※本記事は、ホシデン株式会社 の有価証券報告書(第75期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ホシデンってどんな会社?
同社は、コネクタやスイッチなどの機構部品、マイクなどの音響部品を手掛ける総合電子部品メーカーです。
■(1) 会社概要
1947年に古橋製作所として創業し、1950年に星電器製造として法人化しました。1960年に音響部品、1963年に大阪証券取引所市場第二部へ上場し、1990年に現社名であるホシデンへ変更しました。2022年の市場区分見直しに伴い、東京証券取引所プライム市場へ移行しています。
連結従業員数は8,791名、単体では582名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も信託銀行の退職給付信託口です。第3位には生命保険会社である日本生命保険が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.78% |
| みずほ信託銀行退職給付信託みずほ銀行口再信託受託者日本カストディ銀行 | 4.98% |
| 日本生命保険(相) | 4.63% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は古橋健士氏です。社外取締役比率は37.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 古橋 健士 | 代表取締役社長 | 1978年入社。生産事業本部長、専務取締役などを経て、1991年より現職。 |
| 堂地 龍 | 取締役営業本部長 | 1986年入社。ホシデンシンガポールマネイジャー、執行役員車載営業統括部長、国内営業本部長などを経て、2024年より現職。 |
| 佐藤 真吾 | 取締役一般事業本部長 | 1992年入社。星電高科技(青島)総経理、第二生産統括部長などを経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、丸野進(元パナソニックホールディングス理事)、小西ゆかり(元パナソニックホールディングス上席理事)、平澤裕紀子(平澤裕紀子税理士事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「機構部品」「音響部品」「表示部品」「複合部品その他」の各報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■機構部品
コネクタ、ジャック、スイッチなどの開発・製造販売を行っており、同社の主力事業です。主な顧客は国内外のセットメーカーであり、特にアミューズメント関連や移動体通信関連、自動車関連向けに製品を供給しています。
収益は、これらの電子部品をセットメーカー等へ販売することによる対価を得ています。運営は主にホシデンおよびホシデン精工、ホシデン和歌山、ホシデン化成などの国内外の子会社が行っています。
■音響部品
マイクロホン、ヘッドホン、ヘッドセット、スピーカー、レシーバーなどの開発・製造販売を行っています。自動車関連向けなどの需要に対応しており、防水マイクAssyなどの製品を展開しています。
収益は、音響関連部品をセットメーカー等へ販売することによる対価を得ています。運営は主にホシデンおよびホシデン九州、ホシデンベソン、ホシデンインディアなどの国内外の子会社が行っています。
■表示部品
タッチパネルなどの表示関連部品の開発・製造販売を行っています。車載関連や産業機器向けなどに製品を供給しています。
収益は、タッチパネル等の表示部品をセットメーカー等へ販売することによる対価を得ています。運営は主にホシデンおよびホシデンエフ・ディ、ホシデンヨーロッパなどの国内外の子会社が行っています。
■複合部品その他
上記の区分に属さない複合機器や、健康機器関連、IoE向けセンサ・ユニットなどの開発・製造販売を行っています。
収益は、複合機器やセンサモジュール等をセットメーカー等へ販売することによる対価を得ています。運営は主にホシデンおよびホシデン化成、ホシデンシンガポールなどの国内外の子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は2,000億円台で推移しており、直近の2025年3月期には2,476億円まで伸長しました。経常利益も140億円台から180億円台で推移しており、比較的安定した収益力を維持しています。当期純利益も60億円から140億円の範囲で確保しており、黒字経営を継続しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,339億円 | 2,076億円 | 2,772億円 | 2,189億円 | 2,476億円 |
| 経常利益 | 134億円 | 158億円 | 190億円 | 182億円 | 148億円 |
| 利益率(%) | 5.7% | 7.6% | 6.8% | 8.3% | 6.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 92億円 | 141億円 | 94億円 | 76億円 | 67億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加し、売上総利益も微増となりましたが、売上総利益率は若干低下しました。営業利益は増加しており、営業利益率も一定水準を維持しています。全体として、売上の増加が利益の確保に寄与している構造が見て取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,189億円 | 2,476億円 |
| 売上総利益 | 227億円 | 231億円 |
| 売上総利益率(%) | 10.4% | 9.4% |
| 営業利益 | 129億円 | 136億円 |
| 営業利益率(%) | 5.9% | 5.5% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が38億円(構成比40%)、荷造運搬費が13億円(同13%)を占めています。売上原価においては、製品製造に関わる材料費や労務費などが計上されています。
