日本信号 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本信号 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本信号は東京証券取引所プライム市場に上場し、鉄道信号や道路交通安全システムなどの交通運輸インフラ事業、及びAFC機器や駐車場機器などのICTソリューション事業を展開しています。直近の業績は、国内外での堅調な需要や新型自動改札機の販売等に支えられ、売上・利益ともに増加傾向の増収増益となっています。


※本記事は、日本信号株式会社の有価証券報告書(第143期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月15日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本信号ってどんな会社?


鉄道や道路など社会インフラの発展を支える信号・交通システムと、駅務機器などを展開する企業です。

(1) 会社概要


1928年に信号保安装置の製造販売を目的に設立され、1949年に東京証券取引所へ上場しました。その後、駅務機器などを扱う子会社を設立し、2014年には日信電子サービスを完全子会社化しました。近年は海外展開を加速させ、インドや台湾、バングラデシュに現地法人を設立し、グローバル化を推進しています。

従業員数は連結で3,066名、単体で1,146名です。大株主については、筆頭株主および第2位の株主は資産管理業務を行う信託銀行や生命保険会社です。また、第3位には日本信号取引先持株会が名を連ねており、取引先との強固な協力関係や資本の安定性が伺える構成となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.02%
富国生命保険相互会社 7.68%
日本信号取引先持株会 5.66%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役会長は塚本英彦氏、代表取締役社長は後藤隆一氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
塚本英彦 代表取締役会長取締役会議長 1982年同社入社。2005年AFC営業部長、2014年専務執行役員などを経て、2016年代表取締役社長、2020年最高経営責任者に就任。2026年より現職。
後藤隆一 代表取締役社長(社長執行役員)事業統括グループ経営会議議長リスク管理委員会委員長内部統制監査室担当 1992年同社入社。2020年執行役員AFC事業部長、2024年取締役事業副統括などを経て、2025年専務執行役員事業統括に就任。2026年より現職。
堀江徹 取締役(専務執行役員)経営管理統括 兼 グローバルビジネス推進室長 1988年富士銀行入行。みずほ信託銀行の要職等を経て2021年同社入社。2023年グローバルビジネス推進室長、2025年取締役などを経て、2026年より現職。
徳渕良孝 取締役常勤監査等委員 1982年同社入社。2008年経営企画室長、2019年取締役副社長などを歴任。2021年常勤監査役を経て、2023年より現職。


社外取締役は、井上由里子(一橋大学大学院法学研究科客員教授)、村田誉之(大和ハウス工業代表取締役副社長)、徳永崇(元カジノ管理委員会事務局長)、鈴木雅子(ユナイトアンドグロウ社外監査役)、相澤利彦(みらいワークス社外取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、交通運輸インフラ事業およびICTソリューション事業を展開しています。

交通運輸インフラ事業


同事業では、鉄道信号保安設備機器や道路交通安全システムなどの製品を製造・販売しています。また、自動列車制御装置や保守を省力化するシステム、自動運転車両と連携するインフラ協調の製品も展開しており、国内外の鉄道事業者や警察などの官公庁を主な顧客として事業活動を行っています。

収益は、顧客である国内外の鉄道事業者や官公庁に対する機器の販売、および関連する設計施工・保守サービスの提供対価として得ています。運営は主に日本信号が製品の製造・販売を担い、日信電設などの連結子会社が関連工事や保守を行っています。

ICTソリューション事業


同事業では、駅の自動改札機やホームドア、各種駐車場機器などのAFC(駅務自動化)システムを製造・販売しています。また、多機能鉄道重機やホーム監視システム、警備ロボットなどのロボティクス・センシング領域にも注力しており、交通インフラの利便性と安全性を高める製品を提供しています。

収益は、鉄道事業者や駐車場運営会社などの顧客に対し、AFC機器やロボットの販売、及びシステムの保守・運用サービスの提供によって得ています。運営は主に日本信号が製品の製造・販売を担当し、部品の供給などを日信工業などの連結子会社が行っています。

