フォーバルテレコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

フォーバルテレコム 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。中小法人向けに割安な通信サービスを提供する「fitコール」や、電力小売「Elenova」等を展開しています。直近の業績は、電力事業の契約件数が堅調に推移したことなどにより、売上高257億円(前期比11.1%増)、経常利益12億円(前期比14.4%増)の増収増益となりました。


※本記事は、株式会社フォーバルテレコム の有価証券報告書(第30期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. フォーバルテレコムってどんな会社?


中小法人や個人を対象とした通信サービスの提供、電力・ガスの小売、印刷事業などを展開する企業です。親会社フォーバルと共にグループ全体で顧客の経営支援を行っています。

(1) 会社概要


1995年4月に設立され、同年6月に「fitコール」を商標登録しサービスを開始しました。2000年11月に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2002年には「BBフォン」を開始するなど通信サービスを拡充しました。2015年に市場第二部へ市場変更を行い、2018年5月には電力小売事業「Elenova」を開始しました。現在は東証スタンダード市場に上場しています。

連結従業員数は302名、単体では97名です。筆頭株主は親会社であり情報通信コンサルタント業を営むフォーバルで、発行済株式の約7割を保有しています。第2位は情報通信関連企業の光通信、第3位は同社取締役の谷井剛氏です。

氏名 持株比率
フォーバル 70.15%
光通信 7.50%
谷井剛 0.95%

(2) 経営陣


同社の役員は男性6名、女性1名の計7名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は行 辰哉氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
行 辰哉 代表取締役社長 1989年フォーバル入社。同社常務執行役員、ビー・ビー・コミュニケーションズ代表取締役社長などを歴任。2022年4月より現職。
山本 忠幸 取締役経営管理本部管掌 2000年同社入社。経営管理本部長、管理統括本部長などを歴任。2025年4月より現職。
小林 寛丈 取締役 1995年フォーバル入社。同社執行役員事業本部副本部長などを経て、2019年同社取締役就任。2023年4月より開発統括管掌。
谷井 剛 取締役 1996年同社入社。同社代表取締役社長、タクトシステム代表取締役社長などを歴任。2022年4月より現職。
指田 直木 取締役(監査等委員) 1998年同社入社。経営企画部長などを経て、2017年6月より現職。


社外取締役は、和田芳幸(和田会計事務所代表)、髙山梢(真和総合法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「IP & Mobileソリューション・ビジネス」「ユーティリティ・ビジネス」「ドキュメントソリューション・ビジネス」「コンサルティング・ビジネス」の4つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) IP & Mobileソリューション・ビジネス


法人向けVoIPサービス(IP電話)、個人向けインターネット接続サービス、情報通信機器の販売などを行っています。中小法人ユーザーを主要ターゲットとし、通信インフラを活用したサービスを提供しています。

収益は、顧客からの通信サービス利用料や機器販売代金などから構成されます。運営は主に同社および子会社のFISソリューションズが行っていましたが、FISソリューションズ株式は2025年4月に親会社へ譲渡されています。

(2) ユーティリティ・ビジネス


法人顧客等を対象に、電力サービス「Elenovaでんき」および都市ガスサービス「Elenovaガス」を提供しています。環境に配慮した電力プランなどを展開し、顧客のGX(グリーントランスフォーメーション)支援も行っています。

収益は、顧客からの電力およびガスの利用料金となります。運営は同社が行っています。

(3) ドキュメントソリューション・ビジネス


普通印刷、オンデマンド印刷、印刷物のプランニング・デザインなどを提供しています。上流工程から最終工程まで一貫したサービスを提供できる体制を整えています。

収益は、顧客からの印刷物受注・制作代金などです。運営は主に子会社のトライ・エックスおよびタクトシステムが行っていましたが、トライ・エックス株式は2025年5月に親会社へ譲渡されています。

(4) コンサルティング・ビジネス


経営支援コンサルティング、保険サービス、セキュリティサービスなどを提供しています。法人顧客の経営課題解決に向けたソリューションを提案しています。

収益は、コンサルティング料、保険代理店手数料、セキュリティサービスの利用料などです。運営は同社および子会社の保険ステーションが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は217億円から257億円の範囲で推移しており、直近は過去5期間で最高の売上規模となっています。経常利益は変動が見られるものの、直近2期は10億円を超える水準で安定し、当期は12億円に達しました。当期利益も前期と同水準の約7億円を確保しており、全体として増収増益基調にあります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 217億円 218億円 247億円 231億円 257億円
経常利益 6.5億円 10.0億円 6.4億円 10.1億円 11.5億円
利益率(%) 3.0% 4.6% 2.6% 4.4% 4.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 3.2億円 5.7億円 3.5億円 7.8億円 7.8億円

