三社電機製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三社電機製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場する半導体および電源機器メーカー。パワー半導体や電源機器の開発・製造・販売を主力事業とする。直近の決算では、半導体市場の在庫調整や設備投資需要の減速等の影響を受け、売上収益・利益ともに前年を下回る減収減益となった。


※本記事は、株式会社三社電機製作所 の有価証券報告書(第91期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三社電機製作所ってどんな会社?


半導体と電源機器の2つの事業を柱に、パワーエレクトロニクス分野で社会インフラを支える製品を提供するメーカーです。

(1) 会社概要


1933年に映写光源用機器の製作で創業し、1963年には松下電器産業(現パナソニックホールディングス)の資本参加を受けました。1997年に大証二部へ上場し、2013年の現物市場統合により東証二部、2022年の市場区分見直しで東証スタンダード市場へ移行しました。2022年には三菱重工業および日東工業と資本業務提携を行っています。

同社グループは連結従業員数1,400名、単体716名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は業務提携先の重工業メーカーで、第2位は資産管理会社、第3位は電気機器メーカーです。

氏名 持株比率
三菱重工業 9.95%
合同会社みやしろ 5.65%
日東工業 4.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は吉村 元氏が務めており、社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
吉村 元 取締役社長(代表取締役) 松下電工(現パナソニックHD)入社後、同社執行役員やパナソニックエコシステムズ社長等を経て、2018年より現職。
藤原 正樹 取締役副社長執行役員全社統括担当 松下電器産業(現パナソニックHD)入社後、パナソニック保険サービス社長等を経て、2025年より現職。
頭本 博司 取締役専務執行役員電源機器事業統括兼電源機器製造本部長 同社入社後、半導体製造本部長や三社電機(上海)有限公司董事長等を経て、2023年より現職。
勝嶋 肇 取締役常務執行役員技術本部長商品企画・品質・環境担当 同社入社後、技術本部長や諏訪三社電機社長等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、宇野 輝(元三井住友カード副社長)、伊奈 功一(元ダイハツ工業会長)、梨岡 英理子(梨岡会計事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「半導体事業」および「電源機器事業」の2つの報告セグメントを展開しています。

(1) 半導体事業


電力制御に不可欠なパワー半導体(ダイオード、サイリスタ、トライアック等のモジュール製品およびディスクリート製品)を開発・製造・販売しています。産業用機械や家庭用電化製品など幅広い分野の顧客に向けて、エネルギー効率の高いデバイスを提供しています。

収益は主に製品の販売対価として顧客から受け取ります。運営は、同社が製造販売を行うほか、サンレックスコーポレーション(米国)、三社電機(上海)有限公司(中国)などの子会社が各地域での販売を担っています。

(2) 電源機器事業


表面処理用電源、溶接機用電源、インバータ、無停電電源装置(UPS)などの電源機器を開発・製造・販売しています。また、これらの機器の据付、保守、点検サービスも提供しており、産業設備や社会インフラを支える顧客が主な対象です。

収益は、機器の販売代金および据付・保守サービス料として顧客から受け取ります。運営は同社および諏訪三社電機、三社電機(広東)有限公司などの子会社が製造販売を行い、三社ソリューションサービスが据付・保守等を担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は300億円前後で推移してきましたが、直近では顧客の在庫調整や需要減速の影響により減少傾向にあります。利益面でも、売上減少に伴い経常利益や当期純利益が低下しており、収益性の改善が課題となっています。

項目 2025年3月期 2024年3月期 2023年3月期 2022年3月期 2021年3月期
売上高 254億円 310億円 281億円 227億円 194億円
経常利益 12億円 35億円 17億円 13億円 4億円
利益率(%) 4.6% 11.2% 5.9% 5.8% 2.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 25億円 5億円 10億円 6億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益および営業利益が縮小しています。特に営業利益率は11.0%から4.2%へと低下しており、売上原価や販管費の負担が相対的に重くなっていることが読み取れます。

