東亜ディーケーケー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東亜ディーケーケー 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東亜ディーケーケーは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、環境・プロセス分析機器などを扱う計測機器事業と不動産賃貸事業を展開する企業です。直近の業績では、半導体工場建設計画の延期や公共インフラ需要の軟調推移により減収となり、研究開発費等の増加によって大幅な減益となる厳しい結果となりました。


※本記事は、東亜ディーケーケー株式会社の有価証券報告書(第82期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。

1. 東亜ディーケーケーってどんな会社?


環境・プロセス分析機器などの計測機器事業と不動産賃貸事業を展開する計測機器メーカーです。

(1) 会社概要


1944年、通信用測定器の製造販売を目的に東亜電波工業として設立されました。1961年に東京証券取引所へ上場し、2000年に電気化学計器と合併して現在の東亜ディーケーケーへと商号を変更しました。2005年に米国ハック・カンパニーと資本業務提携を結び、2024年にはタイ駐在員事務所を開設しました。

同社グループの従業員数は連結で639名、単体で381名です。筆頭株主は資本業務提携先である米国のハック・カンパニーであり、第2位はUH6、第3位は明治安田生命保険相互会社などの事業会社や金融機関が名を連ねています。

氏名 持株比率
ハック・カンパニー(常任代理人 香港上海銀行東京支店) 34.14%
UH6 7.04%
明治安田生命保険相互会社 5.38%

(2) 経営陣


同社の役員は男性16名、女性0名の計16名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は髙島一幸が務めており、取締役における社外取締役の比率は約16.7%です。

氏名 役職 主な経歴
髙島一幸 代表取締役社長 1988年同社入社。国内営業本部HACH営業部長、執行役員、開発技術本部長、常務取締役、専務取締役などを経て、2025年6月より現職。
中島信寿 常務取締役営業統括 1977年東京電力(現東京電力ホールディングス)入社。同社火力事業所副所長等を経て、2013年同社入社。営業推進本部長などを経て、2025年6月より現職。
小坂徹 取締役管理本部長 1985年同社入社。国内営業本部東日本営業部長、執行役員などを経て、2022年6月より現職。
荒川智 取締役開発技術本部長 1992年電気化学計器入社。同社生産本部生化学事業室長、執行役員を経て、2024年4月より現職。
西澤隆志 取締役開発技術本部副本部長 1986年電気化学計器入社。同社開発技術本部水質技術部長、執行役員を経て、2023年4月より現職。
山岸裕司 取締役海外営業本部長 1988年電気化学計器入社。同社海外営業本部海外第1営業部長、執行役員を経て、2019年4月より現職。
工藤肇 取締役生産本部長 1988年日本電気入社。ルネサスエレクトロニクスを経て、2014年同社入社。生産本部生産技術部長等を経て、2025年6月より現職。
山守康夫 取締役 1980年三菱商事入社。ダナハーコーポレーションVPなどを経て、2006年6月同社取締役。現在は新市場開拓担当などを務める。
丸貞克 取締役 1977年日科機(現ベックマン・コールター)入社。ラジオメーター代表取締役社長等を経て、2017年6月より現職。
トム・マクファーレン 取締役 2006年National Surgical Corporation入社。ベラルトコーポレーションVP/GM等を経て、2024年6月より現職。


社外取締役は、吾妻望(東京八丁堀法律事務所パートナー弁護士)、五十嵐仁一(元JXリサーチ社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、計測機器事業および不動産賃貸事業を展開しています。

(1) 計測機器事業


同社グループは、環境・プロセス分析機器、科学分析機器、医療関連機器、産業用ガス検知警報器などの計測機器の製造販売ならびに保守・サービスを提供しています。水質や大気などの環境監視、医療現場や半導体工場における安全管理など、幅広い社会インフラのニーズに応える製品を展開しています。

収益は顧客に対する計測機器の販売代金や保守・修理サービスなどの対価から得ています。製品の大部分は連結子会社の山形東亜DKKや岩手東亜DKKが製造を担い、産業用ガス検知警報器はバイオニクス機器が製造販売を行っています。また、米国ハック・カンパニーの国内総代理店として販売活動も展開しています。

(2) 不動産賃貸事業


東京都新宿区の同社本社に隣接する賃貸ビルなどを所有し、不動産賃貸事業を行っています。テナントに対してオフィスなどの不動産を賃貸し、賃貸料を収益として受け取る安定的なビジネスモデルです。

