日東工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日東工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場、名古屋証券取引所プレミア市場に上場。配電盤やキャビネット等の製造販売を行う電気・情報インフラ関連事業を主力とします。当連結会計年度は、設備投資需要の取り込みや価格改定効果、M&A効果により、売上高は前期比14.9%増、営業利益は12.2%増の増収増益を達成しました。


※本記事は、日東工業株式会社 の有価証券報告書(第77期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日東工業ってどんな会社?


配電盤やキャビネット等の電気・情報インフラ関連機器の製造・販売を行う国内大手メーカーです。

(1) 会社概要


1948年に設立され、配線器具の製造を開始しました。1990年に東京証券取引所市場第二部に上場し、1996年には第一部へ指定替えを行いました。近年では海外展開を加速しており、タイやベトナムなどの現地法人を子会社化しています。2024年にはテンパール工業やEMソリューションズを子会社化し、事業領域を拡大しています。

連結従業員数は5,338名、単体では2,216名体制です。筆頭株主は創業家関連と推察される資産管理会社の名東興産で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は取引先持株会となっており、安定的な株主構成といえます。

氏名 持株比率
名東興産 18.19%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.63%
日東工業取引先持株会 6.39%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表者は取締役会長Chairman・CEOの加藤時夫氏と取締役社長 COOの黒野透氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
加 藤 時 夫 取締役会長Chairman・CEO(代表取締役) 1982年入社。経理部長、生産本部副本部長、営業本部副本部長、常務取締役管理本部副本部長などを経て、2005年取締役社長に就任。2020年4月より現職。
黒 野 透 取締役社長 COO(代表取締役) 1981年入社。第一開発部長、MA開発本部長、常務取締役海外本部担当などを歴任。2019年取締役副社長COOを経て、2020年4月より現職。
里 康 一 郎 常務取締役 1992年入社。中部営業部長、大洋電機製作所代表取締役社長、日東工業執行役員営業本部長などを経て、2024年4月より現職。
手 嶋 晶 隆 常務取締役 1988年入社。経理部長、サンテレホン専務取締役、日東工業執行役員経営管理本部長などを経て、2024年4月より現職。
箕 浦 浩 取締役 1984年入社。IT機材開発部長、執行役員開発本部長などを経て、2021年6月より現職。コア事業部を担当。
竹 中 浩 一 取締役 1985年日本興業銀行入行。みずほ銀行国際為替部長を経て、2017年日東工業入社。執行役員海外本部長などを経て、2022年6月より現職。
小 林 祐 輔 取締役 1993年入社。タイ現地法人社長、購買部長、執行役員経営企画統括部長などを経て、2024年6月より現職。エネルギーマネジメント事業部を担当。
末 廣 和 史 取締役(監査等委員) 1986年入社。商品企画部長、大洋電機製作所代表取締役社長、日東工業執行役員経営管理本部担当部長などを経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、中川深雪(元東京高等検察庁検事)、浅野幹雄(元豊田通商副社長)、久保雅子(元オムロン執行役員)、小山秀市(元トヨタ自動車常務役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業」、「電気・情報インフラ関連 流通事業」および「電子部品関連 製造事業」を展開しています。

(1) 電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業


配電盤、キャビネット、遮断器、開閉器、パーツ等の製造・販売および情報通信ネットワークや電気設備の工事等を行っています。主要顧客は電設資材商社や工事業者などで、インフラ構築に必要な製品とサービスを提供しています。

製品販売による代金および工事・サービスの対価を収益源としています。運営は主に日東工業が行うほか、新愛知電機製作所、大洋電機製作所、テンパール工業、日東工業(中国)有限公司などの国内外の子会社が製造・販売を行い、ECADソリューションズがソフトウェア開発、南海電設やEMソリューションズが工事等を担当しています。

(2) 電気・情報インフラ関連 流通事業


情報通信機器および関連部材の仕入・販売を行っています。通信インフラ事業者や工事業者などを顧客とし、多様なネットワーク機器や資材を供給しています。

商品の販売代金を主な収益源としています。運営は主に連結子会社のサンテレホンが行っており、その子会社であるSAO NAM AN TRADING SERVICE CORPORATIONなども仕入・販売を行っています。

(3) 電子部品関連 製造事業


電磁波環境コンポーネントや精密エンジニアリングコンポーネント等の製造・販売を行っています。電子機器メーカーや自動車関連メーカーなどを顧客とし、ノイズ対策部品や熱対策部品などを提供しています。

