※本記事は、北陸電気工業株式会社の有価証券報告書(第92期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 北陸電気工業ってどんな会社?
抵抗器やセンサ等の電子部品をグローバルに製造・販売するメーカーです。
■(1) 会社概要
1943年に富山県で北陸電気科学工業として設立され、翌年に現在の北陸電気工業へと社名変更しました。1962年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、1986年に市場第一部へ指定替えとなっています。2010年には住友金属マイクロデバイスを子会社化してモジュール事業を拡大し、2018年には野村エンジニアリングを子会社化しました。
現在の従業員数は連結で1,833名、単体で644名です。筆頭株主は事業会社のフェローテックで、第2位は北電工取引先持株会、第3位は信託銀行等の金融機関の代理人となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| フェローテック | 13.10% |
| 北電工取引先持株会 | 6.02% |
| NOMURA PB NOMINEES LIMITED OMNIBUS-MARGIN (CASHPB) | 4.87% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は下坂立正氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 下坂立正 | 代表取締役社長 | 1982年北陸銀行入行、同社監査部担当部長を経て、2014年同社入社。管理本部長、常務取締役管理本部長などを歴任し、2024年6月より現職。 |
| 西村裕司 | 取締役経営改革本部長 | 1989年同社入社。名古屋営業所長、高周波部品事業本部製造部長、コンポーネント事業本部長などを経て、2023年6月より現職。 |
| 村上吉憲 | 取締役モジュールシステム事業本部長 | 1989年同社入社。HDKマイクロデバイス開発部長、上海北陸微電子董事長、HDKマイクロデバイス代表取締役社長などを経て、2023年10月より現職。 |
| 安藤正人 | 取締役品質保証担当 | 1984年同社入社。高周波部品事業本部長、HDKチャイナ董事長、開発本部長などを経て、2026年4月より現職。 |
| 福澤義司 | 取締役コンポーネント事業本部長 | 1987年同社入社。朝日電子工場長、同社代表取締役社長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 杉本学 | 取締役(常勤監査等委員) | 1985年同社入社。東京営業所長、ガバナンス室長、資材部長、ダイワ電機精工代表取締役社長などを経て、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、坪川貞子(社会保険労務士・行政書士)、北之園雅章(弁護士)、菊島聡史(元北陸銀行常勤監査役)、井村一明(税理士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電子部品」「金型・機械設備」の報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。
■(1) 電子部品
皮膜抵抗器や可変抵抗器などの抵抗器、混成集積回路やユニット製品などのモジュール製品、センサや圧電部品などの電子デバイス、および回路基板などの各種電子部品を製造・販売しています。自動車や情報通信機器など幅広い分野のメーカーが主な顧客です。
収益源は、顧客である各機器メーカーからの製品販売代金です。事業の運営は同社に加え、製造を担う朝日電子や天津北陸電気、製造・販売を担う北電マレーシアやHDKタイランド、販売を担う北陸シンガポールやHDKアメリカなどの国内外の連結子会社が分担して行っています。
■(2) 金型・機械設備
電子部品などの製造に必要となる金型および各種機械設備の製造・販売、ならびにそれらの保守業務を主に提供しています。電子部品メーカーやアミューズメント関連企業などが主な顧客となっています。
収益源は、顧客からの金型および機械設備の販売代金や保守サービス料です。この事業の運営は、主に連結子会社であるダイワ電機精工および北陸精機が主体となって展開しています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、商品仕入事業や不動産賃貸事業、保険代理業などを展開しています。
収益源は、大泉製作所製品などの商品販売代金や、保有不動産の賃貸料、保険代理店としての各種手数料収入です。運営は、商品の仕入販売については主に同社が、不動産賃貸事業および保険代理業については連結子会社である北陸興産が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は400億円台前半から半ばで安定的に推移していますが、当期は431億円と前年並みとなりました。利益面では原材料価格の高騰などの影響により、当期の経常利益は27億円と前期からわずかに減少しており、利益率は6%台で推移しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 404億円 | 455億円 | 408億円 | 432億円 | 431億円 |
| 経常利益 | 25億円 | 36億円 | 31億円 | 28億円 | 27億円 |
| 利益率(%) | 6.3% | 7.9% | 7.6% | 6.6% | 6.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11億円 | -5億円 | 24億円 | 18億円 | 19億円 |
■(2) 損益計算書
売上高はほぼ横ばいですが、売上総利益がわずかに減少し、売上総利益率は19.7%となりました。また、販売費及び一般管理費が増加したことにより、営業利益は前期から減少して23億円となり、営業利益率も低下しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 432億円 | 431億円 |
| 売上総利益 | 86億円 | 85億円 |
| 売上総利益率(%) | 19.9% | 19.7% |
| 営業利益 | 26億円 | 23億円 |
