※本記事は、デンヨー株式会社 の有価証券報告書(第77期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. デンヨーってどんな会社?
エンジン発電機や溶接機で高いシェアを持つ産業用電気機械器具メーカーです。
■(1) 会社概要
1948年に日本電気熔接機材として設立し、溶接機の生産を開始しました。1961年にエンジン発電機の生産を開始し、1966年に現社名へ変更しました。2000年に東京証券取引所市場第一部に上場し、米国、アジア、欧州への現地法人設立などを通じてグローバル展開を推進しています。
連結従業員数は1,377名、単体では611名です。筆頭株主は投資ファンドのザ エスエフピー バリュー リアライゼーション マスター ファンド エルティーディーで、第2位は信託銀行、第3位は株式会社久栄となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ザ エスエフピー バリュー リアライゼーション マスター ファンド エルティーディー | 9.07% |
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 9.02% |
| 久栄 | 6.67% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長は吉永隆法氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 白鳥昌一 | 代表取締役会長 | 経営企画部長、管理部門長を経て、2016年より代表取締役社長。2023年4月より現職。 |
| 吉永隆法 | 代表取締役社長 | 開発部門技術部長、開発部門長を経て、2021年より取締役上席執行役員。2023年4月より現職。 |
| 山田正雄 | 取締役常務執行役員 | 品質管理部門長を経て、2023年4月より開発部門長兼生産部門・海外製造子会社管掌として現職。 |
| 田邊誠 | 取締役常務執行役員 | 第一生命保険出身。管理部門人事部長、総務部長、財務部長等を歴任し、2021年より管理部門長。 |
| 大友建一 | 取締役上席執行役員 | デンヨーテクノサービス出身。海外営業第一部長等を経て、国際営業部門長兼海外事業推進室長として現職。 |
| 港正一 | 取締役上席執行役員 | 東日本営業部長等を経て、2024年4月より国内営業部門長兼営業推進部長として現職。 |
| 武山芳夫 | 取締役 | 第一生命保険取締役常務執行役員、第一生命情報システム代表取締役会長等を経て現職。 |
| 廣井亨 | 取締役(常勤監査等委員) | 開発部門研究開発部長兼知的財産部長を経て、2019年より常勤監査役。2021年より現職。 |
| 窪和義 | 取締役(常勤監査等委員) | 管理部門人事部長、総務部長等を歴任し、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、武山芳夫(元第一生命情報システム会長)、山上圭子(東京靖和綜合法律事務所客員弁護士)、名執雅子(元法務省矯正局長)、古東誠(元三井物産理事秘書室長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「アメリカ」「アジア」「欧州」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 日本
エンジン発電機、エンジン溶接機、エンジンコンプレッサ等の製造および販売を行っています。また、子会社のニシハツは防災用・非常用発電機の製造・販売を、デンヨー興産は補修部品の販売やアフターサービスを担っています。
収益は、建設関連市場や一般企業向けの製品販売、部品販売およびサービス提供から得ています。運営は主に同社が行い、特定分野をニシハツやデンヨー興産、新日本建販などのグループ会社が担当しています。
■(2) アメリカ
米国市場において、エンジン発電機の製造および販売を行っています。主要顧客であるレンタル会社等への販売が中心となっています。
収益は、現地における製品の販売代金から得ています。運営は、製造販売を行うデンヨー マニュファクチュアリング コーポレーションと、部品供給を行うデンヨー アメリカ コーポレーションが担当しています。
■(3) アジア
アジア地域において、エンジン発電機や溶接機の製造、販売およびリース・レンタルを行っています。ベトナムやインドネシアに製造拠点を有しています。
収益は、製品の販売代金およびリース・レンタル料から得ています。運営は、デンヨー ベトナム、デンヨー ユナイテッド マシナリー、P.T.デイン プリマ ジェネレーターなどが担当しています。
■(4) 欧州
欧州市場において、エンジン発電機、エンジン溶接機の販売を行っています。
収益は、現地における製品の販売代金から得ています。運営は、オランダに拠点を置くデンヨー ヨーロッパ B.V.が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は700億円台で推移しており、直近では米国市場の調整により若干の減収となりましたが、利益面では改善傾向にあります。経常利益率は10%を超え、当期純利益も増加傾向にあり、収益性の向上が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 550億円 | 552億円 | 643億円 | 731億円 | 708億円 |
| 経常利益 | 56億円 | 40億円 | 52億円 | 74億円 | 80億円 |
| 利益率(%) | 10.3% | 7.3% | 8.1% | 10.1% | 11.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 29億円 | 25億円 | 22億円 | 32億円 | 40億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減少しましたが、売上総利益および営業利益は増加しました。これは一部製品の価格改定効果や、比較的収益性の高い製品の出荷が堅調であったことによる原価率の改善が寄与しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 731億円 | 708億円 |
| 売上総利益 | 162億円 | 178億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.2% | 25.1% |
