※本記事は、東京コスモス電機株式会社の有価証券報告書(第69期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. 東京コスモス電機ってどんな会社?
同社は、長年培った角度センサ等の技術を基盤に、可変抵抗器や車載用電装部品を提供するエレクトロニクスメーカーです。
■(1) 会社概要
1957年に東京コスモス電機として設立され、可変抵抗器の製造販売を開始しました。1961年に東京証券取引所市場第2部に上場を果たし、2022年にスタンダード市場へ移行しています。近年では1984年の米国拠点設立に続き、台湾、香港、中国へ相次いで子会社を設立し、グローバルな生産・販売体制を構築しています。
同社グループの従業員数は連結で601名、単体で99名となっています。筆頭株主はBRIDGESTREAM LIMITED, AS TRUSTEE OF AXC STRATEGIC OPPORTUNITIES(常任代理人 立花証券)で、第2位は成成です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| BRIDGESTREAM LIMITED, AS TRUSTEE OF AXC STRATEGIC OPPORTUNITIES(常任代理人 立花証券) | 21.53% |
| 成成 | 15.59% |
| BRIDGESTREAM LIMITED, AS TRUSTEE OF AXC STRATEGIC OPPORTUNITIES(常任代理人 立花証券) | 10.93% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は若林勇人氏が務めています。社外取締役比率は50%(10名中5名)です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 若林 勇人 | 代表取締役社長 | パナソニックを経てJ.フロントリテイリングの執行役常務などを歴任。2025年に同社代表取締役副社長COOとなり、2026年より現職。 |
| 門田 泰人 | 代表取締役 取締役会議長 | UBS証券やドイツ証券などで投資銀行業務に従事。ローン・スター・ジャパンなどを経て2025年に同社代表取締役社長に就任し、2026年より現職。 |
| 大河内 尚志 | 取締役副社長 | 三井住友銀行、日本電気等を経てヤクルト本社やニデックに勤務。神明電機代表取締役社長などを経て2025年に同社専務取締役となり、2026年より現職。 |
| 西立野 竜史 | 取締役副社長Chief Transformation Officer(最高変革責任者) | ボストン・コンサルティング・グループやベインキャピタルなどに在籍。ミツカンホールディングス顧問などを経て2025年に同社常務取締役となり、2026年より現職。 |
| 岩﨑 勝也 | 取締役(監査等委員) | 日本電気で生産管理業務等に従事後、NECプラットフォームズ執行役員等を経て2023年同社顧問。車載事業本部副本部長などを経て2026年より現職。 |
社外取締役は、李秀鵬(大連鵬成食品董事長)、黄聖遼(上海神明電機副総経理)、大木真(キャピタリンク・パートナーズ代表取締役)、伊勢谷直樹(フィッチ・レーティングス・ジャパンシニア・ダイレクター)、柳陽(柳・チャイナロー外国法律事務弁護士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「可変抵抗器」および「車載用電装部品」の報告セグメントを展開しています。
■(1) 可変抵抗器
産業機器や民生機器向けの可変抵抗器および半固定抵抗器の製造・販売を行っています。顧客の多様なニーズに対応し、小ロット・多品種での供給と高付加価値製品の開発に注力している点が特徴です。
収益源は、国内外のメーカーや商社への製品販売による対価です。製造は同社が国内の各工場で行うほか、白河コスモス電機、中津コスモス電機、会津コスモス電機、および中国の広州東高志電子有限公司などが組み立てを担い、販売網を通じて製品を供給しています。
■(2) 車載用電装部品
自動車用のポジションセンサ、角度センサ、および車載用フィルムヒーターなどの製造・販売を行っています。自動車の電動化(EV化)や脱炭素化に伴う電源技術の高効率化・小型軽量化ニーズに応える製品を提供しています。
収益源は、国内外の自動車部品メーカー(システムサプライヤー等)への製品販売です。運営は同社が主体となり、白河コスモス電機や中津コスモス電機などの国内子会社に加えて、中国の煙台科思摩思電機有限公司や広州東高志電子有限公司が製造拠点を担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は100億円前後で推移していましたが、当期は96億円へと減少しました。経常利益についても、数年前には14億円から15億円台を記録していましたが、当期は5億円まで落ち込んでおり、減収減益の傾向となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 95億円 | 107億円 | 104億円 | 105億円 | 96億円 |
| 経常利益 | 9億円 | 15億円 | 14億円 | 10億円 | 5億円 |
| 利益率(%) | 9.3% | 14.2% | 13.5% | 9.8% | 4.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 5億円 | 10億円 | 8億円 | 8億円 | 5億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の減少に伴い、売上総利益も前年の29億円から23億円へと縮小しています。売上総利益率も27.8%から23.8%へ低下し、それに伴い営業利益は10億円から5億円へと半減する結果となりました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 105億円 | 96億円 |
| 売上総利益 | 29億円 | 23億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.8% | 23.8% |
