かわでん 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

かわでん 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

かわでんは、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、ビルや工場向けの高低圧配電盤、制御盤、分電盤など配電制御設備をカスタムメイドで製造する大手専業メーカーです。直近の業績では、都市部の再開発案件や大型工場建設に伴う受注が堅調に推移したことにより、大幅な増収増益を達成し成長を続けています。


※本記事は、かわでんの有価証券報告書(第105期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. かわでんってどんな会社?


配電制御設備のカスタムメイド製造に特化し、国内の社会インフラを支える大手専業メーカーです。

(1) 会社概要


1926年に川崎電気商会として創立され、1940年に川崎電気として設立されました。1962年に東京証券取引所市場第二部に上場しましたが、2000年に上場廃止となりました。2001年に新生川崎電気として再出発し、2004年に現在のかわでんに商号を変更後、再度上場を果たしました。

同社単体の従業員数は860名です。筆頭株主は融和実業で、第2位は富士化学塗料、第3位は佐藤商事です。上位株主には、関連する事業会社や取引先などが名を連ねており、安定した資本関係のもとで事業を展開しています。

氏名 持株比率
融和実業 10.70%
富士化学塗料 9.90%
佐藤商事 3.59%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役会長は相澤利雄氏、代表取締役社長は小川善之氏が務めています。取締役9名のうち、社外取締役は3名です。

氏名 役職 主な経歴
相澤 利雄 代表取締役会長 1980年同社に入社。執行役員営業本部首都圏第一支社長、常務取締役営業本部長などを経て、2021年より代表取締役社長。2025年より現職。
小川 善之 代表取締役社長 1992年同社に入社。執行役員営業本部関東支社長、取締役専務執行役員営業本部長などを経て、2025年より現職。
神保 能郎 取締役 経営管理本部長 1989年同社に入社。執行役員経営管理本部経営管理部長などを経て、2025年より現職。
田代 正 取締役 製造本部長 1990年同社に入社。執行役員製造本部山形工場副工場長、取締役常務執行役員製造本部長などを経て、2024年より現職。
坂本 宏幸 取締役 営業本部長 1994年同社に入社。執行役員営業本部首都圏支社長、常務執行役員営業本部副本部長などを経て、2026年より現職。
山下 孝司 取締役 経営企画室長 1991年同社に入社。執行役員内部監査室長、常務執行役員経営企画室長などを経て、2023年より現職。


社外取締役は、石田徹(アイ・アール・ディレクションズ代表取締役社長)、堀内晃(元日本冶金工業取締役常務執行役員)、菅野雅貴(菊地綜合法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、配電制御設備製造事業の単一セグメントを展開しています。

同社は、ビル、工場、産業施設、大型マンション向けの高低圧配電盤、制御盤、分電盤などの配電制御設備を顧客の指定に従いカスタムメイドで製造しています。製品は重量や容積が大きく、顧客の建築工程に組み込まれるため、設計からアフターサービスまで柔軟に対応できる社内一貫体制を強みとしています。

収益は、建設される施設に設置される配電制御設備の販売によって得ています。主に新規の新築案件や、既存設備の更新に伴うリニューアル案件から製品代金を受け取ります。製造や販売などの事業運営は、かわでんが単体で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、一時的な減益はあったものの、概ね右肩上がりの成長を遂げています。特に直近2期は、都市部の再開発案件や大型工場建設による需要を取り込み、大幅な増収増益を記録しました。利益率も継続的に改善しており、高付加価値案件の受注や原価管理の徹底が奏功し、収益力が大きく向上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 183億円 197億円 213億円 242億円 265億円
経常利益 10億円 5億円 12億円 27億円 42億円
利益率(%) 5.4% 2.5% 5.4% 11.0% 15.7%
当期利益 6億円 3億円 7億円 20億円 29億円

(2) 損益計算書


売上高と各利益段階において着実な成長が見られます。原材料価格の高騰といった逆風がある中でも、案件別の採算管理の徹底や原価低減に取り組んだ結果、売上総利益と営業利益の双方が大きく伸び、利益率もそれぞれ改善しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 242億円 265億円
売上総利益 80億円 101億円
売上総利益率(%) 33.1% 38.2%
営業利益 26億円 41億円
営業利益率(%) 10.7% 15.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料・賞与及び手当が18億円(構成比30%)、運搬費が12億円(同20%)を占めています。売上原価については、材料費が81億円(構成比50%)、労務費が46億円(同28%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社は配電制御設備製造事業の単一セグメントですが、収益は新規案件事業とリニューアル事業から構成されています。両事業ともに増収となっており、特に新規案件事業は大型建設需要の恩恵を受けて順調に拡大しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
新規案件事業 178億円 192億円
リニューアル事業 64億円 73億円
連結(合計) 242億円 265億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 15億円 51億円
投資CF -6億円 -13億円
財務CF -2億円 -11億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.4%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も73.3%で市場平均を上回っています。いずれの指標も高い水準を維持しています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「暮らしを守る、電気を守る」という使命を掲げています。電気が人々を安全に照らし、快適で安心な暮らしを送れる理想の社会の実現に向け、持続的な事業価値および株主価値の創出と継続的な企業価値向上を意識した事業活動を展開していくことを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、経営理念に「環境と社会と人のために」を掲げ、「人間尊重」の精神を重視しています。多様性を重んじ、互いの信頼と和を礎として、社会や顧客から信頼される人材の育成に努めています。また、絶えざる技術革新により持続可能な社会インフラの構築に貢献する文化が醸成されています。

(3) 経営計画・目標


同社は、2030年3月期を最終年度とする5カ年の中期経営計画を推進しており、売上高、営業利益、ROE、配当性向を主要KGI(重要目標達成指標)として位置付けています。持続的な成長を実現するため、以下の具体的な数値目標を掲げています。

* 売上高:350億円
* 営業利益:40億円
* ROE:10.0%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、カスタム型配電制御設備専業メーカーとしての地位を強固にするため、製品の品質向上や納期遵守に加え、顧客視点に立った製品開発による競争力強化を図ります。就労人口減少に対応する省施工製品の開発や、新工場建設による生産能力の拡充を推進します。また、リニューアル事業の強化を起点とした製品ライフサイクル管理の見直しや、製品構造のモジュール化に取り組みます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「社会や顧客から信頼されるプロフェッショナル人材の育成」と「人材が力を発揮しやすい組織風土・環境整備」を基本方針としています。多様な人材を公正に採用し、OJTや各種研修を通じた成長を支援するとともに、働き方改革やダイバーシティの推進により、従業員エンゲージメントの向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.5歳 16.6年 6,913,007円


※平均年間給与は時間外勤務手当等基準外賃金・賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.1%
男性育児休業取得率 77.8%
男女賃金差異(全労働者) 73.9%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 75.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 67.6%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 民間設備投資動向の影響


同社の製品は建築物に設置されるため、国内の民間非住宅建築投資の動向による影響を強く受けます。外部環境の変化で企業収益が悪化し、設備投資が減少した場合には、製品需要が落ち込み、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 価格下落と製造原価上昇のリスク


配電制御設備市場は製品の差別化が難しく、価格競争に陥りやすい特性があります。また、受注から製造までの間に顧客から仕様変更を要求されることが頻繁にあり、製造原価の増加が販売価格に十分に反映されない場合、収益性が低下するリスクがあります。

(3) 生産拠点の一極集中


同社はその生産の大部分を山形工場で行っています。地震などの自然災害や事故によって山形工場が壊滅的な損害を受けた場合、生産能力が著しく低下し、復旧のための巨額な費用負担とともに、売上が大幅に落ち込む可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。