※本記事は、株式会社昭和真空の有価証券報告書(第68期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 昭和真空ってどんな会社?
真空技術をキーテクノロジーとし、電子部品や光学部品向けの薄膜形成装置を製造販売しています。
■(1) 会社概要
同社は1958年に昭和眞空機械として設立され、1960年代から水晶振動子用や光学用の真空蒸着装置の開発を手がけてきました。2000年に日本証券業協会に店頭上場(現・東京証券取引所スタンダード市場)を果たし、2002年には中国に子会社を設立して海外展開を推進しました。2008年にはエフ・イー・シーを子会社化し、2020年には経済産業省の「グローバルニッチトップ企業100選」に選定されています。
同社グループの従業員数は連結で215名、単体で175名体制となっています。筆頭株主は事業会社のアルバックで、第2位は創業家関係者で現役員の小俣邦正氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| アルバック | 21.32% |
| 小俣邦正 | 9.37% |
| 有限会社小俣興産 | 5.47% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役執行役員社長は田中彰一氏が務めており、社外取締役比率は25.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小俣邦正 | 代表取締役執行役員会長 | 杏林薬品入社後、同社へ入社。取締役企画室長、代表取締役社長を経て、2025年4月より現職。 |
| 田中彰一 | 代表取締役執行役員社長 | 同社入社後、経理部長、経営企画室長、取締役執行役員管理本部長等を歴任し、2025年4月より現職。 |
| 冬爪敏之 | 取締役執行役員技術本部長開発部長 | 金沢村田製作所入社後、村田製作所で技術開発部長等を歴任。同社入社後、技術本部長を経て現職。 |
| 瀧本昌行 | 取締役執行役員営業本部長営業部長サービス部長 | 同社入社後、営業部長、執行役員営業副本部長等を歴任し、2026年4月より現職。 |
| 杉山茂紀 | 取締役執行役員管理本部長経営企画部長人事総務部長 | 同社入社後、経営企画室長、人事総務部長等を歴任し、2026年4月より現職。 |
| 荒川俊明 | 取締役執行役員生産本部長生産管理部長 | 同社入社後、生産管理部長、執行役員生産副本部長等を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、髙橋明久(アルバック執行役員)、山本雅子(麻布大学名誉教授)、浅見行彦(元相模原市民ギャラリー館長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「真空技術応用装置事業」および「サービス事業」を展開しています。
■真空技術応用装置事業
真空中で特定の基板に薄膜を形成させる「真空蒸着装置」や「スパッタリング装置」の開発・製造・販売を行っています。用途別に水晶デバイス装置、光学装置、電子部品・その他装置に大別され、国内外のデバイスメーカを主要な顧客としています。
収益源はこれらの装置販売代金です。運営は親会社である昭和真空が製造・販売を担うほか、子会社の昭和真空機械(上海)有限公司が中国市場向けに製造・販売を行っています。
■サービス事業
納入した真空技術応用装置を安定稼働させるため、構成部品や付属品の販売、改造工事、および修理・メンテナンスサービスを提供しています。
収益源は顧客から受け取る部品代金や工事・修理費用です。運営は親会社である昭和真空のほか、子会社の昭和真空機械貿易(上海)有限公司、およびエフ・イー・シーが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一時的な減少局面を経たものの、直近では回復・拡大傾向にあります。経常利益と当期利益も売上の変動に連動しており、直近年度では2桁の利益率を回復し、収益性の改善が進んでいることが確認できます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 120億円 | 101億円 | 75億円 | 85億円 | 93億円 |
| 経常利益 | 17億円 | 11億円 | 2億円 | 8億円 | 12億円 |
| 利益率(%) | 14.2% | 10.6% | 3.3% | 9.9% | 12.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11億円 | 7億円 | 2億円 | 6億円 | 9億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益が順調に拡大しています。売上総利益率および営業利益率ともに前期から改善しており、コストコントロールと付加価値の向上が同時に進展していることがうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 85億円 | 93億円 |
| 売上総利益 | 27億円 | 31億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.6% | 32.8% |
| 営業利益 | 8億円 | 11億円 |