製品の販売代金を収益源としています。運営は主に連結子会社の北川工業およびその子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実に増加傾向にあり、特に直近の第77期では過去最高を更新しています。経常利益も売上高の伸長に伴い増加基調にあり、利益率は概ね7%前後で推移しています。当期純利益についても、特別利益の計上などもあり、直近で大きく伸長しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,379億円 1,327億円 1,467億円 1,607億円 1,847億円
経常利益 127億円 94億円 91億円 126億円 135億円
利益率(%) 9.2% 7.1% 6.2% 7.8% 7.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 73億円 54億円 100億円 62億円 70億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。原価率の上昇圧力はあるものの、価格改定効果などにより利益額を確保しています。営業利益率は微減となりましたが、事業規模の拡大により利益額は増加しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,607億円 1,847億円
売上総利益 431億円 494億円
売上総利益率(%) 26.8% 26.8%
営業利益 120億円 134億円
営業利益率(%) 7.4% 7.3%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が106億円(構成比29%)、運賃が51億円(同14%)、研究開発費が32億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで利益を確保していますが、主力である製造・工事・サービス事業と流通事業が増収増益となった一方、電子部品事業は減収となりましたが、のれん償却完了等の影響で増益を確保しています。製造・工事・サービス事業ではM&A効果や価格改定が寄与しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業 951億円 1,142億円 92億円 103億円 9.0%
電気・情報インフラ関連 流通事業 510億円 560億円 19億円 21億円 3.7%
電子部品関連 製造事業 146億円 144億円 9億円 10億円 6.7%
その他 - - - - -
調整額 - - 0億円 1億円 -
連結(合計) 1,607億円 1,847億円 120億円 134億円 7.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のCF状況は「積極型」です。営業活動で得た資金と財務活動(借入等)で調達した資金を、設備投資やM&Aなどの投資活動に積極的に振り向けており、事業拡大への意欲が読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 123億円 186億円
投資CF -144億円 -125億円
財務CF 69億円 10億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「お客様にご満足いただける新たな価値を創造し続けます」「人間尊重の精神に基づいた企業活動を進めます」「高い倫理観、道徳観に根ざしたコンプライアンス経営を実践します」「美しい地球を次世代へつなぐことに貢献します」「株主価値を高める経営を常に行います」という5つの経営理念を掲げています。

(2) 企業文化


同社は「働きがい改革」を掲げ、従業員一人ひとりの個性を尊重し、能力を生かし育てることを重視しています。公正公平な人事評価と適材適所の人材配置により、従業員が職務を通じて自己実現を果たせる会社であることを誓うとともに、誠実な行動と日々の努力の積み重ねによる安全・安心な製品・サービスの提供を企業文化としています。

(3) 経営計画・目標


同社は長期経営構想のもと「2026中期経営計画」を推進しており、最終年度である2027年3月期の目標として以下を掲げています。

* 連結売上高:2,000億円
* 連結営業利益:150億円
* ROE:9.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「2026中期経営計画」では、コア事業の基盤強化と戦略事業の推進を軸としています。製造・工事・サービス事業では、生産自動化やスマートファクトリーによる収益性強化、グループ会社間の連携強化を図ります。戦略事業では、グローバル化の推進や、環境関連製品事業の基盤構築、社会課題を見据えた新たなビジネスの創出を目指します。

* 2026年3月期連結売上高見通し:1,920億円
* 2026年3月期連結営業利益見通し:136億円

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


次代を見据えた人的資本の極大化を図るため、自律的なキャリア形成の支援やグループ会社間の人財交流を進め、経営人財・技術人財・グローバル人財・DX人財などの育成に取り組んでいます。また、人財の多様化やエンゲージメント向上の取り組みを通じて、誇りと働きがいを感じながら働き続けられる組織風土作りを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.1歳 15.1年 6,449,076円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.2%
男性育児休業取得率 57.6%
男女賃金差異(全労働者) 73.8%
男女賃金差異(正規雇用) 75.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 89.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員(16%)、外国籍社員(3%)、中途採用社員(30%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業環境について


製品需要は国内の建築・機械受注動向の影響を大きく受けます。また、技術革新の速い情報通信・電子部品分野における在庫陳腐化や、国際情勢に起因する事業環境悪化が財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 品質について


多品種かつ個別仕様の製品を提供しているため、不具合リスクを完全に排除することは困難です。製品安全法や製造物責任法に関連する問題が発生した場合、社会的評価や企業イメージの低下により、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 情報システム、情報セキュリティについて


事業活動において情報システムに依存しており、機密情報や個人情報を扱っています。サイバー攻撃等によるシステム停止や情報流出が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 労働環境について


多くの役職員によって事業が支えられています。人員不足や労働環境の悪化による労災事故、労務コンプライアンス問題等が発生した場合、モラル低下等を招き、業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。