PEGASUS 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

PEGASUS 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

PEGASUSは東証スタンダード市場に上場し、工業用ミシンと自動車用部品の製造販売を主力とするメーカーです。直近の業績は、主力市場での需要伸び悩みや価格競争の激化などにより減収減益となっています。グローバルに生産・販売拠点を展開し、製品の差別化や新規顧客の開拓により収益力の回復を目指しています。


※本記事は、株式会社PEGASUSの有価証券報告書(第80期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. PEGASUSってどんな会社?


工業用ミシンと自動車用ダイカスト部品の製造販売をグローバルに展開するメーカーです。

(1) 会社概要


1914年に美馬ミシン商会として創業し、1947年に美馬ミシン工業所を設立しました。2006年に東証二部、翌年に東証一部へ上場しています。2007年には自動車用ダイカスト部品を製造するオートモーティヴ事業を開始し、現在は中国、ベトナム、メキシコなどに製造拠点を広げグローバルに事業を展開しています。

従業員数は連結で1,576名、単体で231名です。筆頭株主は金融機関の立花証券で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位には創業家関連とみられる美馬が名を連ねています。

氏名 持株比率
立花証券 15.57%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.26%
美馬 6.49%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は美馬成望氏が務めています。社外取締役の比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
美馬成望 代表取締役社長 1996年同社入社。販売部長、美馬精機社長、製造本部副本部長などを経て、2015年より現職。
岡田義秀 専務取締役管理本部長 1986年住友銀行入行。2004年同社入社後、財務部長、管理本部副本部長兼総務部長などを経て、2024年より現職。
美馬正道 常務取締役オートモーティヴ事業本部長 2000年同社入社。経営企画部長、製造本部製販管理部長、海外子会社社長などを経て、2024年より現職。


社外取締役は、小髙得央(元アテクト社長)、田中知加(ワーク社長)、杉山清和(税理士法人SWATS代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「アパレルマシナリー事業」および「オートモーティヴ事業」を展開しています。

アパレルマシナリー事業

ニット衣料などの縫製に使用される「環縫いミシン」と呼ばれる工業用ミシンや関連部品の製造販売を行っています。伸縮性のあるニット素材の縫製に適しており、世界中のアパレル生産工場などで広く利用されています。

収益は、国内外のアパレル縫製業者等への製品販売から得ています。運営は同社のほか、中国のペガサス(天津)ミシン有限公司やベトナムの製造子会社、シンガポールや米国、欧州などの販売子会社が連携して行っています。

オートモーティヴ事業

自動車用安全ベルトのリトラクター(巻き取り装置)部品を始めとする、高い技術力が求められる自動車用ダイカスト部品の製造販売を行っています。

収益は、自動車部品メーカー等への製品販売によって得ています。運営は同社本部の支援のもと、中国の天津ペガサス嶋本自動車部品有限公司や南通ペガサス自動車部品製造有限公司、ベトナム、メキシコの製造子会社が主体となって行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は200億円前後で推移していますが、直近では微減となっています。利益面でも、海外市場における需要の伸び悩みや価格競争の激化、減損損失の計上などが影響し、利益率が低下傾向にあり、当期は減益となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 205.0億円 252.9億円 175.4億円 220.4億円 216.6億円
経常利益 19.4億円 29.5億円 5.1億円 15.6億円 11.0億円
利益率(%) 9.5% 11.7% 2.9% 7.1% 5.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 9.9億円 17.7億円 18.7億円 4.1億円 6.8億円

(2) 損益計算書


売上高は微減となりましたが、原価率の悪化等により売上総利益も減少しています。販売費及び一般管理費が増加したことも影響し、営業利益は前期比で減少となり、営業利益率も低下する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 220.4億円 216.6億円
売上総利益 74.1億円 70.8億円
売上総利益率(%) 33.6% 32.7%
営業利益 15.7億円 9.5億円
営業利益率(%) 7.1% 4.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が15.4億円(構成比25%)、研究開発費が5.7億円(同9%)、販売手数料が4.9億円(同8%)を占めています。売上原価の内訳については、有価証券報告書に記載がありません。

(3) セグメント収益


アパレルマシナリー事業はインド等で堅調だったものの、中国等の主要市場での伸び悩みが影響し売上は横ばいとなりました。オートモーティヴ事業は米州で新規顧客を獲得しましたが、中国等での厳しい価格競争により減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
アパレルマシナリー事業 138.5億円 138.3億円
オートモーティヴ事業 81.9億円 78.3億円
連結(合計) 220.4億円 216.6億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業で安定して資金を生み出し、その範囲内で設備投資や借入金の返済を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 24.4億円 26.3億円
投資CF -16.4億円 -3.1億円
財務CF -15.2億円 -20.0億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.0%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

工業用環縫いミシンの専業メーカーとして培ってきた確固たる技術力により、世界の「衣料文化」の発展に貢献することを目指しています。また、自動車用部品を通して世界中の方々の生命の安全を守る事業として最高の品質を提供し、信頼される企業活動の展開を経営理念として掲げています。

(2) 企業文化

「PEGASUSは、いつだって人のそばにある」という想いを胸に、人と技術を通じてよりよい製品・サービス・品質の提供に取り組み、持続的な社会の発展に貢献することを目指しています。社員一人ひとりの成長と活躍を支える環境を整え、多様な人材が能力を発揮できる組織づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標

同社は、収益性、効率性、健全性、企業価値の観点から各種の指標を意識した経営を行い、以下の数値を目標として掲げています。

* 株主資本コスト:約9.0%
* ROE:9.0%超の早期実現
* PBR:1倍超の早期実現

(4) 成長戦略と重点施策

アパレルマシナリー事業では、製品・サービス・品質での差別化を徹底し、デジタル制御ミシンの開発や戦略機種の投入により販路拡大を進めます。オートモーティヴ事業では、生産能力の増強と自動化による原価低減を図り、新規顧客・新規部品の獲得を通じて持続的な成長を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

持続的な企業価値向上に向け、性別・年齢・国籍等にとらわれない多様な人材の確保と活躍推進を重視しています。新卒・キャリア採用の双方に取り組み、階層別研修や若手向けのブラザー・シスター制度等を通じて人材の育成と定着を支援し、働きがいを持って活躍できる環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.6歳 18.8年 5,632,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) -
男女賃金差異(正規雇用) -
男女賃金差異(非正規雇用) -

※男女賃金差異について、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性マネジメント職比率(24.0%)、女性社員比率(29.0%)、新入社員定着率(91.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) アパレル市場と競合の影響

同社のミシンはアパレル産業の景況に依存しており、新興国メーカーの普及価格帯製品による価格下落や競争激化が進んでいます。価格競争に巻き込まれた場合や、市場ニーズを満たす製品を提供できない場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外での事業活動によるリスク

同社の販売および製造は大半が海外に依存しています。各国の政治的・経済的な不安定化、通商政策の変更、為替変動、法規制や税制の変更など、予期せぬ事態が発生した場合、事業活動に支障が生じ、同社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 生産拠点の集中リスク

製造拠点を中国、ベトナム、メキシコなどに分散してリスク緩和を図っていますが、中国およびベトナムは依然として重要な拠点です。各国における政治情勢の変化や自然災害、電力事情の悪化などで生産活動が停止した場合、安定的な製品供給に影響を及ぼす恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。