アイホン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アイホン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム・名証プレミア上場で、インターホンを中心とした通信機器の製造・販売を行う専門メーカーです。住宅向けから医療・オフィス向けまで幅広く展開しています。直近の業績は、売上高633億円で前期比増収となりましたが、経常利益は42億円、当期純利益は29億円といずれも減益となっています。


※本記事は、アイホン株式会社 の有価証券報告書(第67期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アイホンってどんな会社?


インターホンシステムの専業大手として、戸建・集合住宅や医療・介護施設、オフィス向けに通信機器を提供するグローバル企業です。

(1) 会社概要


同社は1948年の創業以来、インターホンを中心とした通信機器メーカーとして事業を展開し、1959年に設立されました。1990年に名古屋証券取引所市場第二部に上場し、2000年には東京証券取引所および名古屋証券取引所の市場第一部に指定されています。海外展開も積極的に進め、2000年にタイ、2007年にベトナムに生産子会社を設立しました。直近では2024年12月に日本マイクロリンクを子会社化し、開発力の強化を図っています。

連結従業員数は2,022名、単体では1,064名です。筆頭株主は代表取締役会長の市川周作氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
市川 周作 11.66%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.78%
アイホン従業員持株会 4.89%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長執行役員は鈴木富雄氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
鈴木 富雄 取締役社長執行役員(代表取締役) 2014年10月同社入社。技術本部技術管理部長、経営企画室副室長、執行役員経営企画部長を経て、2023年4月より現職。
市川 周作 取締役会長(代表取締役) 1975年4月同社入社。商品企画室長、豊田工場長、営業本部長等を歴任。2018年4月代表取締役社長、2019年4月より現職。


社外取締役は、入谷正章(弁護士・元日本弁護士連合会副会長)、繁治義信(元みずほ銀行執行役員・大成建設顧問)、吉野彩子(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「北米」「欧州」「タイ」「ベトナム」の報告セグメントおよび「その他」事業を展開しています。

**(1) 日本**
戸建住宅、集合住宅、医療・福祉施設、オフィス・公共施設等に向けた電気通信機器(インターホンシステム等)の製造・販売を行っています。主な顧客は住宅メーカー、電材卸売業者、施工業者等です。
収益は、製品の販売代金および修理・保守サービス料等から得ています。運営は主に親会社であるアイホンが行い、生産面では国内子会社のアイホンコミュニケーションズが一部製品の生産と基板加工を担当しています。

**(2) 北米**
米国およびカナダ市場において、セキュリティ市場や業務市場向けのインターホンシステム等の販売を行っています。現地の販売代理店やシステムインテグレーター等が主な顧客となります。
収益は、製品の販売代金から得ています。運営は、現地の連結子会社であるアイホンコーポレーションが行っています。

**(3) 欧州**
フランスやイギリス等の欧州市場において、インターホンシステム等の販売を行っています。住宅市場や業務市場に向けた製品を供給しており、現地の販売網を通じて展開しています。
収益は、製品の販売代金から得ています。運営は、現地の連結子会社であるアイホンS.A.S.およびアイホンUKが行っています。

**(4) タイ**
同社グループの主要な海外生産拠点として、インターホンシステム等の製造を行っています。製造された製品は主にグループ会社へ供給されます。
収益は、グループ会社への製品販売代金から得ています。運営は、現地の連結子会社であるアイホンコミュニケーションズ(タイランド)が行っています。

**(5) ベトナム**
タイと同様に同社グループの海外生産拠点として、インターホンシステム等の製造を行っています。製造された製品は主にグループ会社へ供給されます。
収益は、グループ会社への製品販売代金から得ています。運営は、現地の連結子会社であるアイホンコミュニケーションズ(ベトナム)が行っています。

