#昭和真空転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社昭和真空 の有価証券報告書(第67期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 昭和真空ってどんな会社?
真空技術を核に、スマートフォンや自動車等に使われる電子部品の製造装置を開発・製造するメーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1958年に真空ポンプ及び真空装置の製造販売を目的に設立されました。1960年代初頭に水晶振動子用や光学用の真空蒸着装置を完成させ、技術基盤を確立しました。1981年には日本真空技術(現アルバック)の資本参加を受け、2004年にジャスダック証券取引所(現東証スタンダード市場)へ上場しました。その後も中国・上海への子会社設立や研究開発拠点の拡充を行い、真空技術の応用範囲を広げています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は236名(単体191名)です。筆頭株主は真空機器大手のアルバックで21.35%を保有しており、同社はアルバックグループに属しています。第2位株主は創業家出身の役員である小俣邦正氏(9.35%)、第3位は有限会社小俣興産(5.48%)となっており、主要株主には事業パートナーと創業家関係者が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| アルバック | 21.35% |
| 小俣 邦正 | 9.35% |
| 有限会社小俣興産 | 5.48% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.0%です。代表取締役執行役員社長は田中彰一氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 小俣 邦正 | 代表取締役執行役員会長 | 1976年同社入社。社長を経て、2025年4月より現職。 |
| 田中 彰一 | 代表取締役執行役員社長 | 1985年同社入社。経理部長、経営企画室長、管理本部長等を経て、2025年4月より現職。 |
| 冬爪 敏之 | 取締役執行役員技術本部長 | 1992年金沢村田製作所入社。2022年同社入社、執行役員技術副本部長等を経て、2023年6月より現職。 |
| 瀧本 昌行 | 取締役執行役員営業本部長営業部長 | 1997年同社入社。営業部長、執行役員営業副本部長等を経て、2024年6月より現職。 |
| 杉山 茂紀 | 取締役執行役員管理本部長経営企画部長 | 2005年同社入社。人事総務部長、執行役員管理副本部長等を経て、2025年6月より現職。 |
| 荒川 俊明 | 取締役執行役員生産本部長生産管理部長 | 1998年同社入社。生産部長、執行役員生産副本部長等を経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、高橋明久(アルバック執行役員)、山本雅子(元麻布大学獣医学部教授)、浅見行彦(元相模原市教育環境部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「真空技術応用装置」および「サービス」事業を展開しています。
■(1) 真空技術応用装置事業
真空中で特定の基板に薄膜を形成させる装置(真空蒸着装置やスパッタリング装置等)を製造・販売しています。主な用途は、水晶デバイス、光学デバイス、電子部品の製造です。顧客は電子部品・光学部品メーカーが中心です。
この事業の収益は、主に装置の販売代金から得ています。運営は主に昭和真空および子会社の昭和真空機械(上海)有限公司が製造・販売を行い、昭和真空機械貿易(上海)有限公司が販売を担当しています。
■(2) サービス事業
真空技術応用装置に関連する構成部品・付属品の販売、改造工事および修理を行っています。装置納入後のメンテナンスや、顧客の生産性向上ニーズに対応した改造工事などを提供しています。
この事業の収益は、部品の販売代金や改造工事・修理の対価から得ています。運営は昭和真空が販売するほか、子会社の昭和真空機械貿易(上海)有限公司および株式会社エフ・イー・シーが販売を担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は一時期の減少から回復傾向にあります。特に直近の2025年3月期は、電子部品市場の在庫調整が進んだことや、光学デバイス向けの大型受注などにより、売上高・利益ともに大きく伸長しました。利益率も大幅に改善しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 107億円 | 120億円 | 101億円 | 75億円 | 85億円 |
| 経常利益 | 15億円 | 17億円 | 11億円 | 2億円 | 8億円 |
| 利益率(%) | 13.8% | 14.2% | 10.6% | 3.3% | 9.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 11億円 | 7億円 | 2億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、売上高の増加に伴い、売上総利益率が改善していることがわかります。営業利益率は前期の2.6%から9.3%へと大幅に向上しており、収益性が回復しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 75億円 | 85億円 |
| 売上総利益 | 20億円 | 27億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.3% | 31.6% |
| 営業利益 | 2億円 | 8億円 |
| 営業利益率(%) | 2.6% | 9.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が5億円(構成比26%)、研究開発費が4億円(同21%)を占めています。売上原価においては、当期製品製造原価が99%以上を占めています。
