※本記事は、大崎電気工業株式会社の有価証券報告書(第112期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大崎電気工業ってどんな会社?
大崎電気工業は、国内外でスマートメーターを基軸とした計測制御機器の開発・製造・販売を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1937年に弘業製作所として設立され、1941年に大崎電気工業に商号変更しました。1948年に電力量計の製造を開始し、1962年に東京証券取引所市場第二部に上場、1980年に市場第一部へ指定されました。その後、国内外で事業を拡大し、2012年にはシンガポールのSMB United Limited(現OSAKI United International Pte. Ltd.)を子会社化しています。
同社グループの従業員数は連結で2,504名、単体で545名です。筆頭株主は日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は香港上海銀行東京支店を通じて投資を行う外国法人等、第3位は日本カストディ銀行(信託口)です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.97% |
| THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LTD | 8.85% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.71% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.0%です。代表取締役は渡辺佳英氏、渡辺光康氏、川端晴幸氏が務めています。社外取締役比率は27%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 渡辺佳英 | 取締役会長 CEO代表取締役 | 1977年野村総合研究所入社。1986年大崎電気工業常務取締役、2009年取締役会長を経て、2024年6月より現職。 |
| 渡辺光康 | 取締役社長執行役員 COO代表取締役 | 1983年野村総合研究所入社。1986年大崎電気工業入社、2014年取締役社長を経て、2024年6月より現職。 |
| 川端晴幸 | 取締役副社長執行役員代表取締役 | 1970年大崎電気工業入社。営業本部長などを歴任し、2014年取締役副社長を経て、2020年6月より現職。 |
| 上野隆一 | 取締役専務執行役員グループ経営本部長 | 2007年みずほコーポレート銀行入行。2010年大崎電気工業入社。経営戦略本部長等を経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、水野正望(元勤労者退職金共済機構理事長)、笠井伸啓(元ローデ・シュワルツ・ジャパン社長)、高橋美波(富士通執行役員副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内計測制御事業」「海外計測制御事業」「不動産事業」の3つの報告セグメントを展開しています。
■国内計測制御事業
同社グループの中核として、スマートメーター、計器用変成器、エネルギーマネジメントシステム、スマートロック、配・分電盤などの開発・製造・販売を展開しています。主に国内の電力会社や商業施設などが顧客となります。
収益源は機器の販売代金やソリューションサービスの利用料などです。運営は主に同社やエネゲート、大崎電気システムズなどが担当し、生産から販売、関連サービスまでを一貫して提供しています。
■海外計測制御事業
オセアニア、欧州、アジアなど海外市場に向け、スマートメーターおよび関連システムの開発・製造・販売を行っています。各国の電力会社や関連事業者が主な顧客となります。
収益源は海外向けのスマートメーターや関連システムの販売代金などです。事業の運営は、シンガポールに拠点を置くOSAKI United International Pte. Ltd.がEDMIグループを統括し、各国の子会社が連携して展開しています。
■不動産事業
同社グループが保有する不動産の有効活用を目的として、賃貸用不動産の運用を行っています。
収益源は所有するオフィスビルなどのテナントから受け取る賃貸料です。運営は主に同社および大崎エステートが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、売上高は安定的に成長を続け、直近では1,009億円に達しています。経常利益も改善傾向にあり、利益率も直近で6.5%まで上昇しました。当期利益についても一時的な落ち込みから回復基調にあり、収益性の向上が伺えます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 762億円 | 893億円 | 951億円 | 971億円 | 1,009億円 |
| 経常利益 | 12億円 | 19億円 | 55億円 | 54億円 | 66億円 |
| 利益率(%) | 1.6% | 2.1% | 5.8% | 5.5% | 6.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.8億円 | 34億円 | 25億円 | 41億円 | 21億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は971億円から1,009億円へと増収となりました。売上総利益や営業利益もそれぞれ増加しており、売上総利益率は約24%、営業利益率は約6%の水準で安定的に推移しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 971億円 | 1,009億円 |
| 売上総利益 | 234億円 | 242億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.1% | 24.0% |
| 営業利益 | 57億円 | 65億円 |
