デンヨー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

デンヨー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

デンヨーは東京証券取引所プライム市場に上場し、建設関連市場向けを中心としたエンジン発電機やエンジン溶接機、非常用発電機等の製造および販売を主力事業としてグローバルに展開しています。直近の業績では、売上高が増加し増収となり、営業利益や経常利益も増益を達成した一方で、当期純利益は微減となりました。


※本記事は、デンヨー株式会社の有価証券報告書(第78期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. デンヨーってどんな会社?


エンジン発電機や溶接機等の製造・販売を中心に、高品質なパワーソースをグローバルに提供しています。

(1) 会社概要


1948年に日本電気熔接機材として設立され、1961年にエンジン発電機の生産を開始しました。1966年に社名をデンヨーへと改称し、1983年に東京証券取引所市場第二部、2000年に同市場第一部へ上場しました。近年では2025年に子会社ニシハツの新本社工場を稼働させています。

現在の従業員数は連結で1,362名、単体で619名です。筆頭株主は海外ファンドのザ エスエフピー バリュー リアライゼーション マスター ファンド エルティーディーで、第2位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は久栄となっています。

氏名 持株比率
ザ エスエフピー バリュー リアライゼーション マスター ファンド エルティーディー 10.32%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 8.73%
久栄 6.75%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は吉永隆法氏が務めています。社外取締役比率は38.5%です。

氏名 役職 主な経歴
吉永隆法 代表取締役社長 1986年同社入社。開発部門技術部長等を経て、2021年デンヨーアメリカコーポレーション代表取締役に就任。同年上席執行役員を経て2023年より現職。
山田正雄 取締役常務執行役員開発部門長兼生産部門・海外製造子会社管掌 1985年同社入社。品質管理部門長などを歴任。2019年取締役執行役員、2021年取締役上席執行役員を経て、2023年より現職。
田邊誠 取締役常務執行役員管理部門長 1984年第一生命保険相互会社入社。2008年同社入社。管理部門人事部長などを経て2021年取締役上席執行役員に就任。2023年より現職。
大友建一 取締役上席執行役員国際営業部門長兼海外事業推進室長兼海外販売子会社管掌 2003年デンヨーテクノサービス入社。2006年同社へ異動。営業部門直需部長等を経て2023年取締役上席執行役員に就任。2025年より現職。
港正一 取締役上席執行役員国内営業部門長兼営業推進部長 1984年同社入社。営業部門東日本営業部長兼東京支店長等を経て2023年上席執行役員国内営業ユニット統括に就任。2024年より現職。
藤本庄一郎 取締役上席執行役員経営企画室長 2004年同社入社。営業企画部長、執行役員経営企画室長を経て、2025年上席執行役員経営企画室長に就任。同年より現職。
廣井亨 取締役(常勤監査等委員) 1984年同社入社。執行役員として米国子会社へ出向。開発部門研究開発部長等を経て2019年常勤監査役に就任。2021年より現職。
窪和義 取締役(常勤監査等委員) 1983年同社入社。管理部門人事部長、執行役員管理部門総務部長などを歴任。2021年執行役員管理部門人事部長を経て2023年より現職。


社外取締役は、古東誠氏(元三井物産理事秘書室長)、吉川由紀子氏(サントリーマーケティング本部海外マーケティング担当)、山上圭子氏(元横浜地方検察庁公判部長)、名執雅子氏(元法務省矯正局長)、歌代正氏(元大林組常勤監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」、「アメリカ」、「アジア」、「欧州」の報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 日本


エンジン発電機、エンジン溶接機、エンジンコンプレッサ等の製造および販売を行うほか、防災用および非常用発電機の製造と販売を手がけています。また、補修用部品の販売や保守点検などのアフターサービス、さらにはリース・レンタル事業も展開しています。

製品の販売や保守点検を通じた収益が中心です。運営は同社が行うほか、子会社のニシハツが非常用発電機などの製造を、デンヨー興産がアフターサービスを、新日本建販がリースやレンタルを担当しています。

(2) アメリカ


アメリカ国内において、主力製品であるエンジン発電機の製造および販売を行っています。また、製造拠点に対する部品の供給業務も担い、北米の建設関連市場などを中心に安定した供給体制を構築しています。

現地市場での発電機の販売収益を主な収益源としています。製品の製造および販売は子会社のデンヨー マニュファクチュアリング コーポレーションが担当し、部品の供給はデンヨー アメリカ コーポレーションが担っています。

(3) アジア


ベトナムやインドネシアにおいて、エンジン発電機の製造や製造用部品の加工を行っています。また、アジア地域全体に向けて、エンジン発電機やエンジン溶接機の販売、ならびにリースやレンタル事業を展開しています。

製品の販売やリース等から収益を得ています。製造はデンヨー ベトナム CO.,LTD.やP.T.デイン プリマ ジェネレーターが担当し、販売やリースはデンヨー ユナイテッド マシナリー PTE.LTD.などが運営しています。

(4) 欧州


ヨーロッパ市場において、同社グループの主力製品であるエンジン発電機やエンジン溶接機の販売事業を展開しています。現地ニーズに応じた製品展開を通じて、同地域の建設関連市場などを中心に供給を行っています。

