天昇電気工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

天昇電気工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。プラスチック成形事業を主力とし、自動車部品や物流資材等を製造販売する。2025年3月期の業績は、売上高279億円(前期比3.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益13億円(同33.3%増)と増収増益で着地した。


※本記事は、天昇電気工業株式会社 の有価証券報告書(第99期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 天昇電気工業ってどんな会社?


プラスチック成形技術を核に、自動車部品や物流資材、家電・機構部品などを製造販売するメーカーです。

(1) 会社概要


1936年に昇商会として創業し、1940年に天昇電気工業へ改組しました。1961年に東証二部へ上場を果たしています。2007年には米国に天昇アメリカ(現・三甲アメリカ)を設立し海外展開を加速させました。2021年に竜舞プラスチックを完全子会社化するなど、製造体制の強化を進めています。

連結従業員数は727名、単体従業員数は387名です。筆頭株主は同社のその他の関係会社にあたる三甲不動産です。第2位は総合商社の三井物産、第3位はプラスチック製品大手のタキロンシーアイとなっており、事業会社が上位を占めています。

氏名 持株比率
三甲不動産 33.57%
三井物産 13.82%
タキロンシーアイ 5.24%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は藤本健介氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
藤本健介 代表取締役社長 三井化学執行役員、プライムポリマー代表取締役社長等を経て、2024年6月より現職。
石川忠彦 取締役会長海外本部長 三井物産機能化学品本部、同社代表取締役社長等を経て、2024年6月より現職。
杉山実佐夫 取締役営業本部長 2016年同社入社。理事営業本部副本部長を経て、2018年6月より現職。
岸田勇 取締役東北統括 2016年同社入社。執行役員管理本部長、取締役管理本部長を経て、2022年2月より現職。


社外取締役は、後藤薫(三甲不動産代表取締役副社長)、小松崎隆一(元伊藤忠プラスチックス社長)、神田将(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本成形関連事業」「中国成形関連事業」「アメリカ成形関連事業」および「不動産関連事業」を展開しています。

(1) 日本成形関連事業


自動車部品、物流産業資材、機構品部品、金型の製造販売を行っています。主な顧客は自動車関連企業であり、その他物流業界など幅広い産業に向けて製品を供給しています。

収益は、顧客への製品販売や金型販売による代金です。運営は主に天昇電気工業および子会社の竜舞プラスチックが行っています。

(2) 中国成形関連事業


中国市場において、物流産業資材、機構品部品、金型の製造販売を行っています。日系企業向けの成形品受注などを手がけています。

収益は、製品および金型の販売代金です。運営は現地子会社の天昇塑料(常州)有限公司が行っています。

(3) アメリカ成形関連事業


北米地域において、物流産業資材、機構品部品、金型の製造販売を行っています。

収益は、製品および金型の販売代金です。運営は三甲アメリカ、三甲プラスチックスメキシコなどが担当していますが、三甲アメリカは2025年1月に第三者割当増資を実施し、同社グループの連結範囲から除外され持分法適用会社となりました。

