YUSHIN 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

YUSHIN 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する、プラスチック射出成形品の取出ロボット専業メーカー。世界的な自動化ニーズを背景に、売上高は261億円(前期比10.6%増)と伸長しましたが、為替差損の影響等により経常利益は25億円(同2.0%減)となり、増収減益で着地しました。


※本記事は、YUSHIN株式会社 の有価証券報告書(第52期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. YUSHINってどんな会社?


同社はプラスチック射出成形品の取出ロボットにおいて世界有数のシェアを持つメーカーです。

(1) 会社概要


1971年に創業し、1973年に法人設立されました。1978年に取出ロボット業界へ参入して以降、同分野に特化して成長を遂げています。1996年に株式を上場し、2023年にはスウェーデンのWEMO Automation ABを子会社化しました。2025年4月より、現在のYUSHINへと商号を変更しています。

連結従業員数は800名、単体では461名体制です。筆頭株主は株式会社ユーシンインダストリーで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には社長の小田高代氏が名を連ねています。

氏名 持株比率
株式会社ユーシンインダストリー 35.24%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 8.31%
小田高代 5.78%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は小谷高代氏が務めています。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
小谷 高代 代表取締役社長 日立製作所、KPMGを経て同社入社。開発本部責任者などを歴任し、2021年より社長。2023年4月より現職。
小田 康太 取締役副社長管理本部責任者 経済産業省を経て同社入社。総務部責任者、働き方支援チーム責任者などを歴任。2022年6月より現職。
北川 康史 専務取締役製造本部責任者兼資材本部責任者 富士通テン(現デンソーテン)を経て同社入社。品質保証部責任者、製造本部責任者などを歴任。2021年6月より現職。
稲野 智宏 常務取締役営業本部責任者 リクルートを経て同社入社。中国現地法人責任者、営業本部責任者などを歴任。2022年6月より現職。
福井 理仁 常勤監査役 沖電気工業、ワタベウェディングを経て同社入社。経営管理部責任者などを歴任。2024年6月より現職。
西口 泰夫 取締役 京セラ社長・会長兼CEOを経て、現在はHANDY社長。2014年6月より現職。
松久 寛 取締役 京都大学教授を経て、2012年同大学名誉教授。2014年6月より現職。
中山 礼子 取締役 丸三証券引受部長、リブテック取締役などを経て、2018年6月より現職。


社外取締役は、西口泰夫(元京セラ代表取締役会長兼最高経営責任者)、松久寛(京都大学名誉教授)、中山礼子(元丸三証券引受部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「米国」「アジア」「欧州」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


プラスチック射出成形品の取出ロボットおよび省力化システムを含めた周辺機器の開発、製造、販売、アフターサービスを行っています。国内市場における主力事業であり、顧客はプラスチック成形を行う製造業者が中心です。

収益は、顧客への製品販売代金および保守サービス料から得ています。運営は主にYUSHINが行っています。

(2) 米国


北米地域において、射出成形品取出ロボットおよび省力化システムを含めた周辺機器の製造、販売、アフターサービスを展開しています。現地の製造業者が主な顧客となります。

収益は、製品の販売およびアフターメンテナンスによる対価です。運営は主にYushin America, Inc.が行っています。

(3) アジア


韓国、台湾、中国、インドネシア、ベトナム、マレーシア、タイ、インドなどのアジア地域において、射出成形品取出ロボット等の製造、販売、アフターサービスを行っています。急速に自動化ニーズが高まる同地域の製造業を支えています。

収益は、各国の顧客からの製品購入代金およびサービス料です。運営はYushin Korea Co.,Ltd.や有信精机貿易(深圳)有限公司などの現地法人が行っています。

(4) 欧州


英国、スウェーデン、ドイツなどの欧州地域において、射出成形品取出ロボット等の開発、製造、販売、アフターサービスを展開しています。環境配慮や高効率化への要求が高い同市場に対応しています。