その他


報告セグメントに含まれないその他事業として、情報通信ネットワークの設計・構築や運用・保守、損害保険代理店業務、技術関係資料の編集などを行っています。

収益は、グループ内外へのサービス提供対価として得ています。運営は、ITソリューション関連を日信ITコネクトが、損害保険代理店業務などを日信興産が、技術関係資料の編集などを日信ヒューテックがそれぞれ担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高が850億円から1,141億円へと着実に拡大しており、経常利益も65億円から130億円へと増加しています。利益率も7.7%から11.4%へと向上しており、全体として増収増益の力強い成長トレンドを示しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 850億円 855億円 985億円 1,069億円 1,141億円
経常利益 65億円 59億円 79億円 108億円 130億円
利益率(%) 7.7% 6.9% 8.0% 10.1% 11.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 49億円 36億円 56億円 70億円 101億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。また、売上総利益率と営業利益率のいずれも前期から改善しており、コストコントロールが適切に行われ、本業の収益性が高まっていることがうかがえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,069億円 1,141億円
売上総利益 257億円 290億円
売上総利益率(%) 24.0% 25.4%
営業利益 99億円 117億円
営業利益率(%) 9.3% 10.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当金が37億円(構成比21%)、研究開発費が34億円(同20%)を占めています。

(3) セグメント収益


交通運輸インフラ事業は、国内外の鉄道信号システムなどの堅調な需要により増収となりました。ICTソリューション事業も、国内での新型自動改札機やホームドアの販売が寄与し、同じく増収を達成しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
交通運輸インフラ事業 566億円 592億円
ICTソリューション事業 503億円 549億円
連結(合計) 1,069億円 1,141億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFと財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」に該当します。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 58億円 79億円
投資CF -45億円 -27億円
財務CF -16億円 -65億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.4%で、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「安全と信頼の優れたテクノロジーを通じて、より安心、快適な社会の実現に貢献します」という使命のもと、世界中の人々がより安心、快適に暮らせる社会の実現を願っています。社会インフラの発展と維持に貢献し、世界中から必要とされる企業グループとなることを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、グループ理念である「私たちの大切にすべきこと」の中で、「自らの成長に向けてチャレンジすること(ヒトづくり)」を掲げています。安全と信頼の交通インフラを支える使命感を中心に、自ら考動する自律心や困難を乗り越える挑戦心、多様な人々と価値を生み出す共創力を持つ人材を育む文化を重視しています。

(3) 経営計画・目標


長期経営計画「Vision-2028 EVOLUTION 100」の第3期中期経営計画「Realize-EV100」において、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応としてROIC経営を進めています。中期経営計画の最終年度において、以下の目標の達成を目指しています。

* 連結売上高:1,500億円
* ROE:10.0%以上
* ROIC:9.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は今後の成長に向け、自動運転やキャッシュレスサービス、ロボット等の省力化に資するDX商材の社会実装を加速させる方針です。また、国際事業では継続的な保守や新規受注による成長を目指し、ものづくりにおいては脱炭素やソフトウェアファーストに対応した開発の強化でQCDの最適化を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「自らの成長に向けてチャレンジすること」を基盤に、全ての社員が自分らしく生き生きと働ける環境の実現を目指しています。人材戦略の重点課題として、エンゲージメントの向上、DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)の推進、継続的成長を支える人材育成の3つを掲げ、施策を展開しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.2歳 18.9年 8,559,521円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.5%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.9%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 73.1%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の育児休業取得率(100%)、従業員一人当たり研修投資額(100,349円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済、市場に基づくリスク


同社の基幹事業は鉄道事業者や警察などの公共投資に強く依存しています。そのため、感染症や災害などで人や貨物の輸送量が減少し、国内鉄道事業者の設備投資や公共事業投資が減少した場合、市場規模が縮小し、同社グループの経営成績に重大な悪影響を与える可能性があります。

(2) 製品の特性に基づくリスク


同社グループが製造・販売する製品は極めて高い安全性が求められる重要な社会インフラを支えています。万が一、故障や誤動作などの障害が発生した場合、深刻な交通のマヒや人命・財産に関わる事態を招く恐れがあり、損害賠償請求などにより経営成績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 競合、取引先に関するリスク


官公庁や鉄道事業者からの発注は一般競争入札が基本であり、国内外での参入業者間の価格競争が激化しています。また、半導体をはじめとする原材料や部品の大幅な不足、価格の高騰が生じた場合、同社グループの業績および財務状態に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 海外展開に関するリスク


同社はアジアを中心に積極的な海外展開を図っていますが、各国の経済や市場動向だけでなく、政治的リスクや気候変動により事業開発に遅れが生じるリスクがあります。さらにテロや紛争、為替相場の変動などが生じた場合、事業からの撤退や経営成績への悪影響につながる恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。