| 営業利益率(%) | 9.3% | 11.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4.7億円(構成比24.3%)、研究開発費が4.4億円(同22.6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
真空技術応用装置事業は、水晶デバイス装置の伸長や電子部品業界の需要取り込みにより売上・利益ともに大幅増となりました。一方、サービス事業は顧客の設備稼働状況の回復が緩やかだったことから減収減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 真空技術応用装置事業 | 57億円 | 70億円 | 10億円 | 17億円 | 23.6% |
| サービス事業 | 27億円 | 23億円 | 8億円 | 5億円 | 23.2% |
| 連結(合計) | 85億円 | 93億円 | 8億円 | 11億円 | 11.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で生み出した資金を用いて投資を継続しつつ、借入金の返済や配当等を実施する堅実な資金繰りが行われています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.8億円 | 21億円 |
| 投資CF | -3.3億円 | -4.7億円 |
| 財務CF | -4.4億円 | -4.4億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も80.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「我々の存在が世の中を豊かにするためにお役に立つこと」を経営理念の一つとして掲げています。キーテクノロジーである「真空技術」を通じて社会課題の解決や豊かな未来の実現に貢献し、社会から必要とされ続ける企業であることを目指しています。
■(2) 企業文化
多様性を認め、従業員一人ひとりの人権と個性を尊重する風土を重んじています。各々が仕事に本気で取り組み、自発的にチャレンジし、人間的成長を実感できるような魅力ある働きやすい職場環境の創出を推進し、自由闊達な組織の維持向上に努めています。
■(3) 経営計画・目標
同社は資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて、収益基盤の強化による業績向上を図り、安定的な株主還元の継続を目指しています。
・ROE10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
水晶・光学デバイス分野に加え、成長分野に対して次期戦略装置を提供し、新たなニッチトップ分野の確立を目指しています。これを実現するために「市場別戦略の明確化と受注体制の高度化」、「品質を基軸とした設計生産体制の強化」、「人の集まる魅力ある会社づくりと次世代人材育成」を重点施策として推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「成長するニッチ市場へのフォーカス」と「技術力による差別化と独自性の発揮」を経営方針とし、OJTによる技術力やノウハウの伝承を重視しています。また、外部研修の受講や階層別研修などのOFF-JTを組み合わせることで、従業員の自律的なキャリア形成と専門性の向上を支援する環境を整備しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 45.4歳 | 19.9年 | 6,648,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | - |
| 男女賃金差異(正規労働者) | - |
| 男女賃金差異(非正規労働者) | - |
同社および連結子会社は関連法令等による公表義務の対象ではないため、有報には一部項目の記載がありません。
また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の育児休業取得率(100.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) デバイスメーカの設備投資動向等によるリスク
同社の真空技術応用装置は、水晶デバイスや電子部品等の生産設備であるため、取引先の設備投資動向に影響を受けます。スマートフォンやデジタル家電の需要変動等により、想定を超える急激な市場変化が生じた場合、受注機会の逸失やキャンセル等が発生し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 顧客ニーズの高度化と開発に関わるリスク
デバイスメーカにおける新製品開発の加速に伴い、同社の装置に対するニーズも高機能化・多様化しています。予期せぬ技術革新の発生や技術的に困難な要求により、新技術への対応遅れや開発期間の長期化、開発費用の増大を招くリスクがあり、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 販売価格の低下によるリスク
電子部品市場における激しい価格競争を受け、同社の装置に対しても取引先からの販売価格引下げ要求が恒常化しています。競合メーカとの競争激化により、販売価格の下落をカバーするためのコストダウンや売上拡大が計画通りに進まない場合、業績および財務状況に影響を及ぼす可能性があります。



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