(4) 不動産関連事業


同社が保有する不動産の賃貸を行っています。具体的には、神奈川県相模原市の土地・建物や、福島県二本松市の土地などが対象です。

収益は、賃貸先からの賃貸料収入です。運営は天昇電気工業が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は156億円から279億円へと大幅に拡大しています。経常利益も3億円台から11億円前後へと成長し、利益率は3〜5%程度で推移しています。当期純利益も増加傾向にあり、事業規模の拡大とともに収益力も向上していることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 156億円 194億円 239億円 269億円 279億円
経常利益 3億円 4億円 8億円 13億円 11億円
利益率(%) 1.9% 1.8% 3.1% 4.9% 3.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 2億円 5億円 9億円 13億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高は269億円から279億円へ増加しましたが、売上原価の増加により売上総利益は微減となりました。営業利益も11億円から9億円へ減少しており、利益率は3.3%となっています。一方、特別利益の計上などにより、最終的な当期純利益は増加しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 269億円 279億円
売上総利益 43億円 43億円
売上総利益率(%) 16.1% 15.3%
営業利益 11億円 9億円
営業利益率(%) 3.9% 3.3%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運賃が12億円(構成比35%)、給料手当・賞与が8億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本成形関連事業は自動車業界の生産調整の影響を受け減収減益となりました。一方、中国成形関連事業は増収ながら損失を計上。アメリカ成形関連事業はメキシコ第二工場の稼働率上昇により大幅な増収増益を達成しました。不動産関連事業は安定的に推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本成形関連事業 202億円 198億円 6億円 2億円 1.2%
中国成形関連事業 4億円 5億円 0.1億円 -0.3億円 -5.3%
アメリカ成形関連事業 59億円 72億円 2億円 4億円 6.0%
不動産関連事業 3億円 3億円 2億円 2億円 87.3%
連結(合計) 269億円 279億円 11億円 9億円 3.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は財務体質の健全化及び強化を第一の目標としており、安定した業績維持により自己資本比率の向上、効率的な設備投資、有利子負債の削減に努めています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や持分変動利益等により収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産の取得による支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入や長期借入金の返済、非支配株主からの払込み等により収入となりました。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「ものづくりを通じて豊かな社会を創造しよう」を経営理念として掲げています。この実現のため、ステークホルダーとの信頼構築に努め、品質・価格・納期により顧客満足を提供すること、法令遵守に加え社会貢献・環境保全・安全への配慮を心掛け、健全経営に努めることを経営方針としています。

(2) 企業文化


同社は「6S4K」の実践を重視する企業文化を持っています。6Sとは「整理・整頓・清掃・清潔・躾・作法」を指し、4Kは「決められたことを・基本通りに・キチンと・継続してやる」ことを意味します。経営陣による定期的な巡回を通じて、これらの徹底と現場力の強化を図っています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、連結会計年度ごとに業績目標を立案・開示しています。また、財務体質の健全化及び強化を第一の目標とし、安定した業績維持による自己資本比率の向上、効率的な設備投資、有利子負債の削減に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


国内では自動車部品関連の伸長と自社製品の大幅な売上拡大を目指し、生産革新チームによる省力・自動化を推進しています。中国では経費削減と日系企業向け受注獲得、アメリカ(持分法適用関連会社)では生産拡大を図ります。また、コーポレートガバナンス充実とコンプライアンス強化にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「全社員における女性比率の向上」と「女性管理職の登用を目標とする幹部人材の育成」を課題と位置づけています。女性が活躍できる環境構築がダイバーシティ推進と企業価値向上につながるとの認識のもと、意識・風土改革、能力開発、ワーク・ライフ・マネジメントの推進に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.2歳 11.3年 4,192,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 0.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.1%
男女賃金差異(正規) 65.9%
男女賃金差異(非正規) 79.4%


※女性管理職比率については、有価証券報告書に本項目の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業展開とカントリーリスク


国内6工場および中国拠点で生産を行っていますが、主要顧客である自動車メーカーや物流業界の需要動向に業績が左右される可能性があります。特に中国事業では、法規制、インフラ、治安、労働争議などのカントリーリスクが存在し、予期せぬ情勢変化により所期の成果が得られない可能性があります。

(2) 原材料価格の変動


原油や樹脂素材価格の上昇など、原材料価格が不安定な状況にあります。コスト削減に努め、適正な製品価格への転嫁に取り組んでいますが、販売状況によっては十分な転嫁ができず、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 特定の取引先への依存


売上高の約50%を日系自動車メーカー向けが占めており、主要納入先の生産台数が減少した場合、製品納入の継続が困難となるリスクがあります。特定分野への依存度を下げるため、物流産業資材や機構品部品分野の売上拡大を推進しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。