※本記事は、大崎電気工業株式会社 の有価証券報告書(第111期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年7月3日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大崎電気工業ってどんな会社?
電気計測制御機器のパイオニアとして、電力量計やエネルギー管理システムを提供するグローバル企業です。
■(1) 会社概要
同社は1937年に設立され、配電盤等の製造販売を開始しました。1948年には電力量計の製造を開始し、事業の基盤を築きました。1980年には東京証券取引所市場第一部に指定され、社会的信用を高めました。2012年にはシンガポールのSMB United Limited(現OSAKI United International Pte. Ltd.)を子会社化し、海外事業を本格化させました。
現在の従業員数は連結2,558名、単体542名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は外国法人の常任代理人である銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.75% |
| THE HONGKONG AND SHANGHAI BANKING CORPORATION LTD - SINGAPORE BRANCH PRIVATE BANKING DIVISION CLIENTS A/C 8221-623793 | 8.70% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.08% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.0%です。代表者は取締役会長 CEOの渡辺佳英氏と、取締役社長執行役員 COOの渡辺光康氏です。社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 渡辺佳英 | 取締役会長 CEO代表取締役 | 1977年野村総合研究所入社。1980年同社入社。社長等を経て2024年6月より現職。 |
| 渡辺光康 | 取締役社長執行役員 COO 代表取締役 | 1983年野村総合研究所入社。1986年同社入社。専務等を経て2024年6月より現職。 |
| 川端晴幸 | 取締役副社長執行役員代表取締役 | 1970年同社入社。管理本部長、営業本部長等を経て2020年6月より現職。 |
| 上野隆一 | 取締役専務執行役員グループ経営本部長 | 2007年みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)入行。2010年同社入社。経営戦略本部長等を経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、水野正望(元三菱UFJリサーチ&コンサルティング副社長)、笠井伸啓(元ローデ・シュワルツ・ジャパン社長)、黒木彰子(帝京大学教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内計測制御事業」「海外計測制御事業」および「不動産事業」を展開しています。
■国内計測制御事業
国内の電力会社向けに電力量計(スマートメーター)、計器用変成器、監視制御装置等を製造・販売するほか、一般顧客向けに配・分電盤、検針システム、スマートロック等のソリューションを提供しています。
収益は、電力会社や一般企業、個人顧客からの製品・サービスの販売代金や利用料が源泉となります。運営は主に同社が行うほか、エネゲート、大崎電気システムズ、岩手大崎電気、大崎プラテック、大崎データテック、ラ・クラシン、大崎テクノサービスなどのグループ会社が担っています。
■海外計測制御事業
オセアニア、欧州、アジア等の海外市場において、電力量計(スマートメーター)および関連システムの開発、製造、販売を行っています。各地域の市場特性に合わせた製品展開を行っています。
収益は、海外の電力会社等からの製品およびシステムの販売代金です。運営は、OSAKI United International Pte. Ltd.が統括し、EDMI LimitedをはじめとするEDMIグループ各社が製造・販売を行っています。
■不動産事業
同社グループが保有する不動産の有効活用を目的として、不動産賃貸事業を行っています。
収益は、テナントからの賃貸料収入です。運営は同社および大崎エステートが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、直近では971億円に達しています。経常利益も2024年3月期に大きく伸長し、50億円台で推移しています。当期純利益については、2022年3月期に赤字となりましたが、その後は回復し、直近では35億円の利益を計上しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 763億円 | 762億円 | 893億円 | 951億円 | 971億円 |
| 経常利益 | 29億円 | 12億円 | 19億円 | 55億円 | 54億円 |
| 利益率(%) | 3.8% | 1.6% | 2.1% | 5.8% | 5.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | -1億円 | 34億円 | 25億円 | 35億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、営業利益は若干減少しました。売上総利益率は約24%で安定しています。販売費及び一般管理費の増加が営業利益の押し下げ要因となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 951億円 | 971億円 |
| 売上総利益 | 226億円 | 234億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.8% | 24.1% |
| 営業利益 | 59億円 | 57億円 |
| 営業利益率(%) | 6.2% | 5.9% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料手当・賞与が56億円(構成比32%)、研究開発費が36億円(同20%)を占めています。
