※本記事は、双葉電子工業株式会社の有価証券報告書(第82期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 双葉電子工業ってどんな会社?
電子管製造から始まり、現在は産業用ラジコンや有機EL等の電子機器、金型用器材等の生産器材を製造販売する企業です。
■(1) 会社概要
1948年に真空管製造を目的に設立され、1962年にラジコン機器と金型用部品の製造を開始しました。1970年には真空管から蛍光表示管へ転換し、事業を拡大しました。1986年に東京証券取引所市場第一部へ指定され、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。
連結従業員数は2,534名、単体では688名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は同社の関連財団、第3位は個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社 | 11.45% |
| 公益財団法人双葉電子記念財団 | 7.67% |
| 川崎 まり | 4.39% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長執行役員は有馬資明氏です。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 有馬 資明 | 代表取締役社長執行役員 | 1984年入社。米国現地法人社長、経営企画部長、タッチパネル事業センター長などを経て、2019年より現職。 |
| 君塚 俊秀 | 取締役専務執行役員 | 1986年入社。業務管理部長、常務執行役員などを経て、2025年より管理部門担当として現職。 |
| 冨田 正晴 | 取締役常務執行役員 | 1990年入社。欧州・米国現地法人社長、経営企画本部長などを経て、2025年より事業部門担当として現職。 |
| 池田 達也 | 取締役監査等委員(常勤) | 1981年千葉銀行入行。同社監査役、常務執行役員経営企画部長などを経て、2017年より現職。 |
社外取締役は、國尾武光(元日本電気執行役員)、田中雅子(元古河電気工業執行役員)、大村直司(元新日本石油開発執行役員)、石原昭広(石原総合法律事務所所長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「電子機器」「生産器材」の2つの報告セグメントで事業を展開しています。
■(1) 電子機器事業
産業用・ホビー用ラジコン機器、ロボティクス製品(ドローン、サーボモータ)、有機ELディスプレイ、複合モジュールなどを製造・販売しています。主な顧客は産業機械メーカー、ホビーユーザー、電子機器メーカーなどです。
収益は主に製品の販売による対価です。運営は双葉電子工業のほか、模型用エンジンの小川精機、台湾双葉電子、双葉電子部品(恵州)、フタバ・コーポレーション・オブ・アメリカなどの子会社が行っています。
■(2) 生産器材事業
金型用プレート製品、金型用器材、成形・生産合理化機器などを製造・販売しています。金型メーカーや成形加工メーカーなどの製造業が主な顧客であり、モノづくりの基盤を支える製品群を提供しています。
収益は製品販売による対価です。運営は双葉電子工業に加え、起信精機(韓国)、富得巴精模(深圳)、フタバ(ベトナム)、株式会社カブクなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は減少傾向にあり、利益面では経常損失および当期純損失が続いています。特に直近では構造改革に伴う費用の計上がありましたが、最終赤字幅は縮小に向かっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 488億円 | 535億円 | 603億円 | 564億円 | 481億円 |
| 経常利益 | -25.1億円 | -6.5億円 | -11.3億円 | 5.7億円 | -2.1億円 |
| 利益率(%) | -5.1% | -1.2% | -1.9% | 1.0% | -0.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -29億円 | -33億円 | -8億円 | 10億円 | 51億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して売上高が減少し、営業損失が拡大しました。売上総利益率は改善傾向にありますが、販売費及び一般管理費の負担が重く、営業赤字となっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 564億円 | 481億円 |
| 売上総利益 | 88億円 | 89億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.5% | 18.4% |
| 営業利益 | -11億円 | -13億円 |
| 営業利益率(%) | -2.0% | -2.7% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当・賞与が34億円(構成比33%)を占めています。また、研究開発費は13億円(同12%)となっています。
■(3) セグメント収益
電子機器事業、生産器材事業ともに減収となりました。電子機器事業は事業撤退や構造改革の影響を受け、生産器材事業は市況の悪化が響いています。両セグメントともに営業損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 電子機器 | 248億円 | 175億円 | -8億円 | -9億円 | -5.3% |
| 生産器材 | 316億円 | 306億円 | -3億円 | -4億円 | -1.2% |
| 調整額 | -0億円 | -0億円 | -0億円 | -0億円 | - |
| 連結(合計) | 564億円 | 481億円 | -11億円 | -13億円 | -2.7% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
双葉電子工業は、営業活動により資金を獲得し、投資活動では有形固定資産の売却収入が支出を上回りました。財務活動では、主に配当金の支払いに資金を使用しました。これらの活動の結果、同社の現金及び現金同等物は増加しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 15億円 | 46億円 |
| 投資CF | 42億円 | -14億円 |
| 財務CF | -11億円 | -12億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「なくてはならない器材・サービスを創出し世界の発展に貢献する」ことを企業理念としています。これは、事業戦略からモノづくりの現場に至るまで、常に物事の本質を見失わずに事業を推進するという哲学「本質之直視」に基づいています。
■(2) 企業文化
全社員が共有する理念・行動体系として「Futaba Way」を掲げています。この指針の下、AIやIoTなどの新技術を取り込んだモノづくりの進化や、技術を融合させた新製品開発に注力し、市場ニーズをダイレクトに反映させる姿勢を重視しています。また、公正で透明性の高い経営と持続可能な社会の実現を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
「Futabaテクノロジーを進化させ、世界で躍進するリーディングカンパニーを目指します」というビジョンの実現に向け、3カ年の中期経営計画を策定しています。
* 2027年3月期 売上高:575億円
* 2027年3月期 営業利益:15億円
■(4) 成長戦略と重点施策
「構造改革の完遂」「ソリューション事業領域への展開」「コーポレート機能の強靭化」を基本方針としています。電子機器事業では産業用無線リモコンやドローンの社会実装、生産器材事業では金型内計測などのIoTソリューションやAIシステムの展開に注力しています。また、DX推進による基幹システム刷新や、リスクマネジメント強化も進めています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を「人財」と捉え、「組織を動かせる人財」「グローバルに活躍できる人財」「新たな価値創造のできる人財」の育成を目指しています。後継者育成計画の始動や、経営層と従業員の対話会の実施などを通じ、多様な人材が能力を発揮できる環境づくりと、挑戦する企業風土の醸成に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.7歳 | 20.6年 | 5,842,040円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 0.7% |
| 男性育児休業取得率 | 30.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 72.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 68.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、育児休職後の復職率(100%)、年休取得率(69.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場・技術の急速な変化
市場の変化や技術進化への対応遅れ、または成長分野への投資回収が計画通り進まない場合、業績や成長に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、研究開発部門での技術探求や営業部門による市場ニーズの把握を通じて、適切な施策に取り組んでいます。
■(2) 競争の激化
他業種からの参入を含む価格競争が激化した際、売上や利益に影響が出る可能性があります。原価低減によるコスト競争力の強化や、独自技術・品質による差別化で対抗するとともに、市場動向に応じた事業ポートフォリオの見直しを行っています。
■(3) コスト競争力と調達リスク
原材料や部品価格の高騰、歩留まりや生産性の低迷はコスト競争力の低下を招く恐れがあります。また、棚卸資産の陳腐化による損失リスクもあります。これらに対し、VA/VEによる設計改善、最適地生産、自動化推進などでコスト削減を図っています。



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