| 営業利益 | 71億円 | 74億円 |
| 営業利益率(%) | 9.7% | 10.4% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給与手当が36億円(構成比34%)、運賃及び荷造費が13億円(同12%)を占めています。売上原価は売上高の75%を占めています。
■(3) セグメント収益
日本セグメントは建設需要や非常用発電機の出荷が堅調で増収増益でした。アメリカセグメントは市場の在庫調整により大幅な減収となりましたが、円安による部品調達コスト低下等で増益を確保しました。アジアは増収となったものの経費増で減益、欧州は景気停滞等の影響で減収となり営業損失を計上しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 486億円 | 497億円 | 42億円 | 46億円 | 9.2% |
| アメリカ | 197億円 | 162億円 | 12億円 | 17億円 | 10.3% |
| アジア | 39億円 | 45億円 | 8億円 | 6億円 | 14.4% |
| 欧州 | 9億円 | 4億円 | 1億円 | -0億円 | -0.8% |
| 連結(合計) | 731億円 | 708億円 | 71億円 | 74億円 | 10.4% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
デンヨーは、営業活動により潤沢な資金を生み出し、事業の成長を支えています。投資活動では、将来の成長に向けた設備投資等に資金を使用しています。財務活動では、株主への還元や資金調達を行っています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 42億円 | 73億円 |
| 投資CF | -18億円 | -55億円 |
| 財務CF | -8億円 | -18億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
伝統的経営理念である「三者の得」(同社製品によって「使う人、売る人、造る人」の各々が利益を享受すること)を踏まえ、安全・安心なパワーソースの提供を通じて豊かな社会造りに貢献することを経営理念としています。
■(2) 企業文化
この理念のもと、常に技術革新に向けてチャレンジし続け、透明かつ公正な企業活動を通じて世界中で信頼される企業を目指しています。顧客サポートの充実を最重要目標とし、グローバル化とグループ力の結束と強化に取り組む文化があります。
■(3) 経営計画・目標
2035年度長期ビジョンとして「サステナビリティをめぐる諸課題に取り組みつつ、パワーソースの提供を通じて社会に貢献し、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に努める」ことを掲げています。中期経営計画「Denyo2026」では、以下の数値目標を設定しています。
* 自己資本当期純利益率(ROE):7%以上
* 売上高経常利益率:10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「Denyo2026」において、国内では非常用発電機のシェア拡大、海外では北米市場のほかアジア・中近東市場等の販売網強化を目指しています。また、脱炭素社会を見据え、水素関連製品をはじめとする新機軸製品の研究開発にも注力しています。
* 国内建設関連市場:新製品投入によるシェアアップ、教育体制充実、サービス体制強化
* 国内定置形発電機市場:グループ連携強化、ニシハツ新本社工場の投資効果最大化、メンテナンス収益拡大
* 海外市場:既存製品による市場深耕、新規製品開発、未開拓地域への進出(グローバルサウス等)
* 新機軸製品:水素専焼発電機等の開発継続・推進、社会実装の準備
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「三者の得」を実践し、多様な従業員が力を発揮できるよう、人材育成を最優先事項としています。公平・公正な処遇、安全・安心・健康、ダイバーシティ&インクルージョンを基本ビジョンとし、階層別研修やグローバル人材教育、自己啓発支援などからなる「デンヨー人財育成プログラム」を整備しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 38.4歳 | 12.6年 | 6,515,159円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.0% |
| 男性育児休業取得率 | 48.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 73.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 53.5% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 建設関連市場への依存
同社グループの製品は主として建設関連市場向けに販売されており、需要動向の影響を大きく受けます。国内では財政赤字による公共投資の抑制、海外では各国の建設需要の変動が、経営成績に影響を与える可能性があります。これに対し、非常用発電機などの定置形分野の拡販や、建設関連以外の分野への注力を進めています。
■(2) 価格競争の激化
市場環境によっては競合他社との価格競争が激化し、経営成績に影響を与える可能性があります。特に発展途上国では低スペック製品での競争が進む懸念があります。同社は原価低減に努めるとともに、国ごとのニーズを捉えた高付加価値製品の開発により、価格競争の回避を図っています。
■(3) 原材料価格の変動
製品には鉄板や鋼板などの素材が多く使用されており、これらの調達価格が高騰した場合、製品原価率が上昇し経営成績に影響を与える可能性があります。合理化投資や原価低減活動を実施するとともに、自助努力で吸収できない場合は製品価格への転嫁を行う方針です。
■(4) 為替相場の変動
海外での事業展開や製品輸出を行っているため、為替相場の変動が経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。これに対し、債権債務のバランス調整や先物為替予約の活用、海外子会社における取引通貨の調整などにより、リスク軽減を図っています。



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