三社電機製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三社電機製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

三社電機製作所は、東京証券取引所スタンダード市場に上場し、半導体素子および電源機器の製造販売を主力事業として展開しています。直近の業績では、電源機器事業の好調などにより売上高は前期比で増加した一方、半導体事業における固定費の増加や持分法による投資損失の計上などにより当期利益は減益となりました。


※本記事は、株式会社三社電機製作所の有価証券報告書(第92期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 三社電機製作所ってどんな会社?


同社は、パワーエレクトロニクス分野において、半導体素子と各種電源機器の開発から製造販売までを一貫して展開しています。

(1) 会社概要


同社は1933年に個人経営として創業し、映写光源用部品の製作に着手しました。1948年に法人へ改組し、1963年には松下電器産業(現パナソニックホールディングス)の資本参加を受けました。1997年の上場を経て、2024年には再生可能エネルギー関連事業を担うEMソリューションズを共同で設立しています。

同社グループは連結で1,399名、単体で711名の従業員を擁しています。筆頭株主は資本業務提携先である三菱重工業で、第2位はみやしろ、第3位には同じく資本業務提携先の日東工業が名を連ねています。

氏名 持株比率
三菱重工業 9.95%
みやしろ 5.65%
日東工業 4.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長は吉村元氏、代表取締役社長は山内得志氏が務めています。社外取締役の比率は30.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
山内 得志 取締役社長(代表取締役)経営企画本部長 松下電工(現パナソニックホールディングス)入社後、パナホーム(現パナソニックホームズ)取締役常務執行役員などを経て、2025年に同社入社。専務執行役員などを経て、2026年4月より現職。
吉村 元 取締役会長(代表取締役) 松下電工(現パナソニックホールディングス)入社後、SUNX(現パナソニックインダストリー)取締役社長、パナソニックエコシステムズ代表取締役社長などを歴任。同社代表取締役社長を経て、2026年4月より現職。
頭本 博司 取締役専務執行役員電源機器事業本部長 1982年同社入社。生産技術部長、岡山工場長、執行役員半導体製造本部長などを歴任。取締役常務執行役員などを経て、2026年4月より現職。
勝嶋 肇 取締役常務執行役員半導体事業本部長品質・環境担当 1981年同社入社。研究部長、執行役員技術本部長、三社電機イースタン(現諏訪三社電機)代表取締役社長などを歴任。取締役常務執行役員を経て、2026年4月より現職。


社外取締役は、宇野輝(元三井住友銀行取締役)、伊奈功一(元トヨタ自動車専務取締役)、梨岡英理子(公認会計士・梨岡会計事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「半導体事業」および「電源機器事業」を展開しています。

(1) 半導体事業


電力変換の効率化を担うパワー半導体の開発・製造を行っています。主な製品はダイオード、サイリスタ、トライアックのモジュール製品やディスクリート製品などで、インフラ分野や産業分野などの顧客に提供しています。

顧客への半導体製品の販売により収益を得ています。運営は同社が製造販売を担うほか、子会社のサンレックスコーポレーション、サンレックスリミテッド、三社電機(上海)、サンレックスアジアパシフィックなどが販売を行っています。

(2) 電源機器事業


各種電源機器の開発・製造を行っています。直流電源、金属表面処理用電源、交流無停電電源装置など、データセンターや産業機器などの幅広い分野で社会インフラを支えるバックアップ電源等を提供しています。

製品の販売ならびに保守・修理などのサービス業務により収益を獲得しています。運営は同社が製造販売を担うほか、三社電機(広東)、諏訪三社電機などが製造販売を、三社ソリューションサービスが保守などを手掛けています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は2024年3月期に310億円まで成長しましたが、その後は250億〜260億円台で推移しています。経常利益は2024年3月期に35億円を記録して以降、直近2期は11億円〜12億円台となっており、利益率も4%台で安定的に推移しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 227億円 281億円 310億円 254億円 267億円
経常利益 13億円 17億円 35億円 12億円 11億円
利益率(%) 5.8% 5.9% 11.2% 4.6% 4.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 10億円 5億円 25億円 3億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益も63億円から65億円へと順調に拡大しています。売上総利益率は24%台を維持し、営業利益率も4.2%から5.2%へと改善傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 254億円 267億円
売上総利益 63億円 65億円
売上総利益率(%) 24.7% 24.4%
営業利益 11億円 14億円
営業利益率(%) 4.2% 5.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が17億円(構成比32%)、運賃荷造費が4億円(同8%)、福利厚生費が4億円(同8%)を占めています。売上原価については、当期製造費用が含まれています。