**(6) その他**
報告セグメントに含まれない地域(オーストラリア、シンガポール等)での販売活動を行っています。オセアニアや東南アジア市場において、製品の販売を展開しています。
収益は、製品の販売代金から得ています。運営は、現地の連結子会社であるアイホンPTY(オーストラリア)やアイホンPTE.(シンガポール)が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間において増加傾向にあり、事業規模は拡大基調です。利益面では、2022年3月期や2024年3月期に高い水準を記録しましたが、直近の2025年3月期は経常利益、当期純利益ともに減益となり、利益率は低下しました。全体として黒字経営を維持しており、安定した収益基盤を有しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 461億円 520億円 528億円 613億円 633億円
経常利益 37億円 59億円 42億円 61億円 42億円
利益率(%) 8.0% 11.4% 7.9% 10.0% 6.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 23億円 35億円 24億円 42億円 29億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、増収を達成しましたが、売上総利益率は若干低下しました。営業利益は前期の53億円から38億円へと減少し、営業利益率も低下しています。これは、売上原価や販売費及び一般管理費の増加が売上の伸びを上回ったことによるものと考えられます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 613億円 633億円
売上総利益 265億円 272億円
売上総利益率(%) 43.3% 43.0%
営業利益 53億円 38億円
営業利益率(%) 8.6% 6.0%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が86億円(構成比37%)、研究開発費が29億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは売上が増加したものの、研究開発費の増加等により利益は減少しました。北米や欧州では現地通貨ベースでの変動やコスト増により利益面で苦戦が見られます。一方、生産拠点であるタイおよびベトナムセグメントは、生産量の増加等により増収増益となり、グループ全体の収益に貢献しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 544億円 562億円 48億円 26億円 4.5%
北米 119億円 119億円 3億円 -0億円 -0.1%
欧州 41億円 43億円 -0億円 -1億円 -1.5%
タイ 96億円 112億円 2億円 6億円 5.5%
ベトナム 59億円 66億円 3億円 4億円 5.4%
その他 14億円 16億円 0億円 1億円 4.3%
調整額 -259億円 -285億円 -4億円 3億円 -
連結(合計) 613億円 633億円 53億円 38億円 6.0%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

アイホンは、インドネシアでのナースコール販売好調などを背景に、売上高を伸ばしています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益や棚卸資産の減少等により、資金獲得に繋がりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、定期預金の預入と払戻しの結果、資金を使用しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払い等により、資金を使用しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 91億円 57億円
投資CF -1億円 -7億円
財務CF -17億円 -24億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「自分の仕事に責任を持て 他人に迷惑をかけるな」を経営理念として掲げています。また、「コミュニケーションとセキュリティの技術で社会に貢献する」を経営ビジョンとし、「新しい安心をかたちに」をパーパスとして設定し、自社ブランドによる一貫した商品づくりを通じて顧客満足と社会貢献を目指しています。

(2) 企業文化


同社グループは、全てのステークホルダーが安心・安全・快適を実感できる商品やサービスを提供することで、持続可能な社会の実現に貢献するというサステナビリティ基本方針を持っています。また、長期的な高収益体質の実現に向け、ESG経営やSDGsの推進を成長基盤テーマと位置づけ、コンプライアンスやリスク管理を重視する姿勢を示しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、経営基盤の強化を図るため、連結売上高営業利益率を重要な経営指標として掲げています。また、資本効率の向上を目指した経営を進めるとともに、海外市場への展開強化や収益構造・コスト構造の改善を通じて、グループ全体の発展を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


国内市場ではリニューアル需要の取り込みや宅配ソリューション「Pabbit」の拡充、ケア・業務市場へのソリューション提案を強化しています。海外市場では北米・欧州に加え、シンガポールを中心としたアジア・オセアニア地域の販売体制を強化します。また、開発力強化のための子会社化や生産体制の自動化・省人化投資も推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、海外市場拡大や開発力強化、新規事業への挑戦に対応するため、専門性を持つ人材のキャリア採用や多様な人材の育成を推進しています。また、カムバック制度の導入や女性キャリアアップ研修の実施などを通じて、多様な視点を持つ人材が活躍できる環境整備とエンゲージメント向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.6歳 15.2年 6,989,000円


※平均年間給与には、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 0.6%
男性労働者の育児休業取得率 59.1%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 68.0%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 74.7%
労働者の男女の賃金の差異(非正規) 43.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国人管理職比率(23.5%)、中途採用者管理職比率(46.2%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

**(1) 新設住宅市場への依存**
同社グループは海外販売やリニューアル市場の拡大に注力していますが、依然として国内の新設住宅市場の影響を受けやすい状況にあります。国内の新設住宅着工戸数が減少した場合、製品需要が低迷し、経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。

**(2) 競争激化**
インターホンを中心とした通信機器市場において、競合他社との競争環境にあります。高付加価値商品の開発を進めていますが、他社の動向や市場環境の変化により需要変動や価格競争が激化した場合、売上高や利益率が低下し、経営成績等に影響を与える可能性があります。

**(3) 部品調達**
多数の取引先から部品等を調達していますが、取引先の生産能力の問題や各国の政治・経済情勢により、部品の供給停止や遅延、価格高騰が発生するリスクがあります。これらの事象が生じた場合、生産活動に支障をきたし、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。