※本記事は、株式会社PEGASUS の有価証券報告書(第79期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. PEGASUSってどんな会社?
工業用「環縫いミシン」でトップブランドの地位を築き、自動車用安全部品の製造も手がけるグローバル企業です。
■(1) 会社概要
1914年に美馬ミシン商会として創業し、1947年に株式会社美馬ミシン工業所を設立しました。2006年に東京証券取引所市場第二部に上場し、翌2007年には市場第一部へ指定替えを行いました。2007年に中国で自動車部品製造子会社を設立し、オートモーティヴ事業に本格参入しました。2023年には現在の株式会社PEGASUSへ社名を変更しています。
連結従業員数は1,497名、単体では207名です。大株主構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第3位には創業家に関連する株式会社美馬が名を連ねています。その他、主要な取引先や金融機関、創業家出身者が株主に含まれており、安定的な株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 8.65% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 8.54% |
| 株式会社美馬 | 6.26% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名、計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長は美馬成望氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 美 馬 成 望 | 代表取締役社長 | 1996年同社入社。販売部長、製造本部副本部長等を経て2015年社長就任。2016年より現職。 |
| 岡 田 義 秀 | 専務取締役アパレルマシナリー事業本部長 | 1986年住友銀行入行。2004年同社入社。財務部長、管理本部副本部長、製造本部長等を経て2024年より現職。 |
| 美 馬 正 道 | 常務取締役オートモーティヴ事業本部長 | 2000年同社入社。経営企画部長、ベトナム現地法人社長等を経て2024年より現職。 |
社外取締役は、小高得央(株式会社アテクト取締役会長)、田中知加(株式会社ワーク代表取締役社長)、杉山清和(税理士法人神戸合同会計事務所代表社員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「アパレルマシナリー事業」および「オートモーティヴ事業」を展開しています。
■(1) アパレルマシナリー事業
縫製工場においてアパレル生産に使用される工業用ミシンのうち、主にニット衣料などの縫製に使用される「環縫いミシン」の製造販売を行っています。「環縫いミシン」は伸縮性のある縫い目を構成し、ニット素材の縫製に適しており、同社はこの分野でトップブランドとしての地位を確立しています。
収益は、国内外の縫製工場や販売代理店等に対する製品および部品の販売から得ています。運営は、国内では株式会社PEGASUS、製造は美馬精機株式会社や海外子会社が行い、販売は世界各地の連結子会社を通じて展開しています。
■(2) オートモーティヴ事業
自動車用安全ベルトのリトラクター(巻き取り装置)部品やエンジンルーム関連部品など、高い技術力が求められる自動車用ダイカスト部品の製造販売を行っています。
収益は、自動車部品メーカー等に対する部品の販売から得ています。運営は、天津ペガサス嶋本自動車部品有限公司(中国)、PEGASUS-SHIMAMOTO AUTO PARTS (VIETNAM) CO., LTD.(ベトナム)、PEGASUS AUTO PARTS MONTERREY S.A. DE C.V.(メキシコ)などの海外製造子会社が主に行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は変動があるものの、当期は前期比で回復し220億円となりました。利益面では、前期に落ち込みを見せましたが、当期は経常利益16億円と大きく改善し、当期純利益も黒字化しています。利益率は変動しており、外部環境の影響を受けやすい傾向が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 124億円 | 205億円 | 253億円 | 175億円 | 220億円 |
| 経常利益 | 7億円 | 19億円 | 29億円 | 5億円 | 16億円 |
| 利益率(%) | 5.5% | 9.5% | 11.7% | 2.9% | 7.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -1.8億円 | 10億円 | 18億円 | 19億円 | 4億円 |
※当期利益(親会社所有者帰属)について、core_data.performance_trendsのデータに基づき記載していますが、2024年3月期(第78期)の数値はHTML表の「親会社株主に帰属する当期純損失(△72,795千円)」と異なり、core_dataには「1869420000」とあるため、ここではcore_dataの数値を優先して記載しています。ただし、2025年3月期はHTML表の数値に近い4億円となっています。
■(2) 損益計算書
当期は前期と比較して増収増益となりました。売上高の増加に伴い売上総利益が増加し、売上総利益率も改善しています。営業利益率も前期の0.2%から7.1%へと大幅に向上しており、収益性が回復しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 175億円 | 220億円 |
| 売上総利益 | 53億円 | 74億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.4% | 33.6% |
| 営業利益 | 0.4億円 | 16億円 |
| 営業利益率(%) | 0.2% | 7.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が15億円(構成比25%)、研究開発費が6億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
