※本記事は、大同信号株式会社の有価証券報告書(第80期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 大同信号ってどんな会社?
大同信号は、1929年創業の歴史を持ち、鉄道の安全と安定輸送を支える鉄道信号保安装置の老舗メーカーです。
■(1) 会社概要
1929年に鉄道信号保安装置用機器の製造販売を目的として創業し、1949年に独立して設立されました。1962年には東京証券取引所に上場を果たし、その後も事業拠点の拡大や関連会社の設立を進めました。2011年には三工社を連結子会社化し、現在に至るまで鉄道の安全を支える事業基盤を強固にしています。
現在の従業員数は連結で917名、単体で530名体制となっています。筆頭株主は事業会社の日本電設工業で、第2位は大同信号取引先持株会、第3位は金融機関である朝日生命保険相互会社となっています。事業会社や取引先等との安定した関係性を背景に、着実な事業運営が行われています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本電設工業 | 14.93% |
| 大同信号取引先持株会 | 5.54% |
| 朝日生命保険相互会社 | 4.46% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性0名の計10名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は浦壁俊光氏が務めており、社外取締役の比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 浦壁俊光 | 代表取締役社長経営統括部担当 | 東日本旅客鉄道に入社後、執行役員技術イノベーション推進本部統括等を歴任。2022年より大同信号上席執行役員等を務め、2024年より現職。 |
| 宇佐美芳夫 | 専務取締役品質管理部・産業機器システム部・産業機器製造部担当 | 1985年に大同信号に入社後、技術生産本部検査部長、常務取締役等を歴任。2024年より現職。 |
| 西牧英雄 | 常務取締役上席執行役員 技術本部長、技術管理部・第二技術部・第三技術部・海外システム技術部担当 | 1982年に大同信号に入社後、技術生産本部第三技術部長、執行役員等を歴任。2026年より現職。 |
| 佐藤盛三 | 取締役相談役 | 日本国有鉄道入社後、東日本旅客鉄道で東京電気システム開発工事事務所長等を歴任。2020年に大同信号代表取締役社長に就任し、2025年より現職。 |
社外取締役は、二村浩一(山下・柘・二村法律事務所代表弁護士)、越前和久(日本電設工業執行役員)、松田邦夫(清和中央ホールディングス取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「鉄道信号関連事業」「産業用機器関連事業」「不動産関連事業」を展開しています。
■(1) 鉄道信号関連事業
主に鉄道事業者を顧客とし、列車の運行管理装置や電子連動装置などのシステム製品、および踏切障害物検知装置などのフィールド製品の製造・販売、ならびに設置工事や保守サービスを提供しています。
各種製品の販売および設置工事の請負による対価を主な収益源としています。事業の運営は大同信号が主体となり、子会社の三工社、大同電興、大同信号電器、大同テクノサービスと連携して各業務を推進しています。
■(2) 産業用機器関連事業
公共設備、特殊自動車、自動車生産ラインおよび鉄道車両向けなどの各種産業用情報通信機器、交通信号機器、ガス検知器などの製造および販売を行っています。
各種機器の販売代金を主な収益源としています。事業の運営は大同信号が担うほか、子会社の三工社が交通信号機器等を、大同信号化工が可塑成形製品や金属表面処理等をそれぞれ担当して展開しています。
■(3) 不動産関連事業
法人等のテナントを対象に、同社グループが保有する土地や建物の賃貸サービスを提供し、不動産の有効活用を図っています。
入居テナントから毎月支払われる不動産賃貸料を収益源としています。不動産賃貸の運営は、大同信号のほか、子会社の三工社および大同信号電器が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、一時的な落ち込みを経て増収増益基調へと力強く転じています。特に最新期では売上高が250億円を突破し、経常利益も大幅に増加して利益水準が一段と高まりました。鉄道事業者による設備更新ニーズを的確に捉えたことが、近年の業績拡大に大きく寄与しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 222億円 | 195億円 | 208億円 | 219億円 | 257億円 |
| 経常利益 | 15億円 | 10億円 | 14億円 | 13億円 | 23億円 |
| 利益率(%) | 6.6% | 5.2% | 6.7% | 5.8% | 9.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 7億円 | 6億円 | 6億円 | 15億円 | 18億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期から大きく伸長し、それに伴って売上総利益も順調に増加しています。売上総利益率および営業利益率ともに改善傾向にあり、コストコントロールと付加価値の向上が奏功して、企業の利益創出力が一段と高まっている状況がうかがえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 219億円 | 257億円 |
| 売上総利益 | 60億円 | 74億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.5% | 28.8% |
| 営業利益 | 12億円 | 22億円 |
