日本電波工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本電波工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場。水晶振動子や水晶発振器など、周波数の制御・選択・検出に関わる水晶デバイスの製造・販売を主力事業としています。直近の連結業績は、車載向けやスマートフォン向け等の販売が増加し増収となりましたが、持分法適用会社の減損損失計上などにより税引前利益および当期利益は減益となりました。


※本記事は、日本電波工業株式会社 の有価証券報告書(第84期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. 日本電波工業ってどんな会社?


水晶の特性を利用した周波数制御・選択・検出デバイスの専業メーカーとして、高品質な水晶関連製品を一貫製造・販売しています。

(1) 会社概要


1948年に設立され、翌年水晶振動子の製造を開始しました。1954年に本社ならびに工場を移転し、1963年には店頭登録を行いました。1998年に東京証券取引所市場第一部(現プライム市場)に指定されています。1979年にマレーシア、1990年代には中国各地に子会社を設立するなどグローバル展開を推進し、2002年には米国持株会社NDK HOLDINGS USA, INC.を設立しています。

連結従業員数は2,334名、単体では674名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位も同様に信託銀行、第3位は常任代理人を通じた外国法人となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.72%
日本カストディ銀行(信託口) 6.04%
SIX SIS LTD. 4.32%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名、計12名で構成され、女性役員比率は16.7%です。代表取締役執行役員社長は加藤啓美氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
加藤 啓美 代表取締役執行役員社長 1976年同社入社。マレーシア子会社社長、経営企画室長、管理本部長などを経て、2019年4月より現職。
竹内 敏晃 取締役会長 1965年日本アイ・ビー・エム入社。1974年同社取締役、代表取締役社長、代表取締役会長兼社長などを経て、2023年6月より現職。
上木 健一 取締役常務執行役員技術本部長 1989年同社入社。マレーシア子会社出向、技術本部振動子技術統括部長、執行役員技術本部長などを経て、2021年6月より現職。
及川 英之 取締役常務執行役員営業サービス本部長 1995年同社入社。NDK EUROPE LTD.社長、執行役員営業サービス本部長などを経て、2021年6月より現職。
菅原 賢一 取締役常務執行役員生産本部長 1989年同社入社。生産本部狭山製造統括部長、生産本部長、執行役員生産本部長などを経て、2021年6月より現職。
竹内 謙 取締役常務執行役員管理本部長 2006年リクルート入社。2012年同社入社。営業サービス本部副本部長などを経て、2021年6月より現職。


社外取締役は、諏訪賴久(元日本無線代表取締役会長)、安樂恒樹(元東京国税局課税第二部長)、筧悦子(元日本アイ・ビー・エム理事)です。

2. 事業内容


同社グループは、水晶関連製品の製造・販売を行う単一セグメントですが、製品群として「水晶振動子」「水晶発振器」「その他」を展開しています。

(1) 水晶振動子


移動体通信、情報端末機器、車載用機器などに使用される水晶振動子を提供しています。これらは電子機器が正確に動作するために必要な基準信号を作り出す重要な部品です。主な顧客は、自動車メーカー、スマートフォンメーカー、電子機器メーカーなどです。

収益は、顧客への製品販売による対価として得ています。運営は、日本電波工業が製造販売を行うほか、国内では古川エヌ・デー・ケー、函館エヌ・デー・ケー、海外ではASIAN NDK CRYSTAL SDN.BHD.(マレーシア)、蘇州日電波電子工業有限公司(中国)などの連結子会社が製造を担っています。

(2) 水晶発振器


通信基地局、光ネットワーク通信装置、データセンターのサーバーなどに使用される水晶発振器を提供しています。高精度・高安定性が求められる分野で、通信インフラや産業用電子機器の性能を支えています。生成AIの普及に伴うデータセンター向け需要も拡大しています。

収益は、製品の販売代金です。運営主体は水晶振動子と同様、日本電波工業および国内外の連結製造子会社が行っており、販売はNDK AMERICA,INC.やNDK EUROPE LTD.などの各地域の販売子会社を通じてグローバルに行われています。

(3) その他


上記以外の水晶デバイス、応用機器(周波数シンセサイザ、超音波機器等)、人工水晶および水晶片、光学製品(プロ仕様カメラ向け等)などを提供しています。宇宙・QCM(水晶微量天秤)事業ではJAXAとの共同研究技術を展開するなど、高度な技術力を活かした製品群です。

