サンセイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンセイ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

サンセイは、東京証券取引所スタンダード市場に上場する企業です。主にビル窓拭き用などのゴンドラや舞台装置の設計・製造・据付、船舶修理などの海洋関連事業を展開しています。直近の業績は、好調な受注を背景に両事業とも伸長し、増収増益を達成しました。堅実な経営基盤のもと、社会インフラを支えています。


※本記事は、サンセイ株式会社の有価証券報告書(第71期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. サンセイってどんな会社?


ビル用ゴンドラと舞台装置の設計・製造、および船舶修理などの海洋関連事業を手掛ける企業です。

(1) 会社概要


同社は1956年に設立され、舞台装置や遊園地遊戯機械の製造から事業をスタートしました。1963年には窓拭き用ゴンドラの製造販売を開始し、1983年に現在のサンセイへ商号を変更しています。1992年に旧林兼グループ等との合併により船舶修理業へ参入し、事業領域を拡大しました。

現在の従業員数は連結で228名、単体で190名です。大株主の状況としては、筆頭株主が事業会社の光通信で、第2位は代表取締役社長の小嶋敦氏、第3位も光通信となっており、経営陣と特定事業会社が上位を占める株主構成となっています。

氏名 持株比率
光通信 19.54%
小嶋敦 11.33%
光通信 5.65%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は小嶋敦氏が務めています。取締役5名のうち2名が社外取締役です。

氏名 役職 主な経歴
小嶋敦 取締役社長(代表取締役) 1988年10月同社入社。1991年取締役、1993年常務、1994年副社長を経て、1996年4月より現職。
岸本竹史 常務取締役営業本部長、東京支社長、ゴンドラ・舞台総括 1984年1月同社入社。設計本部長、執行役員等を経て2012年取締役に就任。2022年6月より現職。
西村直樹 取締役管理本部長、海洋総括 1994年3月同社入社。管理本部総務グループ部長、執行役員等を経て2022年6月より現職。


社外取締役は、美藤直人(美藤直人公認会計士・税理士事務所代表)、三宅有(三宅有税理士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ゴンドラ・舞台」および「海洋関連」、「その他」事業を展開しています。

(1) ゴンドラ・舞台


中高層ビルの窓拭き用ゴンドラや舞台装置の設計・製造販売・据付、保守修理、さらに仮設ゴンドラのレンタル事業を提供しています。ゼネコンなどの建設業界をはじめ、あらゆる高所作業現場が主な顧客となります。

製品の販売・設置工事による対価、納入後の継続的なメンテナンス料、建設現場向け仮設ゴンドラのレンタル料を収益源としています。同社が製造や保守を担い、子会社のサンセイゴンドラレンタリースおよびサンセイゴンドラがレンタル業務を展開しています。

(2) 海洋関連


海上保安庁等の官公庁船を中心とした船舶の定期・中間検査や修理を請け負っています。また、間伐材を活用した人工魚礁や浮体式灯標の製作なども行っています。

顧客からの船舶修理代金や魚礁等の販売代金を収益源としています。同社が修理や製造販売を直接行い、子会社のサンセイエンタープライズが船舶修理に伴う船員宿泊施設の運営を担っています。

(3) その他


産業機械の製造販売や、同社所有不動産の管理業務を行っています。

産業機械の販売代金や不動産賃貸収入などを収益源としています。同社が産業機械の製造販売を行い、子会社のサンセイエンタープライズが不動産の管理業務を受託しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は着実な増加傾向が続いており、直近では大幅な伸びを示しています。利益面でも長らく安定した水準を維持していましたが、直近の期において収益性が大きく向上し、経常利益と当期利益がいずれも過去数年で最高レベルを記録するなど、成長軌道に乗っています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 45億円 54億円 56億円 58億円 70億円
経常利益 4億円 5億円 4億円 5億円 10億円
利益率(%) 7.9% 8.7% 7.5% 7.9% 14.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 4億円 3億円 3億円 8億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い売上総利益も順調に増加しており、原価率の改善等によって売上総利益率は大きく向上しています。また、増収効果により販管費の増加を吸収し、営業利益ベースでも大幅な増益を達成しており、収益力の向上が明確に表れています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 58億円 70億円
売上総利益 14億円 20億円
売上総利益率(%) 23.4% 29.1%
営業利益 5億円 10億円
営業利益率(%) 7.9% 14.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4億円(構成比37%)、役員報酬が1億円(同14%)を占めています。また、売上原価については、材料費が23億円(構成比49%)、労務費が12億円(同26%)、外注費が7億円(同14%)となっています。