| 営業利益率(%) | 5.3% | 8.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料諸手当が13億円(構成比25%)、研究開発費が10億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力である鉄道信号関連事業が全売上の大部分を占めており、高い利益率によって全体を力強く牽引しています。産業用機器関連事業や不動産関連事業も安定した売上を継続して確保しており、グループ全体の強固な収益基盤を下支えする役割を果たしています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 鉄道信号関連事業 | 203億円 | 240億円 | 26億円 | 37億円 | 15.6% |
| 産業用機器関連事業 | 12億円 | 13億円 | -0億円 | 0億円 | 0.4% |
| 不動産関連事業 | 4億円 | 4億円 | 2億円 | 2億円 | 39.6% |
| 連結(合計) | 219億円 | 257億円 | 12億円 | 22億円 | 8.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがプラス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益と資産売却等で得た資金を用いて借入返済等を進める改善型の局面にあるといえます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -5億円 | 9億円 |
| 投資CF | -4億円 | 1億円 |
| 財務CF | 6億円 | -7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は54.6%であり、いずれも市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「安全で信頼性の高い製品と質の高いサービスを提供し、より快適な社会の実現に寄与する」「新技術に挑戦するとともに、会社の発展と社員の幸福を追求する」「健全な企業活動を通じて、社会に貢献し環境との調和を図る」という企業理念を掲げています。鉄道を取り巻く環境が変化する中で、高信頼・高品質な製品の提供を通じて鉄道の安全・安定輸送への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
鉄道という社会インフラを支える企業として、安全・品質の確保とコンプライアンスの徹底を活動の基盤に据えています。サステナビリティ推進体制を構築し、「人間企業」というキーワードのもと、社員が能力を最大限に発揮して活躍できる環境整備や多様な働き方の推進など、持続的な企業価値向上に向けた人的資本への投資を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「PLAN2026」を策定し、最終年度において各種の数値目標を掲げて経営を推進しています。
* 連結売上高230億円
* 連結営業利益15億円
* 連結営業利益率6.5%
* ROE5.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
成長戦略として、既存製品の競争力維持・拡大、社会要請に応える新分野開拓、保有技術を活用した新規事業展開を推進しています。設計・製造現場のDX推進や新製品のリリースによる稼ぐ力の強化とともに、資本コストを意識した経営と政策保有株式の縮減によるROE改善と株主価値の向上を図る方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人間企業」を掲げ、従業員を成長戦略を推進する最重要資本と位置付けています。新卒・中途を問わない優秀な人材の確保や、内製比率の高い社内研修を通じた実践的な育成に注力しています。また、育児や介護との両立支援、健康経営の推進、有給休暇の取得促進など、多様な働き方に対応できる社内環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.0歳 | 18.9年 | 6,833,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 2.1% |
| 男性育児休業取得率 | 88.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.5% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 72.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期雇用労働者) | 47.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、採用した正社員に占める女性労働者の割合(18.9%)、男性労働者の育児短時間勤務利用者数(2名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 製品の品質に関するリスク
鉄道信号関連事業は列車の安全な運行を支えるインフラに直結するため、製品に重大な品質不良や契約不適合が発生した場合、多額の補修費用や損害賠償責任が生じるほか、顧客からの信用低下を通じて業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 鉄道業界を取り巻く環境リスク
インバウンド需要等により旅客需要は堅調に推移し安定的な受注が期待されるものの、長期的には鉄道事業者による効率化や省人化に向けた構造改革が進むと予想されます。顧客の設備投資や修繕計画の動向によっては業績にマイナスの影響を与える懸念があります。
■(3) 事業環境変化と調達リスク
製造期間が長い製品への受注集中や、多くの部材を海外製品に依存していることに伴う調達コストの上昇リスクが存在します。原材料費の高騰や半導体を中心とする部品の供給不安定化が長期化した場合、生産体制や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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