北陸電気工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

北陸電気工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場の電子部品メーカー。抵抗器、モジュール製品、センサ等を主力とし、自動車や産業機器向けに展開する。直近決算は売上高432億円と増収ながら、為替差益の減少等により経常利益は28億円で減益となった。中期計画ではモビリティ分野等の強化を進めている。


※本記事は、北陸電気工業株式会社 の有価証券報告書(第91期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 北陸電気工業ってどんな会社?


抵抗器やセンサ、モジュール製品などの開発・製造を行う電子部品メーカーです。富山県に本社を置き、海外にも生産拠点を展開しています。

(1) 会社概要


1943年に北陸電気科学工業として設立され、1986年に東京証券取引所市場第一部へ指定替え(現在はスタンダード市場)を行いました。マレーシア、中国、タイなどに生産・販売拠点を設立してグローバル展開を推進。2023年には連結子会社のHDKマイクロデバイスを吸収合併するなど、グループ再編を通じて経営体制の効率化を図っています。

連結従業員数は1,801名、単体では639名です。筆頭株主は取引先で構成される北電工取引先持株会、第2位は半導体関連事業を行うフェローテックホールディングス、第3位は従業員持株会となっており、取引先や従業員による持株比率が高いのが特徴です。

氏名 持株比率
北電工取引先持株会 5.92%
フェローテックホールディングス 5.17%
北電工従業員持株会 4.60%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は下坂立正氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
下坂 立正 代表取締役社長 北陸銀行入行後、同社に入社。管理本部長、常務取締役、北陸興産社長等を経て2024年6月より現職。
多田 守男 取締役会長 同社入社後、コンポーネント事業本部長、代表取締役社長等を経て2024年6月より現職。
西村 裕司 取締役経営改革本部長 同社入社後、コンポーネント事業本部長等を経て2023年6月より現職。
村上 吉憲 取締役モジュールシステム事業本部長 同社入社後、HDKマイクロデバイス社長等を経て2023年10月より現職。
安藤 正人 取締役開発本部長 同社入社後、高周波部品事業本部長、HDKチャイナ董事長等を経て2023年6月より現職。
杉本 学 取締役(常勤監査等委員) 同社入社後、資材部長、ダイワ電機精工社長等を経て2023年6月より現職。


社外取締役は、北之園雅章(桜川協和法律事務所弁護士)、菊島聡史(堤商事社長)、井村一明(井村一明税理士事務所所長)、坪川貞子(社会保険労務士法人坪川事務所代表社員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「電子部品」「金型・機械設備」および「その他」事業を展開しています。

(1) 電子部品


抵抗器(皮膜抵抗器、可変抵抗器等)、モジュール製品(混成集積回路、ユニット製品等)、電子デバイス(センサ、圧電部品等)および回路基板などを製造・販売しています。自動車や産業機器、情報通信機器など幅広い分野のメーカーが顧客です。

製品の販売代金が主な収益源です。運営は北陸電気工業が主体となり、海外では北電マレーシア、上海北陸微電子、HDKタイランド等の生産子会社が製造を担い、販売はHDKアメリカ、HDKチャイナ等の販売子会社が行っています。

(2) 金型・機械設備


電子部品製造等に用いられる金型および機械設備の製造・販売を行っています。グループ内での設備供給のほか、外部顧客への販売も行っています。

製品および設備の販売代金が収益源です。運営は主にダイワ電機精工および北陸精機が行っています。

(3) その他


他社製品の商品仕入販売や、不動産賃貸・保険代理業などを行っています。

商品の販売代金や不動産賃貸料、保険手数料などが収益源です。運営は主に北陸電気工業(商品仕入)および北陸興産(不動産・保険代理業)が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は300億円台から400億円台へと推移しており、直近は432億円と過去最高水準に達しています。利益面では、経常利益率が6〜7%台で推移していましたが、直近は微減となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 328億円 404億円 455億円 408億円 432億円
経常利益 7億円 25億円 36億円 31億円 28億円
利益率(%) 2.0% 6.3% 7.9% 7.6% 6.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 11億円 -5億円 24億円 18億円

