兼松エンジニアリング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

兼松エンジニアリング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

兼松エンジニアリングは、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、強力吸引作業車や高圧洗浄車など環境整備機器の開発・製造・販売を主力とするメーカーです。主力のインフラ整備向け需要が堅調に推移し、部材高騰の影響も一巡したことで、直近の業績は売上高、経常利益ともに前年を上回る増収増益を達成しました。


※本記事は、兼松エンジニアリング株式会社の有価証券報告書(第55期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 兼松エンジニアリングってどんな会社?


強力吸引作業車などの環境整備機器で高いシェアを持つ専門車両メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1971年に高知県高知市で設立され、環境整備機器の製造販売を開始しました。1974年に強力吸引作業車を、1986年には高圧洗浄車を開発して販売を本格化させました。その後、順調に事業を拡大し、2002年に大阪証券取引所市場第二部に上場(現在は東京証券取引所スタンダード市場に所属)を果たしています。これまでに製品の累計出荷台数は1万5000台を突破しています。

従業員数は単体で272名です。筆頭株主は同社代表取締役社長の山本琴一氏で、第2位も個人株主となっており、第3位には従業員持株会が名を連ねています。

氏名 持株比率
山本 琴一 9.81%
三谷 公男 6.52%
兼松エンジニアリング従業員持株会 6.18%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性0名の計9名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は山本琴一氏が務めています。取締役6名のうち、社外取締役は2名です。

氏名 役職 主な経歴
山本 琴一 代表取締役社長 1990年入社。1998年内部監査室係長、2001年常勤監査役、2009年取締役、2013年常務取締役等を経て、2019年より現職。
北村 和則 代表取締役専務 1994年入社。品質保証部や営業部のマネージャー、営業部門統括執行役員等を経て、2019年取締役就任。2025年より現職。
黒田 誠 取締役 1996年入社。西東京支店長、東日本支社長、東日本支社・西日本支社執行役員等を経て、2025年より現職。
田辺 良彦 取締役 1991年入社。技術部マネージャー、技術部執行役員、技術開発部兼生産設計部執行役員等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、長山育男(弁護士)、十川智基(公認会計士・税理士)です。

2. 事業内容


同社は「環境整備機器関連事業」の単一セグメントですが、主に以下の製品群を展開しています。

(1) 強力吸引作業車および高圧洗浄車の製造販売


道路での側溝清掃、土木建築現場での汚泥吸引、工場での各種産業廃棄物の吸引回収に利用される強力吸引作業車や、下水道管等の洗浄作業に利用される高圧洗浄車などを開発・製造・販売しています。個別受注生産体制により、顧客の多様な要望に応じた製品づくりを行っているのが特徴です。

顧客へ独自の仕様に基づく製品を引き渡し、その対価として販売収益を得るモデルです。事業の運営は兼松エンジニアリングが行っており、部品製作は外注先に委託しつつ、自社工場での組立や塗装、検査等を一貫して行う体制を敷いています。

(2) アフターサービスおよび部品等の販売(その他)


販売した環境整備機器の保守・修理といったアフターサービスや、それに伴う交換部品の販売を行っています。また、空港滑走路で使用される路面清掃車や、柑橘類果皮からの精油抽出等に用いるマイクロ波抽出装置など、特殊製品の開発・販売も手掛けています。

製品出荷後に必要となる交換部品の販売や修理代金が主な収益源となります。アフターサービスについては、兼松エンジニアリングが全国に配置した支店・営業所と、同社指定サービス工場が連携する「KCSネットワーク」を通じて提供されています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績は、一時的な足踏みがあったものの概ね右肩上がりで推移しています。特に直近の事業年度は、インフラ整備等の堅調な需要を背景に主力製品の販売が伸び、売上高、経常利益ともに過去最高水準を更新するなど好調な結果となりました。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 119億円 113億円 124億円 133億円 141億円
経常利益 10億円 7億円 8億円 10億円 14億円
利益率(%) 8.6% 6.5% 6.7% 7.3% 9.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 8億円 8億円 6億円 7億円 10億円

