※本記事は、YUSHINの有価証券報告書(第53期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. YUSHINってどんな会社?
同社はプラスチック射出成形品の取出ロボットを主力とし、開発から販売、保守までを一貫して手がけています。
■(1) 会社概要
同社は1971年に各種機械の製造販売を目的に個人創業し、1973年にユーシン精機として設立されました。1978年に小型取出ロボットを発売して同業界へ参入し、その後は米国やアジア、欧州へ海外展開を加速させました。1999年に東証一部へ上場を果たし、2025年には現在のYUSHINへ商号変更しています。
現在の従業員数は連結で803名、単体で474名です。大株主の状況としては、筆頭株主が法人のユーシンインダストリーであり、第2位には資産管理等を行う信託銀行が、第3位には代表取締役社長の小田高代氏が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ユーシンインダストリー | 36.68% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.45% |
| 小田高代 | 6.02% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は小谷高代氏が務めており、取締役における社外取締役の比率は42.9%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小谷 高代 | 代表取締役社長 | 2003年日立製作所入所、2007年KPMG入社。2008年同社入社後、開発本部研究開発部責任者等を経て、2021年代表取締役社長に就任。 |
| 小田 康太 | 取締役副社長管理本部責任者 | 2003年経済産業省入省。2015年同社入社後、総務部責任者等を経て、2022年より現職。 |
| 北川 康史 | 専務取締役製造本部責任者兼資材本部責任者 | 1981年富士通テン(現デンソーテン)入社。2007年同社入社後、製造本部や品質保証部の責任者等を経て、2021年より現職。 |
| 稲野 智宏 | 常務取締役営業本部責任者 | 1985年関西警備保障入社、1987年リクルート入社。1989年同社入社後、中国現地法人の総経理等を経て、2022年より現職。 |
社外取締役は、西口泰夫(元京セラ代表取締役会長兼最高経営責任者)、松久寛(京都大学名誉教授)、中山礼子(元マンダム取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」、「米国」、「アジア」、「欧州」の報告セグメントで事業を展開しています。
■日本
プラスチック射出成形品の取出ロボットおよび省力化システムを含めた周辺機器の開発、製造、販売、アフターサービスを提供しています。国内のプラスチック射出成形業界の顧客を中心に事業を展開しています。
顧客に対する取出ロボットや特注機、部品の販売および保守サービスから収益を得ています。これらの事業運営は、主に同社が主体となって行っています。
■米国
北米地域を中心に、プラスチック射出成形品の取出ロボットおよび省力化システムなどの周辺機器の製造、販売、アフターサービスを提供しています。幅広い産業の製造現場が主な顧客となります。
同地域におけるロボット製品や特注機、部品の販売、ならびに保守サービスの提供により収益を獲得しています。事業の運営は主にYushin America, Inc.が行っています。
■アジア
韓国、台湾、中国、東南アジア、インドなどにおいて、取出ロボットおよび周辺機器の製造、販売、アフターサービスを提供しています。現地の生産拠点を持つ多様な製造業を顧客としています。
製品の販売および保守サービスの提供を主要な収益源としています。運営はYushin Korea Co.,Ltd.や有信精机商貿(上海)有限公司などのアジア各国の現地法人が行っています。
■欧州
英国、スウェーデン、ドイツなどの欧州地域において、取出ロボットおよび省力化システムを含む周辺機器の開発、製造、販売、アフターサービスを提供しています。
現地の製造業を対象としたロボット製品などの販売や保守サービスを通じて収益を得ています。運営は主にWEMO Automation ABやYushin Automation Ltd.などが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は増加傾向が続いていましたが、直近の期では特注機の売上減少等により減収に転じています。経常利益と利益率についても徐々に低下傾向にあり、直近では先行投資等による費用の増加も影響して大幅な減益となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 209億円 | 224億円 | 236億円 | 261億円 | 231億円 |
| 経常利益 | 31億円 | 28億円 | 26億円 | 25億円 | 9億円 |
| 利益率(%) | 14.8% | 12.5% | 11.0% | 9.7% | 3.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 20億円 | 19億円 | 18億円 | 21億円 | 15億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に加えて積極的な人財投資による人件費の増加や研究開発費の増加が影響し、売上総利益と営業利益がともに縮小しています。営業利益率も1桁台前半まで落ち込んでいます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 261億円 | 231億円 |
| 売上総利益 | 108億円 | 91億円 |
| 売上総利益率(%) | 41.2% | 39.2% |
| 営業利益 | 26億円 | 8億円 |
| 営業利益率(%) | 9.9% | 3.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が25億円(構成比30%)、荷造運搬費が10億円(同12%)、研究開発費が9億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
