日本信号 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本信号 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する、鉄道信号や交通情報システム等の交通運輸インフラおよび駅務機器等のICTソリューションを展開する企業です。当連結会計年度の業績は、売上高が前期比8.4%増、経常利益が同36.7%増となるなど、増収増益で着地しました。


※本記事は、日本信号株式会社 の有価証券報告書(第142期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本信号ってどんな会社?


鉄道信号や交通管制システムなどの社会インフラ事業と、駅務自動化機器等のICTソリューション事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


1928年、三村工場、鉄道信号株式会社、塩田工場の3社統合により設立されました。1949年に東京証券取引所に上場し、鉄道・道路交通の安全を支える事業を展開してきました。2001年には埼玉県久喜市に主要拠点となる久喜事業所を稼働させ、2014年には日信電子サービスを完全子会社化するなど体制を強化しています。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。

同社グループは連結従業員数2,921名、単体1,161名の体制で事業を行っています。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は富国生命保険、第3位は従業員による持株会である日本信号グループ社員持株会となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 11.30%
富国生命保険相互会社 7.68%
日本信号グループ社員持株会 6.58%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名、計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表者は代表取締役社長(社長執行役員)の塚本英彦氏です。社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
塚本 英彦 代表取締役社長(社長執行役員)取締役会議長グループ経営会議議長リスク管理委員会委員長内部統制監査室担当 1982年同社入社。AFC営業部長、経営管理本部長等を経て、2016年代表取締役社長に就任。2021年より社長執行役員を兼務。
藤原  健 取締役副社長 1983年同社入社。鉄道信号事業部電鉄営業部長、営業本部長、国内・国際事業担当等を歴任。2024年より現職。日信ITコネクト代表取締役社長も兼務。
坂井 正善 取締役(専務執行役員)全社技術・研究開発統括、次世代鉄道システム担当、鉄道・道路自動運転システム担当、グループIT戦略部担当、環境・品質マネジメント推進部担当 1985年同社入社。技術開発本部研究開発センター長、研究開発統括等を歴任。2024年専務執行役員就任。技術・研究開発分野を統括する。
平野 和浩 取締役 1983年同社入社。鉄道信号事業部長、交通システム事業部長、大阪支社長等を歴任。2022年より取締役。日信電子サービス専務取締役も兼務。
後藤 隆一 取締役(専務執行役員)事業統括、ものづくり統括、支社・支店担当 1992年同社入社。鉄道信号事業部JR営業部長、AFC事業部長等を歴任。2024年取締役就任。2025年より専務執行役員として事業・ものづくりを統括。
徳渕 良孝 取締役常勤監査等委員 1982年同社入社。久喜事業所生産管理部長、経営管理本部長、取締役副社長等を歴任。2023年より現職。


社外取締役は、井上由里子(一橋大学大学院教授)、村田誉之(大和ハウス工業代表取締役副社長)、徳永崇(元カジノ管理委員会事務局長)、鈴木雅子(元パソナグループ取締役専務執行役員)、相澤利彦(TSUNAGU・パートナーズ代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「交通運輸インフラ事業」および「ICTソリューション事業」を展開しています。

(1) 交通運輸インフラ事業


鉄道信号保安システムや道路交通安全システム等の製造、販売、保守を行っています。主な顧客は鉄道事業者や警察庁、地方自治体などの官公庁です。鉄道の安全運行を支える列車制御システムや、道路交通の円滑化を図る交通管制システムなどを提供しています。

収益は、製品の販売代金や工事代金、保守サービス料等から得ています。運営は主に日本信号が行うほか、関連工事の設計施工等は連結子会社の日信電設や非連結子会社の日信テクノエンジニアリングが担当しています。製品や部品の一部は、連結子会社の日信工業、栃木日信、山形日信電子から仕入れています。

(2) ICTソリューション事業


駅務自動化(AFC)システムやパーキングシステム、ロボティクス&センシング(R&S)製品の製造、販売、保守を行っています。自動改札機や券売機、ホームドア、駐車場管理システムなどを鉄道事業者や駐車場運営者、商業施設などに提供しています。

収益は、機器の販売代金や保守サービス料等から得ています。運営は日本信号が主体となり、製品や部品の一部については、連結子会社の日信工業、山形日信電子、日信特器、非連結子会社の日信岡部二光から仕入れています。また、販売や保守については連結子会社の日信電子サービスなどが担当しています。

(3) その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、ソフトウエア開発や損害保険代理店業務、技術資料編集などを行っています。

