日東工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日東工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日東工業は、東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場する企業です。主に配電盤関連機器の製造や販売、情報通信機器の流通、電子部品の製造を主力事業として展開しています。直近の業績は、堅調な設備投資需要やIT投資意欲の高まりを背景に増収増益となっており、着実な成長を続けています。


※本記事は、日東工業株式会社の有価証券報告書(第78期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日東工業ってどんな会社?


配電盤関連機器や情報通信機器、電子部品の製造・販売・流通を手掛けるインフラ関連企業です。

(1) 会社概要


同社は1948年に愛知県瀬戸市で設立され、コンセント等の製造販売を開始しました。1963年には標準分電盤の製造販売を始め事業を拡大し、1990年に上場を果たしました。近年はシンガポールやタイの企業を子会社化して海外展開を推進するほか、2024年には瀬戸工場を新設し、事業基盤の強化を図っています。

同社グループは連結従業員数5,358名、単体従業員数2,269名体制で事業を運営しています。筆頭株主は名東興産で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は日東工業取引先持株会となっています。

氏名 持株比率
名東興産 18.06%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.10%
日東工業取引先持株会 6.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役会長は加藤時夫氏、代表取締役社長は黒野透氏が務めています。

氏名 役職 主な経歴
加藤時夫 取締役会長Chairman・CEO(代表取締役) 1982年同社入社。1987年取締役。2005年取締役社長、2008年取締役会長CEO。2020年4月より現職。
黒野透 取締役社長 COO(代表取締役) 1981年同社入社。2009年執行役員。2011年取締役、2019年取締役副社長COO。2020年4月より現職。
里康一郎 常務取締役 1992年同社入社。2016年大洋電機製作所代表取締役社長。2019年同社執行役員。2020年取締役、2024年4月より現職。
手嶋晶隆 常務取締役 1988年同社入社。2015年サンテレホン常務取締役。2019年同社執行役員。2020年取締役、2024年4月より現職。
竹中浩一 取締役 1985年日本興業銀行入行。2014年みずほ銀行国際為替部長。2017年同社執行役員。2022年6月より現職。
小林祐輔 取締役 1993年同社入社。2013年ELETTO社長。2020年同社執行役員。2024年6月より現職。
河路勝彦 取締役 1989年同社入社。2016年東北日東工業代表取締役社長。2022年同社執行役員。2025年6月より現職。
末廣和史 取締役(監査等委員) 1986年同社入社。2019年大洋電機製作所代表取締役社長。2021年同社執行役員。2021年6月より現職。


社外取締役は、中川深雪(元東京高等検察庁検事)、浅野幹雄(元豊田通商代表取締役副社長)、久保雅子(元オムロンエキスパートリンク代表取締役社長)、小山秀市(元トヨタ紡織代表取締役副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業」「電気・情報インフラ関連 流通事業」「電子部品関連 製造事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

電気・情報インフラ関連 製造・工事・サービス事業


配電盤、キャビネット、情報通信関連事業を中核とし、幅広い顧客向けに製造から工事・サービスまで一貫して提供しています。高圧受電設備やシステムラックなどの製品を開発・販売し、社会の電気・情報インフラを支えています。

製品の販売や工事の請負による収益を主な収入源としています。運営は同社をはじめ、新愛知電機製作所、テンパール工業、大洋電機製作所などの連結子会社が国内外で事業を展開しています。

電気・情報インフラ関連 流通事業


情報通信機器の仕入および販売を主な事業としています。データセンター建設の加速など、企業におけるIT投資意欲の高まりに伴う情報通信インフラ市場の成長を捉え、幅広い商材とソリューションを顧客に提案しています。

仕入れた製品を販売することによる商品販売代金を主な収益源としています。本事業の運営は、主に子会社であるサンテレホンおよびその子会社が担っています。

電子部品関連 製造事業


電磁波環境コンポーネントや精密エンジニアリングコンポーネントなどの電子部品の製造・販売を手掛けています。自動車の電動化や自動運転、各種機器の省エネ化に伴う電磁波障害や熱問題の解決に貢献する製品を提供しています。

