※本記事は、ヒーハイスト株式会社の有価証券報告書(第64期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヒーハイストってどんな会社?
直動機器や精密部品、ユニット製品の製造・販売を行う精密機器メーカーです。
■(1) 会社概要
1962年に精密部品の製造を目的として設立されました。1965年に画期的なリニアボールブッシュの製造に着手し、直動機器メーカーとしての基盤を築きました。2004年にジャスダック市場へ上場し、2011年には中国上海市に販売子会社を設立しています。2020年に現在のヒーハイストへと社名を変更しました。
同社グループは、連結従業員数84名、単体従業員数78名体制で事業を運営しています。筆頭株主は代表取締役社長の尾崎浩太氏で、第2位株主は専務取締役の尾崎文彦氏となっており、創業家・役員による保有比率が高い資本構成となっています。第3位にはSBI証券が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 尾崎浩太 | 20.03% |
| 尾崎文彦 | 18.81% |
| SBI証券 | 1.51% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は尾崎浩太氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 尾崎浩太 | 代表取締役社長 | 1988年同社取締役、2000年取締役総務部長、2001年専務取締役総務部長を経て、2005年代表取締役社長に就任。2020年より現職。 |
| 尾崎文彦 | 専務取締役営業部担当兼技術部担当 | 1997年同社入社、2005年製造部長、2009年専務取締役営業部長を経て、2024年より現職。 |
| 福留弘人 | 常務取締役技術・製造担当兼生産技術部長兼PMO | 1991年帝国ピストンリング入社、2006年同社技術顧問、2012年取締役執行役員技術部長を経て、2023年より現職。 |
| 佐々木宏行 | 取締役管理部長 | 2002年同社入社、2010年管理部長、2010年執行役員管理部長を経て、2020年より現職。 |
社外取締役は、天野雅人氏(フリーベアコーポレーション代表取締役社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「精密機器製造事業」の単一セグメントですが、品目ごとに直動機器、精密部品加工、ユニット製品の事業を展開しています。
■(1) 直動機器
機械装置の可動部に用いられ、接触面を鋼球が転がることで摩擦を低減するリニアボールブッシュなどの直動機器を製造・販売しています。軽量タイプや省スペース向けのスリムタイプ等、あらゆる産業の装置向けに供給しています。
主に機械装置メーカーなどの法人顧客に対し、製品を販売することで収益を得ています。運営は同社および中国の販売子会社である赫菲(上海)軸承商貿有限公司が行っています。
■(2) 精密部品加工
主にレース用部品や試作部品の受託加工を行っています。精緻な加工技術や機動力が要求される分野であり、球面加工技術や鏡面加工技術を駆使して特殊材料・難切削材の超精密部品を加工・提供しています。
自動車メーカーのレース部門等の顧客から部品加工を受託し、加工代金を収受するモデルです。本事業の運営は同社が主体となって行っています。
■(3) ユニット製品
直動機器や精密部品加工で培った技術を発展させ、スマートフォン等の液晶画面製造の位置決め装置に用いられる多軸ステージや球面軸受を開発・提供しています。薄型でシンプルな構造を実現し、装置の小型・省電力化に貢献しています。
国内外のあらゆる産業装置メーカーに対し、付加価値の高いユニット製品を販売して収益を上げています。事業の運営は主に同社が担い、海外向け販売は中国子会社も関与しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は減少傾向が続いており、直近では16.4億円まで落ち込んでいます。利益面においても、前期までは赤字幅が拡大しており、経常利益・当期利益ともに厳しい状況が続いています。産業用機械関連の需要回復遅れや、中国市場の受注停滞などが主な減収減益要因となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 27.4億円 | 24.1億円 | 23.1億円 | 22.5億円 | 16.4億円 |
| 経常利益 | 2.6億円 | 366万円 | -1.6億円 | -1.9億円 | -3.0億円 |
| 利益率(%) | 9.4% | 0.2% | -6.8% | -8.5% | -18.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.9億円 | 158万円 | -2.2億円 | -2.0億円 | -7.0億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な減少に伴い、売上総利益も前年同期と比べて大きく減少しています。将来の販売が見込めない棚卸資産の整理による影響もあり、売上総利益率は低下しています。これに加えて固定費の負担が重く、営業赤字幅が前年から拡大する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 22.5億円 | 16.4億円 |
| 売上総利益 | 3.3億円 | 2.0億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.9% | 12.1% |
| 営業利益 | -1.2億円 | -2.6億円 |