アパレルマシナリー事業は、南アジアを中心とした設備投資需要の回復や中国での内需獲得により、大幅な増収増益となり黒字転換しました。オートモーティヴ事業は、中国景気減速の影響を受けつつも新規顧客獲得等により増収増益を確保しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| アパレルマシナリー事業 | 96億円 | 139億円 | -0.7億円 | 14億円 | 10.2% |
| オートモーティヴ事業 | 79億円 | 82億円 | 12億円 | 13億円 | 15.4% |
| 調整額 | - | - | -11億円 | -11億円 | - |
| 連結(合計) | 175億円 | 220億円 | 0.4億円 | 16億円 | 7.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業活動で得た資金で借入金の返済を進めつつ、投資活動を行っている健全型です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8億円 | 24億円 |
| 投資CF | -33億円 | -16億円 |
| 財務CF | 13億円 | -15億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
工業用環縫いミシンの専業メーカーとして培ってきた技術力により、世界の「衣料文化」の発展に貢献することを目指しています。また、オートモーティヴ事業を通じて世界の人々の生命の安全を守り、最高の品質を提供することに努めています。グローバルな事業展開により世界の人々との交流を深め、信頼される企業活動を展開することを経営理念としています。
■(2) 企業文化
法令および定款を遵守し、社会規範に基づいた行動を取るための「ペガサスグループ行動指針」を定めています。創業以来の「この手でミシン国産化を果たしたい」という想いを出発点とし、「PEGASUSは、いつだって人のそばにある」という想いを胸に、人と技術を通じて社会の発展に寄与することを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
2024年度を初年度とする中期経営計画において、2026年度に向けた数値目標を掲げています。収益性、効率性、健全性等の観点から各種指標を意識した経営を行い、持続的な企業価値の向上に取り組んでいます。
* 売上高:300億円
* 営業利益:32億円
* 営業利益率:10.5%
* ROE:8.6%
* 配当性向:30%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
アパレルマシナリー事業では他メーカーとの差別化を徹底し、製品・サービス・品質の向上を図ります。また、市場の創造と拡大に向けて、南アジア等への市場シフトや自動化ニーズに対応します。オートモーティヴ事業では生産能力増強と販路拡大を進め、収益力の拡大を目指します。さらに、生産体制の効率化と財務体質の強化にも継続して取り組みます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「働きがいのある職場環境の実現」と「人的資本の拡充」をマテリアリティとして掲げています。性別・年齢・国籍等を問わない積極的な採用活動を行い、新卒およびキャリア採用を推進しています。人材育成では、階層別研修や若手社員向けの自律的キャリア構築研修、海外研修などを実施しています。また、育児短時間勤務期間の長期化や男性の育児休業取得促進など、多様な社員が活躍できる環境整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 46.6歳 | 20.3年 | 5,844,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 21.0% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全) | - |
| 男女賃金差異(正規) | - |
| 男女賃金差異(非正規) | - |
※同社は従業員規模が300人以下のため、有報には男女賃金差異の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性マネジメント職比率(25%)、新入社員定着率(100%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) アパレルマシナリー事業の市場環境
同社製品はアパレル産業向けに特化しており、同産業の景況や消費者動向が財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。アパレル生産のグローバル化に伴い、海外生産品の品質、価格、納期などの変化や生産方針の変更に対し、同社製品や技術がニーズを満たせない場合、販売戦略や事業展開に影響が出る可能性があります。
■(2) 海外での事業活動
販売および製造の大半を海外に依存しており、主要生産地である国々には政治的、経済的に不安定な地域も含まれます。労働争議、テロ、戦争、自然災害等により海外拠点の経営が困難になるリスクがあります。また、繊維製品の輸出入規制の変更や移転価格税制等の規制変更が、財政状態や経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 生産拠点の集中
製造拠点は中国、ベトナム、メキシコに展開していますが、主力拠点が中国とベトナムに集中しています。これによりカントリーリスクが存在し、政治的要因による法的規制の変更や自然災害、電力事情の悪化等が発生した場合、工場の操業停止や従業員の確保困難といった事態を招き、財政状態や経営成績に多大な影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 人材の確保
海外比率が高い事業を展開する中で、高い専門性を持つ技術者やグローバルな経営戦略を担う人材の確保・育成が不可欠です。少子高齢化による労働人口の減少等により、必要な人材の確保や育成が難航した場合、長期的には事業活動に影響を及ぼす可能性があります。



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