| 営業利益率(%) | 6.0% | 5.4% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び賞与が34億円(構成比55%)と大部分を占め、次いで減価償却費が3億円(同4%)、賞与引当金繰入額が2億円(同4%)となっています。
■(3) セグメント収益
主力の電子部品セグメントはモビリティ分野の電動化ニーズを捉えて売上高が微増となりました。一方、金型・機械設備セグメントは機械設備の外販が振るわなかったことから減収となり、その他セグメントも仕入販売の減少等により前年を下回りました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 電子部品 | 422億円 | 423億円 |
| 金型・機械設備 | 5億円 | 4億円 |
| その他 | 5億円 | 4億円 |
| 連結(合計) | 432億円 | 431億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
当期は、営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況を示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 41億円 | 14億円 |
| 投資CF | -15億円 | -1億円 |
| 財務CF | -19億円 | -6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は55.9%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「Creating for the Future」をスローガンに掲げ、「モノ造りを通じて未来を開くイノベーションに挑戦し心豊かな社会の発展に貢献します」というビジョンを定めています。創業以来の「明日をつくろう」「誠実をもって仕事に励もう」「責任を自覚しお互いに協力しよう」「良い製品をつくり社会の発展に尽くそう」というモノ造りへの精神を不変の企業理念としています。
■(2) 企業文化
同社は、「挑戦と創造」「誠実な行動」「共栄と調和」を行動指針として重視しています。また、「環境」「安心・安全」「幸福」「共感」をキーワードに定め、豊かな社会に寄与する価値および従業員のウェルネスにつながる価値を創造し、実現していくという価値観を根底に持った経営を推進しています。
■(3) 経営計画・目標
「中期経営計画2027」において、これからの3年間を成長軌道へ舵を切る期間と位置づけ、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けて各種指標の達成を目指しています。
・売上高:480億円
・営業利益率:7%以上
・ROE:10%以上
・PBR:1倍以上
・純資産配当率(DOE):3%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「モビリティ」「GX/DX」「産業・インフラ」「スマート家電・医療」の4つのドメインおよび次世代成長市場において、コア事業の進化と新製品創出に向け経営資源を集中させる方針です。抵抗器等の高付加価値製品の開発や、環境・安心・安全に貢献するセンサの需要取り込み、モビリティ分野の電動化ニーズを捉えたモジュール事業の展開を進め、ASEANやインドでの生産・販売体制を強化します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
デジタル変革(DX)を加速させる強い事業体質への変革を目指し、デジタル人材の育成を強化しています。多様な人材がライフスタイルに合った働き方で個性と能力を発揮できるよう、中途採用や外国人採用の推進、定年延長、シニア層の継続雇用条件の見直しなどに取り組み、確実な技能継承体制を構築しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.0歳 | 20.5年 | 5,739,384円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 77.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 78.0% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 76.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、連結での管理職に占める女性労働者の割合(17.7%)、単体での2030年の管理職に占める女性労働者の割合目標(10%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済情勢の急激な変動によるリスク
同社の製品は世界の電子機器メーカー等に供給されているため、日本、欧米、アジアの各市場における景気後退や貿易摩擦に伴う関税引き上げ、輸出入制限など、急激な経済情勢の変動が需要動向に悪影響を及ぼし、業績が左右されるリスクがあります。
■(2) 原材料等の調達におけるリスク
各国の輸出入規制、治安悪化、紛争や災害などによる原材料の供給中断、および市況変化に伴う調達価格の高騰が生じる可能性があります。製造原価の上昇や生産停止につながるほか、市場環境の急変により過剰在庫が発生し、評価損を計上するリスクを抱えています。
■(3) 新技術・製品開発に関するリスク
電子部品業界は技術革新のスピードが速く、顧客の要求も激しく変化します。市場の将来需要を的確に予測し、タイムリーに新製品を開発・供給し続けることができない場合や、急速な技術革新に遅れを取った場合には、同社の競争力や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 為替相場および株価の急激な変動に伴うリスク
同社は海外売上高比率が高く、中国や東南アジアに生産拠点を展開しているため、為替変動が外貨建取引から発生する収益や資産等の評価額に影響を与えます。また、保有する政策保有株式などの株価低迷により有価証券の減損が必要となるリスクがあります。



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