三櫻工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三櫻工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三櫻工業は東証プライム市場に上場し、自動車部品(スチールチューブ製品等)、電器部品、関連設備の製造・販売をグローバルに展開しています。直近の業績は、売上高が前期比横ばいの1,594億円、営業利益および経常利益は減益となったものの、親会社株主に帰属する当期純利益は15億円と増益を確保しています。


※本記事は、三櫻工業株式会社の有価証券報告書(第118期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三櫻工業ってどんな会社?


自動車部品(各種チューブの応用加工製品等)や電器部品、関連設備の製造・販売をグローバルに手掛ける企業です。

(1) 会社概要


同社は1939年に大宮航空工業として設立され、その後、三櫻工業へと商号変更しました。1961年に東証へ上場し、1980年代からは北米や中南米、欧州、アジアなどに現地法人を設立し、グローバル展開を加速させました。近年では2025年にメキシコの自動車部品メーカーを買収し、米国市場におけるポジショニングを強固なものとしています。

同社グループの従業員数は連結で7,697名、単体で1,179名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位には事業上の取引関係がある神鋼商事、第3位にはスズキが名を連ねており、安定した資本・取引関係を構築しています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.71%
神鋼商事 6.08%
スズキ 4.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役CEOの竹田陽三氏と代表取締役COOの竹田玄哉氏が経営トップを務めており、社外取締役の比率も高い体制となっています。

氏名 役職 主な経歴
竹田 陽三 取締役会長代表取締役CEO 1978年同社入社。1995年取締役社長、2000年CEO。2012年取締役会長より現職。
竹田 玄哉 取締役社長代表取締役COO 2009年同社入社。研究開発部長等を経て2012年取締役、2016年COO。2017年取締役社長より現職。
中本 浩寿 取締役執行役員副社長(VCOO)マーケティング本部長 1984年同社入社。2012年取締役、2016年執行役員副社長(VCOO)。2021年マーケティング本部長より現職。
佐々木 宗俊 取締役専務執行役員CFO(兼)財務本部長 2000年同社入社。2015年取締役。経営企画本部長等を経て2020年CFO兼財務本部長、2024年専務執行役員より現職。


社外取締役は、金子素久(元経営共創基盤)、森地高文(元神鋼商事社長)、入山章栄(早稲田大学大学院教授)、井澤吉幸(元ゆうちょ銀行社長)、富岡さやか(太陽ホールディングス上席専務執行役員CFO)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北南米」「欧州」「中国」「アジア」の5つを報告セグメントとして事業を展開しています。

日本


同社およびフルトンプロダクツ工業などの関係会社が、自動車メーカー等へ各種スチールチューブ等の自動車部品の製造・販売および設備の販売を行っています。また、ソフトウェアの開発や保守・運用などの業務も含まれます。
国内の自動車メーカー等への部品供給や設備販売による代金を中心に収益を得ており、同社および国内の子会社・関係会社が運営を担っています。

北南米


米国やメキシコなどにおいて、Sanoh America, Inc.等の現地関係会社が自動車部品の製造・販売を行っています。直近ではメキシコ拠点の買収によりピックアップトラック向け製品などを強化しています。
現地の自動車メーカー等からの部品販売代金が主な収益源であり、北南米の各現地法人が主体となって運営しています。

欧州


英国やドイツなどで、Sanoh UK Manufacturing Ltd.やGeiger Automotive GmbH等の関係会社が自動車部品の製造・販売を行っています。
欧州系自動車メーカーからの部品販売代金により収益を得ており、欧州の各関係会社が製造・販売・運営を行っています。

中国


中国における広州三櫻制管有限公司等の関係会社が自動車部品の製造・販売を行っています。また、上海三櫻機械製造有限公司が内部製作の自動車部品製造設備を販売する役割を担っています。
自動車メーカーからの部品販売代金および関係会社への設備販売代金が収益源であり、中国の各関係会社が運営しています。

アジア


タイやインド、インドネシアなどにおいて、Able Sanoh Industries (1996) Co., Ltd.等の関係会社が自動車部品の製造・販売を行っています。また、インドでは自動車部品に加えて冷蔵庫向けなどの電器部品の製造・販売も手掛けています。
アジア地域の顧客からの部品販売や電器部品の販売代金が収益源であり、現地の関係会社各社が運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は第114期から第117期にかけて拡大傾向にありましたが、直近は横ばいで推移しています。経常利益には年ごとの変動が見られ、直近の第118期は減益となったものの、当期利益は特別利益の計上などもあって増益を確保しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,159億円 1,377億円 1,568億円 1,595億円 1,594億円
経常利益 26億円 15億円 73億円 46億円 30億円
利益率(%) 2.2% 1.1% 4.7% 2.9% 1.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 -9億円 42億円 7億円 15億円

