※本記事は、原田工業株式会社の有価証券報告書(第68期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 原田工業ってどんな会社?
自動車用アンテナおよび関連機器の開発・製造・販売を行う独立系メーカーであり、グローバルに事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1947年に計測器の修理・販売を目的として創業し、1958年に原田工業を設立しました。1995年に株式を店頭登録し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場しました。その後、2018年に東京証券取引所市場第一部へ指定され、2022年の市場区分見直しによりプライム市場へ移行、2023年10月にスタンダード市場へ移行しました。
同社グループの従業員数は連結で3,985名、単体で242名です。筆頭株主は資産管理等を行う株式会社エスジェーエスで、第2位は代表取締役会長の原田章二氏です。上位株主は創業家および関連会社が占めており、安定的な資本構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| エスジェーエス | 39.72% |
| 原田 章二 | 11.13% |
| 原田 恵吾 | 4.71% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長は原田章二氏、代表取締役社長は三宅康晴氏が務めています。社外取締役比率は20.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 原田 章二 | 代表取締役会長 | 1975年同社入社。米国現地法人会長や中国・アジア各拠点のトップを歴任し、2010年に社長就任。2019年より現職。 |
| 三宅 康晴 | 代表取締役社長内部監査室担当 | 協和銀行(現りそな銀行)出身。りそな銀行執行役員などを経て2014年に同社取締役就任。常務、専務を経て2019年より現職。 |
| 上山 智 | 専務取締役事業領域担当 兼 開発本部長 | 1988年同社入社。欧州現地法人社長などを経て2014年取締役就任。2019年専務取締役となり、2022年より現職。 |
| 佐々木 徹 | 取締役製造本部長 兼 新潟本社担当 | 1986年同社入社。米国現地法人社長、執行役員などを経て2015年取締役就任。2022年より現職。 |
| 青木 隆 | 取締役調達本部長 | 1995年同社入社。執行役員、米国現地法人社長などを経て2019年取締役就任。2024年より現職。 |
社外取締役は、桑原亨二(元りそな総合研究所専務取締役)、井上謙介(アシャースト法律事務所外国法共同事業弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「日本」「アジア」「北中米」「欧州」の各報告セグメントにおいて自動車関連機器事業を展開しています。
■(1) 日本
国内市場において、自動車ラジオ用アンテナ、中継ケーブル、自動車TV用アンテナ、ETC用アンテナ等の自動車関連機器を提供しています。主な顧客は国内の自動車メーカーおよび自動車部品メーカーです。
収益は製品の販売対価として顧客から受領します。運営は主に原田工業が行っており、研究開発や統括機能も担っています。
■(2) アジア
中国、台湾、フィリピン、ベトナム、タイなどのアジア地域において、自動車関連機器の製造および販売を行っています。生産拠点としての役割も大きく、各地域への製品供給を担っています。
収益は製品販売により得ています。運営は、上海原田新汽車天線有限公司、大連原田工業有限公司、HARADA AUTOMOTIVE ANTENNA (PHILIPPINES), INC.などの現地法人が行っています。
■(3) 北中米
米国およびメキシコにおいて、自動車関連機器の製造および販売を行っています。北米市場向けの製品供給とともに、開発機能の一部も有しています。
収益は製品販売により得ています。運営は、米国のHARADA INDUSTRY OF AMERICA, INC.およびメキシコのHARADA INDUSTRIES (MEXICO), S.A. DE C.V.が行っています。
■(4) 欧州
英国やドイツを拠点に、欧州市場における自動車関連機器の販売および開発活動を行っています。
収益は製品販売により得ています。運営は、英国のHARADA INDUSTRIES (EUROPE) LIMITEDなどが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は400億円台半ばで推移しています。利益面では、2023年3月期までは経常損失および当期純損失を計上していましたが、2024年3月期以降は黒字化しています。特に直近の2025年3月期は、減収ながらも経常利益率が改善傾向にあり、収益性の向上が見られます。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 347億円 | 358億円 | 421億円 | 470億円 | 448億円 |
| 経常利益 | -11.2億円 | -9.5億円 | -9.0億円 | 5.2億円 | 13.3億円 |
| 利益率(%) | -3.2% | -2.7% | -2.1% | 1.1% | 3.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -12.9億円 | -11.1億円 | -15.3億円 | 8.9億円 | 1.7億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高は前期比で減少しましたが、売上原価の低減が進み、売上総利益は増加しました。これにより売上総利益率は改善しています。営業利益および営業利益率も上昇しており、コストコントロールの効果が現れています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 470億円 | 448億円 |
| 売上総利益 | 87億円 | 92億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.4% | 20.6% |
| 営業利益 | 10億円 | 17億円 |
