TDK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TDK 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TDKは東京証券取引所プライム市場に上場し、受動部品、センサ、磁気ヘッド、二次電池などのエナジー応用製品を展開する総合電子部品メーカーです。直近の業績トレンドとしては、ICT市場や産業機器市場での部品需要が堅調に推移し、全セグメントで販売数量が増加したことで、過去最高の売上と利益を記録し増収増益となっています。


※本記事は、TDK株式会社の有価証券報告書(第130期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月17日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. TDKってどんな会社?


同社グループは、コンデンサなどの受動部品から二次電池まで、多様な電子部品をグローバルに展開する電子部品メーカーです。

(1) 会社概要


同社は1935年に東京電気化学工業として設立され、フェライトコアの量産を開始しました。1961年に東京証券取引所第一部へ上場し、1983年に現在のTDKに社名を変更しています。その後、2005年にリチウムイオン電池製造会社を買収してエナジー分野を強化したほか、2016年から2017年にかけて国内外のセンサメーカーを相次いで買収し、事業領域を大きく拡大してきました。

現在の従業員数は連結で106,545名、単体で6,573名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行 (信託口) 27.01%
日本カストディ銀行 (信託口) 11.73%
THE CHASE MANHATTAN BANK,N.A LONDONSECS LENDING OMNIBUS ACCOUNT 2.63%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役社長執行役員CEOは齋藤昇氏が務めています。取締役全体に対する社外取締役の比率は57.1%です。

氏名 役職 主な経歴
齋藤 昇 代表取締役社長執行役員CEO加湿器対策本部長 1989年入社。欧州営業統括部長、戦略本部長などを経て、2017年よりセンサシステムズビジネスカンパニーCEO。2024年より現職。
山西 哲司 代表取締役副社長執行役員CFO 1983年入社。経理部計数管理グループ部長、経理・財務本部長などを歴任。2018年代表取締役、2020年専務執行役員を経て、2024年より現職。
橋山 秀一 取締役執行役員CTO技術・知財本部長 1990年入社。自動車グループ海外営業部長、戦略本部長などを歴任。2021年に執行役員に就任。2025年4月にCTOとなり、同年6月より現職。


社外取締役は、中山こずゑ(元日産自動車ブランドコーディネーションディビジョン副本部長)、岩井睦雄(元日本たばこ産業取締役会長)、山名昌衛(元コニカミノルタ取締役代表執行役社長)、勝本徹(元ソニーグループ執行役副社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「受動部品」「センサ応用製品」「磁気応用製品」「エナジー応用製品」および「その他」事業を展開しています。

受動部品


セラミックコンデンサ、アルミ電解コンデンサ、インダクティブデバイス、高周波部品などを製造・販売し、自動車や産業機器、ICT市場向けに提供しています。
顧客に対する製品の販売によって対価を得る収益モデルです。運営は同社およびTDK Electronics AGなどの子会社が行っています。

センサ応用製品


温度・圧力センサ、磁気センサ、MEMSセンサなどのセンサ関連製品を開発・製造し、自動車やICT市場などに提供しています。
顧客からの製品販売代金を主な収益源としています。運営は同社をはじめ、InvenSense, Inc.などの子会社が行っています。

磁気応用製品


データセンター向けニアライン用HDD用ヘッドやサスペンション、自動車向けマグネットなどを製造・販売しています。
顧客への製品販売による代金回収が主な収益源です。運営は同社のほか、SAE Magnetics (H.K.) Ltd.などの子会社が行っています。

エナジー応用製品


スマートフォン向け小型電池から産業機器向け中型電池までの二次電池や、産業機器用電源などを製造・提供しています。
製品の販売によって顧客から対価を受け取ります。運営は同社およびAmperex Technology Limitedなどの子会社が行っています。