電子部品の販売による代金を主な収益源としています。運営は主に、子会社である北川工業およびその子会社が国内外の市場に向けて事業を展開しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が持続的に拡大しており、順調な成長傾向を示しています。経常利益も一時的な踊り場はあったものの、全体として増加傾向にあり、利益率も8%台に向上しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,327億円 1,467億円 1,607億円 1,847億円 1,958億円
経常利益 94億円 91億円 126億円 135億円 163億円
利益率(%) 7.1% 6.2% 7.8% 7.3% 8.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 54億円 100億円 62億円 70億円 115億円

(2) 損益計算書


売上高と売上総利益がいずれも増加しており、利益率の改善もみられます。営業利益についても着実に拡大しており、本業における収益力の向上が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,847億円 1,958億円
売上総利益 494億円 536億円
売上総利益率(%) 26.8% 27.4%
営業利益 134億円 154億円
営業利益率(%) 7.3% 7.9%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料が113億円(構成比30%)、運賃が51億円(同13%)、研究開発費が37億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


全てのセグメントで増収を達成しています。特に流通事業や電子部品関連製造事業は市場の需要を確実に取り込んでおり、グループ全体の収益拡大に寄与しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
電気・情報インフラ関連製造・工事・サービス事業 1,142億円 1,199億円
電気・情報インフラ関連流通事業 560億円 600億円
電子部品関連製造事業 144億円 159億円
連結(合計) 1,847億円 1,958億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、本業で稼いだ資金を借入金の返済や積極的な設備投資に充てる健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 186億円 183億円
投資CF -125億円 -72億円
財務CF 10億円 -104億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.8%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「お客様にご満足いただける新たな価値を創造し続けます」などの5つの経営理念を定めています。人間尊重の精神に基づいた企業活動を進め、高い倫理観と道徳観に根ざしたコンプライアンス経営を実践し、美しい地球を次世代へつなぐことに貢献しながら株主価値を高める経営を常に行うことを目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、「地球の未来に『信頼と安心』を届ける」というグループミッションのもと、「誠実に問題解決にとりくみ 新たな価値創造に挑戦しつづける」をビジョンに掲げています。社会の課題を解決し続けることで、社会的価値と経済的価値の両立により持続的な企業価値の向上に取り組むことを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社は「2026中期経営計画」を推進し、“本業で稼ぐ力”を示す連結営業利益と資本効率を測るROEを最重要の客観的な指標として設定しています。

* 連結売上高:2,000億円
* 連結営業利益:150億円
* ROE:9.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社はコア事業である配電盤やキャビネットの基盤強化に加え、成長が期待できる市場への積極参入による戦略事業の推進を図っています。また、サプライチェーンマネジメントの進化や海外ビジネスの拡大を進めるとともに、人的資本への投資やDXの推進、新たな技術の獲得に向けた研究開発の強化に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、人的資本の極大化を図ることでグループの持続的発展につなげる方針です。変革を牽引する多様な人材層の構築に向け、新卒・中途を問わず優秀な人材を確保し、海外トレーニー研修や社内公募制度を通じて自律的な挑戦を支援しています。また、エンゲージメント向上や健康経営の推進による環境整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.1歳 15.0年 7,205,082円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.7%
男性育児休業取得率 71.8%
男女賃金差異(全労働者) 74.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 71.2%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用社員の比率(33.0%)、総合職における女性社員の比率(18.0%)、外国籍社員の比率(3.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 国内の事業環境と市況動向


同社の製品需要は国内の民間非居住建築物棟数や機械受注の動向に関連するため、国内の景気動向の影響を大きく受けます。また、情報通信分野や電子部品分野は技術革新が早く、在庫の陳腐化リスクがあります。さらに、国際的な政治・経済情勢に起因する環境悪化が業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) サプライチェーンの寸断と価格高騰


製品の製造や仕入において、鋼材や樹脂材などの原材料、購入機器を使用しています。国際的な政治・経済情勢や市況の動向により、これらの調達価格が高騰したり確保が困難になったりした場合、同社グループの財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) デジタル技術の進化への対応


デジタル革命の流れが迅速な経営判断やビジネスの競争力に影響を及ぼすと認識しています。これらへの対応が遅れ、現在の競争優位の維持が困難となった場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。そのため、DX推進やICTインフラ基盤の強化による競争優位性の維持に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。