※本記事は、帝国通信工業株式会社の有価証券報告書(第104期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 帝国通信工業ってどんな会社?
電子部品の製造販売を主要事業とし、グローバル市場で事業を展開しています。
■(1) 会社概要
帝国通信工業は1944年に無線通信機部品の専門メーカーとして設立されました。1961年に東京証券取引所市場第2部に上場し、1971年には市場第1部への指定替えを果たしました。早くから海外展開を推進し、台湾、シンガポール、アメリカ、タイ、中国、ベトナムなど世界各地に子会社を設立することで、グローバルな生産・販売体制を構築しています。
現在の従業員数は連結で1678名、単体で285名です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は資産管理業務を行う国内の信託銀行であり、第2位および第3位にも海外の金融機関やファンドが名を連ねています。国内外の機関投資家が高い持株比率を占めているのが特徴です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.93% |
| THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LTD (常任代理人 香港上海銀行東京支店) | 9.85% |
| NIPPON ACTIVE VALUE FUND PLC(常任代理人 香港上海銀行東京支店) | 5.28% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長は羽生満寿夫が務めています。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 羽生満寿夫 | 代表取締役社長 | 1977年同社入社。生産技術部長、上席執行役員等を経て、2019年代表取締役社長に就任。2024年より現職。 |
| 水野伸二 | 取締役専務執行役員開発統括 | 1981年同社入社。開発部長、品質保証部長等を経て、2015年取締役に就任。2023年より現職。 |
| 丸山睦雄 | 取締役常務執行役員業務統括 | 1983年同社入社。ノーブルU.S.A.代表取締役等を経て、2019年取締役に就任。2024年より現職。 |
| 高岡亮 | 取締役常務執行役員営業統括 | 1991年同社入社。営業技術部長、営業企画部長等を経て、2023年取締役に就任。2026年より現職。 |
社外取締役は、三浦希美(ひかり総合法律事務所パートナー弁護士)、高橋啓章(元日本マイクロニクス取締役)、瀧口詠子(元PwC Japan有限責任監査法人シニアマネージャー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電子部品」および「その他」の事業を展開しています。
■電子部品
可変抵抗器や固定抵抗器、前面操作ブロック(ICB)、センサなどの各種電子部品の開発・製造・販売を行っています。これらの製品は、自動車の電装部品や医療・ヘルスケア分野、デジタル家電などの幅広い市場に向け、国内外のメーカーに供給されています。
主に国内外の顧客企業に対して製品を販売することで収益を得ています。国内の製造および販売は帝国通信工業と同社の国内子会社が担当し、海外での製造および販売は、台湾富貴電子工業やノーブルエレクトロニクスなどの各地域に所在する海外子会社が展開しています。
■その他
電子部品以外の領域として、機械設備等の販売や環境対応素材の製造および販売、ビル・家屋の清掃などの事業を展開し、周辺領域における顧客の多様なニーズに対応しています。
機械設備等の販売は帝通エンヂニヤリングが担当し、環境対応素材の製造および販売はエコロパックが運営を行うことで、それぞれの製品や設備の販売を通じた収益を得ています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の売上高は151億円から173億円の間で推移しており、底堅い成長が見られます。利益面では期によって変動があるものの、毎期継続して10億円以上の経常利益を計上しており、安定した利益率を維持しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 151億円 | 165億円 | 152億円 | 168億円 | 173億円 |
| 経常利益 | 20億円 | 22億円 | 16億円 | 21億円 | 17億円 |
| 利益率(%) | 13.4% | 13.3% | 10.2% | 12.7% | 9.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 10億円 | 6億円 | 14億円 | 25億円 | 14億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が前期比で増加している一方で、売上原価の増加等により売上総利益と営業利益は減少しており、増収減益の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 168億円 | 173億円 |
| 売上総利益 | 53億円 | 51億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.7% | 29.3% |
| 営業利益 | 17億円 | 12億円 |
