力とする企業です。2026年3月期の業績は売上高が317億円と前期比で減収となったものの、当期純利益は子会社吸収合併に伴う特別利益の計上などにより27億円と増益を確保しています。


※本記事は、前澤給装工業の有価証券報告書(第70期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 前澤給装工業ってどんな会社?


水道インフラを支える給水装置および住宅・建築設備製品の製造・販売を手掛けるメーカーです。

(1) 会社概要


同社は1957年に東京水道工業として設立され、1965年に現在の前澤給装工業へ商号変更しました。1994年の福島工場設置による生産力強化を経て、2005年に東京証券取引所第一部へ上場し、現在はスタンダード市場に移行しています。2025年には完全子会社であったQSOインダストリアルを吸収合併し、事業体制の効率化と販売網の強化を図っています。

現在の従業員数は単体で426名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位および第3位には事業会社の枠組みである前澤工業、前澤化成工業が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.06%
前澤工業 6.13%
前澤化成工業 6.13%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は13.0%です。代表取締役社長は杉本博司氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
杉本博司 代表取締役社長 1989年4月同社入社。広島営業所長、営業本部長、事業企画部長などを経て、2025年4月より現職。
谷口陽一郎 常務取締役管理本部長 1986年協和銀行入行。りそな銀行九段支店統括部長等を経て2016年9月同社入社。2025年4月より現職。
青木栄一 取締役生産本部長 1990年2月同社入社。大阪営業所長、関西・中部エリア統括部長、福島工場長などを経て、2026年1月より現職。


社外取締役は、飯島康夫(紀尾井町法律事務所弁護士)、熊﨑美杉(熊﨑美杉税理士事務所税理士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「給水装置事業」「住宅・建築設備事業」「商品販売事業」を展開しています。

給水装置事業


道路に布設されている配水管(水道本管)から、家屋等の敷地内に上水道を引き込むためのサドル付分水栓、止水栓、各種継手類などの水道用給水装置を製造、販売しています。安全な水の供給を支えるインフラ部材として、全国の水道事業体や工事業者に向けて製品を提供しています。

収益は、顧客である水道事業体や関連業者に対するこれら給水装置製品の販売代金から得ています。事業の運営は前澤給装工業が主体となって行っています。

住宅・建築設備事業


上水道を屋内で使用するための給水・給湯配管部材や床暖房部材、およびこれらをユニット化した配管システムなどの製造、販売を行っています。また、より快適な生活を実現するための住環境部材の開発・設計から製造までを一貫して手掛けています。

収益は、住宅メーカーや設備業者などに対する配管システムおよび建築設備製品の販売から得ています。事業の運営は前澤給装工業が主体となって行っています。

商品販売事業


主に給水装置事業や住宅・建築設備事業の展開に関連する各種の仕入商品を販売しています。自社製品と組み合わせて顧客に提供することで、多様なニーズにワンストップで対応する役割を担っています。

収益は、関連業者や販売店に対する仕入商品の販売代金から得ています。事業の運営は前澤給装工業が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期の業績推移を見ると、売上高は緩やかな拡大傾向にありましたが、直近は横ばいで推移しています。一方、利益面では経常利益率が7%台から10%台へと改善傾向を示し、当期純利益も安定して増加を続けており、着実な収益力の向上が見受けられます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 288億円 310億円 320億円 320億円 -
経常利益 23億円 23億円 26億円 32億円 -
利益率(%) 7.9% 7.3% 8.1% 10.0% -
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 15億円 18億円 20億円 27億円

(2) 損益計算書


売上高は安定した水準を保っていますが、当期はわずかに減少しました。営業利益も前年度から減少しており、原材料価格の高騰やコスト増加が収益性に影響を与えていることが伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 320億円 -
売上総利益 98億円 94億円
売上総利益率(%) 30.6% -
営業利益 32億円 27億円
営業利益率(%) 10.0% -


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当が19億円(構成比29%)、運送費が10億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


売上構成は給水装置事業が過半を占めており、住宅・建築設備事業がそれに次ぐ規模となっています。各セグメントにおいて、原材料価格の高騰や住宅着工戸数の減少などの影響を受けつつも、販売価格の改定や事業体制の効率化に取り組むことで安定した収益基盤を維持しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
給水装置事業 - 169億円
住宅・建築設備事業 - 121億円
商品販売事業 - 27億円
連結(合計) - 317億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 25億円 25億円
投資CF -13億円 -10億円
財務CF -16億円 -19億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.4%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「QSO」(Quality, Safety & Originality)『品質は人格であり、安全は協調であり、独創は、改革である』という会社指針に基づき、より「きれいな水、安全な水、おいしい水」の供給に向けて、顧客のニーズを第一に考えた事業活動に取り組んでいます。水道事業の一翼を担う企業として社会的責任を果たし、地域社会の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


70年にわたり築き上げてきた安定的収益基盤と、顧客との強固な信頼関係を大切にする文化を持っています。持続的な成長を目指すサステナビリティ経営を重視し、地球環境保護や再生可能エネルギーの活用など「環境との調和」を図る姿勢を重視しています。また、すべてのステークホルダーから信頼を得続けるため、ガバナンスやコンプライアンスの強化による「責任ある行動」を徹底しています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2029」では、「原点回帰・未来への挑戦」を方針に掲げ、持続的な成長を目指すサステナビリティ経営を推進しています。最終年度となる2029年度の目標として、以下を掲げています。

・売上高:335億円
・営業利益:38億円
・売上高営業利益率:11.5%以上
・ROE:7.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業における不採算取引の抑制や事業体制の効率化を図り、収益基盤の安定化を進めます。同時に、DX推進を通じた業務の自動化・省人化による生産性向上や、次世代の成長ドライバーとなる付加価値の高い耐震化製品の開発に注力します。また、働きがいのある職場環境の提供やダイバーシティの推進を通じて人材基盤を強化し、事業成長を支える戦略を描いています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材を重要な経営資源と位置づけ、持続的成長と企業価値向上に向けて、健康経営への取り組みや働きがいのある職場環境の整備を推進しています。次世代リーダーの育成や自己キャリア形成支援を通じた組織力向上を図るとともに、ワークライフバランスの実現や多様な人材の登用を強化し、事業成長を支える人材基盤を構築しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 42.1歳 17.3年 6,538,481円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.6%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.7%
男女賃金差異(正規雇用) 66.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 43.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境の変化について

国内公共投資や民間住宅投資の低迷、住宅関連政策や地価動向の影響により、需要が大きく減退し、経営成績に影響を及ぼすリスクがあります。同社は業務効率化によるコストダウンを実施し、財務基盤の維持に努めています。

(2) 原材料・資材等の調達について

主要な原材料である銅や樹脂などの調達先が災害や紛争で困難になった場合や、急激な価格高騰を販売価格に適切に反映できないリスクがあります。これに対し、同社は在庫水準の引き上げや購買先の複数化で対応しています。

(3) 他社との競合と製造物責任について

競合他社との厳しい競争下で品質や性能などの面で優位性を確保できないリスクや、製品の瑕疵によって重大な製造物責任を負うリスクがあります。同社は付加価値の高い製品開発の推進や品質管理の徹底、PL保険の活用によりリスクの軽減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。