#記事タイトル:ヒーハイスト転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、ヒーハイスト株式会社 の有価証券報告書(第63期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ヒーハイストってどんな会社?
直動機器や精密部品の製造販売を行う埼玉県の企業。「義の心」を掲げ、小径リニアボールブッシュ等を提供。
■(1) 会社概要
1962年に神奈川県川崎市で設立され、精密部品製造を開始しました。1964年にリニアボールブッシュの研究開発に着手し、その後独自の保持器を開発しました。1999年には球面軸受の販売を開始しています。2004年にジャスダック証券取引所へ上場を果たし、2011年には中国上海市に販売子会社を設立しました。
連結従業員数は96名(単体90名)です。筆頭株主は社長の尾崎浩太氏で、第2位は専務の尾崎文彦氏であり、経営陣が主要株主となっています。第3位は個人株主の小川由晃氏です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 尾崎浩太 | 20.83% |
| 尾崎文彦 | 19.05% |
| 小川由晃 | 1.65% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は尾崎浩太氏です。社外取締役比率は12.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 尾崎浩太 | 代表取締役社長 | 1988年5月同社取締役就任。専務取締役総務部長、管理部長等を歴任。2005年4月代表取締役社長に就任し、管理部や技術部を担当。2020年6月より現職。 |
| 尾崎文彦 | 専務取締役営業部担当 | 1997年2月同社入社。製造部長、営業部長を経て、2009年6月専務取締役営業部長に就任。2024年10月より現職。 |
| 福留弘人 | 常務取締役技術・製造担当兼生産技術部長兼PMO | 1991年4月帝国ピストンリング入社。2006年11月同社技術顧問。取締役執行役員技術部長等を経て、2023年8月より現職。 |
| 佐々木宏行 | 取締役管理部長 | 2002年7月同社入社。2010年4月管理部長に就任。同年7月執行役員管理部長となり、2020年6月より現職。 |
社外取締役は、天野雅人(元フリーベアコーポレーション社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「直動機器」「精密部品加工」「ユニット製品」事業を展開しています。
■(1) 直動機器
機械装置の可動部に用いられるリニアボールブッシュ等の直動機器を提供しています。工作機械や精密機械などあらゆる分野の機械装置に不可欠な要素部材として利用されています。
製品の販売により収益を得ています。運営は主にヒーハイストが行っており、中国市場では連結子会社の赫菲(上海)軸承商貿有限公司も関与しています。
■(2) 精密部品加工
主にレース用部品や試作部品の受託加工を行っています。また、環境・エネルギー・ロボット等の次世代製品向け機能部品加工も手掛け、球面加工技術や鏡面加工技術を駆使しています。
顧客からの受託加工料が収益源となります。運営は主にヒーハイストが行っています。
■(3) ユニット製品
スマートフォン等の液晶画面製造の位置決め装置や、半導体製造装置等の産業装置メーカー向けに、位置決めステージや球面軸受などを提供しています。
製品の販売により収益を得ています。運営は主にヒーハイストが行っており、中国市場では連結子会社の赫菲(上海)軸承商貿有限公司も関与しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は22億円から27億円の範囲で推移しています。利益面では、2022年3月期には高い利益率を記録しましたが、その後は赤字に転落し、直近2期間は経常損失および当期純損失を計上しており、苦戦が続いています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 22.5億円 | 27.4億円 | 24.1億円 | 23.1億円 | 22.5億円 |
| 経常利益 | 0.9億円 | 2.6億円 | 0.0億円 | -1.6億円 | -1.9億円 |
| 利益率(%) | 4.1% | 9.4% | 0.2% | -6.8% | -8.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.2億円 | 1.9億円 | 0.0億円 | -2.2億円 | -2.0億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間において、売上高の減少に加え、売上原価率が高止まりしていることから、営業損失が続いています。販売費及び一般管理費は減少傾向にありますが、売上総利益でカバーしきれていない状況です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 23.1億円 | 22.5億円 |
| 売上総利益 | 3.2億円 | 3.3億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.7% | 14.9% |
| 営業利益 | -1.6億円 | -1.2億円 |
| 営業利益率(%) | -6.9% | -5.4% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬が1.1億円(構成比23%)、給料及び手当が0.8億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
直動機器は需要回復の遅れや中国市場の停滞により減収となりました。一方、精密部品加工はレース用部品の売上増により大幅な増収となり、ユニット製品も半導体製造装置向け等が堅調で微増収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 直動機器 | 15.9億円 | 13.7億円 |
| 精密部品加工 | 5.3億円 | 6.8億円 |
| ユニット製品 | 1.9億円 | 2.0億円 |
| 連結(合計) | 23.1億円 | 22.5億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ヒーハイストは、精密機器製造事業を展開しており、直動機器、精密部品加工、ユニット製品を主力としています。
営業活動では、仕入債務の短縮や損失計上により資金が使用されました。投資活動では、有形固定資産の取得により資金が使用されました。財務活動では、借入金の返済により資金が使用されました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.7億円 | -1.8億円 |
| 投資CF | -3.2億円 | -0.5億円 |
| 財務CF | 1.7億円 | -1.0億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは「義の心」を経営理念として掲げています。これは、先に義を尽くして後から利益がくる「先義後利」の考えに基づき、自分たちの都合ではなく顧客の要望や困りごとに真摯に応える姿勢を表しています。この理念の実践を通じて、社会貢献、社員共生、安定成長を目指しています。
■(2) 企業文化
「不易流行」を経営方針として掲げています。企業スピリッツや経営理念など変えてはならない「不易」と、戦略や技術など時代に合わせて変化すべき「流行」を区別しています。特に各部門間の「リスペクト」と「共存共栄」を強みとし、「スマート生産」を通じた働き方改革や変化への順応を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「Hephaist Vision65」を掲げています。2027年3月期の数値目標として以下を設定しています。
* 売上高:29億円
* 営業利益:1.4億円
* 売上高営業利益率:4.9%
■(4) 成長戦略と重点施策
「スマート生産」「稼働率の平準化」「直動機器の製品力強化」等を重点施策としています。直動機器では中長期トレンドに合った設備投資と生産計画による安定生産・原価低減、および市場シェアの低い形番の生産増強を図ります。また、利益率の低い製品のスクラップ・アンド・ビルドを実行し、収益構造の変革を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
性別、年齢、国籍による差別を行わず、能力やスキルを公正に評価して採用・登用を行う方針です。多様な人材が活躍できる環境整備を進め、定期採用に加え、中途採用や外国籍人材の活用も積極的に行っています。また、入社時から階層別教育まで多彩な研修制度を導入し、個々のキャリア構築を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.7歳 | 12.3年 | 4,847,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.1% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 65.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.5% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 87.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、労働者に占める外国人労働者の割合(25.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 直動機器への高い依存度
同社グループの売上の約6割を直動機器が占めています。このため、産業用機械装置の設備投資需要の変動や、安価な海外製品・代替品の流入による競争激化が、業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。対策として、不採算製品の見直しや付加価値製品の開発を進めています。
■(2) 特定販売先への依存
売上の過半をTHK、2割強をホンダグループが占めており、特定顧客への依存度が高くなっています。これらの主要顧客の受注動向や経営戦略の変更、あるいはレース参戦状況などが、同社グループの業績に直接的な影響を与える可能性があります。
■(3) 継続企業の前提に関する事象
産業用機械業界の需要回復遅れにより、当期において営業損失およびマイナスの営業キャッシュ・フローを計上しています。これにより継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象が存在しています。同社は製品のスクラップ・アンド・ビルド等による収益構造改革を進め、手元資金の確保により不確実性は認められないと判断しています。



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