| 営業利益率(%) | 9.9% | 6.7% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が12億円(構成比31.9%)、研究開発費が6億円(同15.6%)を占めています。
■(3) セグメント収益
電子部品事業は自動車電装市場や医療・ヘルスケア向けが好調に推移し増収となりましたが、その他事業は前期の大口販売の反動減等により減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 電子部品 | 162億円 | 167億円 |
| その他 | 6億円 | 5億円 |
| 連結(合計) | 168億円 | 173億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済等を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 18億円 | 19億円 |
| 投資CF | 2億円 | -24億円 |
| 財務CF | -13億円 | -16億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.5%でプライム市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.5%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「電子部品の製造とサービスを通じて世界のお客様に満足して頂ける仕事をいつも提供し続けることにより、豊かな社会の実現に貢献すること」を企業理念として掲げています。また、「さぁ、NOBLEと実現しよう Together, we make good sense.」をスローガンとし、培った経験と技術をベースに人と機器をつなぐ架け橋となることを目指しています。
■(2) 企業文化
「創造力」と「挑戦する精神」を礎にしてさらなる成長を目指し、行動指針として、Change(革新)、Challenge(挑戦)、Communicate(連携)の「3つのC」を掲げています。時代の変化を柔軟に捉え、現状に満足することなく前進し、世界中のステークホルダーと信頼関係を築く組織風土を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
中長期的な方向性を示す第2期「中期経営計画2030」を推進し、積極的な投資と株主還元を両立させながら企業価値の向上を図っています。同計画の最終年度となる2030年度の数値目標は以下の通りです。
・売上高220億円
・営業利益22億円
・営業利益率10%
・ROE6%以上
・自己資本比率70%前後
■(4) 成長戦略と重点施策
既存領域の拡大と新領域の確立の2軸で成長を目指しています。素材から組み立てまでを一貫で行う独自の生産体制を活かし、自動車電装向けや生活家電向けの製品展開を強化するとともに、印刷技術等を応用した電気化学センサ等の新領域開拓に取り組みます。また、業務基盤の高度化や人材育成による組織力の強化も推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
長期ビジョン達成の源泉を人材と位置づけ、グローバルで活躍できる人材の育成に注力しています。電気化学センサ等の新領域を牽引する高度技術人材や次世代リーダーの育成プログラムを拡充し、多様な人材が能力を発揮できる健全な職場環境(ウェルビーイング)の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.3歳 | 17.9年 | 6,188,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.9% |
| 男性育児休業取得率 | 71.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 76.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 84.1% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) グローバル市場の経済・市況変動リスク
同社の製品はデジタル家電や自動車市場の世界的なセットメーカー向けが多くを占めています。そのため、世界各地の経済状況や消費マインド、設備投資動向などの市場変化が、同社グループの生産・販売に直接的または間接的な影響を及ぼし、業績が変動するリスクがあります。
■(2) 品質問題と製品の欠陥によるリスク
同社は高い品質の製品とサービスの提供を目指していますが、万が一製品に欠陥が生じた場合、顧客の生産ライン等に多大な損害を与える可能性があります。このような事態が発生すると、信用の低下だけでなく多額の損害賠償を請求され、財務状況に影響が及ぶリスクがあります。
■(3) 人材の確保・育成に関するリスク
同社グループが継続的な成長を遂げるためには、優秀な人材の確保と育成が不可欠です。しかし、労働力人口の減少や雇用環境の変化に伴う人材獲得競争の激化により、必要な人材の流出防止や新たな獲得が計画通りに進まない場合、事業成長や業績に支障を来すリスクがあります。
■(4) 特定のカスタム製品への依存リスク
同社が提供する製品の中には、顧客の個別要求に応えて開発した専用のカスタム製品が多く含まれています。そのため、主要顧客の設計開発の遅れや生産計画の急な変更、または需要の落ち込みが生じた場合、同社の生産および出荷が直接的な影響を受け、業績が低下するリスクがあります。



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