※本記事は、東京コスモス電機株式会社 の有価証券報告書(第68期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京コスモス電機ってどんな会社?
可変抵抗器や車載用電装部品を主力とする電子部品メーカー。海外展開も進め、グローバルに事業を展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1957年に設立され、可変抵抗器の製造販売を開始しました。1961年には東京証券取引所市場第2部に上場を果たします。1972年以降、白河コスモス電機をはじめとする製造子会社を設立し、生産体制を強化しました。1984年には米国に販売拠点を設立するなど海外展開も進め、2022年に東証スタンダード市場へ移行しました。
連結従業員数は629名、単体では88名の体制です。筆頭株主は成成で、第2位は海外の投資ファンド、第3位は取引先持株会です。なお、2025年6月、親会社となる予定のBourns Japan Holdings LLCによる公開買付けへの賛同および応募推奨を決議しており、一連の手続きを経て上場廃止となる予定です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 成成 | 15.41% |
| GLOBAL ESG STRATEGY | 7.92% |
| コスモス取引先持株会 | 7.19% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長兼取締役会議長は門田泰人氏です。社外取締役比率は66.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 門田 泰人 | 代表取締役社長 兼 取締役会議長 | UBS証券等を経て、Swiss-Asia Financial Services最高投資責任者等を歴任。2025年6月より現職。 |
| 若林 勇人 | 代表取締役副社長COO | 松下電器産業(現パナソニック)、J.フロントリテイリング執行役常務等を経て、2025年6月より現職。 |
| 大河内 尚志 | 専務取締役 海外事業担当 | 三井銀行、日本電産(現ニデック)等を経て、神明電機代表取締役社長等を歴任。2025年6月より現職。 |
| 西立野 竜史 | 常務取締役 Chief Transformation Officer | ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、アクソンホールディングス代表取締役社長。2025年6月より現職。 |
社外取締役は、李秀鵬(旭計器会長)、伊勢谷直樹(元三菱UFJ証券HD常務)、黄聖遼(上海神明電機副総経理)、大木真(キャピタリンク代表取締役)、山本隆章(元NECマネジメントP常務)、小野正典(弁護士)、森田貴子(税理士)、山口鐘畿(元キョウデン社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「可変抵抗器」「車載用電装部品」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 可変抵抗器
同社は、産業機器用および民生機器用の可変抵抗器や半固定抵抗器を提供しています。これらは電子機器の電圧や電流を調整するための重要な電子部品であり、幅広い産業分野の顧客に対して製品を供給しています。
収益は、主に電子機器メーカーや部品商社等の顧客からの製品販売代金により得ています。運営は主に東京コスモス電機が販売を担い、製造は白河コスモス電機等の連結子会社が外注組立を行っています。
■(2) 車載用電装部品
自動車用のポジションセンサ、角度センサ、車載用フィルムヒーターなどを提供しています。自動車の電装化が進む中で重要性が高まっている製品群であり、国内外の自動車関連メーカーを主な顧客としています。
収益は、自動車部品メーカー等の顧客からの製品販売代金により得ています。運営は主に東京コスモス電機が販売を行い、製造は白河コスモス電機や煙台科思摩思電機有限公司などの連結子会社が担当しています。
■(3) その他事業
上記報告セグメントに含まれない事業として、混合集積回路や生産設備、金型、各種スイッチなどの取り扱いを行っています。特定のニーズに対応した製品や設備関連の事業を展開しています。
収益は、顧客からの製品販売や設備関連の対価として得ています。運営は主に東京コスモス電機が販売を行い、製造は白河コスモス電機など複数の連結子会社が外注組立として関与しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は79億円から105億円へと拡大傾向にあります。経常利益も一時15億円台まで伸長しましたが、直近では10億円台で推移しています。当期純利益は黒字を維持していますが、直近2期は減益傾向が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 79億円 | 95億円 | 107億円 | 104億円 | 105億円 |
| 経常利益 | 2.0億円 | 8.9億円 | 15.2億円 | 14.0億円 | 10.3億円 |
| 利益率(%) | 2.6% | 9.3% | 14.2% | 13.5% | 9.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -2.1億円 | 5.0億円 | 9.9億円 | 8.3億円 | 7.1億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高はほぼ横ばいですが、売上原価率は改善傾向にあります。一方で、販売費及び一般管理費が増加したことにより、営業利益および営業利益率は低下しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 104億円 | 105億円 |