その他


メカトロニクス(製造設備)や、スマートフォン向けカメラモジュール用マイクロアクチュエータなどを製造・販売しています。
製品販売による収益を柱としています。運営は同社やTDK Taiwan Corporationなどの子会社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は右肩上がりの成長を続けており、特に直近2年間で大幅な増収を達成しています。税引前利益や当期利益も売上の成長に伴って力強く伸びており、利益率も10%台に乗せるなど、高収益体質が定着しつつあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 19,021億円 21,808億円 21,039億円 22,048億円 25,048億円
税引前利益 1,725億円 1,672億円 1,792億円 2,378億円 2,768億円
利益率(%) 9.1% 7.7% 8.5% 10.8% 11.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 1,313億円 1,142億円 1,247億円 1,672億円 1,957億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な拡大に伴い、営業利益も堅調に伸びています。増収効果に加えて合理化や構造改革の効果が発現しており、営業利益率は着実に向上しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 22,048億円 25,048億円
売上総利益 765億円 792億円
売上総利益率(%) 3.5% 3.2%
営業利益 2,242億円 2,724億円
営業利益率(%) 10.2% 10.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が373億円(構成比36%)、業務委託費が170億円(同16%)、減価償却費が101億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益


全ての報告セグメントにおいて増収を達成しました。特にエナジー応用製品が全体収益を強力に牽引しているほか、センサ応用製品と磁気応用製品の利益も前期比で大幅に改善しており、全社的な増益に大きく貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
受動部品 5,596億円 5,932億円 341億円 418億円 7.1%
センサ応用製品 1,895億円 2,246億円 50億円 207億円 9.2%
磁気応用製品 2,236億円 2,629億円 34億円 270億円 10.3%
エナジー応用製品 11,765億円 13,703億円 2,344億円 2,467億円 18.0%
その他 556億円 538億円 -44億円 -102億円 -19.0%
調整額 - - -483億円 -536億円 -
連結(合計) 22,048億円 25,048億円 2,242億円 2,724億円 10.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 4,458億円 5,077億円
投資CF -2,448億円 -3,778億円
財務CF -1,433億円 -647億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は35.2%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「創造によって文化、産業に貢献する」という創業の精神を社是に掲げています。独創性をたゆまず追求し、イノベーションの推進により創造した新たな価値の提供を通じて、持続可能な社会の発展に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「TDK United」として、多様な人財が繋がり合い、相互に価値を高める組織のあり方を重視しています。「ベンチャースピリット」「多様性の尊重」「機能対等」という独自の文化を基盤とし、権限委譲とオープンなコミュニケーションの原則のもと、主体的に挑戦できる環境整備を推進しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(2025年3月期〜2027年3月期)において、長期ビジョン達成に向けた各種の数値目標を掲げています。

* 売上高:25,000億円(年率約5%成長)
* ROE:10%以上
* 事業ROA(ROIC):8%以上
* 営業利益率:11%以上
* 株主資本比率(親会社所有者帰属持分比率):50%水準

(4) 成長戦略と重点施策


長期ビジョン「TDK Transformation」に基づき、キャッシュ・フロー経営の強化、事業ポートフォリオマネジメントの強化(ROIC経営の強化)、フェライトツリーの進化(未財務資本の強化)を3本柱として推進します。AIエコシステム市場への積極投資を実行し、事業活動による価値創造サイクルを循環させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人的資本を変革の原動力として位置付け、「実行力」「未来構想力」「変革力」を兼ね備えた人財の育成に注力しています。経営戦略に応じた最適な人財配置と、採用・育成・評価・報酬の一貫したマネジメントにより組織能力の高度化を進め、AIやソフトウェア領域に精通した専門人材の強化も図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 43.0歳 16.9年 9,211,552円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.7%
男性育児休業取得率 66.2%
男女賃金差異(全労働者) 72.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 72.3%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 63.5%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、コミュニケーションスコア(71pt)、サーベイ参加率(92%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済動向変化によるリスク


エレクトロニクス業界は、主要消費地である米国、欧州、中国などの経済動向に大きく左右されます。これらの国や地域における政治問題や経済の浮沈といった経営環境の変化が予想を超えた場合、同社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

(2) 為替変動によるリスク


同社グループはグローバルに事業を展開し、海外売上高比率が93%に達するため、米ドルやユーロなどの為替レート変動が業績に影響を及ぼします。外貨建調達や為替予約などで対策を講じていますが、急激な変動にはリスクがあります。

(3) 国際的な事業活動におけるリスク


同社グループの中国向け売上高は全体の55%を占め、中国拠点による生産比率も約62%に達しています。米中関係等の地政学リスクや、各国の法規制、関税引き上げ等が顕在化した場合、サプライチェーンや業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。