天昇電気工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

天昇電気工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

天昇電気工業は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、自動車部品や物流産業資材などのプラスチック成形事業を主力とする企業です。直近の業績は、アメリカ子会社の持分法適用化に伴う連結範囲の変更などにより減収となっていますが、原価低減などの効果により各利益率は向上しており、堅調な収益性を確保しています。


※本記事は、天昇電気工業株式会社の有価証券報告書(第100期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 天昇電気工業ってどんな会社?


プラスチック成形技術を強みに、自動車部品や物流産業資材、機構品部品の製造・販売を展開しています。

(1) 会社概要


同社は1936年に合成樹脂成形加工を目的として創業し、1940年に天昇電気工業へと改組しました。1961年には東京証券取引所市場第二部(現スタンダード市場)に株式を上場しています。その後、2003年に中国へ子会社を設立するなど海外展開を進め、現在の日本および中国における成形関連事業の基盤を築きました。

現在の同社グループは、連結で468名、単体で385名の従業員を擁しています。筆頭株主は事業会社の三甲不動産で、第2位は総合商社の三井物産、第3位はプラスチック製品メーカーのタキロンシーアイです。

氏名 持株比率
三甲不動産 33.63%
三井物産 13.82%
タキロンシーアイ 5.23%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は藤本健介氏が務めています。取締役7名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は約42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
藤本健介 代表取締役社長 1985年3月三井石油化学工業(現三井化学)入社。プライムポリマー代表取締役社長等を経て、2024年6月より現職。
石川忠彦 取締役会長海外本部長 1979年4月三井物産入社。同社機能化学品本部西日本化学品事業部長、天昇電気工業代表取締役社長等を経て、2024年6月より現職。
杉山実佐夫 取締役営業本部長 2016年5月同社入社。同社理事営業本部副本部長を経て、2018年6月より現職。
岸田勇 取締役 2016年10月同社入社。同社執行役員、同社管理本部長を経て、2020年6月より現職。


社外取締役は、後藤薫(三甲不動産代表取締役副社長)、小松崎隆一(元伊藤忠プラスチックス社長)、神田将(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本成形関連事業」「中国成形関連事業」「不動産関連事業」および「その他」事業を展開しています。

日本成形関連事業


同事業は、国内市場において自動車部品、物流産業資材、機構品部品、および金型の製造・販売を行っています。主要顧客である日系自動車メーカー向けの取引が大半を占めており、長年培った高度な成形技術を活用して顧客のニーズに応える高品質なプラスチック製品を提供しています。

収益源は、自動車メーカーや物流業者などへの製品販売代金および金型販売代金です。運営は親会社である天昇電気工業と同社子会社の竜舞プラスチックが共同で行っており、国内の複数拠点を連携させて効率的な一貫生産体制を構築しています。

中国成形関連事業


中国市場において、主に物流産業資材、機構品部品、金型の製造・販売を行っています。現地の需要動向に応じ、日系企業を中心とした顧客に向けて高品質な成形品を供給するとともに、日本国内の営業・技術部門との連携を強化して事業の拡大を図っています。

収益源は、中国国内の企業に対する製品や金型の販売代金です。本事業の運営は、同社子会社の天昇塑料(常州)有限公司が主体となって行っており、現地の生産拠点を活用して経費削減や収益改善に努めながら事業を展開しています。

不動産関連事業


同事業は、同社が保有する不動産資産の有効活用を目的として、相模原市所在の土地・建物や、二本松市所在の土地の賃貸を行っています。安定したキャッシュ・フローを生み出すことで、グループ全体の財務基盤を支える役割を担っています。

収益源は、商業施設等を運営するテナント企業から受け取る不動産の賃貸料です。運営は親会社である天昇電気工業が単独で行っており、主力である成形事業の周辺領域として堅実な事業運営を行っています。

その他事業


当期よりアメリカにおける成形関連事業が持分法適用会社へ移行したことに伴い、報告セグメントから除外され、その他事業に含まれています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向で推移したのち、直近の2026年3月期に減少へ転じています。これはアメリカ子会社が持分法適用会社へ移行し連結対象から外れた影響が大きく、一方で利益率は安定して推移しており、堅調な収益体質を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 194億円 239億円 269億円 279億円 219億円
経常利益 4億円 8億円 13億円 11億円 10億円
利益率(%) 1.8% 3.1% 4.9% 3.9% 4.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 5億円 8億円 13億円 5億円