(2) 損益計算書


売上高および売上総利益は前期と同水準を維持していますが、人件費などの販売費および一般管理費が増加したことや、一部地域での収益性悪化により、営業利益は減少しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,595億円 1,594億円
売上総利益 228億円 229億円
売上総利益率(%) 14.3% 14.4%
営業利益 49億円 41億円
営業利益率(%) 3.0% 2.6%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料賞与が68億円(構成比36%)、運送費が21億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本およびアジアセグメントは増収増益または堅調な利益を確保して全体を牽引していますが、北南米、欧州、中国セグメントでは市場環境の変化や関税措置、コスト増等の影響で営業損失や減益となるなど、地域ごとに収益性が分かれる結果となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
日本 292億円 327億円 10億円 21億円 6.3%
北南米 673億円 678億円 17億円 -3億円 -0.5%
欧州 215億円 191億円 -1億円 3億円 1.5%
中国 130億円 110億円 -10億円 -3億円 -3.2%
アジア 286億円 288億円 28億円 26億円 9.0%
連結(合計) 1,595億円 1,594億円 49億円 41億円 2.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う積極型の状態にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 85億円 15億円
投資CF -81億円 -135億円
財務CF 41億円 129億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.3%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も33.8%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、ものづくり企業として、製品の提供とグローバルな事業活動を通じて、ステークホルダーの「安全と安心」、「環境保全」のために力を尽くし、長期的な企業価値向上と社会に対する責任を果たしていくことを理念として掲げています。

(2) 企業文化


同社グループは、「個人と企業の持続的な共成長を目指し、働きがいと生きがいの両立を実現する」という考え方を重視し、多様な価値観や経験を持つ人材が能力を最大限発揮できる職場づくりや、自己変革への教育・育成の場づくりを推進する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、2024年5月に改訂した中期経営方針において、安定的な収益力の確保とグループ全体の業績向上のため、長期的な経営指標として以下の定量目標を掲げています。

・2030年度の売上高2,000億円以上
・自己資本利益率(ROE)15%以上
・現業の売上高営業利益率10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


既存の内燃機関車向け市場に最後まで踏みとどまる「サンオー・ラストマン・スタンディング戦略」で残存者利益の獲得を目指すとともに、電動化対応としてサーマル・ソリューション事業を拡大します。また、自動車領域で培った技術を転用し、データセンター用水冷配管や生産ソリューション事業、冷蔵庫向けワイヤーコンデンサー事業などの新事業創出にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


既存事業の収益力最大化と新事業創出を両立する「レジリエントなマルチポートフォリオ経営」の実現に向け、人財を中核とした経営基盤の強化に力を入れています。戦略領域ごとに必要な専門人材の確保・最適配置を図り、デジタル人材育成プログラムを通じて業務変革を牽引する人材を育成し、中長期的な組織基盤を強化しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.2歳 16.8年 6,622,792円

※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.8%
男性育児休業取得率 73.3%
男女間賃金格差(全労働者) 59.0%
男女間賃金格差(正規雇用) 75.4%
男女間賃金格差(非正規雇用) 78.4%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 受注変動のリスク

主要得意先である国内外の自動車メーカーの生産調整や停止、各国の電気自動車政策や規制強化の動向による急激な部品需要の変化が、同社グループの売上高や利益に影響を与える可能性があります。これに対し、高収益・高品質基盤の確立や新事業の拡大を進めています。

(2) 製品品質リスク

国内外の工場で国際的な品質管理基準に基づき製造を行っていますが、欠陥やリコールが発生した場合、多額の費用負担が生じる可能性があります。品質問題の未然防止や再発防止に向けて設計段階での品質確保や体制整備を行っていますが、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(3) ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク

機密情報や個人情報を情報システム上で管理しており、従業員の不注意や悪意ある第三者からのサイバー攻撃によりシステム停止や情報流出が発生する可能性があります。情報リテラシー教育や外部専門家の活用、サイバーリスク保険の加入で備えていますが、事業活動に悪影響を及ぼす恐れがあります。

(4) 事業投資のリスク

市場環境や経営環境が想定以上に悪化し、事業計画との乖離により期待されるキャッシュ・フローが創出できない場合、有形固定資産の減損処理などが必要となり、同社の財政状態や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。地域別の委員会や経営会議等でモニタリングを行っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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