(2) 損益計算書


直近2期間では増収に伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は約1.4ポイント改善し、営業利益率も向上しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 408億円 432億円
売上総利益 76億円 86億円
売上総利益率(%) 18.5% 19.9%
営業利益 23億円 26億円
営業利益率(%) 5.6% 6.0%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が32億円(構成比53%)、減価償却費が3億円(同4%)を占めています。売上原価に関しては、研究開発費16億円が含まれています。

(3) セグメント収益


主力の電子部品セグメントは顧客の在庫調整が進んだものの、抵抗器やセンサ等の受注増により増収となりました。金型・機械設備セグメントはグループ向けが増加しましたが、全体としては微増にとどまりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
電子部品 398億円 422億円
金型・機械設備 5億円 5億円
その他 4億円 5億円
連結(合計) 408億円 432億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFで得た資金を借入返済や設備投資に充当しており、財務基盤の健全化を進めている「健全型」です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 45億円 41億円
投資CF -7億円 -15億円
財務CF -25億円 -19億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業以来のモノ造り精神として「明日をつくろう」「誠実をもって仕事に励もう」「責任を自覚しお互いに協力しよう」「良い製品をつくり社会の発展に尽くそう」という社是・社訓を掲げています。スローガン「Creating for the Future」のもと、豊かな社会に寄与する価値創造を目指しています。

(2) 企業文化


「環境」「安心・安全」「幸福」「共感」をキーワードとし、従業員のウェルネスにつながる価値の創造を重視しています。また、行動指針として「挑戦と創造」「誠実な行動」「共栄と調和」を定め、変化する事業環境に対してリスクと機会を捉える姿勢を奨励しています。

(3) 経営計画・目標


「中期経営計画2027」において、これからの3年間を成長軌道へ舵を切る期間と位置づけ、以下の数値目標を掲げています。

* 売上高:480億円
* 営業利益率:7%以上
* ROE:10%以上
* PBR:1倍以上

(4) 成長戦略と重点施策


「電子部品」「センサ」「モジュール」の3つのコア事業の進化と、新製品・新規事業の推進に注力します。特に「モビリティ」「GX/DX」等の4つのドメインに経営資源を集中させます。

* 抵抗器等:高付加価値製品の開発・提供による収益拡大
* モジュール:モビリティ分野の電動化ニーズを捉えたソリューションビジネス展開
* ASEAN地域の生産体制およびインドでの販売体制強化
* DXによる生産性の向上

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成においては、通信教育や集合研修、eラーニングなど多様な形態を活用し、語学やデジタル人材育成、リーダーシップ研修等を実施しています。社内環境整備では、多様な人材が個性と能力を発揮できる風土づくりを推進し、育児・介護休業や短時間勤務制度の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.8歳 22.0年 5,346,612円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.9%
男性育児休業取得率 28.5%
男女賃金差異(全労働者) 76.9%
男女賃金差異(正規雇用) 76.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 72.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、管理職に占める女性労働者の割合(連結)(17.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済情勢の急激な変動によるリスク


世界の電子機器メーカー等に製品を販売しているため、日本、欧米、アジア各市場の景気後退や関税引き上げ、輸出入制限などの経済情勢変動が業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、自動車向けや幅広い分野への拡販を進めるとともに、生産拠点の分散化等で対応しています。

(2) 原材料等の調達におけるリスク


輸出入規制、治安悪化、災害等による供給中断や、市況変化による価格高騰が生じる可能性があります。また、技術革新が速い業界のため、過剰在庫による評価損のリスクもあります。適正在庫の確保や複数購買を進めるとともに、市場動向の分析に基づき生産計画を決定しています。

(3) 新技術・製品開発に関するリスク


技術革新のスピードが速く、顧客要求の変化も激しい業界であるため、適切なタイミングで新製品を開発・供給できなければ競争力を失う可能性があります。マーケティング部門からのフィードバックや、新規事業推進機能の強化、ソフトウエア技術を含むサービス分野への展開を進めています。

(4) 為替相場および株価の急激な変動に伴うリスク


海外売上高比率が高く、生産拠点も海外にあるため、為替変動が業績に影響を及ぼします。また、保有する有価証券の株価下落リスクもあります。海外子会社との取引を原則米ドル建てにするなどで為替リスク低減を図るとともに、政策保有株式の縮減を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。