本事業の運営は同社が主体となって実施しており、自社保有物件の有効活用を通じてグループ全体の収益基盤の強化に貢献しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は160億円台から180億円規模まで緩やかな拡大傾向を示していましたが、直近では微減に転じています。一方、経常利益や当期純利益は原材料価格や物流費等の製造コスト上昇、研究開発費の増加などの影響を受け、直近で大幅な減益となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 164億円 165億円 174億円 181億円 178億円
経常利益 20億円 17億円 18億円 15億円 6億円
利益率(%) 12.0% 10.5% 10.6% 8.2% 3.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 10億円 11億円 12億円 8億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しており、労務費や原材料費の高騰により売上総利益も縮小しています。また、成長市場への重点投資による研究開発費の増加などが影響し、営業利益および営業利益率は低下傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 181億円 178億円
売上総利益 63億円 56億円
売上総利益率(%) 34.9% 31.7%
営業利益 13億円 5億円
営業利益率(%) 7.4% 2.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が24億円(構成比46%)、研究開発費が7億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


計測機器事業は、国内における半導体工場建設計画の延期や公共インフラ需要の軟調推移、および中国向け環境水質計の販売が想定を下回ったことなどにより減収となりました。不動産賃貸事業は横ばいで推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
計測機器事業 178億円 176億円
不動産賃貸事業 2億円 2億円
連結(合計) 181億円 178億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た資金で借入金の返済等を行い、投資も手元資金で賄う健全型です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 18億円 24億円
投資CF -6億円 -4億円
財務CF 3億円 -9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は78.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「『誠実・創造・挑戦』をモットーに地球環境保全と豊かで人にやさしい社会環境の実現に貢献します」を経営理念としています。中長期的な将来像として「電気化学センサ技術を用いて『環境』に貢献する企業」を掲げ、独自のセンサ技術を核とした社会課題の解決に取り組んでいます。

(2) 企業文化


同社は、経営理念を具現化するための従業員像として、「誠実な人間性」「豊かな創造性」「旺盛なチャレンジ精神」を重視しています。また、多様な価値観を尊重し、すべてのステークホルダーとの共存共栄を図る「六方よし(お客さま、お取引先さま、株主さま、従業員、地域社会、地球環境)」の概念に基づき、事業を通じた課題解決に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、長期的な目標の実現に向けたバックキャスティングにより、中期経営計画(2025~2027年度)を推進しています。持続的な成長と企業価値の向上を目指し、以下の具体的な数値目標を掲げています。

・2027年度目標:売上高200億円、営業利益18億円、ROE6.3%
・2030年度以降目標:売上高250億円以上、営業利益25億円以上、ROE8%以上

(4) 成長戦略と重点施策


同社は今後の成長に向け、DXの推進による業務効率化・設計標準化や、先端半導体分野をはじめとする成長市場への経営資源の重点投資を進めます。中期経営計画では以下の重点戦略に取り組んでいます。

・全社戦略:新たなビジネス創造と売上高200億円への挑戦
・国内事業戦略:お客様から常に必要とされ続けるソリューション企業になる
・海外事業戦略:自社ブランドをより多くの国に浸透させる
・社会課題解決とサステナビリティの深化への挑戦

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、人的資本を持続的成長を支える重要な経営基盤と位置づけ、専門性と自律性を備えた人材の確保・育成を進めています。全社共通教育と部門別教育を体系的に実施し、独自のセンサ技術の継承と進化を図っています。また、グローバル展開や新領域事業を支えるため、外国籍社員や高度専門人材など多様なバックグラウンドを持つ人材の積極的な採用・登用を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.7歳 14.0年 6,231,082円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 20.3%
男性育児休業取得率 83.3%
男女賃金差異(全労働者) 82.1%
男女賃金差異(正規雇用) 83.5%
男女賃金差異(非正規雇用) 65.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(47%)、一人当たり研修費用(4.0万円/年)、休業労働災害件数(0件)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 環境法規制や製品需給の変動


同社グループは環境・プロセス分析機器の売上割合が高く、この分野での法規制の動向や市場の製品需給の変動が業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、業界団体や関連協会に積極的に参加して法改正や市場動向の情報を収集し、速やかに社内で共有する体制を構築しています。

(2) 部材調達と原材料価格の高騰


生産活動に必要な部材の調達において、供給先の事故や供給遅延が生産に支障をきたす恐れがあります。また、部材や輸送価格の継続的な上昇も懸念されます。これに対し、主要部品の内製化や代替品の活用、コスト低減活動、適切な販売価格への転嫁などを通じて影響の最小化に努めています。

(3) 技術の急速な進歩と研究開発リスク


新技術や新製品の研究開発に注力していますが、急速な技術進歩により同社の相対的な優位性が低下した場合や、新製品の市場投入が遅延・中止された場合、業績に影響を与える可能性があります。このため、中長期的な開発ロードマップの適時改訂や技術者の育成、オープンイノベーションを推進しています。

(4) サイバー攻撃と情報セキュリティ


顧客の個人情報や設計・技術などの機密情報を多数保有しており、サイバー攻撃や不正アクセスによってこれらが漏洩・消失するリスクがあります。システムの機能不全が生じた場合の影響も考慮し、横断的なセキュリティ管理体制の整備やシステム強化、従業員教育を通じた対策を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。