| 営業利益率(%) | 2.2% | 3.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給料が23億円(構成比31%)、荷造運賃が10億円(同13%)を占めています。また、研究開発費は9億円(同12%)となっています。
■(3) セグメント収益
各地域の状況を見ると、日本セグメントは増収増益となり、利益の柱となっています。アジアセグメントは外部売上が減少したものの黒字転換しました。北中米セグメントは減収減益となりました。欧州セグメントは大幅な減収となり、営業損失を計上しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 日本 | 192億円 | 201億円 | 10億円 | 13億円 | 6.7% |
| アジア | 265億円 | 267億円 | -10億円 | 4億円 | 1.4% |
| 北中米 | 152億円 | 146億円 | 8億円 | 3億円 | 2.1% |
| 欧州 | 86億円 | 56億円 | 2億円 | -1億円 | -2.6% |
| 連結(合計) | 470億円 | 448億円 | 10億円 | 17億円 | 3.9% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはプラスとなっており、営業活動で得た資金に加え、財務活動による資金調達も行いながら事業活動を行っている「積極型」に近い状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 24億円 | 9億円 |
| 投資CF | 26億円 | -4億円 |
| 財務CF | -60億円 | 6億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.3%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「共創と革新」を経営理念に掲げ、ベストを追求するプロフェッショナル集団であり続けることを目指しています。顧客満足を第一義とし、独自の技術力と創造力で顧客の真のニーズに応えるとともに、社会的貢献を追求し、永遠に存続・発展し続けることを基本方針としています。
■(2) 企業文化
「明るく、楽しく、真剣に!」を行動指針としています。また、組織運営のあり方として「3C+S」(Chance、Challenge、Change + Speed)を掲げ、変化をチャンスと捉え、積極果敢にチャレンジし、自分自身と組織を変革することをスピード感を持って実践する風土を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
成長性および収益性改善のため、営業利益率等の利益指標の向上に努めるとともに、有利子負債の削減、棚卸資産の圧縮、自己資本の充実等による財務体質の改善に取り組んでいます。2025年3月期の実績は以下の通りです。
* 売上高:448億17百万円
* 営業利益:17億29百万円
* 経常利益:13億28百万円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:1億66百万円
■(4) 成長戦略と重点施策
「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)への対応等によるトップラインの拡大」、「コスト構造改革によるコスト体質の強靭化」、「B/Sのスリム化による収益改善・財務体質改善」を推進する「収益構造改革」に集中して取り組んでいます。中長期的には、車載アンテナのトップ企業であり続けるため、CASEおよびモビリティの多様化に積極的に対応し、周辺事業・新規事業を拡大させることを目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を貴重な資本と捉え、環境変化に対処し能力向上を目指すため、階層別研修、専門教育、自己啓発支援など継続的な人材育成を行っています。また、多様な人材が能力を発揮できる環境づくりや、健康保持増進、快適な職場環境の形成を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均(598万円)とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 48.3歳 | 18.4年 | 6,071,079円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 73.7% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 74.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 70.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(21.3%)、一月当たりの労働者の平均残業時間(5.5時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定の製品・業界への依存
同社グループの主たる事業はアンテナ製品等の製造・販売であり、その大半を自動車産業向けに展開しています。そのため、世界の自動車生産台数の著しい減少や主要取引先の生産・販売状況の変化により受注が大幅に減少した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 海外事業展開に伴うリスク
世界各地に製造・販売拠点を有しており、各地域の政治・経済動向、予期せぬ法規制の変更、国際税務リスク、テロ、戦争、疫病などのカントリーリスクが存在します。これらの事象により事業活動が計画通りに進まない場合、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 為替レートの変動
グローバルに事業を展開し、海外売上高の比率が高いため、為替レートの変動の影響を受けやすい構造にあります。外貨建ての売上や仕入、海外子会社の財務諸表換算において、為替変動が業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。



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