※本記事は、三櫻工業株式会社 の有価証券報告書(第117期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 三櫻工業ってどんな会社?
自動車用配管部品のグローバルサプライヤーとして、世界各地に拠点を展開し、安全・環境技術に貢献しています。
■(1) 会社概要
1939年に大宮航空工業として設立され、1952年に現社名へ変更しました。1961年に東証二部に上場し、1998年に東証一部へ指定替えとなりました。その後、海外展開を加速し、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。2025年にはメキシコの部品メーカーの全持分取得を決議しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は7,748名、単体従業員数は1,169名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は商社、第3位は大手自動車メーカーとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 9.59% |
| 神鋼商事株式会社 | 6.08% |
| 本田技研工業株式会社 | 5.50% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は竹田玄哉氏です。社外取締役比率は41.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 竹田 陽三 | 取締役会長代表取締役CEO | 1978年入社。社長、COOを経て2012年より現職。スタンレー電気社外取締役を兼任。 |
| 竹田 玄哉 | 取締役社長代表取締役COO | 2009年入社。グローバル開発本部長、専務取締役等を経て2017年より現職。 |
| 中本 浩寿 | 取締役執行役員副社長(VCOO)マーケティング本部長 | 1984年入社。グローバル製造本部長、生産革新本部長等を経て2021年よりマーケティング本部長。2025年より現職。 |
| 佐々木 宗俊 | 取締役専務執行役員CFO(兼)財務本部長 | 2000年入社。経営企画本部長等を経て2020年よりCFO兼財務本部長。2024年より現職。 |
社外取締役は、金子素久(株式会社iMed Technologies代表取締役COO)、森地高文(神鋼商事株式会社相談役)、入山章栄(早稲田大学大学院経営管理研究科教授)、井澤吉幸(元株式会社ゆうちょ銀行取締役兼代表執行役社長CEO)、富岡さやか(太陽ホールディングス株式会社常務執行役員CFO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「北南米」「欧州」「中国」「アジア」の各報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
ブレーキチューブやフューエルチューブなどの自動車部品を製造・販売しています。また、自動車部品製造設備の内部製作・販売やソフトウエア開発も行っています。
収益は主に自動車メーカー等への製品販売から得ています。運営は主に三櫻工業、フルトンプロダクツ工業等の国内関係会社が行っています。
■(2) 北南米
米国、メキシコ、ブラジル等の拠点で、自動車部品の製造・販売を行っています。特に米国市場ではピックアップトラック向けなどの需要に対応しています。
収益は現地の自動車メーカー等への製品販売から得ています。運営はサンオー アメリカ インコーポレーテッド等の現地法人が行っています。
■(3) 欧州
ドイツ、英国、ハンガリー等の拠点で、自動車部品の製造・販売を行っています。欧州系および日系自動車メーカー向けに製品を供給しています。
収益は現地の自動車メーカー等への製品販売から得ています。運営はガイガー オートモーティブ GmbH、サンオー UK マニュファクチュアリング リミテッド等の現地法人が行っています。
■(4) 中国
広州、無錫、武漢等の拠点で、自動車部品の製造・販売を行っています。また、自動車部品製造設備の内部製作・販売も行っています。
収益は現地の自動車メーカー等への製品販売から得ています。運営は広州三櫻制管有限公司、上海三櫻機械製造有限公司等の現地法人が行っています。
■(5) アジア
タイ、インド、インドネシア等の拠点で、自動車部品の製造・販売を行っています。インドでは電器部品の製造も行っています。
収益は現地の自動車メーカー等への製品販売から得ています。運営はエイブル サンオー インダストリーズ(1996)CO.,LTD.、サンオー インディア プライベート リミテッド等の現地法人が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は増加傾向にあり、直近では1,595億円に達しています。一方、経常利益は変動があり、当期は46億円となりました。当期利益(親会社所有者帰属)は前期の赤字から黒字に転換した後、当期は増益となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,137億円 | 1,159億円 | 1,377億円 | 1,568億円 | 1,595億円 |
| 経常利益 | 38億円 | 26億円 | 15億円 | 73億円 | 46億円 |
| 利益率(%) | 3.3% | 2.2% | 1.1% | 4.7% | 2.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 38億円 | 36億円 | -40億円 | 15億円 | 20億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間では売上高は微増しましたが、売上原価や販売費及び一般管理費の増加により、営業利益は減少しました。売上総利益率は低下傾向にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,568億円 | 1,595億円 |
