※本記事は、兼松エンジニアリング株式会社 の有価証券報告書(第54期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 兼松エンジニアリングってどんな会社?
同社は、強力吸引作業車や高圧洗浄車などの環境整備機器を主力とするメーカーで、特装車の開発・製造から販売、アフターサービスまでを一貫して手掛けています。
■(1) 会社概要
1971年に設立され、環境整備機器の製造販売を開始しました。1974年に強力吸引作業車、1986年に高圧洗浄車を開発し事業を拡大しました。2002年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、2013年の市場統合を経て、2022年の市場区分見直しにより東京証券取引所スタンダード市場へ移行しました。
同社(単体)の従業員数は266名です。筆頭株主は同社社長の山本琴一氏で、第2位は従業員持株会、第3位は個人株主の三谷公男氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 山本 琴一 | 9.76% |
| 兼松エンジニアリング 従業員持株会 | 6.88% |
| 三谷 公男 | 6.53% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名、計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は山本琴一氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山本 琴一 | 代表取締役社長 | 1990年入社。常務取締役、代表取締役専務を経て、2019年6月より現職。 |
| 栁井 仁司 | 代表取締役専務 | 1978年入社。営業部門統括執行役員、生産部門統括執行役員、常務取締役を経て、2019年6月より現職。 |
| 北村 和則 | 常務取締役 | 1994年入社。品質保証部マネージャー、営業部門統括執行役員を経て、2022年4月より現職。 |
社外取締役は、長山育男(岡村・長山法律事務所弁護士)、十川智基(十川公認会計士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「環境整備機器関連事業」および付帯業務の単一セグメントで事業を展開していますが、製品群は主に「強力吸引作業車・高圧洗浄車」と「その他」に分類されます。
**(1) 強力吸引作業車・高圧洗浄車**
主力製品である強力吸引作業車は、道路の側溝清掃や建設現場での汚泥吸引、工場での廃棄物回収などに使用されます。高圧洗浄車は、下水道管やタンク等の洗浄に利用されます。官公庁や民間企業が主な顧客です。
収益は、これらの特装車を顧客に販売することで得ています。また、製品のアフターサービスも提供しています。運営は主に同社が行い、製造の一部工程は協力会社に委託しています。
**(2) その他環境整備機器・サービス**
汚泥脱水機・減容機などの中間処理場向け機器や、粉粒体吸引・圧送車、部品販売などを手掛けています。また、マイクロ波を用いた環境機器の開発・販売も行っています。
収益は、機器や部品の販売代金、修理・改造等のサービス料から得ています。運営は同社が行っており、輸出販売については海外課が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、売上高、利益ともに堅調に推移しています。特に第54期は売上高が130億円を超え、経常利益も10億円に迫る水準まで回復しました。利益率も7%台で安定しており、底堅い需要に支えられています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 116億円 | 119億円 | 113億円 | 124億円 | 133億円 |
| 経常利益 | 11.1億円 | 10.3億円 | 7.3億円 | 8.3億円 | 9.7億円 |
| 利益率(%) | 9.6% | 8.6% | 6.5% | 6.7% | 7.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7.2億円 | 7.5億円 | 7.5億円 | 6.2億円 | 7.0億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、増収に伴い売上総利益が増加しました。販管費も増加しましたが、増収効果が上回り、営業利益率が改善しています。原材料価格等の影響を受けつつも、利益確保に努めています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 124億円 | 133億円 |
| 売上総利益 | 28億円 | 32億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.8% | 24.1% |
| 営業利益 | 8.1億円 | 9.5億円 |
| 営業利益率(%) | 6.5% | 7.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が6.0億円(構成比27%)、賞与引当金繰入額が2.2億円(同10%)を占めています。売上原価においては、材料費が66億円(構成比69%)と大半を占めています。
■(3) セグメント収益
製品別に見ると、主力である強力吸引作業車と高圧洗浄車が増収となりました。特に高圧洗浄車は大幅な増収を記録しました。一方、その他製品は減少しました。全体として主力の特装車事業が業績を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 強力吸引作業車 | 86億円 | 93億円 |
| 高圧洗浄車 | 13億円 | 18億円 |
| 粉粒体吸引・圧送車 | 2.4億円 | 1.8億円 |
| 部品売上 | 12億円 | 12億円 |
| その他 | 11億円 | 8.3億円 |
| 合計 | 124億円 | 133億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスとなっており、本業で稼いだ資金で投資を行い、借入返済や配当支払いを行う健全型と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1.1億円 | 7.3億円 |
| 投資CF | -1.5億円 | -0.8億円 |
| 財務CF | -6.2億円 | -5.7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「私達は、自社製品の公共性を自覚し、技術を通じ、社会の繁栄に奉仕します。」などの精神を掲げています。また、「企業は、従業員を育てなければならない。」「従業員は、企業を繁栄させなければならない。」「企業と従業員は、社会に貢献せねばならない。」という基本理念のもと、技術主体の企業を目指しています。
■(2) 企業文化
エンジニアリング、技術主体の企業でありたいという思いから「技術の兼松」をスローガンとしています。また、中期経営計画のスローガンとして「つねぜん‐TUNEZEN‐」を掲げ、伝統の継承、変化への適応、革新への挑戦を通じて「必要とされる企業」へと常に前進する姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は事業の発展と株主への安定配当の継続を重視しています。2026年3月期から2028年3月期までの中期経営計画において、以下の経営指標の向上を目標としています。
* 売上高経常利益率
* 自己資本当期純利益率(ROE)
* 配当性向:35%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、事業基盤の強化、ワークライフバランスの充実、価値の提供を重点実施事項としています。生産性向上やサプライチェーン再構築、人材育成に加え、DXの活用や新市場・新製品への挑戦を進めています。
* 海外市場や既存製品の用途開発による国内市場の開拓
* エコイノベーション推進部取り扱い製品の拡販
* 新技術の活用による新市場・新製品開発
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、人材の採用と育成、技能の継承を事業継続の最重要課題と位置付けています。新人事制度の構築や、スキルマップ整備と社内ローテーションによる人材育成、ワークライフバランスを重視した働き方の実践に取り組んでいます。また、適正な時間管理や健康経営の実践により、働き甲斐のある職場づくりを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.6歳 | 13.5年 | 6,540,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 4.2% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 61.5% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 85.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 85.4% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 97.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の部品の供給体制
シャシや主要部品等の供給元企業が災害等により必要数量を供給できない場合、生産遅延や販売機会損失が発生する可能性があります。また、供給者側のシャシモデル変更等による一時的な供給体制の崩れも同様のリスクとなり得ます。
■(2) 自然災害のリスク
本社や工場がある高知県では南海トラフ地震の発生が懸念されています。BCPの策定等は行っていますが、実際に発生した場合、生産設備の被害や修復のための損失が生じ、業績に影響を与える可能性があります。工場を高台へ移転する等の対策を講じています。
■(3) 中国市場における模倣リスク
中国市場において、製品の模倣品出現や使用技術が模倣されるリスクがあります。権利侵害が発生した場合には、現地の技術移転先企業と協力し、必要な防御手段を講じる方針です。



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