鉱研工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

鉱研工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場。ボーリング機器の製造販売および独自工法による工事施工を主要事業としています。直近の業績は、機器販売や工事施工が堅調に推移し、増収増益となりました。なお、2025年6月にヒューリックによる公開買付けへの賛同を表明しています。


※本記事は、鉱研工業株式会社 の有価証券報告書(第98期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 鉱研工業ってどんな会社?


地下資源開発やインフラ整備に必要なボーリング機器の製造販売と、独自技術を用いた工事施工を行う企業です。

(1) 会社概要


1947年、大阪にて鉱研試錐工業として設立され、ボーリング機器の製造販売を開始しました。1987年に現社名へ変更し、1995年には構造工事を完全子会社化しました。2004年に日本証券業協会(現JASDAQ)へ株式を上場。2022年には神奈川県伊勢原市に新工場を竣工し、稼働を開始しています。

連結従業員数は305名、単体では229名です。筆頭株主は建機メーカーの日立建機、第2位は土壌汚染対策事業等を行うエンバイオ・ホールディングスであり、それぞれ同社と資本業務提携等の関係にあります。

氏名 持株比率
日立建機 9.23%
エンバイオ・ホールディングス 9.04%
鉱研工業取引先持株会 7.22%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は木山隆二郎氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
木山 隆二郎 代表取締役社長 海外工事部長、エンジニアリング本部長等を経て2023年4月より現職。
外山 洋 専務取締役経営管理財務本部長 営業本部長、経営管理本部長等を経て2025年5月より現職。
櫻木 宏児 取締役営業本部長製造本部管掌 北海道支店長、東日本事業部長等を経て2023年6月より現職。
和泉 裕介 取締役 みずほ銀行支店長等を経て2021年入社。2025年5月より現職。


社外取締役は、遠藤寛治(元みずほ総合研究所上席執行役員)、柿沼光利(税理士)、小林貴恵(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ボーリング機器関連」および「工事施工関連」事業を展開しています。

(1) ボーリング機器関連


ボーリングマシン、ポンプ、その他機械本体、関連部品、水井戸関連機器等の製造販売を行っています。また、ボーリング機器のレンタル業務も展開しており、国内外の建設・資源開発関連企業などを主要な顧客としています。

製品・商品の販売代金やレンタル料が主な収益源です。運営は、同社および子会社のクリステンセン・マイカイが行っています。同社は独自技術を活かした製品開発に注力し、クリステンセン・マイカイは関連製品の取り扱いを通じてグループの事業を支えています。

(2) 工事施工関連


地質調査、土木・地すべり対策、建築基礎、さく井、温泉開発、土壌汚染調査・改良、アンカー工事などの施工および建設コンサルタント業務を提供しています。官公庁や民間企業からの工事受注が中心です。

工事請負契約に基づく施工代金が収益源となります。運営は、同社および子会社の構造工事が行っています。同社は高度なボーリング技術を要する工事や海外ODA案件などを手がけ、構造工事は建築基礎アンカーなどの特定分野に強みを持っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な増加傾向にあります。利益面では、経常利益が変動しつつも全体として増加基調にあり、特に直近の当期純利益は高い水準を記録しました。利益率も改善傾向が見られ、事業規模の拡大とともに収益性が向上しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 75億円 73億円 82億円 95億円 106億円
経常利益 2億円 3億円 2億円 5億円 6億円
利益率(%) 2.3% 4.2% 1.9% 5.0% 5.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 3億円 2億円 2億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も増加しました。売上総利益率はほぼ横ばいを維持しています。営業利益および営業利益率も前期と比較して改善しており、本業の収益性が高まっていることが分かります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 95億円 106億円
売上総利益 29億円 31億円
売上総利益率(%) 30.3% 29.1%
営業利益 6億円 7億円
営業利益率(%) 5.9% 6.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が8億円(構成比34%)、支払手数料が3億円(同11%)を占めています。売上原価においては、商品及び製品売上原価が49億円(構成比65%)、工事原価が26億円(同35%)となっています。

(3) セグメント収益


ボーリング機器関連は、個社オーダーの自動掘削機や水中ポンプの売上が伸長し増収となりましたが、部品価格高騰の影響で減益となりました。一方、工事施工関連は、各種工事が順調に進捗し大幅な増収増益を達成しました。全体として連結売上高および利益の増加に寄与しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ボーリング機器関連 65億円 69億円 4億円 3億円 4.1%
工事施工関連 30億円 38億円 2億円 4億円 10.1%
連結(合計) 95億円 106億円 6億円 7億円 6.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 5億円 5億円
投資CF -0.4億円 0.5億円
財務CF -0.8億円 -5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は38.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「ONE&ONLYの技術構築のために前進」という社是のもと、他社にはない独自の製品と施工技術を国内外の市場に展開することで、地球と社会に貢献することを目指しています。また、「顧客の安心を以て信頼を得、全社員とその家族の幸福を追求し、地球と社会に限りなく貢献する会社となる」ことを経営理念として掲げています。

(2) 企業文化


同社は「鉱研スピリット3S」として、SAFETY(安全・安心)、SAVE(省力化)、SATISFACTION(顧客満足)を掲げています。この価値観に基づき、建設業界の人手不足に対応する製品群の開発や、社員の主体的行動を推進する風土づくりに取り組んでいます。また、新たなパーパスとして「地下を活かし、地下と生きる、持続可能なこうけんを、地球に」を策定しています。

(3) 経営計画・目標


同社は5か年の中期経営計画「STEP UP 鉱研 ACTIONS 2025」を策定し、売上拡大と高収益の達成を目指しています。2026年3月期の連結業績予想として、以下の数値を掲げています。

* 売上高:115億円
* 営業利益:9億円
* 経常利益:8億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:5.6億円

(4) 成長戦略と重点施策


「売上拡大」と「高収益」を目指し、グローバル展開と製品開発を強化します。海外では東南アジアを重点地域とし、民間ベースの売上拡大に注力します。製品面では、3S(安全・省力化・顧客満足)を体現する製品群の市場投入を進め、AI化や自動化に対応した開発を推進します。

* コスト削減:海外製品・材料の積極導入、ソフトのクラウド化。
* 製品開発:年間2〜3種の新機種開発、キーワードをAutomaticからIntelligenceへ。
* 営業活動:創造的設計力を生かすカスタマーサービスの充実。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人材戦略の3つの柱」として、人材育成の推進、多様な人材の登用、風通しの良い働きやすい風土づくりを掲げています。具体的には、管理職のマネジメント力強化や資格手当拡充による専門性向上、実力主義による女性・中途採用者の管理職登用を進めています。また、ITを活用した働き方改革やハラスメント研修などを通じて、環境整備を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.4歳 12.3年 6,090,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.1%
男性育児休業取得率 -
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -


※同社は公表義務の対象ではないため、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異については有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用者の管理職比率(34.8%)、1人当たり残業時間(6.6H)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 取引先の信用リスク


取引先は建設関連業種が多く、建設資材価格の高騰などにより厳しい経営環境にある場合があります。同社は与信管理や債権管理を徹底していますが、取引先が信用不安に陥った場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 公共工事の影響


製品や工事の最終需要において公共工事関連が高い割合を占めています。同社は海外市場の開拓や民間工事の受注に注力していますが、公共工事関連予算の増減が業績に間接的な影響を与える可能性があります。

(3) 海外市場リスク


海外市場においては、中国市場が大きな割合を占めているため、同国の政治状況の変化が売上低下につながる恐れがあります。また、競合他社の参入による価格競争の激化や製品の陳腐化といったリスクも存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。