| 営業利益率(%) | 5.9% | 6.5% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当・賞与が58億円(構成比33%)、研究開発費が28億円(同16%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内計測制御事業は、第2世代スマートメーターの本格導入などに伴い増収増益となりました。海外計測制御事業はオセアニアでの在庫調整により微減収となりましたが、利益面は改善しています。不動産事業は物件売却の影響等により減収減益となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内計測制御事業 | 561億円 | 597億円 | 40億円 | 47億円 | 7.8% |
| 海外計測制御事業 | 406億円 | 409億円 | 15億円 | 17億円 | 4.3% |
| 不動産事業 | 5億円 | 3億円 | 3億円 | 1億円 | 31.2% |
| 調整額 | -13億円 | -8億円 | -0.1億円 | 0.0億円 | - |
| 連結(合計) | 971億円 | 1,009億円 | 57億円 | 65億円 | 6.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期は営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益と資産売却等によって資金を確保し、借入の返済を進める「改善型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 69億円 | 89億円 |
| 投資CF | -12億円 | 48億円 |
| 財務CF | -30億円 | -88億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.9%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「見えないものを見える化し、社会に新たな価値を生み出す」を新たな経営理念として掲げ、これを社会における存在意義(パーパス)と位置づけています。電力量計を通じて電力の安定供給や有効利用を支えつつ、今後は電力以外の見える化を通じたソリューション事業など、これまでにない領域にも挑戦しています。
■(2) 企業文化
持続的な成長を実現するため、社内外のステークホルダーと議論を重ねてパーパスを定義するなど、社会への貢献と企業価値向上を両立させる文化を持っています。「挑戦」「迅速」「革新」を体現し得る自律型人材の育成を重視し、多様な人材が強みや特性を活かして活躍できる、互いを認め合う組織風土醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的な成長を目指す3か年の中期経営計画(2024年度~2026年度)を推進しています。事業の成長と資本効率の向上を両立させることを不可欠とし、次期以降も早期のROE10%回復とさらなる向上を目指しています。
* 売上高:1,010億円
* 営業利益:81億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:48億円
* ROE:8.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
グループシナジーを最大限に活かし、スマートメーターを基軸とした事業展開と、脱炭素社会の実現など社会課題に対する新たなソリューションの提供を成長戦略としています。国内では第2世代スマートメーターの安定出荷とAI等を活用した省人化、海外では次世代スマートメーター「NEOS」の拡販やソリューション販売の拡大に注力します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業戦略の推進主体である人材と組織を重要な経営資源と位置づけています。「挑戦」「迅速」「革新」を体現する自律型人材を育成するため、仕事の経験を通じた主体性の醸成やスキルセットを軸とした育成の仕組みを導入しています。あわせて、多様な人材が能力を最大限に発揮できる職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与は東京証券取引所プライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.8歳 | 16.2年 | 7,227,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 68.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 61.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒求職者に占める女性の割合(39.6%)、休業災害度数率(0.99%)、離職率(4.3%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 需要変動のリスク
スマートメーター等の製品需要は、各国の政治・経済状況や政策、主要顧客の設備投資計画に大きく依存します。検定有効期間による取替需要が一巡した後の反動減など、需要が著しく変動した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) サプライチェーンに関するリスク
スマートメーターの機能向上や原価低減に伴う仕様変更を継続的に行っているため、適正な在庫管理が求められます。地政学的リスクによる部材調達難や、銅や石油化学製品などの素材価格・物流コストの上昇分を製品価格に転嫁できない場合、生産活動や収益性に悪影響が生じるおそれがあります。
■(3) 海外事業のリスク
オセアニアや欧州など海外事業を成長の柱と位置づけていますが、海外市場では政治・経済情勢や地政学的リスク、法令・制度の不確実性が国内より高く存在します。市場の急激な変化やプロジェクトの遅延により事業が想定通りに進展しない場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 製品・サービスの品質に関するリスク
厳格な品質管理体制のもとで製品の製造を行っていますが、将来にわたって品質問題が発生しない保証はありません。瑕疵や欠陥のある製品が市場に流出し、回収や交換、損害賠償といった事態が発生した場合、業績や社会的信用に影響を及ぼすリスクがあります。



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