※本記事は、帝国通信工業株式会社 の有価証券報告書(第103期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 帝国通信工業ってどんな会社?
抵抗器やセンサー、操作ブロックなどの電子部品を製造し、グローバルに展開する独立系部品メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1944年に無線通信機部品メーカーとして設立され、1961年に東証二部に上場しました。その後、抵抗器やコンデンサー分野へ進出し、1971年に東証一部へ指定替えを行っています。海外展開も早くから進め、台湾、シンガポール、米国などに拠点を設立しました。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。
連結従業員数は1,729名、単体では275名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は香港上海銀行の顧客口座、第3位は英国の投資ファンドとなっています。事業会社による支配的な資本関係は見られず、機関投資家やファンドが上位を占める株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 11.35% |
| THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LIMITED - HONGKONG PRIVATE BANKING DIVISION CLIENT A/C 8028-394841 (常任代理人 香港上海銀行東京支店) | 7.62% |
| NIPPON ACTIVE VALUE FUND PLC(常任代理人 香港上海銀行東京支店) | 5.17% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名、計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長は羽生満寿夫氏が務めています。社外取締役の比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 羽生 満寿夫 | 代表取締役社長 | 1977年同社入社。生産技術部長を経て、2019年代表取締役社長に就任。2024年4月より現職。 |
| 水野 伸二 | 取締役専務執行役員開発統括 | 1981年同社入社。開発部長、品質保証部長、営業統括等を歴任。2019年取締役専務執行役員就任。2023年6月より現職。 |
| 丸山 睦雄 | 取締役常務執行役員業務統括 | 1983年同社入社。ノーブルU.S.A.代表取締役、営業部長等を経て、2023年取締役常務執行役員就任。2024年6月より現職。 |
| 高岡 亮 | 取締役上席執行役員営業統括 | 1991年同社入社。商品企画室長、営業部長等を歴任。2023年6月より現職。 |
社外取締役は、三浦希美(弁護士)、高橋啓章(元日本マイクロニクス執行役員)、瀧口詠子(税理士・元PwC)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電子部品」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 電子部品
抵抗器、前面操作ブロック(ICB)、スイッチ、センサー等の電子部品を製造・販売しており、これらはAV機器、事務機器、車載機器、産業機器など幅広い分野で使用されています。顧客は国内外のセットメーカー等です。
製品の販売による対価を収益としています。生産は国内の同社および子会社に加え、タイ、中国、ベトナムの海外子会社が行っています。販売は同社およびシンガポール、米国、香港などの海外販売子会社が各地域を担当しています。
■(2) その他
電子部品以外の事業として、機械設備の販売や環境対応素材の製造販売を行っています。
機械設備等の販売による収益や、環境対応素材等の製品販売による対価を得ています。運営は、機械設備等の販売を行う帝通エンヂニヤリング株式会社、および環境対応素材の製造販売を行う株式会社エコロパックが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は120億円から168億円の間で推移しており、全体として拡大傾向にあります。利益面では、2021年3月期から大幅に改善し、その後は変動があるものの、直近では経常利益率12%超と高い収益性を維持しています。当期は増収増益となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 120億円 | 151億円 | 165億円 | 152億円 | 168億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 20億円 | 22億円 | 16億円 | 21億円 |
| 利益率(%) | 7.3% | 13.4% | 13.3% | 10.2% | 12.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 10億円 | 6億円 | 14億円 | 25億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。売上原価率は一定水準で管理されており、売上総利益率は改善傾向にあります。販管費は微減しており、これらが寄与して営業利益率は6.2%から9.9%へと大きく向上しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 152億円 | 168億円 |
| 売上総利益 | 46億円 | 53億円 |
| 売上総利益率(%) | 30.5% | 31.7% |
| 営業利益 | 9億円 | 17億円 |