収益は、ソフトウエア開発費や保険手数料等が該当します。運営は、ソフトウエア開発を連結子会社の日信ソフトエンジニアリングが、損害保険代理店業務を非連結子会社の日信興産が行っています。また、海外における製品販売や保守については現地の非連結子会社等が担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2022年3月期に一時減少しましたが、その後は増加傾向にあり、当期は1,000億円を超えています。利益面では、2023年3月期に利益率が低下したものの、直近2期は回復・伸長し、当期は利益率10.1%を記録しました。全体として、直近では増収増益のトレンドにあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 928億円 850億円 855億円 985億円 1,069億円
経常利益 65億円 65億円 59億円 79億円 108億円
利益率(%) 7.0% 7.7% 6.9% 8.0% 10.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 49億円 49億円 36億円 56億円 70億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は21.9%から24.0%へ、営業利益率は6.9%から9.3%へとそれぞれ改善しており、収益性が向上していることがわかります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 985億円 1,069億円
売上総利益 216億円 257億円
売上総利益率(%) 21.9% 24.0%
営業利益 68億円 99億円
営業利益率(%) 6.9% 9.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当金が34億円(構成比21%)、研究開発費が33億円(同21%)を占めています。売上原価に関しては、当期は812億円が計上されています。

(3) セグメント収益


当期は両セグメントともに増収となりました。特にICTソリューション事業は売上高が前期比で増加するとともに、利益率が大きく改善し、大幅な増益となっています。交通運輸インフラ事業も増収でしたが、利益は減少しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
交通運輸インフラ事業 539億円 566億円 62億円 45億円 8.0%
ICTソリューション事業 446億円 503億円 40億円 90億円 17.8%
調整額 - - -34億円 -36億円 -
連結(合計) 985億円 1,069億円 68億円 99億円 9.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、運転資金及び設備投資資金を内部資金または借入により調達しています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上等により資金が増加しました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形・無形固定資産の取得による支出等により資金が減少しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等により資金が減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 68億円 58億円
投資CF -30億円 -45億円
財務CF -3億円 -16億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「日本信号グループ理念」を掲げ、「安全と信頼」の優れたテクノロジーを通じて、より安心、快適な社会の実現に貢献することを使命としています。世界中の人々がより安心、快適に暮らせる社会の実現を願い、鉄道や道路交通などの社会インフラの発展と維持に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は「日本信号グループ理念」において、「私たちの使命」に加えて「私たちの行動規範」を策定しています。また、「自らの成長に向けてチャレンジすること(ヒトづくり)」を大切にすべきことの一つとして掲げ、安全と信頼の交通インフラを支える「使命感」を中心に、「自律心」「挑戦心」「共創力」を持つ人材の育成を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


2024年度よりスタートした第3期中期経営計画「Realize-EV100」では、顧客の構造改革や課題解決を推進する新商材の開発・社会実装の加速と設計・ものづくりのバリューチェーン改革など収益性向上を図るとともに、ROIC経営を進めています。

* 連結売上高:1,500億円(最終年度)
* ROE:10.0%以上(最終年度)
* ROIC:9.0%以上(最終年度)

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「Vision-2028 EVOLUTION 100」の実現に向け、新事業・新商材、国際事業、ものづくりの3つの領域で「Next Stage」への移行を推進しています。新事業では自動運転やロボット、ソリューションビジネスの拡大に注力し、国際事業では保守・メンテナンスや延伸案件の受注による成長を図ります。ものづくりでは、脱炭素やソフトウエアファーストに対応した開発強化や内製化を進め、QCD最適化を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「自らの成長に向けてチャレンジすること(ヒトづくり)」を基盤とし、交通インフラを支える使命感を持ち、自律的に考動し挑戦する人材の育成を目指しています。具体的には、「エンゲージメント向上」、「DE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)推進」、「不易流行の人材マネジメント」を重点課題とし、若手から経営人材までの階層別研修や技術継承、リスキリング支援などを行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.7歳 19.3年 7,969,511円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.2%
男性育児休業取得率 90.3%
男女賃金差異(全労働者) 71.9%
男女賃金差異(正規雇用) 76.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 68.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、技術職女性人数(48名)、外国籍社員採用人数(1名)、従業員一人当たり研修投資額(86,132円)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済、市場に基づくリスク


主要顧客である国内鉄道各事業者の設備投資や警察等の公共投資の影響を強く受けます。感染症や災害等による輸送量減少で鉄道事業者の収益が悪化した場合、設備投資が抑制され、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、売上が期末に偏重する傾向があります。

(2) 製品の特性に基づくリスク


鉄道信号や交通信号システムなど、人命に関わる重要な社会インフラ製品を扱っているため、極めて高い安全性が求められます。故障や誤動作が発生した場合、公共交通のマヒや人命・財産への被害が生じ、損害賠償請求等により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 競合、取引先に関するリスク


国内鉄道事業者や官公庁からの発注は一般競争入札に基づいており、競合による価格競争の激化が業績に影響する可能性があります。海外事業においても欧州や中国企業との競争があります。また、原材料や部品の不足・価格高騰もリスク要因です。

(4) 海外展開に関するリスク


アジアを中心に海外展開を進めていますが、各国の経済・市場動向に加え、政治的リスク、テロ・紛争、感染症、為替変動などが事業開発の遅れや業績への悪影響をもたらす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。