収益は製品販売によって得ています。運営は日本電波工業のほか、国内では古川エヌ・デー・ケー、持分法適用会社のNDK SAW devices、海外ではNDK QUARTZ (M) SDN.BHD.などが製造に関わっています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上収益は第80期から第82期にかけて大きく伸長しましたが、第83期に一旦減少し、第84期には再び増加に転じています。一方、利益面では第82期をピークに減少傾向にあり、特に直近の第84期は売上増にもかかわらず減益となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 392億円 454億円 525億円 503億円 531億円
税引前利益 26億円 49億円 75億円 31億円 30億円
利益率(%) 6.6% 10.8% 14.2% 6.2% 5.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 20億円 55億円 62億円 23億円 18億円

(2) 損益計算書


売上収益は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費も増加しており、営業利益の伸びは小幅にとどまりました。税引前当期利益は持分法による投資損失や減損損失の影響もあり減少しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 503億円 531億円
売上総利益 144億円 161億円
売上総利益率(%) 28.6% 30.3%
営業利益 43億円 46億円
営業利益率(%) 8.6% 8.7%


販売費及び一般管理費のうち、人件費が44億円(構成比46%)、支払手数料が17億円(同18%)を占めています。売上原価においては、原材料費が154億円(構成比42%)、労務費が102億円(同28%)となっています。

(3) セグメント収益


同社は単一セグメントですが、品目別の売上状況を分析します。主力の水晶振動子は車載やスマートフォン向けが増加し、売上全体の約7割を占めています。水晶発振器はAIデータセンター向けが伸長しましたが、基地局向けが減少し微増となりました。その他製品はプロ仕様カメラ向け光学製品などが好調で2桁増収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
水晶振動子 369億円 390億円
水晶発振器 85億円 87億円
その他 49億円 54億円
連結(合計) 503億円 531億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、営業活動で得た資金を設備投資に充てつつ、財務活動で資金調達を行い、期末の現金及び現金同等物を増加させています。営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費や棚卸資産の減少などがプラス要因となり、プラスとなりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産や無形資産の取得による支出が主なマイナス要因となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の収入が長期借入金の返済などを上回り、プラスとなりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 85億円 61億円
投資CF -38億円 -45億円
財務CF -30億円 19億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「お客様への奉仕を通じて、社会の繁栄、世界の平和に貢献する」ことを創業理念として掲げています。豊かで平和な社会の実現に不可欠な周波数の制御・選択・検出に関連する製品の専業メーカーとして、業界をリードする高信頼性商品を開発・製造・販売し、顧客に喜ばれることを経営の基本としています。

(2) 企業文化


「顧客満足度(CS)100%」=「品質第一」を経営の基本として掲げています。全ての社員が創業理念や経営理念を心に留め、積極的に良い仕事を積み重ねることで、企業利益と社会的責任が調和する誠実な企業活動を進める文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


2025年度(2026年3月期)を初年度とする3か年の中期経営計画を策定し、「Five Pillars + One」という事業ポートフォリオ構想を掲げています。車載、移動体、産機、光学、特機の5つの柱と新事業(+One)をバランスよく運営し、成長を続けるソリューションプロバイダーとしての地位確立を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


「Five Pillars + One」構想に基づき、各市場での競争力強化を図ります。車載市場ではコスト改善によるシェア維持、移動体市場ではGPS性能改善品等の高付加価値化、産機市場では生成AI普及に伴うデータセンター向け発振器の拡大を推進します。また、防衛・宇宙市場での開発力強化や、光学市場でのオンリーワン製品投入にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「事業成長を牽引する経営幹部・管理職層の継続的な確保・育成」と「若手・女性・シニア社員のモチベーション・エンゲージメントの向上」を方針として掲げています。多様な人材の確保、自律的なキャリア開発支援、魅力ある職場づくりを通じて、社会価値と経済価値を創出する人材の育成を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 43.1歳 16.5年 6,800,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.8%
男性育児休業取得率 25.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.2%
男女賃金差異(正規雇用) 77.8%
男女賃金差異(非正規) 58.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途採用における女性比率(22.2%)、階層別研修の従業員1人当たり研修時間(5.05時間)、エンゲージメントサーベイ回答率(90.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競争激化のリスク


水晶業界は競争が厳しく、想定以上の価格下落や、経営努力を行っても競争優位を維持できない可能性があります。また、競争力維持のための多額の研究開発や設備投資が必要であり、前提条件の変動により投資回収不能や機会損失が生じるリスクがあります。

(2) 仕入先等に関するリスク


製品製造に必要な原材料等の購入において、安定調達が維持できない場合、想定利益の確保困難、工程遅延、機会損失、顧客への賠償責任などが発生し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 人材に関するリスク


事業の成長には人材の育成と採用が不可欠ですが、これらが計画通りに進まない場合、同社グループの成長や利益に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 環境汚染に関するリスク


環境負荷低減に努めていますが、事業活動において環境汚染が発生しない保証はありません。万が一環境汚染が発生または判明した場合、浄化処理等の対策費用が発生し、損益に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。