(2) 損益計算書


売上高が増加したことに伴い、売上総利益も約60億円へと拡大しました。営業利益率も前期と同様の4%台を維持しており、収益性は安定しています。売上の伸びに対して利益もしっかりと確保できている状況です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 231億円 257億円
売上総利益 58億円 60億円
売上総利益率(%) 25.0% 23.5%
営業利益 10億円 11億円
営業利益率(%) 4.4% 4.4%


販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与が14億円(構成比30%)、その他経費が11億円(同23%)を占めています。売上原価に関しては、その大半を通信サービスや電力等の仕入費用が占める構造となっています。

(3) セグメント収益


ユーティリティ・ビジネスが前期比で大幅な増収となり、IP & Mobileソリューション・ビジネスと並ぶ主力事業に成長しています。一方、IP & Mobileソリューション・ビジネスは情報通信機器の販売計画の遅れ等により減収となりました。コンサルティング・ビジネスは微増収、ドキュメントソリューション・ビジネスは減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
IP & Mobileソリューション・ビジネス 109億円 105億円
ユーティリティ・ビジネス 79億円 108億円
ドキュメントソリューション・ビジネス 12億円 12億円
コンサルティング・ビジネス 31億円 32億円
その他 -億円 -億円
連結(合計) 231億円 257億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主力の電気通信サービス事業における営業活動から生み出されています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や子会社株式の譲渡等により変動します。財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済等により影響を受けます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 16.2億円 19.3億円
投資CF -9.4億円 -4.2億円
財務CF -7.1億円 -16.4億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


親会社の社名の由来である「For Social Value」(社会価値創出企業)を目指し、情報通信サービスの分野において、「安く」「早く」「簡単便利に」というユーザー視点に立ったより良いサービスを創造・提供することで、新たな社会価値の実現を目指しています。

(2) 企業文化


「フォーバルグループ行動規範」に基づき、法令遵守重視の姿勢を明確にしています。また、DX(デジタル・トランスフォーメーション)およびGX(グリーン・トランスフォーメーション)に本格的に取り組み、自らが得たメソッドをサービスとして顧客に提供することで、社会的価値や社会貢献を高めることを重視しています。

(3) 経営計画・目標


継続的に成長すること、および自己資本の効率的経営を行う価値創造企業を目指しています。具体的な数値目標としては、成長率の改善とROE(自己資本利益率)の維持を掲げています。

* ROE:23.5%(当期実績)

(4) 成長戦略と重点施策


中小法人ユーザーを主要ターゲットとし、通信業界の環境変化に機敏に対応しつつ、DXおよびGXへの取り組みを強化しています。DXではリモートワーク定常化や業務自動化を進め、GXではカーボンニュートラルな電力・ガス等の提供を通じて、中長期的な成長力と収益力の強化を図る方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


従業員を「人財」として経営の重要資本と位置づけ、能力・適性・実績を重視した人物本位の採用・配属・登用を行っています。性別や年齢、国籍等による区別のない環境作りを進めるとともに、教育研修・評価制度・社内コミュニケーションの三分野でプロジェクトを常設し、継続的な改善に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.1歳 6.8年 6,549,202円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.5%
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 71.9%
男女賃金差異(正規) 71.3%
男女賃金差異(非正規) 0.0%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業態と仕入先への依存


同社は通信設備の一部のみを保有し、多くを電気通信事業者等から仕入れてサービスを提供しています。そのため、仕入先事業者の政策変更や取引条件の変動、通信回線キャパシティの確保状況などが、同社のサービス展開や業績に直接的な影響を与える可能性があります。

(2) システム障害とビリング業務のリスク


顧客への課金・請求を一括で行う「ビリングプロバイダー」業務において、システム障害やデータの遅延等が発生した場合、誤請求や回収遅延につながるリスクがあります。また、新サービス導入に伴う予期せぬシステム投資やバグの発生が、業績やキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。

(3) 販売代理店への依存


同社は販売活動の多くを代理店に委託しています。代理店が同社サービスの競争力を低いと判断したり、販売方針を変更したりした場合、顧客獲得活動が停滞する恐れがあります。また、これに伴い直接販売部門を強化する必要が生じた場合、固定費が増加し利益を圧迫する可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。