ヨーロッパ市場における製品の販売を通じた収益を事業基盤としています。この地域の販売事業の運営は、オランダに拠点を置く子会社のデンヨー ヨーロッパB.V.が中心となって担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は概ね増加傾向にあり、特に直近では722億円に達しています。経常利益も右肩上がりで成長し、直近では85億円となり、利益率も11.8%まで継続的に改善しています。一方で、当期利益は増減を伴いながら推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 552億円 643億円 731億円 708億円 722億円
経常利益 40億円 52億円 74億円 80億円 85億円
利益率(%) 7.3% 8.1% 10.1% 11.3% 11.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 28億円 36億円 51億円 56億円 56億円

(2) 損益計算書


売上高は708億円から722億円へと増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。売上総利益率は微減したものの、営業利益は74億円から78億円へと増加し、営業利益率も10.8%へと改善しており、安定した収益力を維持しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 708億円 722億円
売上総利益 178億円 179億円
売上総利益率(%) 25.1% 24.8%
営業利益 74億円 78億円
営業利益率(%) 10.5% 10.8%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給与手当が37億円(構成比36.0%)、運賃及び荷造費が13億円(同12.5%)、減価償却費が6億円(同6.2%)を占めています。売上原価は543億円で、売上高に対する構成比は75.2%となっています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは微増となり、全体の約7割を占める主力市場として安定しています。アメリカセグメントは10億円の増収を達成し成長を牽引しました。一方、アジアセグメントおよび欧州セグメントは減収となり、地域によって成長ペースに差が見られます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本 497億円 507億円
アメリカ 162億円 172億円
アジア 45億円 41億円
欧州 4億円 3億円
連結(合計) 708億円 722億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得たキャッシュを借入金の返済などの財務活動に充てつつ、設備投資などの投資活動も手元資金で賄っている健全型です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 73億円 45億円
投資CF -55億円 -24億円
財務CF -18億円 -43億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、伝統的経営理念である「三者の得」を踏まえ、「安全・安心なパワーソースの提供を通じて豊かな社会造りに貢献する」ことを経営理念として掲げています。「三者の得」とは、同社の製品によって「使う人、売る人、造る人」の各々が利益を享受することを意味し、常に技術革新にチャレンジし世界中で信頼される企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、「三者の得」という伝統的経営理念を基盤とし、環境や社会への配慮のもとでステークホルダーとの対話を尊重する文化を育んでいます。多様な人材が活躍できる「ダイバーシティ&インクルージョン」の実現を重視し、公平かつ公正な処遇や、従業員が働きがいを感じながら創造的に業務を遂行できる風土の醸成に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2035年度の長期ビジョンとして「サステナビリティをめぐる諸課題に取り組みつつ、パワーソースの提供を通じて社会に貢献し、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に努める」ことを掲げています。中長期的な客観的指標として以下の数値を設定しています。

* 自己資本当期純利益率(ROE):中期的には7%以上、長期的には8%以上
* 売上高経常利益率:中期的には10%以上、長期的には12%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社グループは、国内における可搬形発電機や溶接機のトップシェア維持を通じて安定収益を確保し、その収益を成長市場である海外への展開や、脱炭素社会を見据えた次世代製品に投資する戦略を描いています。北米市場での拡販に加え、アジアや中近東での販売・サービス網を強化し、長期的には水素関連製品など新機軸製品の研究開発を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「サステナビリティ経営」を標榜し、人的資本の拡充を最優先事項としています。多様な従業員が働きがいを感じられるよう「フィードバックを重視した対話式人事評定」や「積極的なキャリア採用」を実施しています。また、自己成長を中長期的に支援するため、本社教育・部門別教育・自己啓発からなる「デンヨー人財育成プログラム」を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.4歳 12.6年 6,798,740円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.6%
男性育児休業取得率 66.7%
男女賃金差異(全社員) 73.7%
男女賃金差異(正社員) 76.4%
男女賃金差異(有期社員) 61.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建設関連市場の需要動向への依存リスク


同社グループの主要製品は建設機械に分類され、商社や建機レンタル会社等を通じて主に建設関連市場向けに販売されています。そのため、中長期的に国内外の経済状況が悪化し、民間・公共投資が抑制された場合、可搬形発電機等の需要が減少し、業績にマイナスの影響を与える可能性があります。

(2) 新興国市場等における価格競争の激化リスク


市場ニーズに適合した高品質な製品の投入によって価格競争力の維持向上に努めていますが、今後の市場動向によっては競合他社との価格競争が激化する可能性があります。特に、経済発展が見込まれる途上国においては、低スペック製品分野での価格競争が進み、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 為替相場の変動リスク


同社グループは海外で事業を展開し、世界各国に製品を輸出しているため、部品調達から製品販売に至るまで為替相場の変動による影響を受けます。また、海外子会社の財務諸表を日本円に換算しているため、換算レートの変動が財政状態に影響を与える可能性があります。

(4) サプライチェーンの停滞および部品調達難のリスク


製品は多数の部品で構成されており、予測できない自然災害や感染症、戦争等の外部環境の変化によってサプライチェーンが停滞するリスクがあります。部品の供給制限や製造中止等により部品調達難が生じた場合、生産活動に制約が生じ、販売機会の喪失を通じて業績にマイナスの影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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