| 売上総利益 | 28億円 | 29億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.4% | 27.8% |
| 営業利益 | 13億円 | 10億円 |
| 営業利益率(%) | 12.1% | 9.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が5億円(構成比29%)、支払手数料が4億円(同19%)を占めています。売上原価は76億円で、売上高に対する構成比は72%となっています。
■(3) セグメント収益
各セグメントの状況を見ると、可変抵抗器事業は増収増益となり安定しています。車載用電装部品事業も増収増益で、売上規模では最大です。一方、その他事業は減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 可変抵抗器 | 41億円 | 42億円 | 11億円 | 12億円 | 27.9% |
| 車載用電装部品 | 61億円 | 62億円 | 9億円 | 10億円 | 15.5% |
| その他 | 2億円 | 1億円 | 1億円 | 1億円 | 45.6% |
| 連結(合計) | 104億円 | 105億円 | 13億円 | 10億円 | 9.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 16億円 | 12億円 |
| 投資CF | -2億円 | -2億円 |
| 財務CF | -21億円 | -12億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は63.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「開かれた透明性のある企業」「社会の負託に応えられる企業」「働きがいのある企業」「環境に配慮した企業」を経営理念に掲げています。また、地域社会との信頼関係構築や従業員へのチャンス提供などを通じ、エレクトロニクス業界での飛躍を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、サステナビリティ経営の強化を推進し、角度センサ・フィルムヒーター・可変抵抗器のプロフェッショナルとしての地位確立を目指す文化を持っています。変化する事業環境に適応し、本業を通じて社会課題の解決に貢献することで、持続可能な企業であり続けることを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2025年3月期から2027年3月期までの第2次中期経営計画を策定しています。この期間を次期計画への基盤強化の3年間と位置づけ、経営目標達成状況を判断する客観的な指標としてROA(総資産経常利益率)を採用しています。
* ROA(2027年3月期目標):9%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は第2次中期経営計画において、技術開発力強化、収益力強化、財務体質改善、株主還元強化の4つに取り組んでいます。特に技術開発では新技術の創出やR&Dへの資源投入を進め、収益力強化では製品の高付加価値化や生産体制の再構築、DX・AI活用による生産性改善を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本経営を持続的成長の基盤と捉え、「多様な人材の獲得と登用」「成長支援(特に管理職育成)」「安心・安全な職場環境の構築」を重点分野としています。女性管理職比率向上や柔軟な働き方の見直し、360度フィードバック制度の設計などを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.7歳 | 12.7年 | 6,459,673円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.0% |
| 男性育児休業取得率 | 0.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 66.6% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 65.4% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定販売先への依存
同社グループの連結売上高の約4分の1は、車載電装部品関連の主要顧客である東亜電気工業向けとなっています。同社とは良好な関係を保持していますが、部品構成の変更や取引方針の変更等が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 技術革新と環境規制への対応
ヒーター分野での高電圧駆動化やポテンショメータの鉛フリー化など、市場ニーズへの対応が必要です。また、環境規制物質の増加に伴う材料や部品の変更(4M変更)が急増しており、開発の遅延や変更手続きの停滞が生じた場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 原材料価格の変動及び調達
製品には調達の多くを海外に依存している原材料が含まれています。急激な原材料価格の変動や供給停滞、あるいは為替相場の変動などが生じた場合、コスト増加等により業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。



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