(3) セグメント収益


主力であるゴンドラ・舞台セグメントは、各種設備の更新や順調な受注獲得により堅調に売上を伸ばしています。また、海洋関連セグメントにおいても、高額な船舶修理物件を複数対応したことなどにより売上が大幅に増加し、全体の増収を強力に牽引しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
ゴンドラ・舞台 40億円 43億円
海洋関連 17億円 28億円
その他 - 0.1億円
連結(合計) 58億円 70億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」の状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF -5億円 5億円
投資CF 0.2億円 -6億円
財務CF -1億円 -0.3億円


財務指標については、企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.7%となっており、いずれもスタンダード市場の平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「より快適な社会の実現」を経営理念に掲げています。ビル用ゴンドラと舞台装置のパイオニアとして、多彩な社会のニーズに応えるため、安全性・高機能・使いやすさに焦点を当てた製品づくりを目指しています。常に顧客の満足度を志向し、品質向上の継続的改善に努めるとともに、積極的に新技術へ挑戦することを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、「株主にとっては信頼できる会社」「従業員にとっては安心して働ける会社」「顧客にとっては信用できる会社」という理念を掲げています。コンプライアンスを最重要項目に位置づけ、誠実に会社情報の適時開示に努めることで、広く社会に信頼される企業を目指す風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、株主に対する配当を通じた利益還元を重要な企業責任として位置付けています。企業体質の一層の強化や、今後の事業展開に備えるための内部留保の充実などを総合的に勘案した上で、以下の指標を経営目標として公約しています。

・ROE(自己資本利益率)の向上
・平均28%以上の配当性向の維持

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、経営基盤の強化に向けて複数の重点施策を掲げています。主力事業のさらなる競争力強化のため、新製品開発などの研究開発や、安全性・稼働継続性を優先した設備の更新を推進しています。また、将来の事業活動を支える人材の確保・育成に注力するほか、危機管理マニュアルの更新やBCP(事業継続計画)の策定を通じ、災害時でも事業継続が可能な体制づくりに取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人材を企業価値創造の源泉と位置づけ、「技術継承・人材育成」と「働きやすさ」を重要テーマとする人材戦略を推進しています。力量マップを用いた個別教育によるスキルアップ環境の整備に加え、時間単位の年次有給休暇や育児休業を取得しやすい体制を構築し、持続的な人材成長とワークライフバランスの両立を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 41.5歳 13.9年 6,714,369円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(パート・有期) -


※同社は一部の項目について公表義務の対象ではないため、有報には記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、資格取得率(76%)、有給休暇取得率(73%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) ゴンドラレンタル機材の陳腐化リスク


同社のゴンドラレンタル事業において、レンタル機材の陳腐化や老朽化が進むと、多様化する顧客ニーズに対応できず、受注機会を逃す可能性があります。このリスクに対処するため、同社は新規機材の開発と製作に継続して取り組んでいます。

(2) 建設業界の動向と資材価格高騰の影響


ゴンドラ・舞台の主要な販売先はゼネコンであり、原材料価格の上昇や人手不足の影響により原価割れや納期遅延が発生するリスクがあります。同社は製品の標準化を進めるとともに、販売価格への転嫁交渉や安定した資材調達先の確保に努めています。

(3) 技術継承と専門人材の不足


同社にとって技術者の確保と育成は重要な経営課題です。技術者の高齢化が進む中で技術継承が遅れた場合、競争力の低下を招くおそれがあります。そのため、積極的な採用活動と若手への技術継承を目的とした人材育成体制の構築を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。