■(3) セグメント収益
真空技術応用装置事業、サービス事業ともに増収増益となりました。特に真空技術応用装置事業は、水晶デバイス装置や光学装置の受注回復により利益が大きく伸びています。サービス事業も改造工事や部品販売が堅調で、安定した収益源となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 真空技術応用装置 | 50億円 | 57億円 | 5億円 | 10億円 | 17.3% |
| サービス | 24億円 | 27億円 | 7億円 | 8億円 | 27.5% |
| 調整額 | -0億円 | -0億円 | 0億円 | 0億円 | - |
| 連結(合計) | 75億円 | 85億円 | 2億円 | 8億円 | 9.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
昭和真空は、サービス事業において顧客の生産性向上に貢献し、安定した受注を獲得しました。営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権や棚卸資産の増加があったものの、税金等調整前当期純利益や前受金、仕入債務の増加により獲得となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産の取得による支出がありました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いによる支出がありました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 11億円 | 2億円 |
| 投資CF | -1億円 | -3億円 |
| 財務CF | -5億円 | -4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「我々の存在が世の中を豊かにするためにお役に立つこと」を経営理念の一つとして掲げています。真空技術をキーテクノロジーとして電子部品用薄膜形成装置を開発・製造し、社会に貢献し続ける企業であることを目指しています。
■(2) 企業文化
「美しい地球を永遠に」をスローガンとした環境宣言を掲げています。また、顧客に寄り添い真のニーズを把握し、一つひとつ丁寧に心をこめて行動することを重視しており、顧客からの依頼実験やサンプル作製依頼にも積極的に対応する姿勢を持っています。技術力による差別化と独自性の発揮を目指す風土があります。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、以下の数値を目標として掲げています。
* ROE(自己資本利益率):10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「成長するニッチ市場にフォーカス」し、「技術力による差別化と独自性の発揮」を実現することを基本戦略としています。具体的には、5G普及やAI、次世代自動車の進展に伴う高精度な電子部品需要に対応するため、以下の領域に注力しています。
* 水晶デバイス分野:小型化・高周波対応に向けたウエハプロセス化対応装置の開発
* 光学デバイス分野:AR/VR/MR機器向け光学部品への成膜技術開発、ガラス表面加工装置の量産化
* 電子部品分野:SAW・BAWフィルタ生産ライン効率化装置の開発、受託実験体制の強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は真空技術の専門性を重視し、OJTによる技術力およびノウハウの伝承を重視しています。また、真空技術者資格認定のための外部研修や階層別研修などのOFF-JTも組み合わせ、社員の自律的なキャリア形成を支援しています。社内環境としては、多様性を認め、従業員が自発的にチャレンジできる職場づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.8歳 | 18.9年 | 5,896,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
※管理職に占める女性労働者の割合、労働者の男女の賃金の差異については、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) デバイスメーカの設備投資動向等によるリスク
同社の製品は水晶デバイスや電子部品等の生産設備であるため、業績はこれらメーカーの設備投資動向に大きく左右されます。スマートフォンやデジタル家電等の最終製品の需要変動が急激に起きた場合、受注機会の喪失や受注キャンセル等により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 顧客ニーズの高度化、製品の開発に関わるリスク
技術革新のスピードが速い業界において、顧客ニーズは高機能化・多様化しています。市場動向の変化や代替技術の登場が想定を超えて発生した場合、開発期間の長期化や費用の増大を招く恐れがあります。同社は研究開発投資を継続していますが、予期せぬ技術革新への対応が業績に影響する可能性があります。
■(3) 販売価格の低下によるリスク
電子部品業界では価格競争が激しく、同社の装置に対しても値下げ要求が恒常化しています。競合他社との競争激化により、販売価格の下落を補うコストダウンや売上拡大が実現できない場合、業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 資材の調達に関わるリスク
生産財を全て社外から調達しているため、原材料価格の高騰や需給逼迫、自然災害等による調達難のリスクがあります。想定を超える価格高騰や供給悪化が発生した場合、生産への影響やコスト増により、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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