■(3) セグメント収益
機構部品セグメントはアミューズメント関連等の好調により増収増益となりました。音響部品も自動車関連向けが増加し増収増益です。一方、表示部品は減収となり赤字が継続、複合部品その他は減収減益となりました。全体としては機構部品が収益を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 機構部品 | 1,849億円 | 2,147億円 | 93億円 | 108億円 | 5.0% |
| 音響部品 | 202億円 | 210億円 | 15億円 | 19億円 | 8.8% |
| 表示部品 | 25億円 | 22億円 | -4億円 | -3億円 | -12.3% |
| 複合部品その他 | 114億円 | 97億円 | 25億円 | 12億円 | 12.4% |
| 連結(合計) | 2,189億円 | 2,476億円 | 129億円 | 136億円 | 5.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
末期型
※本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 269億円 | -182億円 |
| 投資CF | -83億円 | -59億円 |
| 財務CF | -79億円 | -53億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、電子部品メーカーとして市場が求めるものを、先進の技術力と徹底した品質保証体制に支えられた高性能・高品質な製品をタイムリーに供給することにより、エレクトロニクス市場の発展に貢献することを経営方針としています。また、独創性の高い先端技術で顧客の企業戦略をサポートし、世界のエレクトロニクス市場の発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、地球環境に配慮した活動を推進する文化を持ち、ISO14001の取得や製品の省電力化、軽量化、環境管理物質の低減・全廃に取り組んでいます。また、カーボンニュートラルへの対応を企業の責務と認識し、積極的な取り組みと適切な情報開示を進める姿勢を重視しています。ESG経営やSDGsへの貢献にも積極的に取り組む方針です。
■(3) 経営計画・目標
同社は、売上高及び営業利益を経営上の目標として掲げています。技術面では、技術中期(3年)計画の達成に向け、過去技術の棚卸と自社製品の強みの再構築を進め、開発のスピードアップと効率化を図っています。資本コストや株価を意識した経営においては、ROEと株主資本コストの差をエクイティスプレッドと捉え、企業価値の創造に取り組んでいます。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、ASEANを中心とした生産拠点の増強・新設を検討するとともに、経営の効率化とスピードアップ、機械化・自動化・省人化による生産性向上と原価力強化を推進しています。技術面では、機構設計、高周波設計、音響設計などのコア技術を進化させ、モジュール新製品やIoE向けセンサ・ユニットなど、市場ニーズに対応した独自技術製品の開発を強力に進める方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、少子高齢化や労働人口減少などの社会課題に対し、IoE製品開発などで貢献することを目指しています。人材不足の中で多様性の確保と人材育成を重要なサステナビリティ項目と位置づけ、女性や外国人、シニア社員が活躍できるフィールドの整備を進めています。また、階層別・機能別教育やグローバル人材教育を通じて、自主・自立・自己責任型の「強い社員」の育成に注力しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 48.6歳 | 24.3年 | 6,856,088円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 72.7% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 67.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 67.0% |
※女性管理職比率について、同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒における女性採用者の割合(2025年4月入社 5%)、扶養配偶者が人間ドックを受診した割合(70.4%)、通信教育修了率(80%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 技術革新と需要動向
エレクトロニクス業界の頻繁な技術革新により製品が陳腐化する可能性があります。また、売上高の57.4%は任天堂に対するものであり、同社からの受注動向やアミューズメント機器の需要動向が業績に影響を与える可能性があります。魅力ある新製品を開発できない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料の価格変動と供給状況
製品には種々の金属や石油化学製品が使用されており、これらの急激な価格高騰や供給状況の悪化が生産やコストに重大な影響を及ぼす可能性があります。実際に原材料価格の高騰が続いており、業績への影響が懸念されています。
■(3) 物流に関するリスク
製品の生産・販売には材料・部品の納入や顧客への納品が必要ですが、物流の停滞や輸送費の高騰がリスクとなります。世界的な船便の遅れやコンテナ不足などが業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 海外事業に関するリスク
生産・販売活動の相当部分をアジア、アメリカ、ヨーロッパ等で行っており、各国の政治・経済要因、法規制の変更、増税、社会的混乱などの影響を受ける可能性があります。特に米国の通商政策変更による関税引き上げ等は、製品の価格競争力低下を招く恐れがあります。



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