| 営業利益率(%) | -5.4% | -16.0% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬が1.0億円(構成比22%)、給料及び手当が0.8億円(同17%)を占めています。また、売上原価の主な内訳としては、労務費が4.9億円(構成比32%)、経費が6.9億円(同45%)となっています。
■(3) セグメント収益
事業ごとの売上推移を見ると、主力である直動機器と精密部品加工が大きく落ち込んでいます。直動機器は産業用機械業界の需要回復遅れが影響し、精密部品加工はレース用部品のレギュレーション変更が響きました。一方で、ユニット製品は半導体製造装置向けの好調や価格改定により増収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 直動機器 | 13.7億円 | 10.6億円 |
| 精密部品加工 | 6.8億円 | 3.5億円 |
| ユニット製品 | 2.0億円 | 2.3億円 |
| 連結(合計) | 22.5億円 | 16.4億円 |
同社のキャッシュ・フローは「勝負型」の傾向を示しています。本業は赤字ですが、将来成長のため借入で投資を継続している状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1.8億円 | -1.6億円 |
| 投資CF | -0.5億円 | -0.3億円 |
| 財務CF | -1.0億円 | 0.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-29.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.8%で、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「義の心」を経営理念として掲げています。仕事とは、先に義を尽くして後から利益がくる「先義後利」であると考え、自分たちの都合でモノを作るのではなく、顧客が何を望み、何に困っているのかをつかみ、それに真摯に応えることを目指しています。この理念の実践を通じ、社会貢献や社員共生、そして安定成長の実現を追求しています。
■(2) 企業文化
経営方針として「改善と進歩」を掲げ、社員全員が改善と進歩の実感を得る組織を目指しています。何事にも期日(デッドライン)を設け、タスクの先延ばしを防ぎ、集中力を高めて仕事の質とスピードを向上させることを重視しています。また、継続の方針として「不易流行」を掲げ、理念や相互リスペクトといった変わらない軸を持ちつつ、環境変化に順応して戦略や技術を変化させる風土を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標(KPI)として、売上高、営業利益、および売上高営業利益率を設定しています。具体的な中期的数値目標として、以下の達成を目指しています。
* 売上高:20.7億円(2027年3月期)
* 営業利益:1.0億円(2027年3月期)
* 売上高営業利益率:4.9%(2027年3月期)
■(4) 成長戦略と重点施策
「自ら技術と人をつなぎ、世界のステージへ」を経営ビジョンに掲げています。直動機器事業では、強化した生産設備の稼働を最大限に活用し、利益率の低い形番のスクラップ・アンド・ビルドを進めて収益改善を図ります。精密部品加工では提案型営業によるレース用部品の受注獲得や新領域への展開を目指し、ユニット製品では独自技術を活かした高付加価値製品を成長市場に投入して収益基盤の安定化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
性別、年齢、国籍による差別を行わず、本人の能力やスキル等を公正に評価して採用や登用を行っています。入社時教育や部門毎教育などキャリア構築を支援する多彩な教育研修制度を導入し、職位に応じた専門知識の習得を図っています。仕事と家庭の両立支援や、奨学金返還支援制度、社員持株会の奨励金付与などを通じて、従業員の働きやすい環境とエンゲージメントの向上を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.0歳 | 13.8年 | 4,420,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.1% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 72.9% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 86.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 直動機器への高い依存度
同社グループは売上の過半を直動機器に依存しています。産業用機械装置に不可欠な部品として安定的な需要が見込まれる一方で、安価な海外製品や代替品の流入、設備投資需要の急激な変動が生じた場合、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社は収益性の高い製品へのシフトや新市場の開拓を進めています。
■(2) 特定販売先への高い依存度
同社製品の販売先は、THKやホンダグループに対する売上比率が高くなっています。これらの主要取引先とは長年にわたり安定した関係を築いていますが、取引先の受注動向や経営戦略の変更、あるいは自動車レースのレギュレーション変更などにより、同社の業績が大きく変動するリスクがあります。
■(3) 知的財産権に関する制約
同社は特許権等の知的財産権の取得により自社技術の保護を推進していますが、取得した特許の期間満了により他社が類似品を市場投入し、価格競争に陥るリスクがあります。また、同社製品が他社の特許に抵触した場合には、賠償金の発生や事業展開の制約が生じる可能性があり、技術情報の秘密管理体制を強化しています。



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