原田工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

原田工業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

原田工業は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、自動車ラジオ用アンテナ等を中心とする自動車関連機器の製造・販売をグローバルに展開しています。直近の業績は、市場環境の影響で減収となったものの、収益構造改革による原価率低減などが寄与し、大幅な営業増益を達成しており、堅調な利益成長を示しています。


※本記事は、原田工業株式会社の有価証券報告書(第69期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 原田工業ってどんな会社?


同社は、自動車用アンテナを主力とする自動車関連機器の製造・販売をグローバルに展開する企業です。

(1) 会社概要


1947年に原田電機製作所として設立し、1958年にアンテナメーカーとして本格的に自動車産業へ進出するため原田工業を設立しました。1995年に株式を店頭登録し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しています。2012年には日本アンテナから自動車用アンテナ事業を譲り受け、事業基盤を拡大しました。

従業員数は連結で4,000名、単体で246名です。筆頭株主は資産管理業務などを行うエスジェーエスで、第2位は創業家出身で代表取締役会長を務める原田章二氏、第3位も同じく創業家の原田恵吾氏となっており、創業家と関連会社が上位を占める株主構成となっています。

氏名 持株比率
エスジェーエス 39.72%
原田章二 11.13%
原田恵吾 4.71%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長は原田章二氏、代表取締役社長は三宅康晴氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
原田章二 代表取締役会長 1975年入社。1996年に代表取締役専務、2010年に代表取締役社長に就任し、海外子会社の董事長などを歴任。2019年より現職。
三宅康晴 代表取締役社長内部監査室担当 1984年協和銀行入行。りそな銀行執行役員などを経て、2014年同社取締役に就任。2017年専務取締役を経て、2019年より現職。
上山智 専務取締役事業領域担当 兼 開発本部長 1988年入社。2005年欧州子会社マネージングディレクター。2011年執行役員、2014年取締役、2017年常務を経て、2019年より現職。
佐々木徹 取締役製造本部長 兼 新潟本社担当 1986年入社。2009年米国子会社プレジデント。2010年執行役員、2013年上席執行役員を経て、2015年より現職。
青木隆 取締役調達本部長 1995年入社。2012年執行役員、2014年米国子会社プレジデントを務める。2019年取締役を経て、2024年より現職。


社外取締役は、桑原亨二(元りそな総合研究所専務取締役)、井上謙介(アシャースト法律事務所弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「アジア」「北中米」「欧州」事業を展開しています。

(1) 日本


日本の自動車メーカーなどに対して、自動車ラジオ用アンテナ等を中心とする自動車関連機器を販売しています。

顧客への製品販売から収益を得ています。国内での統括・販売業務および研究開発の運営は、主に同社が担当しています。

(2) アジア


アジア地域の顧客向けに、自動車ラジオ用アンテナや関連機器の製造・販売事業を展開しています。

製品の販売から収益を得ています。製造・販売は、大連原田工業、上海原田新汽車天線、ベトナムやフィリピンなどの子会社が運営しています。

(3) 北中米


北米および中南米市場に向けて、自動車関連機器の製造および販売を行っています。

顧客に対する製品販売等から収益を得ています。販売は米国のHARADA INDUSTRY OF AMERICAが、製造はメキシコ子会社が運営しています。

(4) 欧州


欧州の自動車市場を対象として、自動車関連機器の販売および研究開発を展開しています。

欧州地域の顧客に対する製品の販売によって収益を上げています。事業の運営は英国のHARADA INDUSTRIES (EUROPE) LIMITEDが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は420億〜470億円規模で推移しており、直近2期は減収傾向にありますが、経常利益率はマイナスから改善し、当期は5.5%と着実に収益性が向上しています。利益面ではコスト構造改革の効果が表れており、安定した黒字体制を構築しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 358億円 421億円 470億円 448億円 422億円
経常利益 -10億円 -9億円 5億円 13億円 23億円
利益率(%) -2.7% -2.1% 1.1% 3.0% 5.5%
当期利益(親会社所有者帰属) -5億円 -9億円 15億円 16億円 5億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少したものの、売上原価の低減などにより売上総利益は増加し、売上総利益率も22.6%へ改善しています。これに伴い営業利益も大幅に伸長し、営業利益率は5.7%へと向上しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 448億円 422億円
売上総利益 92億円 95億円
売上総利益率(%) 20.6% 22.6%
営業利益 17億円 24億円
営業利益率(%) 3.9% 5.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料が22億円(構成比31%)、研究開発費が9億円(同12%)、荷造運賃が8億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


日本セグメントは堅調に推移し増収を確保しましたが、アジア、北中米、欧州の各セグメントでは、各地域での自動車生産台数の減少や販売減の影響を受け、減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
日本 182億円 185億円
アジア 73億円 68億円
北中米 146億円 123億円
欧州 49億円 45億円
連結(合計) 448億円 422億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業で生み出した資金で借入の返済と投資をまかなう健全型です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 9億円 42億円
投資CF -4億円 -6億円
財務CF 6億円 -31億円


企業の収益力を測るROEは3.2%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も38.3%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念は「―共創と革新― HARADAはベストを追求するプロフェッショナル集団であり続けます。」です。常に顧客満足を第一義とした経営を実践し、社会貢献を追求し続けることを経営基本方針に掲げ、時代を超えて永遠に存続、発展していくことを目指しています。

(2) 企業文化


行動指針として「明るく、楽しく、真剣に!」を定めています。一流のチームワークによって主体的かつ創造的に革新に挑戦し、活力あふれる組織風土を持ち続けることを基本方針としており、プロ社員が活躍できる場を常に提供し続ける組織づくりを重視しています。

(3) 経営計画・目標


成長性および収益性改善のため、営業利益率などの利益指標の向上に努めるとともに、有利子負債の削減や棚卸資産の圧縮、自己資本の充実など財務体質の改善に取り組んでいます。

* 売上高:400億円
* 営業利益:16億円
* 経常利益:13億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:2億円

(4) 成長戦略と重点施策


CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)の進展やモビリティの多様化への対応を経営の方向性と定めています。「CASEへの対応等によるトップラインの拡大」「コスト構造改革によるコスト体質の強靭化」「B/Sのスリム化による収益・財務体質改善」を軸とする収益構造改革を強力に推進し、車載アンテナのトップ企業として新規事業の拡大を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現に向け、人材を最重要の経営資源と位置づけています。事業戦略と連動した人材戦略を推進し、採用から配置、評価、人材育成に至る各施策を一貫したサイクルとして機能させることで、組織力の最大化と従業員の能力向上を目指しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 48.7歳 18.0年 6,282,205円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.2%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.9%
男女賃金差異(正規雇用) 76.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 74.0%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、全従業員における女性割合(24.0%)、月平均時間外労働(6.2時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 特定の製品・業界への依存


同社グループは主たる事業の大半を自動車産業向けに展開しており、特定の取引先への依存を避ける営業を行っていますが、自動車生産台数の著しい減少などにより受注が大幅に減少し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 海外事業展開と為替相場の変動


連結売上高の多くを海外が占めており、各地域の政治・経済動向、規制変更、地政学的リスクなどに晒されています。また、外貨建ての取引が多いため、為替レートの変動が売上や仕入に影響を及ぼすリスクがあります。

(3) 部品・原材料の仕入れと価格競争


アンテナ等で使用する銅線や樹脂などの原材料を外部から調達しており、原材料市況の高騰や仕入先の事情による調達の停滞が原価率上昇につながる恐れがあります。また、世界的な価格競争の激化により、収益が悪化するリスクが存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。