収益は、製品販売および保守サービスによる対価です。運営はYushin Automation Ltd.やWEMO Automation ABなどの現地法人が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は185億円から261億円へと着実に拡大しています。経常利益は25億円から30億円前後の水準で推移していますが、利益率は14%台から9%台へと緩やかに低下傾向にあります。事業規模の拡大とともに、利益率の維持・向上が課題となっている様子がうかがえます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 185億円 209億円 224億円 236億円 261億円
経常利益 26億円 31億円 28億円 26億円 25億円
利益率(%) 14.1% 14.8% 12.5% 11.0% 9.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 15億円 20億円 19億円 18億円 21億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も拡大しています。売上総利益率は41%台を維持しており、安定した収益性を確保しています。営業利益についても増益となっており、事業拡大に伴うコスト増を吸収して利益を確保している状況です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 236億円 261億円
売上総利益 98億円 108億円
売上総利益率(%) 41.4% 41.2%
営業利益 24億円 26億円
営業利益率(%) 10.3% 9.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が23億円(構成比28%)、その他経費が10億円(同13%)を占めています。また、売上原価に関しては、その詳細な内訳構成比は有価証券報告書等の開示情報からは確認できませんでした。

(3) セグメント収益


全セグメントで売上高が増加しており、特に日本とアジア、欧州での伸長が目立ちます。米国は前年を下回りましたが、全体としては海外市場の貢献度が大きく、グローバル展開が進展しています。為替の影響も含め、海外売上比率の高さが業績を牽引している構造です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
日本 99億円 116億円
米国 46億円 40億円
アジア 43億円 50億円
欧州 47億円 55億円
連結(合計) 236億円 261億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は85.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、お客様に「進歩」と「安心」をお届けすることを提供価値として掲げています。この価値提供を通じて、取出ロボット業界におけるリーディングカンパニーとして更なる発展を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「まず、想いにとどく」をコンセプトとするコーポレートアイデンティティ(CI)活動を推進しています。将来にわたって重視すべき考えや行動指針を明確化し、トップマネジメントによるコミュニケーションや研修を通じて、グループ全体への浸透を図る文化があります。

(3) 経営計画・目標


有価証券報告書において、具体的な数値目標を伴う中短期の経営計画の記載はありませんが、取出ロボット業界のリーディングカンパニーとしての地位確立を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


グローバル営業展開の強化と商品力の向上を成長戦略の柱としています。欧州ではWEMO Automation ABを足がかりにシェア拡大を図り、特注機では自動化ニーズの高まりに応じた販売拡大に努めます。また、パレタイジングロボットの普及や保守サービス網の強化にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


企業理念の浸透を軸に、多様な人材の採用と育成を進めています。人事制度では期待される人材像を明確化し、適材適所の配置とメリハリのある処遇を実施しています。また、女性や外国籍社員の活躍推進、男性の育児休業取得支援など、多様性を尊重した環境づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.8歳 13.9年 6,453,386円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 2.5%
男性労働者の育児休業取得率 57.1%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 51.1%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 71.9%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 41.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、役員に占める女性比率(20.0%)、新卒採用者に占める女性比率(30%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済状況と設備投資需要の変動


同社製品の需要は、販売先国の経済状況やプラスチック射出成形産業の設備投資動向に強く影響されます。景気後退により設備投資需要が縮小した場合、同社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替レートの変動リスク


グローバルに事業を展開しているため、為替相場の変動が連結業績に影響を与えます。親会社は円建取引を原則としていますが、海外子会社を経由した販売や子会社の財務諸表換算において、為替変動が業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 激しい価格競争


世界的な競争環境の中で、競合他社による値下げ攻勢等により販売価格の引き下げを余儀なくされる可能性があります。コスト削減や新製品開発に努めていますが、競争激化が収益性を圧迫し、業績に影響を与えるリスクがあります。

(4) 購買調達と原材料価格の変動


高品質な原材料や部品をタイムリーに確保する必要がありますが、自然災害や事故、サプライヤーの経営悪化等により供給が滞るリスクがあります。また、市況変動による原材料価格の高騰が製品原価を押し上げ、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。