| 売上総利益 | 233億円 | 228億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.9% | 14.3% |
| 営業利益 | 81億円 | 49億円 |
| 営業利益率(%) | 5.1% | 3.0% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料賞与が68億円(構成比38%)、運送費が17億円(同10%)を占めています。売上原価については内訳の詳細データがありません。
■(3) セグメント収益
各セグメントの売上高を見ると、北南米が増収となり全体を牽引しました。日本や欧州は横ばいまたは微減、中国は大幅な減収となりましたが、アジアは堅調に推移しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 299億円 | 292億円 |
| 北南米 | 591億円 | 673億円 |
| 欧州 | 222億円 | 215億円 |
| 中国 | 177億円 | 130億円 |
| アジア | 279億円 | 286億円 |
| 連結(合計) | 1,568億円 | 1,595億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 101億円 | 85億円 |
| 投資CF | -71億円 | -81億円 |
| 財務CF | 7億円 | 41億円 |
三櫻工業グループは、事業運営に必要な流動性と資金源泉の安定確保を基本方針としており、営業活動によるキャッシュ・フローと金融機関からの借入等で資金を調達しています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、日々の事業活動から生み出される資金の流れを示しています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資やM&Aなど、将来の成長に向けた資金の動きを表しています。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や配当金の支払いなど、資金調達や返済に関する動きを示しています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、製品の提供とグローバルな事業活動を通じて、ステークホルダーの「安全と安心」、「環境保全」のために力を尽くし、長期的な企業価値向上と社会に対する責任を果たしていくことを理念としています。
■(2) 企業文化
同社は「個人と企業の持続的な共成長を目指し、働きがいと生きがいの両立を実現する」という人財方針のもと、「三桜DNA」を受け継ぐものづくり人財の育成を重視しています。「自己変革への教育・育成の場づくり」や「多様な人財の能力や個性を最大限発揮できる職場づくり」を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、2030年度に向けて以下の長期的な経営指標の定量目標を掲げています。
* 売上高:2,000億円以上
* ROE(自己資本利益率):15%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、既存の内燃機関車向け製品でシェアを拡大する「サンオー・ラストマン・スタンディング戦略」を推進しつつ、サーマル・ソリューション事業や新事業の拡大を図っています。
* 自動車配管事業でのグローバル市場占有率向上と価格決定権の強化
* データセンター向け冷却装置事業や生産ソリューション事業などの新事業創出
* インド等グローバルサウス市場における冷蔵庫等の家電用水冷配管事業の拡大
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「個人と企業の持続的な共成長を目指し、働きがいと生きがいの両立を実現する」ことを人財方針としています。この方針のもと、従業員の能力やキャリアプランの見える化に取り組み、年齢や性別に関わらず全ての従業員が力を発揮できるよう職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.0歳 | 16.8年 | 6,565,697円 |
※平均年間給与(税込額)は基準外賃金及び賞与が含まれております。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.1% |
| 男性育児休業取得率 | 91.3% |
| 男女賃金差異(全) | 58.2% |
| 男女賃金差異(正規) | 74.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 83.2% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 受注変動のリスク
主要事業である自動車部品製造事業は、国内外の自動車メーカーの生産調整や停止の影響を受けます。また、各国のEV政策や規制強化により必要とされる部品が急激に変化した場合、売上高及び利益が大きく変動する可能性があります。
■(2) ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク
技術・製造情報、顧客の営業情報、個人情報等をシステム上で管理していますが、従業員の不注意やサイバー攻撃等によりシステム停止や情報流出が発生した場合、事業活動への悪影響や社会的信用の失墜、業績悪化を招く可能性があります。
■(3) 事業投資のリスク
投資判断時の想定以上に市場・経営環境が悪化し、期待されるキャッシュ・フローが創出できない場合、有形固定資産の減損処理等により財政状態及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。関係会社株式や貸付金の評価にも影響する可能性があります。



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