アジアや米国ではロボット製品の販売が底堅く売上が微増していますが、日本市場の落ち込みや、特に欧州においてメディカル関連の大口案件が大幅に減少した影響で、全体の売上高は減少しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 116億円 | 111億円 |
| 米国 | 40億円 | 41億円 |
| アジア | 50億円 | 53億円 |
| 欧州 | 55億円 | 27億円 |
| 連結(合計) | 261億円 | 231億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.8%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.3%で市場平均を上回っています。営業利益や資産売却等によって資金を確保し、自己株式の取得等の財務活動に充てる改善型のキャッシュ・フロー状況となっています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、取出ロボット業界におけるリーディングカンパニーとして更なる発展を目指すことを基本方針としています。また、コーポレートアイデンティティ(CI)として「まず、想いにとどく」をコンセプトに掲げ、大切にしていく考えや行動指針を明確化し、グループ全体での理念浸透を通じて持続的な成長を図っています。
■(2) 企業文化
多様な属性や価値観を尊重し、従業員一人ひとりが特性や能力を最大限発揮できる組織づくりを重視しています。努力やチャレンジを奨励する人事制度を整備し、「改善提案制度」や「イノベーションプロジェクト活動提案制度」を通じて、社員主体での自発的な提案や挑戦を後押しする企業文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
同社は持続可能な社会の実現に向けたサステナビリティ目標を設定しています。気候変動対応として、2030年度末までに国内の温室効果ガス排出量(Scope1・2)を2020年度比で57%削減する目標を掲げています。また、人的資本の強化に向けては、役員に占める女性比率15%程度、管理職5%程度といった目標値を設定しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
主力事業である取出ロボットにおいて、グローバル営業展開と商品力の強化を重点施策としています。スウェーデンのグループ会社を足がかりに欧州でのシェア拡大を図るとともに、顧客工場の自動化に対してより高い付加価値を提供する製品開発を推進します。さらに、パレタイジングロボットや特注機においては、自動化・人手不足解消のニーズを捉えた営業活動と社内体制の強化に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、多様な人材の価値観・考え方を活かした組織づくりを通じて、中長期的な企業価値の向上に取り組んでいます。企業理念の浸透を軸に、多様な人材の採用と育成を進め、適材適所の配置と努力・チャレンジを評価する人事制度を運用しています。また、従業員が活き活きと働き続けられるよう、キャリアデザインのサポートや柔軟な働き方の環境整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.1歳 | 14.3年 | 6,457,402円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.4% |
| 男性育児休業取得率 | 81.8% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 52.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 70.1% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 41.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、役員に占める女性比率(20.0%)、嘱託社員を除いたパート・有期労働者の男女賃金比率(86.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済状況および設備投資動向の影響
同社の製品需要は、販売先の国の経済状況や主要顧客であるプラスチック射出成形産業の設備投資動向に大きく影響を受けます。世界的な景気変動によって設備投資の需要が縮小した場合、同社グループの製品販売が減少し、業績や財政状態にマイナスの影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 製品の品質問題と補償費用
同社は高度な品質管理体制を構築していますが、製品の欠陥を完全に防ぐことは困難です。予期せぬ重大な品質問題が発生した場合、生産物責任賠償などの補償費用が発生する恐れがあります。保険でカバーしきれない大規模な賠償負担が生じた場合、業績や社会的信用に影響を与えるリスクがあります。
■(3) サプライチェーン寸断と原材料の価格変動
高品質な部品や原材料をタイムリーに調達するため複数の仕入先を確保していますが、自然災害や仕入先の経営悪化によって供給制限や製造中止が生じるリスクがあります。また、原材料価格が市況に連動して高騰した場合、製品原価が上昇し、利益率を圧迫する要因となります。
■(4) 情報セキュリティとサイバー攻撃のリスク
事業活動において取引先の機密情報や技術情報を保有しており、サイバー攻撃や不正アクセスによる情報流出のリスクが存在します。万が一、重要データの破壊やシステム障害などが発生した場合、事業の中断や対応費用の発生に加え、社会的信用の低下によって業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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