(2) 損益計算書


売上高は順調に増加しており、それに伴い売上総利益や営業利益も大幅に拡大しています。原価や経費のコントロールもうまく機能しており、利益率の改善傾向が見て取れます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 133億円 141億円
売上総利益 32億円 38億円
売上総利益率(%) 24.1% 26.9%
営業利益 10億円 13億円
営業利益率(%) 7.2% 9.5%


販売費及び一般管理費のうち、その他が11億円(構成比46%)、給料及び手当が6億円(同24%)を占めています。売上原価(103億円)の内訳は、材料費が70億円(68%)、経費が18億円(18%)、労務費が14億円(13%)となっています。

(3) セグメント収益


同社は環境整備機器関連事業の単一セグメントですが、主要製品の売上は全般的に増加傾向にあります。特に主力の強力吸引作業車や高圧洗浄車が着実に成長しているほか、部品売上やその他製品も好調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
強力吸引作業車 93億円 96億円
高圧洗浄車 18億円 19億円
粉粒体吸引・圧送車 2億円 3億円
部品売上 12億円 12億円
その他 8億円 11億円
連結(合計) 133億円 141億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である健全型となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 7億円 8億円
投資CF -0.8億円 -2億円
財務CF -6億円 -0.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.8%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も62.9%で市場平均を上回っています。いずれも市場平均を上回る優秀な水準です。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


兼松エンジニアリング精神として「私達は、自社製品の公共性を自覚し、技術を通じ、社会の繁栄に奉仕します」などを掲げています。また、基本理念として「企業は従業員を育て、従業員は企業を繁栄させ、企業と従業員は社会に貢献せねばならない」と定めており、技術を通じた社会貢献と相互の成長を目指しています。

(2) 企業文化


エンジニアリング主体の企業でありたいという思いから「技術の兼松」をスローガンに、技術中心の会社運営を行っています。また、「お互いに切磋琢磨し、人間性の向上につとめ、常に前進を目指し、いつもなにかを考えます」という精神のもと、社会のニーズに応えるべく技術の練磨と研究開発に励む文化を重んじています。

(3) 経営計画・目標


同社は事業の発展と株主への安定配当を重視した経営を目指しており、経営指標として以下の数値目標を掲げています。

* 売上高経常利益率の向上
* 自己資本当期純利益率(ROE)の向上
* 配当性向35%

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画では「つねぜん-TUNEZEN-」をスローガンとし、100年先へと続く「必要とされる企業」を目指しています。具体的には、生産性の向上やサプライチェーンの再構築を通じて事業基盤を強化するとともに、主力製品の進化と海外市場などの新市場開拓に挑戦しています。また、DXの推進や新人事制度の浸透により、働きがいのある職場環境づくりにも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成による技能の継承を事業継続の最重要課題と位置づけています。働きがいのある職場づくりとワークライフバランスの実現を目標に掲げ、役割と評価を連動させた新人事制度の運用やスキルマップの整備、社内ローテーション制度を通じた多様な人材の育成に取り組んでいます。これにより、従業員満足度を向上させることを目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 39.5歳 13.5年 7,943,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.3%
男性育児休業取得率 81.8%
男女賃金差異(全労働者) 83.6%
男女賃金差異(正規労働者) 83.2%
男女賃金差異(非正規労働者) 89.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の部品の供給体制への依存


製品に使用する吸引用ポンプなど、特定のメーカーに依存している部品があります。自然災害やモデル変更などで供給元から予定通り部品が調達できなくなった場合、生産遅延や販売機会の損失につながり、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 南海トラフ地震等の自然災害リスク


本社や主要工場が高知県に位置しているため、近い将来発生が懸念される南海トラフ地震の影響を受けるリスクがあります。BCP(事業継続計画)の運用や高台にある「テクノベース」の稼働により被害低減を図っていますが、大規模災害発生時には生産設備の被害等により多額の損失が生じるおそれがあります。

(3) 中国市場における製品・技術の模倣リスク


中国市場への展開において、同社の製品や技術が模倣されるリスクが存在します。技術移転先である現地の特種車メーカーと協力し、権利侵害の事態が生じた場合には必要な防御手段を講じるなど、知的所有権の保護に向けた対策を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。