| 営業利益 | 10億円 | 5億円 |
| 営業利益率(%) | 9.9% | 4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が5億円(構成比30%)、支払手数料が3億円(同17%)を占めています。
■(3) セグメント収益
両セグメントともに減収となっており、特に可変抵抗器事業は中国経済の低迷による生産設備向け需要の減少等が響き、売上が落ち込みました。車載用電装部品事業も主要取引先の一部生産モデル終了の影響を受けています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 可変抵抗器 | 42億円 | 36億円 |
| 車載用電装部品 | 62億円 | 60億円 |
| その他 | 1億円 | - |
| 連結(合計) | 105億円 | 96億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業(健全型)のキャッシュ・フロー状態となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 12億円 | 5億円 |
| 投資CF | -2億円 | -2億円 |
| 財務CF | -12億円 | -8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は0.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「開かれた透明性のある企業」「社会の負託に応えられる企業」「働きがいのある企業」「環境に配慮した企業」を経営理念に掲げています。また、「地域社会との信頼関係を築き 従業員にはチャンスと達成の喜びを お客様には安心と感動を 地球には優しさと潤いを与え続ける」ことを社会的役割(CSRビジョン)と位置付けています。
■(2) 企業文化
同社グループは、長年培ってきた角度センサ・フィルムヒーター・可変抵抗器の技術を礎に、エレクトロニクス業界におけるプロフェッショナル集団として事業を展開しています。縮小均衡の懸念を断ち切り、従業員一人ひとりが働きがいを感じて挑戦できる組織文化の醸成を重視し、人的資本の強化と組織・ガバナンスの変革を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
2026年度から2030年度までの5カ年を期間とする「新中期経営計画」を策定し、最終年度において以下の経営目標の達成を目指しています。また、次期中期経営計画(2036年3月期)を見据え、売上高150億円規模の強靭な事業構造の構築に取り組んでいます。
・売上高:125億円(M&A含まず)
・営業利益:15億円(M&A含まず)
・営業利益率:12%
・ROE:10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
従来の縮小均衡経営から脱却し、成長に向けた積極的な投資を実行する方針です。ASEAN市場における生産能力の増強や新製品開発、M&Aを戦略的に進め事業規模を拡大します。また、可変抵抗器事業ではオペレーション効率化を図り、車載・産業機器向け製品では独自の付加価値を磨き上げることで「スーパーTier2」としての地位確立を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、コンピテンシーに基づき求める人材像を明確化し、競争力を支える技術人材の強化と次世代リーダーの育成を推進しています。具体的には、eラーニング等による学習機会の提供や実践型教育、階層別教育を実施し、人事評価システムや報酬体系の刷新も進めることで、多様な人材が活躍できる職場環境の整備を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.9歳 | 11.3年 | 6,411,044円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.1% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 70.7% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 48.7% |
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(10.0%)、年次有給休暇取得率(75.1%)、一人当たり平均残業時間(12.63時間/月)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済環境の変化と為替変動リスク
世界経済の先行き不透明感や中国経済の低迷、原材料・エネルギー価格の上昇が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、同社グループの海外生産・販売活動においては、可能な限り現地調達や円建取引を行う等の対策を講じていますが、急激な為替変動が業績や財務状況に悪影響を与えるリスクがあります。
■(2) 技術革新における競争と品質リスク
高電圧駆動など高い安全性が求められるヒータ分野や、環境対応(Pbフリー化等)が求められるポテンショメータ分野において、開発の遅延や環境規制物質の変更対応の遅れが業績に影響する可能性があります。また、競合他社の技術進歩による販売価格競争の激化もリスクとして認識されています。
■(3) 人材確保に関するリスク
労働人口の減少や人材獲得競争の激化により、必要な人材を安定的に確保することが年々困難になっています。特に専門性の高い人材の採用・定着が進まない場合、事業推進や生産性に影響を及ぼし、業績や持続的な成長に支障をきたす可能性があります。
■(4) 特定販売先への依存リスク
同社グループは販売顧客の拡大に努めていますが、連結売上高の4分の1相当が車載用電装部品関連の主要顧客である東亜電気工業向けとなっています。同社で取り扱う部品構成の変更や協力会社との取引方針変更等が発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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