(2) 損益計算書


損益構成を見ると、連結範囲の変更に伴う減収により売上総利益や営業利益の絶対額は減少しているものの、原価低減等の効果によって売上総利益率および営業利益率は改善しており、利益を生み出す力が着実に高まっていることが分かります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 279億円 219億円
売上総利益 43億円 40億円
売上総利益率(%) 15.3% 18.5%
営業利益 9億円 7億円
営業利益率(%) 3.3% 3.3%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運賃が12億円(構成比38%)、給与手当・賞与が7億円(同23%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の日本成形関連事業は自動車業界の生産調整影響の解消により増収増益を達成しました。一方、その他事業の売上が当期から除外されたため、全体としては減収となっていますが、各セグメントで着実な利益を計上しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率(2026年3月期)
日本成形関連事業 198億円 210億円 2億円 5億円 2.3%
中国成形関連事業 5億円 6億円 -0.3億円 0.1億円 1.3%
不動産関連事業 3億円 3億円 2億円 2億円 82.4%
その他事業 72億円 - 4億円 - -
調整額 -0.5億円 -0.4億円 0.2億円 - -
連結(合計) 279億円 219億円 9億円 7億円 3.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のパターンを示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 25億円 19億円
投資CF -31億円 -12億円
財務CF 6億円 -8億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.7%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も52.4%であり、いずれも市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「ものづくりを通じて豊かな社会を創造しよう」を経営理念に掲げています。ステークホルダーとの信頼構築に努め、品質・価格・納期により顧客満足を提供するとともに、法令遵守に留まらず、社会貢献、環境保全、安全への配慮を心掛け、業務効率と改善を図り健全経営に努めることを方針としています。

(2) 企業文化


持続可能な社会の実現を目指し、地球環境保全に貢献する姿勢を重視しています。社長をはじめとする経営メンバーが各工場を定期的に巡回し、全従業員が「6S4K」(整理・整頓・清掃・清潔・躾・作法、決められたことを・基本通りに・キチンと・継続してやる)を実践することで、現場の堅実な改善を推進する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


連結会計年度ごとに業績目標を立案・開示しており、安定した業績を維持継続することで、自己資本比率の向上や有利子負債の削減を図り、財務体質の健全化と強化を第一の目標としています。
当期の計画では以下の数値を目標として掲げました。
・売上高 220億円
・営業利益 6億円
・経常利益 7億円

(4) 成長戦略と重点施策


主要顧客である自動車関連企業向けの取引をさらに伸ばしつつ、物流産業資材などの自社製品の大幅な売上拡大を目指しています。国内では生産革新チームによる省力・省人化、自動化等の取り組みを推進して生産性を向上させ、中国では日系企業向け成形品の受注獲得に向け、日本国内の営業・技術部門との連携を強化していく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、性別や年齢、キャリア等の異なる多様な人材が活躍できる環境の整備と、イノベーションの創出を目指しています。特に女性が活躍できる環境の構築を重要課題とし、女性管理職の登用を目標とした幹部人材の育成やワーク・ライフ・マネジメントの推進に取り組み、社員が自律的に挑戦できる組織風土の醸成を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.2歳 11.4年 4,110,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 -
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 69.8%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 80.0%


※女性管理職比率については、有価証券報告書に数値の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 自動車産業などの需要動向リスク


同社の主力製品である自動車部品や物流産業資材は、国内の自動車メーカーや物流業界などの需要動向に大きく左右されます。また、中国などの海外拠点においても、現地の景気動向や法規制、インフラ、治安などのカントリーリスクが存在しており、これらが悪化した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 原材料価格の変動リスク


製品の製造に必要な原油や樹脂素材の価格は不安定な状況にあります。同社は原材料仕入れにおけるコスト削減に努めていますが、調達コストの上昇分を適切に製品価格へ転嫁できない場合、利益率が圧迫され、グループ全体の収益性や財務状況に悪影響を与えるリスクがあります。

(3) 技術革新と競争力低下のリスク


同社の製品は高い技術力に支えられていますが、技術や市場の需要は急速に変化します。継続的な新製品開発や生産効率向上の取り組みを推進しているものの、技術力や製品開発力において競争優位性を維持できない場合、将来の成長性が低下し、事業運営に支障をきたす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。