項目 2025年3月期 2024年3月期
売上高 254億円 310億円
売上総利益 63億円 86億円
売上総利益率(%) 24.7% 27.7%
営業利益 11億円 34億円
営業利益率(%) 4.2% 11.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が16億円(構成比31%)、運賃荷造費が4億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


半導体事業は顧客の在庫調整長期化により大幅な減収となり、営業損失を計上しました。電源機器事業も大型案件の剥落や需要減速により減収減益となりましたが、一定の利益水準は確保しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
半導体事業 79億円 59億円 3億円 -7億円 -12.5%
電源機器事業 231億円 196億円 31億円 18億円 9.2%
連結(合計) 310億円 254億円 34億円 11億円 4.2%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金と新たな借入を原資として、将来の成長に向けた投資を積極的に行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2025年3月期 2024年3月期
営業CF 10億円 23億円
投資CF -24億円 -11億円
財務CF 14億円 5億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は2.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.5%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業以来、パワーエレクトロニクス分野において社会が必要とする製品を真摯に提供し続けることを経営理念としています。中期的には「Global Power Solution Partner」を目指す姿として掲げ、技術力で顧客の課題を解決し、クリーンエネルギー社会の実現に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


「社会に価値ある製品を」「技術の創造と研鑽」「社員に幸福と安定を」などを掲げ、誠実さと品質に対する信頼を重視する文化があります。多様な人材を受け入れるダイバーシティ&インクルージョンを推進し、互いに磨き合い自らを高める組織風土の醸成を目指しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「CF26」において、戦略的投資と無形資産への投資を通じて事業成長と収益性向上を目指しています。資本コストを意識した経営を推進し、株主還元の充実やガバナンス強化にも取り組んでいます。

* 自己資本利益率(ROE):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


脱炭素社会の実現に向け、SiCなどの次世代パワー半導体や、再生可能エネルギー・インフラ市場向けの電源機器開発に注力しています。また、サステナビリティ戦略として環境負荷低減や人材育成、DXによる業務効率化を推進しています。

* 半導体:インフラ市場(再エネ、モビリティ等)への展開、SiC製品の拡充
* 電源機器:新エネルギー関連製品の開発、表面処理用電源のグローバルシェア拡大

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社員の成長が会社の成長につながる」という方針のもと、多様な人材が個々の能力を発揮できる環境整備を進めています。グローバル事業拡大に向けた人材育成や、女性・中途採用者の登用、育児休業取得促進など、ダイバーシティ推進と働きがいのある職場づくりに注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 46.6歳 19.3年 6,194,305円


※平均年間給与は税込額で、基準外賃金及び賞与が含まれております。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 68.3%
男女賃金差異(正規) 73.5%
男女賃金差異(非正規) 47.6%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性リーダー職の人数(39人)、中途採用比率(45.7%)、管理職に占める中途採用者比率(38.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済環境の変動によるリスク


同社グループの事業は、世界の景気動向や民間設備投資、インフラ整備の動向に強く影響を受けます。世界経済の後退や需要縮小、貿易規制などが生じた場合、受注高や受注価格に悪影響を与え、業績が下振れする可能性があります。

(2) 事業リスク・戦略リスク


製品の欠陥によるコスト発生や信用の低下、開発遅延、提携関係の解消などが業績に影響する可能性があります。また、素材価格の変動や部品調達難、設備投資負担、外注先の経営悪化、地政学的リスク、価格競争の激化、知的財産権の侵害なども、事業運営上の重要なリスク要因として認識されています。

(3) 経営基盤に関するリスク


国内外の法令遵守違反や情報漏洩が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償により業績に影響を及ぼす可能性があります。また、生産年齢人口の減少に伴う人材獲得競争の激化により、優秀な人材を十分に確保できない場合、事業拡大に支障をきたす恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。