■(3) セグメント収益
国内計測制御事業は、ソリューション事業の拡大等により微増収となりました。海外計測制御事業は、オセアニア向けの出荷増等により増収となりました。不動産事業は、物件売却の影響により減収となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 国内計測制御事業 | 552億円 | 561億円 |
| 海外計測制御事業 | 394億円 | 406億円 |
| 不動産事業 | 5億円 | 5億円 |
| 調整額 | -14億円 | -13億円 |
| 連結(合計) | 951億円 | 971億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであることから、本業で稼いだ資金で借入金の返済や株主還元を行いつつ、必要な投資も実施している「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 42億円 | 69億円 |
| 投資CF | -29億円 | -12億円 |
| 財務CF | -30億円 | -30億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は51.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「見えないものを見える化し、社会に新たな価値を生み出す」を経営理念およびパーパスとして掲げています。創業以来の電力量計による「電力の見える化」に加え、今後は電力以外の領域でも見える化を通じて社会課題を解決し、社会に役立つ新たな価値を創出することで、持続的な成長を目指しています。また、ビジョンとして「Global Energy Solution Leader」を掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、新たな価値創出のために大切にする価値観として、「挑戦」「迅速」「革新」「社会貢献」を定めています。これまでの安定的な事業運営で培われた調和や秩序を尊重しつつも、社会への新たな価値提供に向けて果敢に行動し、変化に対応できる自律的な人材や組織風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
同社は3か年の中期経営計画(2024年度~2026年度)を策定しており、グループシナジーを活かしてスマートメーターを主軸としつつ、脱炭素社会の実現などの社会課題に対するソリューション提供を通じて成長を目指しています。
* 売上高1,000億円
* 営業利益90億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益55億円
* ROE(自己資本当期純利益率)10.0%
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画の達成に向け、スマートメーターを基盤とした社会インフラへの付加価値提供と、顧客のDXや脱炭素化を支援するソリューション事業の拡大を重点施策としています。国内では第2世代スマートメーターへの対応やスマートロック等の導入拡大を進め、海外では高付加価値ソリューションの提供や産業用メーターの強化等により収益性を高める方針です。
* 国内:第2世代スマートメーターの生産体制構築、GXサービスやスマートロックの拡大
* 海外:スマートメーターと上位系システムのセット販売推進、高付加価値化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「仕事という経験の場、学びの機会の付与を通じて主体性を培い、自律型人材を育成する」ことを人材育成方針としています。また、ビジョン実現のためには価値創出に挑戦する人材が不可欠と考え、採用戦略の見直しや、職種別スキルセットの導入、DX推進人材の育成などに注力しています。さらに、人権尊重を基盤とした「個が輝く職場環境づくり」を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.8歳 | 15.9年 | 6,776,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.8% |
| 男性育児休業取得率 | 85.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 67.5% |
| 男女賃金差異(非正規) | 58.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒求職者に占める女性の割合(39.6%)、離職率(2.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 需要変動のリスク
製品需要は各国の政治・経済状況や政策、主要顧客の設備投資計画などに大きく影響を受けます。特に主力製品であるスマートメーターは、法制度や更新サイクルにより需要が変動する特性があります。同社は市場や顧客の分散化、新製品による需要喚起に努めていますが、著しい需要変動があった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 価格競争のリスク
主力製品のスマートメーター市場には国内外の有力企業が参入しており、価格競争が激化するリスクがあります。同社は品質や付加価値で差別化を図っていますが、競争回避は完全ではなく、価格の大幅な下落や想定以下の価格での販売を余儀なくされた場合、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(3) サプライチェーンに関するリスク
部材調達において、需給逼迫や地政学的リスクにより必要な部材をタイムリーに確保できない場合や、顧客の方針変更により在庫が滞留するリスクがあります。また、原材料価格や物流コストの高騰を製品価格に転嫁できない場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。



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