| 営業利益率(%) | 6.2% | 9.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が11億円(構成比31%)、研究開発費が5億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の電子部品事業は、AV市場や車載市場等が好調で増収となり、利益も大幅に伸長しました。その他事業も増収増益を確保しています。全体として、電子部品事業の好調が連結業績の拡大を牽引しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 電子部品 | 147億円 | 162億円 | 9億円 | 15億円 | 9.5% |
| その他 | 6億円 | 6億円 | 1億円 | 1億円 | 18.9% |
| 調整額 | -2億円 | -2億円 | -0億円 | 0億円 | -% |
| 連結(合計) | 152億円 | 168億円 | 9億円 | 17億円 | 9.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
改善型(営業CF+、投資CF+、財務CF-)
※投資CFがプラスとなっているのは、有形固定資産の取得による支出があったものの、定期預金の払戻しや投資有価証券の売却による収入がそれを上回ったためです。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 29億円 | 18億円 |
| 投資CF | -1億円 | 2億円 |
| 財務CF | -13億円 | -13億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.0%で市場平均(46.8%)を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「電子部品の製造とサービスを通じて世界のお客様に満足して頂ける仕事をいつも提供し続けることにより、豊かな社会の実現に貢献すること」を企業理念として掲げています。これまでの経験と技術を基盤に、社会が求める新たな製品や技術に貢献できる部品やサービスの提供を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は「抵抗器のNOBLEから新生NOBLEへの深化と進化」を長期ビジョンに掲げています。この実現に向けた行動指針として、「Change(革新)」「Challenge(挑戦)」「Communicate(連携)」の「三つのC」を定めており、変革と挑戦、そしてステークホルダーとの連携を重視する企業風土を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2021年5月に策定した中期5カ年計画に基づき経営を進めており、最終年度である2025年度の目標数値を修正しています。また、脱炭素社会の実現に向けた環境目標も設定しています。
* 2025年度連結売上高:170億円
* 2025年度連結営業利益:15億円
* GHG排出量(Scope1及び2):2030年度までに2020年度比で50%以上削減
* カーボンニュートラル:2050年度までに達成
* 再生可能エネルギー電力導入比率:2030年度までに100%
■(4) 成長戦略と重点施策
「顧客ニーズに合わせた製品ラインナップの拡大」「注力業界への対応力の強化」「時代のトレンドを先読みした製品開発」を目指し、以下の戦略に取り組んでいます。
* 既存領域の拡大:省エネ・EV分野への拡販、医療・ヘルスケア分野でのセンサー売上拡大など。
* 新製品展開:非接触スイッチ、非接触ポジションセンサー、チップ型固定抵抗など。
* 新領域の確立:5G関連、防災、医療・ヘルスケア、介護分野への参入。
* 基盤強化:新本社ビルへの建替え(研究開発機能と本社機能の複合)、DX化(IoT)導入による生産性向上。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
長期ビジョンの実現には人材が源泉であるとし、行動指針「三つのC(Change・Challenge・Communicate)」を主軸とした人材育成を掲げています。多様な人材が活躍できる環境整備、公正な評価、安全な職場づくり、多様な働き方の推進に取り組み、グローバルに活躍できる人材の育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 41.8歳 | 19.4年 | 6,228,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 1.5% |
| 男性育児休業取得率 | 25.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 76.7% |
| 男女賃金差異(正規) | 78.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 74.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用時の女性採用比率(54%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場動向に関するリスク
同社の主力である電子部品事業は、デジタル家電や自動車市場向けの比率が高く、顧客はグローバルに展開しています。そのため、世界経済の状況や市場の変化が業績に直接的・間接的な影響を与える可能性があります。
■(2) 製品の欠陥等に関するリスク
品質向上に努めていますが、予期せぬ製品の欠陥が発生した場合、顧客への多大な損害や損害賠償請求につながる可能性があります。これにより、同社グループの業績や社会的信用に影響を及ぼすリスクがあります。
■(3) 人材確保と育成に関するリスク
事業の継続的成長には優秀な人材の確保と育成が不可欠です。労働力人口の減少や雇用環境の変化の中で、人材の流出や新規獲得の困難が生じた場合、成長や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 特定製品に依存するリスク
主要製品には顧客の個別要求に基づくカスタム製品が含まれます。そのため、顧客の設計開発や生産計画の変更が同社の生産・出荷に直結し、業績に影響を与える可能性があります。



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