(3) セグメント収益


半導体事業はディスクリート製品などの販売伸長により増収となりましたが、固定費の増加や在庫削減等により営業赤字が継続しています。一方、電源機器事業はデータセンター向けの需要増や一般産業用電源の販売拡大により増収となり、固定費の削減効果もあって増益を達成しました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
半導体事業 59億円 64億円
電源機器事業 196億円 203億円
連結(合計) 254億円 267億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業でしっかりと利益を稼ぎ出し、その資金を元手に借入金の返済や投資をまかなう「健全型」の財務状態となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 10億円 34億円
投資CF -24億円 -13億円
財務CF 14億円 -13億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「社会に価値ある製品を」「企業に利益と繁栄を」「社員に幸福と安定を」の3点を経営理念として掲げています。社会が求める製品を創造し品質を高めることで社会の発展に貢献し、企業の利益を確保して社会的責任を全うするとともに、社員の幸福と安定した暮らしを図ることを使命としています。

(2) 企業文化


創業以来、「電気の変換と制御」に向き合い、パワーエレクトロニクスの分野において社会が必要とする製品を真摯に提供し続けることを重視しています。パーパスとして「パワーエレクトロニクスと創造力で、社会を前進させる。」を掲げ、オンリーワンの技術やサービスへのこだわりを持つ文化が定着しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画「CF26」を策定し、「Global Power Solution Partnerの実現に向けた経営改革の3年間」と位置づけています。株主資本コストを上回る自己資本利益率(ROE)の達成を目指し、収益性と投下資本回転率の改善により総資産営業利益率(ROA)の目標水準到達を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


半導体事業では、需要が拡大するSiC製品のインフラ市場への展開やグローバル展開を推進します。電源機器事業では、新エネルギー分野の製品開発やデータセンター向け電源機器の拡販に注力します。また、事業本部制への移行により収益責任を明確化し、持続的な事業成長と事業構造の進化を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社員の成長が会社の成長につながる」という基本方針のもと、多様な人材が能力を最大限に発揮できる組織づくりを進めています。次世代リーダーや専門性を持つ人材の育成を重点施策とし、階層別研修や専門教育を通じて、事業環境変化に対応できる組織力の強化と自律的な成長の促進を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.5歳 18.9年 5,949,245円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.8%
男性育児休業取得率 77.8%
男女賃金差異(全労働者) 68.8%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 73.0%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 51.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性リーダー職の比率(12.1%)、中途採用者比率(46.3%)、中途採用者の管理職に占める比率(40.8%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経済環境の変動と需要縮小リスク


民間設備投資動向やインフラ整備の状況に大きく影響を受ける事業構造であり、世界経済の景気後退や需要の縮小が同社グループの受注高や受注価格に悪影響を及ぼし、業績が低下するリスクがあります。

(2) 部品調達の遅延とサプライチェーン寸断リスク


製品には社外から調達する電子部品が多数使用されており、需要増加による調達リードタイムの長期化や国際情勢の悪化による輸送遅延などが発生した場合、必要な部品を適時に確保できなくなり、生産活動に支障をきたす可能性があります。

(3) 激しい価格競争と新製品開発の遅延リスク


国内外で競合他社との激しい競争にさらされており、想定以上に価格競争が激化した場合や、顧客ニーズを的確に捉えた製品開発・タイムリーな供給が遅れた場合には、販売価格の下落やシェア低下により収益が悪化するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。