※本記事は、ホシデン株式会社 の有価証券報告書(第76期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ホシデンってどんな会社?
電子部品の開発および製造販売をグローバルに展開するメーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1947年に創業し、1950年に星電器製造として設立されました。1990年に現在のホシデンへ社名変更しています。1992年に東京証券取引所市場第一部に上場し、現在はプライム市場に所属しています。コネクタやマイクロホンをはじめとする機構部品・音響部品の開発・製造を軸に、アジアや欧州など世界各地に事業を展開しています。
現在の従業員数は連結で8,465名、単体で569名体制です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も同様に信託業務を担うみずほ信託銀行退職給付信託みずほ銀行口再信託受託者日本カストディ銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.70% |
| みずほ信託銀行退職給付信託みずほ銀行口再信託受託者日本カストディ銀行 | 4.98% |
| 日本生命保険(常任代理人:日本マスタートラスト信託銀行) | 4.79% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は古橋健士氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 古橋健士 | 代表取締役社長 | 1978年入社。生産業務部長、海外業務部長、生産事業本部長、専務取締役などを歴任し、1991年より現職。 |
| 堂地龍 | 取締役営業本部長 | 1986年入社。ホシデンシンガポールマネイジャー、車載営業統括部長、国内営業本部長などを歴任し、2024年より現職。 |
| 佐藤真吾 | 取締役一般事業本部長 | 1992年入社。星電高科技(青島)総経理、第二生産統括部長、執行役員一般事業本部長などを歴任し、2025年より現職。 |
社外取締役は、丸野進(元松下電器産業先端技術研究所技監)、小西ゆかり(元パナソニック上席理事コーポレートコミュニケーション本部本部長)、平澤裕紀子(平澤裕紀子税理士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「機構部品」「音響部品」「複合部品その他」事業を展開しています。
■機構部品
コネクタ、ジャック、スイッチなどの機構部品を開発・製造し、国内外のセットメーカーに提供しています。特にアミューズメント関連機器や自動車向けの車載用電子機器などに幅広く採用され、事業の中核を担う製品群を展開しています。
製品の販売による収益を主な収入源としています。事業の運営はホシデンを中心に、ホシデン精工やアジアを中心とする海外の各生産・販売子会社が連携して行っています。
■音響部品
マイクロホン、ヘッドホン、ヘッドセット、スピーカー、レシーバーなどの音響部品を開発・製造し、多様なセットメーカーに供給しています。スマートフォンをはじめとする移動体通信機器や車載機器向けの需要に的確に対応しています。
音響関連製品の販売による収益を主な収入源としています。事業の運営はホシデンを中心に、ホシデン九州やホシデンベソンなど国内外のグループ子会社が共同で推進しています。
■複合部品その他
機構部品や音響部品に属さない複合機器の開発・製造を行っています。IoT関連製品として社会課題の解決に資するマルチセンサモジュールや、健康機器関連向け製品など、顧客の多様なニーズに応える先端技術を取り入れた製品を提供しています。
複合機器製品の販売による収益を主な収入源としています。事業の運営はホシデンを中心に、ホシデンエフ・ディやその他の連結子会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は需要変動の影響を受けつつも、直近では大幅な増加を示しています。経常利益は安定して100億円以上を確保しており、当期は円安による為替差益等も寄与して大きく伸長しました。利益率は5〜8%台で堅調に推移しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,076億円 | 2,772億円 | 2,189億円 | 2,476億円 | 4,483億円 |
| 経常利益 | 158億円 | 190億円 | 182億円 | 148億円 | 246億円 |
| 利益率(%) | 7.6% | 6.8% | 8.3% | 6.0% | 5.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 141億円 | 94億円 | 76億円 | 67億円 | 116億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の急増に伴い、売上総利益と営業利益の金額も大きく増加しました。一方で利益率については、原材料価格の高騰や製品構成の変化などの要因により、前年と比較して低下傾向にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,476億円 | 4,483億円 |
| 売上総利益 | 231億円 | 292億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.3% | 6.5% |
| 営業利益 | 136億円 | 192億円 |
| 営業利益率(%) | 5.5% | 4.3% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が39億円(構成比39%)、荷造運搬費が14億円(同14%)、支払手数料が11億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
機構部品はアミューズメント関連や自動車向けの需要増加により売上が大幅に伸長し、全体の成長を牽引しています。音響部品は自動車関連向けの減少で減収となりましたが、複合部品その他は堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 機構部品 | 2,125億円 | 4,143億円 |
| 音響部品 | 210億円 | 194億円 |
| 複合部品その他 | 140億円 | 145億円 |
| 連結(合計) | 2,476億円 | 4,483億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金を投資や借入金の返済に充てる「健全型」の傾向を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -182億円 | 345億円 |
| 投資CF | -59億円 | -64億円 |
| 財務CF | -53億円 | -86億円 |
企業の収益力を測るROEは11.2%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も69.8%といずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「優れた技術力で世界のテクノロジーの進化を支え、持続的な社会の発展に貢献する」ことを企業理念としています。電子部品産業は現在および将来の社会において不可欠な存在であると確信し、その部品生産を通じて世界の人々の豊かで快適な暮らしの向上に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
常に市場が求めるものを先進の技術力と徹底した品質保証体制に支えられた高性能・高品質な製品をタイムリーに供給する姿勢を重視しています。また、ESG経営やSDGsへの貢献を世界的な流れと捉え、サステナビリティ活動やカーボンニュートラルの実現に向けた積極的な取り組みを推進する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
売上高および営業利益を経営上の目標として設定しています。ROEについては8%程度を達成することが一般的に期待される中で、同社は8%超の水準を維持しています。また、資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、ROEと株主資本コストの差をエクイティスプレッドと捉え、企業価値の創造に取り組んでいます。
■(4) 成長戦略と重点施策
AI技術やADAS等の普及による車載電子機器の高機能化や、IoE関連市場の拡大を見据え、コア技術である機構設計や高周波設計技術等を進化させます。また、ASEANを中心とした生産拠点の増強を行い、産業用ロボットの活用等による自動化・省人化を推し進め、コスト削減と品質の安定化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材育成を将来の成長に資する重要な投資と位置付けています。社員一人ひとりの主体的な成長意欲を基盤とし、自律的な能力開発を後押しする制度を整備しています。また、多様な価値観を尊重し、女性や外国人、シニア社員が活躍できるフィールドを整え、「多様性」と「個別最適」を両立した人材配置を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 48.6歳 | 24.4年 | 6,826,486円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | - |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 67.7% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 67.3% |
※同社および連結子会社は女性管理職比率について公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、階層別研修の受講者満足度(3.9点)、通信教育修了率(72.0%)、月当たり1人平均残業時間(12.2時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 物流に関するリスク
製品の生産・販売に必要な材料や部品の納入、顧客への納品において、物流の停滞や輸送費の高騰が発生した場合、同社グループの生産体制やコストに直接的な影響が及び、業績に悪影響を与える可能性があります。
■(2) 海外事業に関するリスク
生産や販売活動の大部分をアジアや欧州などの海外で行っているため、不利な政治・経済要因や予期せぬ法規制の変更、地政学リスク等による社会的混乱などが事業展開の障壁となるリスクがあります。
■(3) 環境関連の規制強化に関するリスク
カーボンニュートラルやSDGsへの対応は顧客からも強く求められており、これらの取り組みが遅れた場合、顧客からの受注削減等の影響を受けるリスクがあります。同社は環境対策を積極的に推進して対応を図っています。



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